日曜日のゴルフはボロボロで
おもしろくともなんともないし
その上、不思議なことは起こるし
踏んだり蹴ったりだった。
何番ホールかわからなかったが
僕はティーグラウンドで前の人のティーショットを
ゴルフ仲間とボケーとしながら待っていた。
そんな幸せそうな僕の顔から何ミリかのところを
何かがスッと通り過ぎる。シュッとかみそりで紙が切られる音だ。
振り返るとゴルフボールが力なくワンバウンド、ツーバウンドと
フルバック用ティーグラウンドへ転がっていった。
隣のホールからボールが飛んできて
僕の顔をかすって通りすぎたようだった。
そのことに周りの声で僕は気がつく。
みんなもボールが通りすぎていく姿を
一瞬みただけなのでなにがおこったのか把握しきれていない。
とりあえずフルバックのティーグラウンドに
ボールがポツンと申し訳なさそうにあるだけだった。
顔に当たったのか当たってないのか
僕はグローブをはめた左手で確かめる。
白い手袋のほうが血がついてたらすぐにわかるからだ。
頭とかぶつかったり怪我したときに
喉の奥のほうで血のニオイを僕は感じる。
その時も喉の奥で乾いた血のニオイを感じたので
ボールが当たったのか当たってないのかしばらくわからなかった。
手袋に血もついてないし
当たってないことを確認したのに
なぜ僕が怪我をしたときと同じニオイがしたのかはわからない。
「僕は生きているんだよな」と自分に言いきかせようとする。
一緒に回ってる人たちの目に僕が怪我をしているとか
そういった異常な光景は写ってないようだったし
手袋にも血がついていなかったのでとりあえず
隣のホールから打ち込んだやつにぶつくさ文句を言いながら
頭が真っ白な中、ティーショットをうった。
自分がカラマーゾフの兄弟とかに出てくる
ロシアにいる頭のいかれかけた青年に思えてきながら。
ティーショットは会心のショットなんかではなく
ションベンカーブのようなショットだった。
ロシアの頭のいかれた青年のように皆に思われたくなかったので
出来る限り紳士の僕でいようとした。
紳士でいることはたぶん楽な人生だと思う。
セカンドは気を取り直して4番アイアンで勝負。
平らな位置だし200ヤードちょっとなので
本気でツーオンを狙う僕。
おもいっきり振りぬかれたナイキの4番アイアンは
ボールの5センチくらい前をざっくりいった。
プロのトーナメントでターフがきれいにくりぬかれた。
ボールの手前か手前じゃないか違いはそんなものだ。
白いビーチのようなバンカーの真ん中に綺麗な緑のターフが飛んでいった。
白い砂と緑のターフの間からこげ茶色の土が汚らしく飛び散っていた。
ボールはわずかに20ヤードくらいころがった。
気をとりなおして次のショットの準備をする。
2ヤードくらい前に溝があることに僕は気づく。
50センチは深さがあるのだろう。
普通にコンクリートで整備された溝だ。
最近の雨で芝生の伸びが良すぎるのか
溝を覆い隠すように生えていて
すぐ近くからでないと溝があることがわからない。
普通に歩いてたら気がつかないだろう。
そこにストンと落ちている自分がイメージされる。
放心状態なままで打ったセカンドがナイスショットで
うきうき歩いてた僕が右足だけ溝にとられて
へんな転げ方をしているところだ。
かなり冷やいイメージだった。背中や方がゾクゾクしてくる。
そのゾクゾクが音が共鳴していくように少しずつ大きくなっていく。
共鳴し始めると自分ではとめられない。
自分の魂か心かよくわからないがその魂か心の部分に
「ふ~ん」という感じで力をいれると共鳴はそれ以上大きくならなくなり
だんだんと震えが小さくなっていった。
変な夢を見たときとか僕がよく使う方法だ。
ゴルフ場には割りと幽霊はいるらしい。
誰かが言ってたような気がする。
昨日のが霊的なものかどうかはよくわからない。
悪いことから何かが僕を避けさせてくれたことは事実だ。
僕はそれらをどう感じてよいのかわからない。
危ないからここにはもうくるなという意味なのか。
そんな幼稚なレベルでしか思考できない僕の脳への警告か。
霊的な感覚は怖いし悪いことに感じるものだ。
しばらくここのゴルフコースは避けようと思った。
受付に可愛い子がいたのでそれだけが心残りだ。