メンデルスゾーン「弦楽八重奏曲」 | 翡翠の千夜千曲

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      Mendelssohn: Octet / Stradivarius Summit Members (2012)

Martin Beaver [vn] Viviane Hagner [vn] Yuki(有希) Manuela Janke [vn] Sergey Khachatryan [vn] Kazuhide Isomura(磯村和英) [va] Kikuei Ikeda(池田菊衛) [va] Clive Greensmith [vc] Danjuro Ishizaka(石坂団十郎) [vc] 2012 Japan

 

 

 

 台風が接近している上に東北ではまだ雨が降り続いているらしい。追い打ちをかけるようにやってきた台風ですが、なるべく早めに去ってほしいと願っています。天才と天災は忘れた頃にやってくる?いえいえ、天災は毎年起きています。世の中の政治家も我々も企業も、本気で地球のことを考えなくてはなりません。次世代どころか、我々自身のために!

 天才と言えば、メンデルスゾーンもまた天才でした。彼の絵を見たことがおありでしょうか。実に美しいスケッチを描いた手紙やはがきを友人や家族に宛てています。それは、プロ並みの腕前です。勿論、楽器の演奏も作曲もやすやすとこなしました。

 例えば、貴方のお宅の隣に住む、高校2年生の子がこの曲を書いたとしたらあなたはどう思いますか。このオクテットは16歳になったメンデルスゾーンの作品です。ある作曲家は、メンデルスゾーンの才能は「真夏の夜の夢」で開花し、その才能の全てをこの作品に出し尽くした、と言ってのけました。無礼極まる話ではありますが、それだけ若いうちに開花したことには間違いがありません。

 青春のときめきや、大きな夢に向かう堪えきれない衝動や、煌めきばかりではなく、そのための失態も含めて愛すべき若者は、私や貴方のすぐ隣にいるかもしれないのです。そんなものを抱えてこの八重奏s曲はソナタ形式の中に息づいているのです。

 音楽学者ばかりではなく、ドイツロマン派の作曲家たちは「ベートーヴェンコンプレックス」を抱えていると言っていますが、それはメンデルスゾーンにもシューマンにもブラームスにもありました。「ベートーヴェンを越えねばならない」そういう自分自身への自ら陥る無言のプレッシャーです。つまり、この曲にはそういうものが一切ないのです。  

 さて、メンデルスゾーンについては誰もがよく知るところですが、最低限のことは押さえておきましょう。

 ヤーコプ・ルートヴィヒ・フェーリクス・メンデルスゾーン・バルトルディ(Jakob Ludwig Felix Mendelssohn Bartholdy, 1809年 - 1847年)は、ドイツ・ロマン派の作曲家で指揮者、ピアニスト・オルガニストでした。神童として幼少期から優れた音楽の才能を示しましたが、作曲家としては「ヴァイオリン協奏曲」『夏の夜の夢』『フィンガルの洞窟』「無言歌集」など今日でも広く知られる数々の作品を生み出し、またバッハの音楽の復興、ライプツィヒ音楽院の設立によって19世紀の音楽界へ大きな影響を与えています。

 メンデルスゾーンの12歳この頃のエピソードがあります。ゲーテとツェルターとの会話の中でモーツァルトとの比較をしたようですが、分かっている範囲では、最も初期の情報でしょう。

「音楽の神童(中略)は、もはやそれほど珍しいものではないだろう。しかし、この少年が即興でしていること、初見でする演奏は奇跡という次元を超えている。私はあれほど幼くしてこれだけのことが可能だとは思ったことがなかった」「あなたはモーツァルトが7歳の時フランクフルトで演奏するのを聴いたのでしょう?」とツェルターが問う。ゲーテは「そうだ」と答えてこう続けた。「(略)しかし君の生徒が既にやっていることを当時のモーツァルトに聴かせるのだとしたら、それは大人の教養ある話を幼児言葉の子どもに聞かせるようなものだよ」

 その彼も、結局はこの「ベートーヴェンコンプレックス」の亡霊につかまってしまうかどうかは次回の項で!

 

弦楽八重奏曲 変ホ長調 作品20は、フェリックス・メンデルスゾーンが1825年の秋(作曲者がまだ16歳のとき)に作曲した室内楽曲であるが、もはや習作の域を越えた古典的な完成度の高さによって有名である。

構成

以下の4つの楽章から成る。

  1. アレグロ・モデラート・コン・フォーコ Allegro moderato con fuoco
  2. アンダンテ Andante
  3. 「スケルツォ」。アレグロ・レジェリッシモ Scherzo: Allegro Leggierissimo
  4. プレスト Presto

楽器編成

この八重奏曲は、複弦楽四重奏曲という編成が採られている。すなわち、4つのヴァイオリン、2つのヴィオラ、2つのチェロである。しかし現在では、弦楽合奏用の作品として演奏されることも行われ、そのような場合には演奏者が規定数以上に膨れることも珍しくない。またアルトゥーロ・トスカニーニは、1947年にNBC交響楽団の団員を率いて本作を上演した際に、チェロパートの部分にコントラバスを重ねた独自の版を用いている。

なお、スケルツォのみメンデルスゾーン自身による管弦楽編曲版が存在する。交響曲1番ハ短調(1824年)の第3楽章「メヌエット」の代替用として編曲したものである。BISレコードから新アムステルダム・シンフォニエッタ演奏のCDや、ドイツ・グラモフォンからクラウディオ・アバド指揮、ロンドン交響楽団演奏のCDなどが発売されている。

※ 以前の記事

① アレクサンドラ・ドヴガン メンデルスゾーン「ピアノ協奏曲」第1番

② フルートの出番です㊱ メンデルスゾーン「フルート協奏曲」

 

 

Octet, String Symphony, 11, : I Musici

Mendelssohn (1809-1847) 

メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲、シンフォニア第11番

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音楽史上稀に見る早熟の天才であったメンデルスゾーンは、10代のうちから数々の名曲を生み出しました。16歳のときに作曲された弦楽八重奏曲は、そうしたメンデルゾーン初期の傑作のひとつです。本格的な交響曲に取り組む前の習作に位置付けられる『弦楽のためのシンフォニア』にも、10代のメンデルスゾーンの非凡な作曲技法を見出すことができます。天才少年メンデルスゾーンの作品をイ・ムジチ合奏団の透明感溢れる瑞々しい演奏で楽しむ1枚です。(メーカー資料より)

【収録情報】
メンデルスゾーン:
1. 弦楽八重奏曲変ホ長調 Op.20
2. 弦楽のための交響曲(シンフォニア)第11番ヘ長調

 イ・ムジチ