中学受験相談所 副管理人アーカイブ

中学受験相談所 副管理人アーカイブ

LINEオプチャ「中学受験相談所」に常駐している副管理人です。(あるいは「中学受験語り合う部屋」の管理人)

このブログはそれらの部屋で書き込んだ、長文リプライの抄録です。中学受験の参考にしていただければ幸いです。

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いつもご高覧ありがとうございます。

いよいよ首都圏の2024組、決戦の日が迫ってきました。

今は地方校の東京会場受験も含め、ほとんどの受験生がいわゆる前受校受験をします。ですから、「生まれて初めての受験」は、済ませている方がほとんどでしょう。

しかし、前受と本命校は違う。

5・6年前に見ていた太郎君(もちろん仮名)も、元々ガラスのハートの持ち主。周囲は「最大の懸念材料は『アガり』」とその緊張しやすさを心配していました。

1/10の入試皮切りは、受験者が殺到するS中を回避、受かりやすいK中から入りました。

結果は無事に合格。お父さんの車で行ったのですが、車中、いびきをかいて眠り、車を降りて試験場に行く時もサラリと「んじゃ、行ってくるから」みたいな感じで、ご家族は「心配は杞憂にだったようだ。意外にも本番に強い子なのかも」と思ったのですが…

2/1の都内の本命校。この日僕は太郎くんの激励に熱望校H中に赴きました。

待つこと30分くらい、お母さんと太郎君が駅方向からやってくるのが見えました。各塾の激励でごった返す(懐かしい。今は昔、ですね)校門から少し離れたところで太郎君親子を迎えます。先に気づかれたのはお母さんで、あっ、先生!と軽く驚かれた様子。太郎くんは、と言うと、目が合っても表情を変えません。

(?)
「おはよう」

そう声をかけても頷くだけ。

「よく眠れたか?」
やはり、うんうんと小刻みに首を縦に振るだけ。

「時間配分だけに気をつけてな。過去問もずっと最低点クリアしてるんだから、自信をもってな」
機械仕掛けの人形のように、うんうん、と頷きます。

「握手しよう」
手を握ると驚くほど冷たい。そして、手を握っている間も僕と目を合わせず、うんうん、と首を縦に振り続ける太郎君。

その日の夕刻、お母さんのLINEを読んで驚きました。帰途、「○○先生、いらしていただいて良かったね!」とお母さんが話すと
「えっ、居たの?僕分からなかった」

お母さん仰天して
「何言ってるの?!あなた、握手したじゃない」
「いやいや、知らない。僕は握手なんてしてない」

試験の結果は…言わずもがなでしょう。

前日に何やら不吉な事例を挙げてたいへん恐縮ですが、かように、前受と本番は異なる、という実例です。

さて、今回は「前日に子供にどう声をかけたらいいか」です。以下は関西初日の1/13の前日にお父様からいただいたご質問です。

Q
「遂に息子も本番試験に立ち向かいます。これから厳しい戦いが待っています。どこも確実などとは言えませんが、塾などからは期待されている立ち位置。そんな息子にかける言葉はどんな言葉がよいでしょう?ここまできて、父親からなんと声を掛けたらよいのやら…。

親として、難関な試験に立ち向かう子供にかける言葉をアドバイスください」

A
君を誇りに思う。そしてどんな結果になろうと、お父さんお母さんの、君への愛は変わらない。

「こんにちは。いよいよ近づいてきましたね。親御さんも、日によって『この子、全部受かんじゃね?』と思ったり、かと思えば、全滅だった時のことを想像して夜眠れなくなったり、動悸が止まらなくなったり。

大変な数日間になるかと思いますが、なんとかご家族力を合わせて乗り切ってください。

声かけですか。多分、『お前はできる』的声かけは塾でしてくれると思います。

親御さんはやはり、ねぎらい、でしょう。そして結果がどうであれ、君を誇りに思うし、どんな結果が出ても愛している、ということを伝えたいですね。

いや日本人ですから『愛している』と言うのはハードルが高いことは分かります。だからそのままのセリフを言いましょう、ということではなく、でもなんらかの形で『君への愛は結果がどうであれ、変わらない』ということを伝えて頂きたいのです。

彼ら彼女らは、親の期待を裏切るのが本当に怖いんですよ。特に一生懸命に伴走してくれた親の愛が痛いほど分かるだけに、なんとかそれに応えたい、と思っている。自分の試験結果で大好きなお父さんお母さんを悲しませたくない。そういう不安を口にする子は何人もいます。そして話すうちに号泣する子もいるんです。そして、必ず最後に『僕(私)が泣いたことは言わないでください』と加えます。『心配させたくないから』と。何と健気なのでしょう。いつも、僕は親御さんのお子さんへの無償の愛の深さ、そして、それに応える子供たちの健気さに触れる度に心が震える思いがします。(家では悪態ばかりでしょうけど)

なんだか照れくさいかも知れませんが、『ここまで苦しい道程を良く頑張った。誇りに思うぞ。結果は気にせず試験に向かえ』ということとともに、『愛は変わらない』ということを、何かで伝えた方がいいのでは、と思います」
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いかがでしょう。やっぱりハードル高いかな。

僕自身も、先日次女の共通テストに送っていった時、車内ではバカ話に終始、降りる間際にかけた言葉は、「腕時計、止まってないか?」でしたから。

こそばゆいですよね、今さら。

こういう点、英語は楽でいい。英語の次の三つのフレーズだけは羨ましいと思います。

1. I love you.
2. I'm proud of you.
3. I miss you.

どれも訳者泣かせ、というかピッタリな和訳がありません。中でもI miss youは、「寂しいよ」と訳してもいまいちピンときませんね。とりわけ最愛の人を亡くした登場人物が、その遺影やお墓の前で涙ながらに「I miss you」という場面はいつも胸を打たれます。(あえて訳せば「なんで死んじゃったの?」でしょうか)

英会話関連のサイトなどでは、2はそんなシリアスなイメージではなく、もっとライトな「やったじゃん」くらいの感じ、とありますが、映画などでハグしながら家族が子供にI'm proud of youという場面がありますね。アレです。

ハードルは高いと思います。また、普段通り感を演出したいなら、サラリと「気をつけてな」くらいがいいのかも。

でも、明日からの数日間は、家族史の中にいつまでも残り続ける1ページです。

この、前日という今日だからこそ、改まるのも有りなのかな、と思いますが、いかがでしょう?

