試験前日、戦いに赴く我が子にかける言葉は? | 中学受験相談所 副管理人アーカイブ

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このブログはそれらの部屋で書き込んだ、長文リプライの抄録です。中学受験の参考にしていただければ幸いです。

いつもご高覧ありがとうございます。

いよいよ首都圏の2024組、決戦の日が迫ってきました。

今は地方校の東京会場受験も含め、ほとんどの受験生がいわゆる前受校受験をします。ですから、「生まれて初めての受験」は、済ませている方がほとんどでしょう。

しかし、前受と本命校は違う。

5・6年前に見ていた太郎君(もちろん仮名)も、元々ガラスのハートの持ち主。周囲は「最大の懸念材料は『アガり』」とその緊張しやすさを心配していました。

1/10の入試皮切りは、受験者が殺到するS中を回避、受かりやすいK中から入りました。

結果は無事に合格。お父さんの車で行ったのですが、車中、いびきをかいて眠り、車を降りて試験場に行く時もサラリと「んじゃ、行ってくるから」みたいな感じで、ご家族は「心配は杞憂にだったようだ。意外にも本番に強い子なのかも」と思ったのですが…

2/1の都内の本命校。この日僕は太郎くんの激励に熱望校H中に赴きました。

待つこと30分くらい、お母さんと太郎君が駅方向からやってくるのが見えました。各塾の激励でごった返す(懐かしい。今は昔、ですね)校門から少し離れたところで太郎君親子を迎えます。先に気づかれたのはお母さんで、あっ、先生!と軽く驚かれた様子。太郎くんは、と言うと、目が合っても表情を変えません。

(?)
「おはよう」

そう声をかけても頷くだけ。

「よく眠れたか?」
やはり、うんうんと小刻みに首を縦に振るだけ。

「時間配分だけに気をつけてな。過去問もずっと最低点クリアしてるんだから、自信をもってな」
機械仕掛けの人形のように、うんうん、と頷きます。

「握手しよう」
手を握ると驚くほど冷たい。そして、手を握っている間も僕と目を合わせず、うんうん、と首を縦に振り続ける太郎君。

その日の夕刻、お母さんのLINEを読んで驚きました。帰途、「○○先生、いらしていただいて良かったね!」とお母さんが話すと
「えっ、居たの?僕分からなかった」

お母さん仰天して
「何言ってるの?!あなた、握手したじゃない」
「いやいや、知らない。僕は握手なんてしてない」

試験の結果は…言わずもがなでしょう。

前日に何やら不吉な事例を挙げてたいへん恐縮ですが、かように、前受と本番は異なる、という実例です。

さて、今回は「前日に子供にどう声をかけたらいいか」です。以下は関西初日の1/13の前日にお父様からいただいたご質問です。

Q
「遂に息子も本番試験に立ち向かいます。これから厳しい戦いが待っています。どこも確実などとは言えませんが、塾などからは期待されている立ち位置。そんな息子にかける言葉はどんな言葉がよいでしょう?ここまできて、父親からなんと声を掛けたらよいのやら…。

親として、難関な試験に立ち向かう子供にかける言葉をアドバイスください」

A
君を誇りに思う。そしてどんな結果になろうと、お父さんお母さんの、君への愛は変わらない。

「こんにちは。いよいよ近づいてきましたね。親御さんも、日によって『この子、全部受かんじゃね?』と思ったり、かと思えば、全滅だった時のことを想像して夜眠れなくなったり、動悸が止まらなくなったり。

大変な数日間になるかと思いますが、なんとかご家族力を合わせて乗り切ってください。

声かけですか。多分、『お前はできる』的声かけは塾でしてくれると思います。

親御さんはやはり、ねぎらい、でしょう。そして結果がどうであれ、君を誇りに思うし、どんな結果が出ても愛している、ということを伝えたいですね。

いや日本人ですから『愛している』と言うのはハードルが高いことは分かります。だからそのままのセリフを言いましょう、ということではなく、でもなんらかの形で『君への愛は結果がどうであれ、変わらない』ということを伝えて頂きたいのです。

彼ら彼女らは、親の期待を裏切るのが本当に怖いんですよ。特に一生懸命に伴走してくれた親の愛が痛いほど分かるだけに、なんとかそれに応えたい、と思っている。自分の試験結果で大好きなお父さんお母さんを悲しませたくない。そういう不安を口にする子は何人もいます。そして話すうちに号泣する子もいるんです。そして、必ず最後に『僕(私)が泣いたことは言わないでください』と加えます。『心配させたくないから』と。何と健気なのでしょう。いつも、僕は親御さんのお子さんへの無償の愛の深さ、そして、それに応える子供たちの健気さに触れる度に心が震える思いがします。(家では悪態ばかりでしょうけど)

なんだか照れくさいかも知れませんが、『ここまで苦しい道程を良く頑張った。誇りに思うぞ。結果は気にせず試験に向かえ』ということとともに、『愛は変わらない』ということを、何かで伝えた方がいいのでは、と思います」
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いかがでしょう。やっぱりハードル高いかな。

僕自身も、先日次女の共通テストに送っていった時、車内ではバカ話に終始、降りる間際にかけた言葉は、「腕時計、止まってないか?」でしたから。

こそばゆいですよね、今さら。

こういう点、英語は楽でいい。英語の次の三つのフレーズだけは羨ましいと思います。

1. I love you.
2. I'm proud of you.
3. I miss you.

どれも訳者泣かせ、というかピッタリな和訳がありません。中でもI miss youは、「寂しいよ」と訳してもいまいちピンときませんね。とりわけ最愛の人を亡くした登場人物が、その遺影やお墓の前で涙ながらに「I miss you」という場面はいつも胸を打たれます。(あえて訳せば「なんで死んじゃったの?」でしょうか)

英会話関連のサイトなどでは、2はそんなシリアスなイメージではなく、もっとライトな「やったじゃん」くらいの感じ、とありますが、映画などでハグしながら家族が子供にI'm proud of youという場面がありますね。アレです。

ハードルは高いと思います。また、普段通り感を演出したいなら、サラリと「気をつけてな」くらいがいいのかも。

でも、明日からの数日間は、家族史の中にいつまでも残り続ける1ページです。

この、前日という今日だからこそ、改まるのも有りなのかな、と思いますが、いかがでしょう?