「タロウって砂肝好き?」彼女が僕に聞く。

「うん、嫌いじゃないよ」

「私砂肝食べるときいつもタロウのち○ち○のこと思い出すの」

「…」

「タロウのち○ち○って食べたら絶対にこんな感じなんだろうなって」


確かにそうだろうと思う。一番近いコリコリ感だろう。

勃起したち○こを切ってもすぐに縮まるのだろうし。


彼女は大学生だった。

僕も若かった。32歳だ。

学生用1Kのミニキッチンの電気コンロで料理を作ってくれた。

決して料理にセンスがあるわけではないが

料理にチャレンジする好奇心はあったようだ。


そんな会話をしながら料理をする彼女を後ろから抱きしめる。

部屋着のTシャツは可愛いけど外に来て出るにはよれよれすぎてた。

黄色とかピンクがよく似合った。


後ろから揉み心地のある胸をつかみながらよく背中に噛み付いていた僕。


そんな会話や光景は思い出せるのに

どおしても名前が思い出せない。


その年、2002年、に僕は78人の女性とエッチした。

次から次へ、常に結果を求めて同時進行させて前に進んだ。

彼女はそのうちのの一人だ。彼女の部屋へは3回くらい通った。

それで終わった。


彼女は僕の名前を覚えているのだろうか?


どっちでもいいけど少し気になる。



日曜日のゴルフはボロボロで

おもしろくともなんともないし

その上、不思議なことは起こるし

踏んだり蹴ったりだった。


何番ホールかわからなかったが

僕はティーグラウンドで前の人のティーショットを

ゴルフ仲間とボケーとしながら待っていた。


そんな幸せそうな僕の顔から何ミリかのところを

何かがスッと通り過ぎる。シュッとかみそりで紙が切られる音だ。

振り返るとゴルフボールが力なくワンバウンド、ツーバウンドと

フルバック用ティーグラウンドへ転がっていった。


隣のホールからボールが飛んできて

僕の顔をかすって通りすぎたようだった。

そのことに周りの声で僕は気がつく。

みんなもボールが通りすぎていく姿を

一瞬みただけなのでなにがおこったのか把握しきれていない。

とりあえずフルバックのティーグラウンドに

ボールがポツンと申し訳なさそうにあるだけだった。


顔に当たったのか当たってないのか

僕はグローブをはめた左手で確かめる。

白い手袋のほうが血がついてたらすぐにわかるからだ。


頭とかぶつかったり怪我したときに

喉の奥のほうで血のニオイを僕は感じる。

その時も喉の奥で乾いた血のニオイを感じたので

ボールが当たったのか当たってないのかしばらくわからなかった。


手袋に血もついてないし

当たってないことを確認したのに

なぜ僕が怪我をしたときと同じニオイがしたのかはわからない。

「僕は生きているんだよな」と自分に言いきかせようとする。


一緒に回ってる人たちの目に僕が怪我をしているとか

そういった異常な光景は写ってないようだったし

手袋にも血がついていなかったのでとりあえず

隣のホールから打ち込んだやつにぶつくさ文句を言いながら

頭が真っ白な中、ティーショットをうった。

自分がカラマーゾフの兄弟とかに出てくる

ロシアにいる頭のいかれかけた青年に思えてきながら。


ティーショットは会心のショットなんかではなく

ションベンカーブのようなショットだった。

ロシアの頭のいかれた青年のように皆に思われたくなかったので

出来る限り紳士の僕でいようとした。

紳士でいることはたぶん楽な人生だと思う。


セカンドは気を取り直して4番アイアンで勝負。

平らな位置だし200ヤードちょっとなので

本気でツーオンを狙う僕。


おもいっきり振りぬかれたナイキの4番アイアンは

ボールの5センチくらい前をざっくりいった。

プロのトーナメントでターフがきれいにくりぬかれた。

ボールの手前か手前じゃないか違いはそんなものだ。


白いビーチのようなバンカーの真ん中に綺麗な緑のターフが飛んでいった。

白い砂と緑のターフの間からこげ茶色の土が汚らしく飛び散っていた。

ボールはわずかに20ヤードくらいころがった。


気をとりなおして次のショットの準備をする。


2ヤードくらい前に溝があることに僕は気づく。

50センチは深さがあるのだろう。

普通にコンクリートで整備された溝だ。

最近の雨で芝生の伸びが良すぎるのか

溝を覆い隠すように生えていて

すぐ近くからでないと溝があることがわからない。


普通に歩いてたら気がつかないだろう。

そこにストンと落ちている自分がイメージされる。

放心状態なままで打ったセカンドがナイスショットで

うきうき歩いてた僕が右足だけ溝にとられて

へんな転げ方をしているところだ。


かなり冷やいイメージだった。背中や方がゾクゾクしてくる。

そのゾクゾクが音が共鳴していくように少しずつ大きくなっていく。

共鳴し始めると自分ではとめられない。


自分の魂か心かよくわからないがその魂か心の部分に

「ふ~ん」という感じで力をいれると共鳴はそれ以上大きくならなくなり

だんだんと震えが小さくなっていった。


変な夢を見たときとか僕がよく使う方法だ。


ゴルフ場には割りと幽霊はいるらしい。

誰かが言ってたような気がする。


昨日のが霊的なものかどうかはよくわからない。

悪いことから何かが僕を避けさせてくれたことは事実だ。

僕はそれらをどう感じてよいのかわからない。


危ないからここにはもうくるなという意味なのか。

そんな幼稚なレベルでしか思考できない僕の脳への警告か。


霊的な感覚は怖いし悪いことに感じるものだ。

しばらくここのゴルフコースは避けようと思った。

受付に可愛い子がいたのでそれだけが心残りだ。


ジョギング3日目

筋肉痛が心地よい痛みに変わった。

朝の空気は気持ちが良い。

夜の澱んだ空気はいつから朝の透き通った空気に変化するのだろう。

今度から酔っ払って朝帰りするときは気をつけることにしよう。

たぶん最近TVでよくやってる脳のアハ体験のようなものだと思う。


朝ジョギングしてたらいろんなことを考えられる。

今まで存在してたその時間がいったいどこに隠れてたのか

不思議な気分になるけど良いことなので良い気分になれる。


30分、じっくり走って家に帰る直前に最寄のコンビ二に寄る。

たまには朝ごはんのパンを買って帰ろうと思ったからだ。

家では家族が暖かい布団の中で寝ているだろうし

朝起きてパンがあったら嫁も子供もきっと喜ぶはずだ。


石田衣良の「4teen」に出るダイの親父の気分だ。

ダイの親父はダイに殺されてしまう2,3日前に

ダイのためにお金も無いのに高い自転車を注文していた。

どんなダメ親父でもたまには良いことがしたくなるときはあるものだ。


家族が喜んでくれるだろうという自己満足が得られるだけだが

そんな自己満足に僕はちゃんと満足出来るようになった。

すごい進歩だと自分を褒め称えてみる。


性交的には昨日まみとエッチして

いつもより長く射精が感じた。

どくっどくって感じがいつもは2,3回なのに

昨日は7,8回に感じた。

僕の周りの時間だけがいつのまにか長くなっているのだ。


嫁が起きてきたので

「土曜くらいは朝ご飯くらいは楽しなよ」と僕が言うと

嫁は優しすぎる僕を怪しみながら嬉しい顔をしてくれた。


また僕は自己満足を感じる。

しばらく自己満足の世界で生きてみたいなと思う。


自己満足はホントは美しいことなのだ。

綺麗になりたいと思った。


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