 

 

読者の皆様、ご無沙汰しております。遅ればせながら明けましておめでとうございます。

昨年は、4月上旬に長女の大学合格のご報告をしたあと、全く更新をしていませんでした。オープンチャットではずいぶんご質問にお答えしたのですが、そのご回答に追われてしまい、当ブログの管理まで手が回らず…

せっかく読者登録してくださった皆様、誠に申し訳ありませんでした。

今年の目標は「もう少しこまめにブログを更新すること」これに尽きます。

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さて今日は、時期的にタイムリーかと思いまして、先日オプチャに寄せられたご相談に対する回答を貼り付けました。テーマは「前受校に受かった息子が、そこに入学する、と言い出して困っています」です。

(Q)関西在住の小6です。関西最難関校を目指し、進学教室Sに通塾しています。先日、関西圏外の前受校を受験、無事特待生としての合格をいただけましました。ほっと一安心したのですが、予期せぬ事態が待っていました。本人が「この学校でいい」と言い出したのです。どうなだめすかしても「ここでいい」の一点張り。主人がきつい言葉で叱ると、売り言葉に買い言葉、ということもあるのでしょうが「特待なんだから親孝行だろう。早くしまっていたゲーム出してくれ」と言います。塾に相談しても、「まずは塾によこしてください」とおっしゃるばかり。(それはそうですよね…。来てくれないと説得のしようがないでしょう。それをなじる気は全くありません)

どうしたらいいでしょうか。

このご質問にお答えしたのが以下の文章です。例によって、最後は説教臭く感じられるかもしれません。面倒くさい、と思われたら途中で離脱ください。

(A)
数年前、僕も教えていた子が「前受校に入学する、もう受験は終了」と言い出し、家族で騒動になったことがあります。

その子は女子学院をめざし奮闘努力していました。近所の仲良くしていたお姉さんが女子学院に進んだことがきっかけで自ら中学受験をしたい、と親に言い、小4から大手塾に入室、机の前にリボンホルダーに「JG」と刺繍のある女子学院の式典服の写真を貼り、辛い時も苦しい時もその写真を眺めて頑張ってきました。

12月までの成績推移は、女子学院は5分5分より少し分がいい感じ。

受験校は1/14に浦和明の星女子を受験、そこに通ればあとは女子学院だけ。万一浦和明の星を取りこぼした時に備え、1/21に国府台女子(千葉)という態勢でした。

1/14の浦和明の星は、生まれて初めて挑む真剣勝負にガチガチになって受験。前夜、うとうとっと寝かけた時になにかの物音で目覚めてしまい、その後はほとんど寝られず朝を迎えたとの事。朝食も全く喉を通らず、心配したお母さんが無理やりゼリー飲料だけを飲ませて連れて行ったそうです。浦和明の星は毎年、2000人が受けるマンモス入試(?)ですが、東浦和の駅から学校までラッシュアワーの新宿駅のような混雑。その人の多さを見たら、彼女は泣き出してしまった。(たまに見かけますね、激励に行っても。ビビって泣き出す子。ガラスのメンタルの子を持つ親御さんはそんなこともあると思っていてください。そこで親がオロオロしたり頭ごなしに怒鳴ってもいいことはありません。落ち着くのを待つことです)

そんな心身の状態ながら彼女は頑張りました。終わるなりきっと落ちた、と言い、帰路、一言も口をきかず、家に帰るなり部屋にこもってしまった彼女。ホームページでの合格発表も、「いい。きっと落ちてるから。ママ見て」と見ようともしなかった程だったのですが、見事合格!

しかしそれが騒動の始まりでした。

発表の日の翌日に困ったお母さんからLINEで「女子学院を受けない、と言っています」と。えっ、とは思いましたが、実はこういう例はしばしば塾であることで、「またか」と言っては悪いですが、聞いた僕はお母さんほどは慌てません。

「何と言っていますか?本人は」
「何を言っても、『浦和明の星でいい』の一点張りで…。私がなだめても主人が怒鳴りつけても首を頑なに横に振るだけで…」

その場では、分かりました、じゃ僕の指導も前回までですね。おめでとうございます、と打ってLINEを閉じました。それ以降、日中を含めて彼女の指導は数回の予定があったのですが、まだその時点ではキャンセル扱いにしてそこに他の子を組むことはしません。今後どう変わるか分からないからです。

案の定、というか、やがて「先生の指導は続けてほしいと本人言い出したのですが、空いてらっしゃいますか?」とお母様から問い合わせが来ました。「正負の数や方程式の先取りをすればいいのですか?」とたずねると、「それが…今まで通りの指導をして欲しい、って言うんです」と。

この辺り心の揺れが出ていますね。

ご家庭に行って教えると、やはりそれまで通りの粘り、というわけにはいきません。それまでは本人用に作成したプリントを、放っておくといつまでも考えているのですが、再開後一回目の指導では20分くらいで「解けるものは解きました…」と、白旗を挙げました。

彼女らしからぬその淡泊さに少々ガッカリですが、詰っても仕方ないので「偉いね。受かっても、カンが鈍らないように難問に取り組むなんてなかなか出来ないよ」なんて褒めたのですが、なんとも複雑な表情をして下を向いてしまいます。

1/21の国府台女子は当然パス。しかし、その辺りから徐々に様子が変わってきました。以前と同じで粘るようになる。僕の解説が納得がいかないと突っ込むようになる。お母さんには「彼女、ひょっとすると、JG受けるかも知れませんよ」とだけ伝えました。

結局、本人がお父さんに頭を下げ、JGに臨むことを決めたのは1/25過ぎでした。
結果は合格して、終わってしまえば笑い話、なんですが、ご家族にとっては生きた心地のしない10日間だったでしょう。

恐らく彼女は怖かったんだと思います。あらゆることを我慢して3年間、目標としてきた学校にはねつけられるのが。「受けない」なら落ちませんから。

認知的不協和理論という有名な心理学の学説があります。簡単に言えば、「状況が変えられないのなら人は認知を変えて自己を守ろうとする」というものです。

新車を買ったユーザーは、購入前より明らかにその車を好きになることが調査でわかっています。もちろん、乗ってみて、思った以上にその車を好きになった、ということはあるでしょう。それがゼロとは言いません。でも、500万以上もする車をおいそれと買い換える訳にはいかない。車に対して不満があると、「認知的不協和」を起こします。(その車に失望⇔買い替えることはできない) その不協和を解消するには「好きになる」のが1番手っ取り早いのです。また、購入時に比較検討したライバル車に対して辛口なクチコミを好んで見るようになることもまた、知られています。

