フルートの出番です169  ミスリヴェチェク「6つのトリオ」 | 翡翠の千夜千曲

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   Josef Mysliveček - Trio for Flute, Violin and Cello in B-Flat Major. {w/ score.}

 

 

 

 古典の楽譜ではよく起きる間違いがあります。ミスリヴェチェクという作曲家も比較的多作家で、作品番号の付いているものもあればないものもあります。動画のタイトルを見てください。当初の画面の右上にop.1の文字があります。タイトルは、Trioでフルート、ヴァイオリン、チェロの楽器指定があります。

 これを頭に入れて下の資料を見てください。

・ 6つのトリオ・ソナタ 作品1(ハ長調、イ長調、ニ長調、ヘ長調、イ長調、変ホ長調)

・ 6つのフルート三重奏曲 作品5(ト長調、ハ長調、イ短調、ホ短調、ニ長調、変ロ長調): 

 ハ長調とニ長調は紛失

 トリオ・ソナタにはBの調は存在しませんが、6つのトリオには6曲目にBの調があります。他にフルートが絡む似た組み合わせは見つかりません。従ってこの曲は、フルート三重奏曲の6曲目でop.5だと言うことになります。なお、ヴァイオリンとフルートの入れ替えや編曲はよくおこなわれることです。ついでですので、チェロパートはファゴットなどでも代用できます。

 この楽曲ばかりではなく、古い楽曲ではこういうことがよくおきますので、複数の資料や前後の他の曲との比較、当時の作曲様式などを良く調べてみてください。

 ヨセフ・ミスリヴェチェク(Josef Mysliveček (1737年ー1781年)はチェコ出身のオペラ作曲家でした。主にイタリアで活躍しました。この人物と意外な人物に接点があります。

 プラハで双子として生まれる。父親から粉挽き職人となる訓練を受けた後、プラハ大学で哲学を学ぶが、学業を放棄して1760年代にヴェネツィアに留学し、ジョヴァンニ・バッティスタ・ペシェッティに作曲を師事。その後はイタリアに定住して、「神々しきボヘミア人」と呼ばれて有名になった。

 最初のオペラはベルガモにて1765年ごろに初演。その直後に、《ベレロフォンテ》がナポリで大成功を収め、イタリア中の劇場から委嘱が殺到。1770年にボローニャでモーツァルト青年と出会う(両者の作曲様式の類似点はつとに知られたところである)。モーツァルトは、しばしば私信の中でミスリヴェチェクについて称賛の念を送り続けた。

 ミスリヴェチェクの名声はイタリアの外にも広がり、1770年代にはミュンヘンでたくさんの作品が上演されている。しかしながら最後のオペラは不成功に終わった。ローマで貧困のうちに死亡した。

 こうしてみると、いかにモーツアルトがヨーロッパ中を旅していたかが分かります。行った先々で吸収すべきは吸収し自分の作品にも取り入れているのです。おそらく、鋭敏な耳はそこで行われている音楽的な行為から自分の糧になるものは瞬時に見抜く力をもたらしているのです。

 ミスリヴィチェク作品の多くで際立つのが、独創的なリズム語法である。現在、モーツァルト特有のリズムと考えられる数々の音楽語法は、そのほとんどがミスリヴィチェクの発案によるものである。

 このリズム語法が如何なるものかは実のところ私は知りません。少なくとも作曲家としては前期であろうこのトリオからそんなものを感じ取ることはできません。敢えて取り出すと、穏やかな語り口から、瞬時に立ち上がるテンポのの良い音楽はモーツアルトにもよく見られます。ミスリヴィチェクの作品には、題名に6つの・・・というタイトルが使用されているものは実に多い。以下は、6つのシンフォニアです。

 

    

       Josef Mysliveček Symphonies Nos.1-6

1. No.3 in F major 0:00 2. No.5 in B flat major 8:40 3. No.6 in G major 19:57 4. No.4 in D major 28:37 5. No.2 in A major 37:32 6. No.1 in C major 47:27

 

 この作品は、ミスリヴェチェクとしては後期の作品になりますが、モーツアルトが心惹かれるかもしれないと思う要素はあります。今日は、フルートの日なので深入りはしないでおこうと思いますが、少し耳に入れてもらえれば幸いです。

 

 

※ ムラマツフルートの解説は第1巻の3曲目について解説してあります。

 

ミスリヴェチェク、ヨゼフ/6つのトリオ 第1巻 (I-III)

Myslivecek, Josef SEI TRII, VOL.1 (I-III)

<解説>
ヨゼフ・ミスリヴェチェクはプラハ近郊の生まれで、前古典派から初期古典派にイタリアのヴェネツィアで活躍したオペラ作曲家、ヴァイオリニストです。この「6つのトリオ」[G.C.a.e.A.B] はイタリアのモンテカティーニ・テルメ市立図書館の手稿譜を基に校訂編集された2分冊の新刊です。この第3番は急―緩―急の3楽章構成です。第1楽章 Allegroは萌芽期のソナタ形式で書かれ、第1主題 [a] は寂し気な旋律で歌い、それに第2声の対旋律が寄り添い、3連符楽句を繋ぎ合わせ、第2主題 [C] は明るく6連符で飾り立てた旋律が模倣します。展開部風の経過句(4小節)は再現部主題 [a] を呼び込み、変奏されます。第2主題 [a] は原調に戻り、6連符主題が次々と模倣して繋がります。第2楽章 Larghetto も萌芽期のソナタ形式で書かれ、第1主題 [d] は哀愁のアリア旋律を歌い、第2主題 [F] は装飾音付旋律が明るく戯れます。展開部風経過句 [F](4小節)を経て再現部 [d] に入り、第2主題 [d] は原調に戻ります。第3楽章 Presto も同様式で書かれ、第1主題はジーグ風分散和音動機 [a] が模倣し合って躍動し、第2主題 [e] 楽句は強弱の対比を強調します。経過句 [C] から再現部 [a] で、同様に展開します。(解説:佐野悦郎)

 

ミスリヴェチェク、ヨゼフ/6つのトリオ 第2巻 (IV-VI)

Myslivecek, Josef SEI TRII, VOL.2 (IV-VI)