二月の勝者になれなかったお母さんへ | 中学受験相談所 副管理人アーカイブ

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LINEオプチャ「中学受験相談所」に常駐している副管理人です。(あるいは「中学受験語り合う部屋」の管理人)

このブログはそれらの部屋で書き込んだ、長文リプライの抄録です。中学受験の参考にしていただければ幸いです。

ここに来て、個人ブログも受験を振り返る「反省会」大流行りですね。

しかし、ちょっと解せないことがあって、Twitterでも呟いたのですが、Amebaのおすすめも、Androidで一番左にスワイプして閲覧出来るGoogle discoverに掲載されるブログも、やたら「受験が成功した」ご家庭のものばかり。

たしかに、どのご家庭も順風満帆とは程遠く「山あり谷あり」「一時は諦めた」「しかし、崖っぷちからの逆転勝利」みたいな内容で、読む方は面白いし、また結果的に上手くいったわけだからそこから得られるものも多い。何より、残念だった子のご父母のブログより明るくて、こちらも元気が貰える。

いいことずくめですが、世の中、上手くいった子より上手くいかなかった子の方が割合的に多いはず。それらのご父母のブログはどこに行っちゃったんだろう…

今日は2月の16日ですから、泣いて泣いて泣き明かした子の涙もようやく乾いた頃。そろそろ、顔を上げ、前を向いて再び歩き出す時期ですね。

親御さんも、そんな我が子の様子を見てほっと胸を撫で下ろしているでしょう。そして、何がいけなかったんだろう…と自問し、つい今までの癖でスマホを左にスワイプすると、「受験生活を振り返って」の類のブログが目に付く。

(うちと同じ辛い経験をされた方のブログはないかしら…)そう思っていくつかのブログをご覧になってすぐに後悔するはず。だって、上に書いたように、上手くいったご家庭のものばかりだから… 

不思議ですね。いちいちAmebaのスタッフが読んで、「推し」を決めてるんでしょうかね…そんな暇、無いと思うのですが。

AIに読ませてピックアップさせるときになにかの指示をするのかな?特定ワードを含んだものを拾わせるとか。そもそも、上手くいかなかったご父母のブログは更新さえされていないだろうし、ブログそのものを削除したりする方もいるようですから、水面上に浮かんでこないのも仕方ないかもしれません。

いずれにしても、この世に溢れている「やりました!」「思いが通じました」、という「二月の勝者」のブログを読んでまた涙にくれているお母様に宛てて、今日はブログを書いてみました。

以下は、オプチャで「ダメでした」という辛いご報告をしてくださったお母様に宛てて書いた返信です。

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受験がうまくいかなかった時、お母様はご自分を責めがちです。「させなくてもいい事をさせて我が子を傷つけてしまった」と。

でも、僕はそれは違うと思う。

親のエゴや見栄で中学受験をさせたのなら、それはいけません。でも、ほとんどの方はそんなことではなくて、冷静にお子さんの将来の幸福を願い、それがベターだと思い、受験を決断した。

ドラマやマンガでは無い、現実世界のことですから、うまくいかないこともあります。でも、扉は叩かなければ開かれません。

勇気をもって、親子で、家族で一生懸命に取り組んだ。その勇気と努力に僕は常に心から敬意を表します。

世の中には、どんなに願ってどんなに努力しても叶わないことがあります。我々は大人になる過程のどこかでそれを知る。人によってはそれは、大学受験かもしれない。あるいは就活の時かもしれない。また、幸運なことに大人になるまで知らずに過ごす人もいるかもしれない。でもそんな人も、普通に社会人として仕事をしていれば、「人生はマンガやドラマとは違う。どんなに努力しても裏切られることがある」と思い知ることになるでしょう。

中学受験で結果が出なかった子は、一足先にそれを身をもって知ることになります。

幼い子にそんな思いをさせるのは、可哀想なことなのか。可哀想だから避けるべきことなのか。

僕は否、と思います。

昨今の日本の教育を取り巻く状況を鑑みたとき、経済的に余裕と、そしてある程度の能力があれば、中学受験という道を選択するのは極めて合理的な決断でしょう。

しかし、そこには、否応なく勝ちと負けがある。

試験ですから運不運も絡みます。

今年、偏差値63の学校を受けた子は、普通の年ならまず受からない成績でした。偏差値は6足りず、過去問も12月の終わりで25点(算数)

しかし、彼女は運が味方した。今年のその学校は算数が例年に比すと考えれないような簡単さで、ほとんどバラケませんでした。理科も易化し、その結果、彼女の得意な国社勝負の展開になりました。

間違いなくそれが勝因でしょう。彼女のジャイアントキリングの陰で、涙を呑んだ理系得意の子がいるはずです。

もはや運命の女神のきまぐれ、としか言いようがありません。

入試で結果が出なかった子達に、塾でいつも言うことがあります。「君らは、一つだけ悪かったことがある」と。みな「えっ」という顔をします。

「それは『運』だ」と。

みな、なんだそりゃ、みたいな反応をしますが、これは僕の偽らざる気持ちです。

今の塾で僕は中3を見ているので、半分、とは言いませんが、3分の1から4分の1は中学受験リベンジ組です。

中3になって話すと、みな冷静だし、その時の悔しさややるせなさ、あるいは不条理さに対する怒り、は、きちんと咀嚼して消化しています。

そして彼ら彼女らに「中学受験、しなきゃ良かったと思う?」と訊くとまず例外無く「いや、それは無い」と言います。

そんなものです。お子さんは、感謝こそすれ、お母さんお父さんを恨んだりはしていませんよ。

どうか、ご自分を責めないでください。

僕の死んだ祖父がよく言っていました。「人生、8勝7敗で上出来だ」と。

お子さんはいわば初日黒星スタートでした。でも人生は長い。これから勝負の時はいくつもある。まだ、初日じゃないですか。あと8つ勝てば勝ち越しです。

今回の「二月の勝者」が人生の勝者ときまったわけでもありません。

毎年、2月に、受験の結果が思わしくなかったご家庭とやり取りをすると、総じてお子さんの方が立ち直りが早い。でも親御さん、特にお母様が引きずっているケースが目につきます。いや、2月どころか、新学期4月になってもお子さんのかつての志望校の制服を駅で見かけてそこで涙したり…

それを嗤うのは簡単ですが、僕はそんな気になれません。そうしていつまでも引きずってしまうのは、お子さんへの深い愛情の証ですからね。

でも。

もう春です。
お子さんは、気持ちを切り替えて前を向こうとしています。

反省なんてしなくていい。「運が悪かったから」それでいいじゃないですか。

運が悪かったのに、反省も何もありません。
いつまでも後ろを振り返るのはやめて、前を向いてお母様も歩き出しましょう。

お子さんは、笑顔のお母さんが一番好きなはずですから。