「認知の歪み」と切って捨てるのは簡単です。でも、私たちはそれでなくても辛い思いしんどい思いを日々している。手に取れなかった葡萄を「あれは酸っぱかったのさ」ということで精神の健康を保っているといえなくもありません。

前受の受験で死ぬような思いを味わって勝ち取った勝利です。ようやく掴んだ成功の果実。もっと大きい果実を取りに行けば拒絶され、傷つく可能性があります。そこで「私は実は、JGより浦和明の星に行きたかったんだった」と思ったのかもしれません。そんな彼女をどうして責められるでしょう。

さて、ご相談者さまのお子様ですが、上に書いた女の子のように試験が近づけばまたエネルギーチャージして挑むようになるのか。これは、分かりません。

そういうケースの方が多いことは確かですが、本当にやめてしまった子も何人もいます。
そしてその子たちの中には、前受校に進んで後悔をする子もいたことでしょう。

でも、それも、その子の人生です。その後悔もその後の長い人生の糧になると思うしかありません。

親は子より経験豊かですから、様々な落とし穴を予見できます。「親」という字は「木の上に立って見る」と書きますが、このまま進めば穴に落ちることは分かるから、ああせい、こうせい、とつい言いたくなる。でも、落ちて分かることもある、そして落ちて水びたしに、泥まみれにならないと分からないこともあるんです。

親は子が泣くのを見たくない。だから、先回りして忠告します。でも、聞かないのなら、落ちて泣いてもらうしかない。

その穴が奈落の底、地獄に繋がるような穴なら体を張って阻止しなくてはなりませんが、そうでないなら、落ちて気づくだろう、と諦めることも、これからの子育てには必要になってきます。

You can take a horse to the water, but you can’t make him drink.(馬を水辺に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない)

子供は親の所有物ではありません。コントロールには限界があります。そう思って諦めることです。「お前のためを思って」というおためごかしで、自分のいいように支配するのはやめましょう。それは、毒親の第一歩です。

お子様が、試験が近づいてきた暁に再び立ち上がって歩きだすことをお祈りしますが、もしこのまま放棄をしたとしても、それもまた人生、と思いましょう。

※結局、このお子さんは、試験数日前に「ねえ、まだ受験票って印字できるのかな」と家族が仰天するような発言をし、本命校に挑んだそうです。結果は不明ですが、お母様は「これで本望」とおっしゃっていました。

【はじめに】
ふだん、中学受験を中心とする受験ネタを書いている当ブログですが、当家には永年不登校だった長女がおりまして、今日はその長女ネタです。不登校に悩み、苦しむご父母様の何かの希望になれば、と書きましたが、中学受験当事者のご父母様にはほとんど役に立たない内容だと思います。「お気に入り」登録してくださっている皆様には、そんなわけで、申し訳なくお詫び申し上げます。

2023年1月14日のオープンチャットへの書き込み

今、大学入試共通テスト会場まで、長女を車で送って来ました。

同級生からのいじめと教師(学年主任)の暴言が原因で中2にリストカットが始まり、中3から完全に不登校。高校は何とかかんとか通信制に入学。しかしそのスクーリングにも行けなくなり、いっときは高卒資格認定試験を考えましたが、コロナ禍に救われました。Zoom受講が認められ、しかも顔出ししないのも診断書添えてお願いしたら認められ、今だからいえますが、部屋で爆睡しながらリビングのiPadで形だけの受講。

そんな状態だったので、大学なんてハナから諦めていたのですが、高3になって「受験する」と。

まあ、やるだけやったらいい、と、応援しましたが、やはり秋から予備校に行けなくなり、自宅に籠りっきり。でもいつかは行くというかもしれないので親は学費は払い続け。

本人は早慶と言っていた(これには伏線があり、中2で学校に行けなくなるまで競っていた2人の同級生が2人とも都立日比谷に進学、1人は東大をめざし、もう1人は国公立医学部志望、というのを聞き、いつも勝ったり負けたりだった自分なんだからMARCHなんてありえない、と、変なプライド)のですが、そんな高校生活で早慶なんて受かりっこない。当然早慶は全バツ、MARCHもだめ。三女子大のひとつに何とか合格。

女子大に進む、と言うので手続きをとりましたが、入学式にもガイダンスにも行かない。いや、行けない、のか。

どうするんだ、と聞くと「分からない」…少し強く言うと「死にたい」「なんで私なんか産んだ」が始まる。

仕方ない。親は歳をとり、いずれ死ぬ。そうなれば諦めて、自分で立ち上がって歩き出すだろう。それまで病人が居る、と諦めるしかない(実際「精神疾患認定」され、医療費扶助も受けているので病人なわけですが)と、好きなようにさせました。

去年の6月ごろだったか、「もう一度受験がしたい」と言い出し、現役の時のことを思うと、また同じことなのでは?と危惧しましたが、「高3の時は不完全燃焼だった。やり切った感が欲しい」と。心療内科の主治医の先生、カウンセラーに相談したら「やらせるしかない」とのこと。(やりたい、ということを親がさせないのはできるだけ避けるべき、と)

じゃやってみな、と再び受験生に逆戻り。(大学は退学はせず)

夏はそれなりに頑張っていましたが、秋が深まるとどんどん病んでくる。家族(特に妹)に当たり、家内に暴言を吐き、時に暴力を振るい、叱ると引きこもる。

やっぱり無理だったか、と、予備校を辞める手続きする、と言うと「それはやめてくれ」と言う。

もう、むちゃくちゃです。

冬期講習から頑張ると言うから、受講手続きとるも、結局1日行ってあとは、行けず(周りの視線が怖い、先生が煽るのを聞くと呼吸困難になる、とかなんとか…)

ま、やめても戻る女子大があるし、と夫婦は静観。(家計を預かる家内は僕の何十倍もブチ切れてましたが。)

年明け、共通テストが迫ってきても、受けるんだか受けないんだか…家では好きな日本史だけはやるけど嫌いな英語は触らないまま。

年明け、直前講習を受けに行き、共通テスト模擬問題受けたら爆死。またまた家で大暴れ。(帰宅したら、家内が頬にバンドエイド貼ってるので、どうした?ときいたら引っかかれた、と)

もう、とにかく、早く終わって欲しい、とそれだけを願っていたのですが、昨日の昼過ぎにLINEが来て「パパ明日、送ってくれる?」

は?送るってどこに?

「いや、時間はあるけど、どこに送るんだい?」
「何いってんの?共テの試験場に決まってるし」

何だ、受けるんかい?!

家内に言うとまず返ってきたのが「えっ?!」笑

そしてその後「まだわかんないよ明日になんなきゃ。起きれる気がしない」

それもそうだ、期待するのやめよう。

それが今朝、目覚ましで自分で起きて、朝から洗面所で念入りにメイク(そこかい?!)

さっき車降り際に
「パパ。いろいろありがとう」ってお前、うるっと来るこというんじゃねーよ。

去年より点数低いかも、でしょうけど、もうそんなことは二の次です。

起きて受けに来ただけで、ま、いーか、になってる自分がいます(ハードル低っ!)

ここにいらっしゃる方は、まだ小学生のご父母が大半だと思いますが、脅すわけではありませんが、子育ての苦労はどこまで続くのやら、です。
朝からお目汚し、失礼しました。


2023年4月8日のオープンチャットへの書き込み

こんにちは。みなさま、お子様の新学年新年度がスタートし、何かと気忙しい日々をお過ごしと拝察いたします。

さて、1月14日の大学入試共通テストの朝、皆さんに一人語りをしてしまいましたが、その後、我が家に天の神様からちょっとしたご褒美がありました。

なんと、長女が志望校の一つ、中央大学に合格したのです。今日はそのご報告をさせてください。

共通テストの当日、家族のグルチャに「もう消えてなくなりたい…」と試験を受けている長女からLINEが入りました。聞けば、英語の時間、号泣状態になり、試験官の先生に「君、大丈夫?」と声をかけられた程だったそう。帰宅した長女に次女が何があったん?と訊いたら「家族のみんなに迷惑をかけまくって浪人させてもらって、お金も沢山使わせて、それなのに、英文、読んでも読んでも分からなくて、情けなくて涙が止まらなかった」とのこと。

こちらはでも、そんなやらかしも想定内だったので、「よく頑張ったね。偉いよ。気をつけて帰っておいで」「そうそう。頑張ったね!美味しい物作って待ってるからね」と家内と僕で相次いでリプを入れました。

共テはだいたい得点率70%で偏差値60、80%で偏差値65、と言われています。(偏差値は河合塾)  去年現役の時、69%だった英語が50%台後半という結果。MARCHは学部によりますが、どこも60%台後半は欲しいのに、60%を割り込む、まさに大失敗。夏前の河合の模試では苦手な英語も57、国語は62、日本史はなんと70、英国社64で早稲田もB判定、という好調ぶりでしたが、夏ですっかりギヤの入った周りの雰囲気に当てられ、2学期は病んで英語はろくに出席もできず。秋以降の模試は朝起きられず(←逃避)全て不受験。ですから、最終的にどのくらいの偏差値かも分からなかったのですが、冬期講習の最終日に受けた共テのそっくりテストで英語は50%程度の得点率だったので、まあ、そんなものだろう、と親は覚悟していたわけです。

2月1日から始まる私大の個別試験。訊けば「受ける」とはいうものの、共テが終わってからの2週間、全くテキストを開かない。単語のテキストだって漢字や日本史の一問一答だって、なんだってやれば少しでも可能性は高まると思って声をかけるのですが、「分かってる!」と尖った返事が返ってくるだけ。その頃は僕自身も中学入試の直前で目がまわるほど忙しいので、構っている余裕もありません。嫁さんは噛み付かれるのが怖くて、随分前から何も言わない。僕が夜中に帰ると長女は起きているのですが、「今日何時に起きた?」「5時」というその返事が、朝の5時なのか夕方の5時なのかわからない、という乱れぶり。

共テ利用方式も含めて出願したのは7大学17学部。受験料だけで約40万。嫁さんがため息をつきながら家計簿をつけてボソリと「パパ頑張ってね…」。金額を聞き「そんなにかかるのか!」と言ったら「あったりまえでしょ!何とぼけたこと言ってんの⁈」と流れ弾に当たる始末。

2/1からの長女の試験日程は、ありえへん、の世界です。1日、3日、5日、7日。そこから8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、17日、19日。河合塾の父母会で、「3連投は避けてください。無理です。連投は2日が限度です」とチューターさんが話していたのですが、まさかの8連戦。本人は、再考を促されるのが嫌なのか、最後までガンとして試験日程を河合塾に提出しませんでした。もうこの頃は、親も、受かる受からないではない。本人の好きなようにさせて、心にピリオドを打つための入試だ、と割り切っていたので、メールでの問い合わせも、家電もブッチ(チューターさんごめんなさい!!)

2月1日が近づくと、嫁さんとLINEで「受けるのかね」「さあ…訊くと『当然でしょ』というけどね〜」そんなやりとりを交わしていました。

ところが、です。なんと長女、全日程、受験したのです。朝、目覚ましで自分で起きて、身支度をして家内の作ったお弁当を持って受けに行く。(自分で弁当を作れば百点満点ですが、さすがにそれは…)そして毎日、泣きべそをかきながら帰ってくる。それを全ての日程、繰り返したのです。アンビリーバボー!です。試験日が2月上旬の上智は、本人が一番行きたいって言ってたから受けるんだろうけど、それが終わってしまえばMARCHは棄権じゃないのかね…早稲田も、1mmも可能性ないからねえ…そう親同士は言っていたのですが、毎日、泣き腫らした目で受けに行く。僕も家内見るのに忍びなくて「もういいよ」「そうだよ。良く頑張った。休んで良いんだよ」そういったのですが、首を横に振り続けました。

最後は早稲田の教育だったかな、19日の試験が終わった後は、まるで糸の切れたマリオネットでした。それこそ1日16時間くらい寝ていました。(ついこの間まで)

この2月1日から19日の間は、あれです、ゲームで果実とかのご褒美を食べるとパワーアップして30秒間とか、無敵状態になりますよね。まさにあんな感じでした。

ただ、そんな共テの結果でしたから、個別試験の結果も僕などは諦めていて、受けまくった各大学の合格発表日など覚えているわけもなく、中央の発表の日もいつものように午前中の仕事(専門学校講師)をしていました。 

10:30に一コマ目が終わり、休憩時間があるのですが、嫁さんからのLINEが来ている知らせが。

高1高2当時の長女の状態の悪い時は、LINEに、嫁さんからの超長文の愚痴、または怒りのメッセージが頻繁に来、仕方なくそれに相槌を打ったものでした。

なんだろうなぁ…とこの時点では嫌な予感しかしません。また暴れてる?本当に状態の悪い時、リストカットを繰り返していましたが、まさか再発?

嫌で仕方なかったですが、腹を括ってLINEを開きました。

開けると目に飛び込んできたのは合格したウカロ(中受のミライコンパスみたいな受験ポータルサイト)のスクショ、そして「信じられない…受かってた」の嫁さんのメッセージ。

見た瞬間は意味が分からない。最初思ったのは、おかしな話ですが、2月まで見ていた6年生がこの時期繰り上がったその知らせ?(でもそれだったら嫁さんのところに知らせが行くわけがありません(笑)

中央大学▽学部□□学科

おめでとうございます。

合格(赤の大きな文字)

受験番号
□□(長女の氏名)

長女が受かったのだ、ということがわかった瞬間、思わず狼狽えてコーヒーを落としそうになりました。

嬉しさは全くなく、本当に、真面目に思ったのは「何かの間違えではないのか?」でした。

やがて、家にいた長女から、合格証のPDFのスクショと「パパ…受かっちゃった」というメッセージ。

ようやく、これはドッキリでも間違いでもなく、本当に合格したらしい、ということが分かりました。

実感は、なんでしょう…。嬉しいは嬉しいのですけど、飛び跳ねるような歓喜ではなくて、他の受験生に申し訳ない気持ちが少々(あんな勉強で受かって良いの?的な)、そしてキツネにつままれた気分、が一番近いかもしれません。今は亡きノムさんの名言「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」を思い出しました。家に居た家内も、長女と抱き合って喜ぶ、というリアクションではなかったようです。「ドッキリじゃないよねぇ」
と2人で言い合ったそうですから、似たようなものだったようです。

その後、お世話になった方々に長女に連絡をさせました。メンタルヘルスのクリニックの先生は我が事のように喜んでくださり、また中学時代不登校だった時に、毎日のように家に寄ってくださった中3の時の担任の先生は、電話口で嗚咽されるほどだったそうです。そこまで気にかけてくれていた、とは、感謝の言葉もありません。

長女自身は、僕や家内には言いませんでしたが、妻の実家の報告に行き、祖父母にしみじみ、「生きてて良かった。少しだけ自信がついた」といったそうです。

中2の夏に荒れ始め、リストカットに走り、中3はほとんど学校に行けず。ようやく入学式の直前に滑り込んだ通信制高校もレポート提出は毎回締切日当日。夜中に帰宅してから、もうすっかり忘れている高校物理や化学を、教科書と首っ引きで寝ている当人の横でipadに答えを入力する日々。(高校の先生、すみません。なりすましの不正行為です)

スクーリングの日は仏頂面の長女を車に押し込み、学校の前まで送り届け、規定日数ギリギリでクリア。胃が痛い日々を過ごしました。

なぜ他の子が当たり前にできること、学校に行くということができないのか。親の育て方がいけなかったのか。「子供の仕事は学校に行くことだ。四の五の言わずにとっとと支度して学校に行け。さもないと追い出すぞ!」と強く言うべきだったのか。「見守る、寄り添う」と言うのは、単に甘やかしなのではないのか。来る日も来る日もそんな自問自答を繰り返しました。

娘に対してキレそうになった時、思い出すのは「あの子が頼んで生まれてきたわけじゃない。産んだ以上、否でも応でも面倒見るしかないじゃないか」という僕の母の言葉でした。

「勝ちに不思議の勝ちあり」と書きましたが、あの19日間、来る日も来る日も涙を拭って受けに行った長女の、その気持ちが天の神様の同情を引いたのでは?この上なく非科学的な理由づけですが、結構、真剣に今そう思っています。

3月には生まれて初めてアルバイトに行きました。「タイミー」という隙間バイト探しで探した軽作業でしたが、もうこの日は朝からこちらはソワソワ。「何かやらかさないか」「嫌なことがあってトイレにこもって泣いてないか」…大学受験の当日よりも気になって仕方ありませんでした。

正社員さんや一緒にアルバイトした仲間にも恵まれ、にこにこしながら帰宅。その日払いだったのですが、8時間、ひたすらシール貼りをして稼いだ9,000円弱の中から、妹に折り畳み傘を、嫁さんにハンカチを、僕にはペンを買ってきてくれました。

帰るなり「お金稼ぐって大変だね~。パパよく、こんなこと何十年もやってるね」

はい、今すぐにでもリタイアしたいですけど、誰かさんのせいで脛が極細になってしまいましたから。

さすがに顔出しはできず、スタンプを重ねてあるのでお見せできませんが、入学式の正門で撮った長女の顔は、それは、晴れやかなものでした。 

給付型奨学金を受けるために書いた作文には、「いつの日か、傷ついた子供たちの悩みを聞いたりアドバイスをする仕事に就きたい」と書いてありました。

ただ、嫁さんが参加している不登校の親御さんたちのオプチャによれば、これがゴールではけっしてないようです。中学→高校→大学と進むにつれ、「行かねばならない」感は軽くなるため、より大変、という声も聞きます。実際、後期から行けなくなった、就活を前にすくんでしまっている、そんな声も多く聞きます。まだまだ、重荷を下ろす、という訳にもいかないようです。

駄文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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ブログをお読みいただく皆さまへ。

いつもご訪問、ご高覧ありがとうございます。

育児をめぐって、信じられないような、目を瞑り耳を塞ぎたくなるような鬼親の所業を報じるニュースが後を断ちませんが、この拙文をお読みになる方は、皆さん、何よりもご自分の幸せよりお子さんの幸せを優先されている方々だと思います。世の親御さんの子を思う心の深さには、いつも励まされ、僕自身、支えにさせていただいています。

みなさまの大切なお子様の頭上にも、勝利の栄冠が輝きますよう、心より願って止みません。







少々迷ったのですが、年度も変わろうとする直前の今、やはり今春入試の「芝国際事件」を総括しておいた方がいいのでは、と思い、いつものようにオプチャの質問に答える形ではありませんが、特別に記事にしました。

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2月初旬、首都圏エリアの中学受験界の話題を一手に集め、関西在住のご父母さえもご存じだったくらいだった「芝国際事件」。(当時、Googleに「芝国際」と入力すると関連タームに「炎上」と出てくるほどでした)。しかし、その炎上の理由が実は意外と、知られていない、というか、「いや、そこじゃないでしょ」という違うポイントで語られる事も多く、ここで「なぜ芝国際が炎上したのか」そして運営主体者(学校法人)の何がいけなかったのか、あるいはどうすれば良かったのか、を明らかにしておくのは、今後、お子さんの受験に並走するご父母様方の利益に適うのではないか。そう思い、今回の記事をあげることにしました。


まず冒頭、当然のことですが、罪深いのは芝国際中学の運営主体者(学校法人)であって、受験生やそのご父母、ましてや、この春から通うことになった新1年生には何の科(とが)もありません。その点はくれぐれもご理解下さいますよう。


1.炎上までの経緯(何が問題だったのか)


さて、昨年入試まで低倍率に喘いでいた東京女子学園中高、校舎の建て直しを機にスクールコンセプトもガラリと変え、新たに「芝国際中学高校」という学校としてリスタートを切りました。


この芝国際、何しろ立ち上げメンバーが錚々たる面々。


東京都市大付属校長→村田学園(現・広尾学園小石川)校長

英理女子学院校長→宝仙学園理数インター広報部長→かえつ有明広報部長

鷗友学園校長

Google→順天堂大学大学院客員教授・東大アドバイザリーボード


そして、三田駅徒歩3分(ということは山手線「田町」からも至近)、NEC本社ビルの向かいに、12階建ての新校舎完成。インターナショナルスクールと同居などグローバルな学び、STEAM教育を標榜する今流行りの「国際」系。無理をしなくとも、十分に人気沸騰する素地はあった。まずはそこを見誤りましたね、先生たち。


一般に語られる、芝国際の炎上騒動は、以下の理由によるものです。


①尋常ではない高い競争倍率(しかも一度アップした受験生数・合格者数などが掲載された受験結果を、すぐに削除する、というリスク管理上、一番やってはいけない暴挙に出る)

②合否発表が、23時の予定だったのが何度か延長し、日をまたいで翌日に。(そのため、芝国際の発表を見て他校を出そうとした受験生が、日をまたいだ関係で間に合わなくなってしまった)

③試験終了後、保護者をアリーナに残したまま、子供をお迎えできず。担当者も消え、説明も無いまま、子供に会えたのは終了から1時間後。

④不合格再受験の生徒の眼前で、賑々しく合格者への合格証授与

⑤算数の出題ミス


このうち②~⑤は、不手際、また脇の甘さ(④)であり、もちろんあってはいけないことではあるものの、「炎上」するほどのことでもありませんでした。つまり言い方を変えれば、炎上したところにさらに注いだガソリンの役目はしたものの、発火理由になるほどの重大事ではなかった、と言えます。


問題なのは①


どれくらいの高倍率だったか。その学校がアップして慌てて削除した受験結果をご覧いただけたら一目瞭然なのですが、この画像、元がスクショなので著作権がありそうです。このブログを読んだ芝国際の先生が怒りの余り訴えたりしたら困るので、打ち直しました。見づらいとは思いますがまずはご覧ください。

(数字は合格者数/受験者数です)


2/1午前男子(2類)…5/107⇒21.4倍

2/1午前男子(1類)…8/39⇒4.9倍

2/1午前男子(CORE)…0/23⇒∞倍


2/1午前女子(2類)…2/100⇒50.0倍

2/1午前女子(1類)…13/47⇒3.6倍

2/1午前女子(CORE)…0/21⇒∞倍


2/1午後男子(2類)…4/265⇒66.3倍

2/1午後男子(1類)…17/73⇒4.3倍

2/1午後男子(CORE)…0/47⇒∞倍


2/1午後女子(2類)…9/205⇒22.7倍

2/1午後女子(1類)…7/54⇒7.7倍

2/1午後女子(CORE)…1/27⇒27.0倍


2/2午後男子(2類)…6/178⇒29.7倍

2/2午後男子(1類)…12/57⇒4.8倍

2/2午後男子(ADVANCED)…1/27⇒27.0倍

2/2午後男子(CORE)…3/10⇒3.3倍


2/2午後女子(2類)…5/119⇒23.8倍

2/2午後女子(1類)…7/50⇒7.1倍

2/2午後女子(ADVANCED)…3/24⇒8.0倍

2/2午後女子(CORE)…5/10⇒2.0倍


※合格者0の場合は、厳密には無限大ではなく数学的には「不能」だが、その記号がないので∞とした。


いかがでしょうか?


まあ、恐ろしい倍率がずらりと並んでいます。名目倍率ではなく実質倍率ですからね。


ちなみに、高倍率と言われる学校はどんな数値なのかと言うと、


渋谷渋谷の2月5日

男子⇒6.3倍  女子⇒11.2倍

市川の2月4日

男子⇒5.4倍  女子⇒10.0倍

都市大付属

2/1の2類  11.6倍


5倍で高倍率、7倍で超高倍率、10倍を超えたら絶望的。そんな中で上記の倍率です。


特に怒りを買ったのは、2月1日午前の倍率。まともなのは男女の1類のみ、女子の2類はたったの2人、COREに至っては男女共に0。合格者無しです。


普通は、2月1日午前といえば、その学校を熱望する第1志望者が受ける試験。その2/1午前で、20倍とか50倍とか0なんて前代未聞、空前絶後。ご父母が「金はいい。試験日を返してくれ。こんな異常に狭き門なら受けさせなかった」とお怒りになるのも無理は無いと思います。


声の教育社の受験直後の振り返り動画で三谷さんが「2月1日午前で10倍は、無いだろう」と言っていましたが、忖度なのか、数値を本当に勘違いしたのか分かりませんが、三谷さん、10倍どころじゃありません、20、50、無限大です。


ここで数少ない擁護派からはこんな書き込みがありました。


「高倍率は受ける前からわかっていたこと。直前になって回避する手段もあったはず。それを盲目的に突っ込んでいったわけで、自業自得」


確かに、日能研や四谷大塚のサイトで毎日志願状況は見られたわけで、言うことはある意味、理にかなっています。


2.決定的なミスリード


ところが、ここからが今回の騒動の本質ですが、学校側のミスリードがあったので、事はそう簡単な話ではありません。


まず(1) 説明会で学校側は「定員は少ないけど合格者をたくさん出しますから安心してください」と何度も語っていたこと。


オンライン説明会でも小野先生、おっしゃっていますね、ハッキリと。https://youtube.com/watch?v=vDt_xl9uFkw&feature=shares 



29分過ぎです。定員が少なくて不安だという質問に対し、「教室の方は中2・中3・高2・高3の方がまだ空いていますので、比較的ゆとりをもって合格を差し上げることができるのではないか


小野先生、リップサービスか、余計なこと言っちゃいました。「中2・中3・高2・高3の方がまだ空いています」って、学則定員を大幅に超えて出すのでは?と期待を抱かせるような発言。


これは推測ですが、こうして動画が残ってしまっている以上、都からも何らかのお灸を据えられたのではないでしょうか。


仮に今の新1年生で「中2・中3・高2・高3」の教室をいっぱいにしてしまったら、彼ら彼女らが上の学年になったらどうするんでしょ。募集停止するんでしょうか。そんなことありっこない。学則定員は絶対に守らねばならない「枠」です。それを超えてとったりしたら、補助金減額などのペナルティさえある。受験生を安心させたかったのでしょうが、結果的に「煽り発言」になってしまいました。


さらに

(2)営業部隊が各塾を回り、「定員は少ないが、多く合格者を出すので安心して受けさせてくれ」と言って回った


僕の勤める塾にも来ました。そして応接コーナーで「合格たくさん出しますから、安心して勧めてください」と言っているのをこの耳で聞きました。


もちろん聞く方もプロですから、学則定員を超えて合格者を出すとは思っていません。でもまあ、そう言うからには実質倍率5~6倍くらい、2/1午前は3~4倍になるように合格を出すのだろうな、と、聞く方は思います。


(1)(2)が相まって、上の表のようなかつてない、恐ろしい倍率になってしまいました。合格者数を見ると、「たくさん受からせる」は空手形だったことが分かります。2/1AMでたったの28人しか合格していないのですから。


3.めちゃくちゃな高倍率の原因


では、なぜこんな阿鼻叫喚入試になったのか。


これはどうやら、年内に行われた帰国生入試で合格者を多めに出したところ、その合格者の歩留まりが学校の読みよりはるかに高かったことが原因のようです。これは騒動直後の声教動画でも言われていました。また、森上教育研究所の森上展安先生も入試総括記事で同じ理由を挙げていたので、どうやらそれが真実なのだろうと思います。


以下、2/21プレジデントオンライン「首都圏「中学受験2023」を総括、入試最大の“話題校”とは?」より引用。


【こうしたもろもろの事態はなぜ起きたのか。今回の募集人員は130人ほどで、うち35人は国際生コースである。昨年末、実施の国際生入試で、かなりの数の入学希望者を確保していたことがまず背景にあるように思える。国際生コースのADVANCEDクラスが108人、COREクラス(COREスライド含む)が99人で、合計207人が合格している。(中略)


 この国際生の歩留まりが想定以上に良かったことがまず推測される。2月の一般生入試も志願者は殺到したが、一定の水準を確保するため、合格者を多く出す必要があまりなかったのかもしれない】(引用終わり)


一部には「露骨な偏差値釣り上げ」というような批判も散見されましたが、さすがに確信犯的に上記のような状況を作り出したのではなさそうです。(それにしても4月になって出される各塾の2023年度入試の結果偏差値はどうなるんでしょう。聞くところによれば開成〇、麻布〇で芝国際×の受験生も居たようで、そのまま補正せずに数値を出したらとんでもないことになりそうです)


それでさえ、下のような批判を浴びせられることになりました。




4.どうすれば良かったのか


ではどうすれば良かったのでしょうか。


僕は、少なくとも、塾にはアラートを出すべきだったと思います。


学校には声の教育社から提供された首都圏エリアの塾のデータベースがあるはず(それを基に営業かけているはずですから)。


FAXだって、一斉メールだっていい。「実は、あれだけお願いしておきながら慙愧に耐えないが、帰国入試の歩留まりが予想を超えてはるかに高く、ほとんど枠がない。ついては、ADVANCEDクラスは最低英検準1級レベル、COREクラスにおいても英検2級を有するお子さんでないと合格できないと思われたし。2類に関しても四谷大塚偏差値60以上でないと困難と思われる」とか何とか。それをテキスト(文字)に残したくなければ、手分けして電話をしたっていい。これまた前代未聞のお知らせでしょうけど、手段は何だっていいんです。「とにかく回避させなきゃ」  その気持ちが伝われば表現なんてどうだっていいと思います。


そうして「犠牲者」を一人でも減らすことは、「たくさん合格出しますから安心して受けるようにご父母に言ってください」と言って回った学校の最低限の責務でしょう。


学校が塾にアラートを出す、と言うとご父母の中には違和感を感じられる方もいるかもしれませんが、学校から塾に電話などがある、というのはそう珍しい話でもないのです。現に3年前、ある前受け校(千葉・埼玉入試)で、難関コースからのスライド合格を大量に出したことで多くの一般コースの受験生が弾き飛ばされてしまった時、学校の入試担当の先生から「ぜひ2回目入試を受けさせてください。悪いようにはしませんから」とTELがありました。


声の教育社の動画の中で「批判したって合格者が増える訳ではない(だからいつまでも批判をするのはやめよう)」と語られていますが、これは明らかにおかしな論法で、それを言ったら、人が亡くなるような重大事故の後に「批判したって亡くなった人が生き返るわけではないから、いい加減にやめましょう」ということになってしまう。


5.学校側に望むこと


大変残念でならないのは、現時点でも、今回の入試について学校側から何のステイトメントも出されていないことです。(合格発表と遅れと、出題ミスについてはホームページに掲載あり)


頬っかむりして、批判の嵐をやり過ごすのが学校の姿勢なら、僕ははっきり、その見識を疑います。


不利益を被った受験生がこれだけいる。彼ら彼女らは、未来を賭けて、人生を賭けて、受験に臨んでいる。「合格をたくさん出しますから」というその言葉を信じて、枠が0や2人の入試に突っ込んでいってしまったんです。


「世の中や誰かが動くのを待つのではなく、自ら行動を起こし周囲を巻き込む」ことを生徒に求め、「自ら未来を切り拓ける“真の国際人”になるための学び」を標榜しているのなら、亀のように手足と首を甲羅の中に引っ込め、嵐の過ぎ去るのをひたすら待つ今の姿勢を改め、今からでも遅くありません、責任の所在を明らかにし、原因の説明と謝罪をすべきだ、と僕は思います。それが貴重な入試日を無駄にした受験生とそのご父母への、せめてもの償いでしょう。


ここに来て、個人ブログも受験を振り返る「反省会」大流行りですね。

しかし、ちょっと解せないことがあって、Twitterでも呟いたのですが、Amebaのおすすめも、Androidで一番左にスワイプして閲覧出来るGoogle discoverに掲載されるブログも、やたら「受験が成功した」ご家庭のものばかり。

たしかに、どのご家庭も順風満帆とは程遠く「山あり谷あり」「一時は諦めた」「しかし、崖っぷちからの逆転勝利」みたいな内容で、読む方は面白いし、また結果的に上手くいったわけだからそこから得られるものも多い。何より、残念だった子のご父母のブログより明るくて、こちらも元気が貰える。

いいことずくめですが、世の中、上手くいった子より上手くいかなかった子の方が割合的に多いはず。それらのご父母のブログはどこに行っちゃったんだろう…

今日は2月の16日ですから、泣いて泣いて泣き明かした子の涙もようやく乾いた頃。そろそろ、顔を上げ、前を向いて再び歩き出す時期ですね。

親御さんも、そんな我が子の様子を見てほっと胸を撫で下ろしているでしょう。そして、何がいけなかったんだろう…と自問し、つい今までの癖でスマホを左にスワイプすると、「受験生活を振り返って」の類のブログが目に付く。

(うちと同じ辛い経験をされた方のブログはないかしら…)そう思っていくつかのブログをご覧になってすぐに後悔するはず。だって、上に書いたように、上手くいったご家庭のものばかりだから… 

不思議ですね。いちいちAmebaのスタッフが読んで、「推し」を決めてるんでしょうかね…そんな暇、無いと思うのですが。

AIに読ませてピックアップさせるときになにかの指示をするのかな?特定ワードを含んだものを拾わせるとか。そもそも、上手くいかなかったご父母のブログは更新さえされていないだろうし、ブログそのものを削除したりする方もいるようですから、水面上に浮かんでこないのも仕方ないかもしれません。

いずれにしても、この世に溢れている「やりました!」「思いが通じました」、という「二月の勝者」のブログを読んでまた涙にくれているお母様に宛てて、今日はブログを書いてみました。

以下は、オプチャで「ダメでした」という辛いご報告をしてくださったお母様に宛てて書いた返信です。

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受験がうまくいかなかった時、お母様はご自分を責めがちです。「させなくてもいい事をさせて我が子を傷つけてしまった」と。

でも、僕はそれは違うと思う。

親のエゴや見栄で中学受験をさせたのなら、それはいけません。でも、ほとんどの方はそんなことではなくて、冷静にお子さんの将来の幸福を願い、それがベターだと思い、受験を決断した。

ドラマやマンガでは無い、現実世界のことですから、うまくいかないこともあります。でも、扉は叩かなければ開かれません。

勇気をもって、親子で、家族で一生懸命に取り組んだ。その勇気と努力に僕は常に心から敬意を表します。

世の中には、どんなに願ってどんなに努力しても叶わないことがあります。我々は大人になる過程のどこかでそれを知る。人によってはそれは、大学受験かもしれない。あるいは就活の時かもしれない。また、幸運なことに大人になるまで知らずに過ごす人もいるかもしれない。でもそんな人も、普通に社会人として仕事をしていれば、「人生はマンガやドラマとは違う。どんなに努力しても裏切られることがある」と思い知ることになるでしょう。

中学受験で結果が出なかった子は、一足先にそれを身をもって知ることになります。

幼い子にそんな思いをさせるのは、可哀想なことなのか。可哀想だから避けるべきことなのか。

僕は否、と思います。

昨今の日本の教育を取り巻く状況を鑑みたとき、経済的に余裕と、そしてある程度の能力があれば、中学受験という道を選択するのは極めて合理的な決断でしょう。

しかし、そこには、否応なく勝ちと負けがある。

試験ですから運不運も絡みます。

今年、偏差値63の学校を受けた子は、普通の年ならまず受からない成績でした。偏差値は6足りず、過去問も12月の終わりで25点(算数)

しかし、彼女は運が味方した。今年のその学校は算数が例年に比すと考えれないような簡単さで、ほとんどバラケませんでした。理科も易化し、その結果、彼女の得意な国社勝負の展開になりました。

間違いなくそれが勝因でしょう。彼女のジャイアントキリングの陰で、涙を呑んだ理系得意の子がいるはずです。

もはや運命の女神のきまぐれ、としか言いようがありません。

入試で結果が出なかった子達に、塾でいつも言うことがあります。「君らは、一つだけ悪かったことがある」と。みな「えっ」という顔をします。

「それは『運』だ」と。

みな、なんだそりゃ、みたいな反応をしますが、これは僕の偽らざる気持ちです。

今の塾で僕は中3を見ているので、半分、とは言いませんが、3分の1から4分の1は中学受験リベンジ組です。

中3になって話すと、みな冷静だし、その時の悔しさややるせなさ、あるいは不条理さに対する怒り、は、きちんと咀嚼して消化しています。

そして彼ら彼女らに「中学受験、しなきゃ良かったと思う?」と訊くとまず例外無く「いや、それは無い」と言います。

そんなものです。お子さんは、感謝こそすれ、お母さんお父さんを恨んだりはしていませんよ。

どうか、ご自分を責めないでください。

僕の死んだ祖父がよく言っていました。「人生、8勝7敗で上出来だ」と。

お子さんはいわば初日黒星スタートでした。でも人生は長い。これから勝負の時はいくつもある。まだ、初日じゃないですか。あと8つ勝てば勝ち越しです。

今回の「二月の勝者」が人生の勝者ときまったわけでもありません。

毎年、2月に、受験の結果が思わしくなかったご家庭とやり取りをすると、総じてお子さんの方が立ち直りが早い。でも親御さん、特にお母様が引きずっているケースが目につきます。いや、2月どころか、新学期4月になってもお子さんのかつての志望校の制服を駅で見かけてそこで涙したり…

それを嗤うのは簡単ですが、僕はそんな気になれません。そうしていつまでも引きずってしまうのは、お子さんへの深い愛情の証ですからね。

でも。

もう春です。
お子さんは、気持ちを切り替えて前を向こうとしています。

反省なんてしなくていい。「運が悪かったから」それでいいじゃないですか。

運が悪かったのに、反省も何もありません。
いつまでも後ろを振り返るのはやめて、前を向いてお母様も歩き出しましょう。

お子さんは、笑顔のお母さんが一番好きなはずですから。