旧ルールでも記事にしている言葉です。旧ルールでは平仮名表記一択であったものが、新ルールでは表記を分けるようになりました。
どう使い分けるかといいますと、日本語としては「馴」「熟」「狎」で表記できる場合は平仮名表記であり、「慣れる」だけが表記変更となった旨、用字用例辞典に記載されています。
そこで辞書を見てみますと、「ナれる」で検索しますと、三つの項目がヒットします。ええ、「慣れる」と合わせたら一つ足りませんね。しかもその三つがどうなっているかというと、「狎れる」「慣れる/馴れる」「熟れる」です。用字用例辞典で書き分けるべきものが一つの項目に!!!
というわけでまず簡単なものからということで、「狎れる」を見てみますと、意味は「親しくするあまり、礼儀を失した振る舞いをする」(デジタル大辞泉より)ということです。これは用字用例辞典の用例にある「恩愛になれて礼を失する」の場合ですね。
次に「熟れる」を見てみますと、意味は「食物がほどよく発酵するなどして、味がよくなる。熟成する」「腐る」とあります。こちらは用字用例辞典の用例にある「みそがなれる」の場合ですね。(意味は全てデジタル大辞泉より)
では最後に問題の「慣れる/馴れる」ですが、以下にデジタル大辞泉より意味を引用します。
1 その状態に長く置かれたり、たびたびそれを経験したりして、違和感がなくなる。通常のこととして受け入れられるようになる。「その土地の気候に―・れる」「移動する車中での睡眠に―・れる」「彼女の気まぐれにはもう―・れた」「住み―・れる」
2 経験を重ねて、そのことがうまくできるようになる。習熟する。「患者の扱いに―・れる」「―・れた手つき」「旅―・れる」
3 道具などが、からだになじむ。「―・れた靴で出かける」「―・れた万年筆で書く」
4 (馴れる)
ア)その人に対して、違和感がなくなる。その人に親しみの気持ちをもつようになる。「子供が家庭教師に―・れる」「新しい上司に―・れる」
イ)動物が、人間に対して、警戒心などを抱かなくなる。「人に―・れない馬」
御覧いただいたように、意味の4は「馴れる」である旨記載があります。そして念のためこの意味を用字用例辞典の用例と突き合わせてみますと、アと「なれ親しむ」、イと「猫がなれる」は一致しており、用字用例辞典における使い分けも辞書の区分と同じで間違いないかと思われます。
ただ、この4の意味については、個人的にずっと「慣れる」の表記であるという認識だったため、今後しばらく非常に苦労しそうです……。
あと、これは最近私は気づいたんですが、日本速記協会の新旧対照表では「なれる」が「慣れる」に変更になった分のみ記載があります。それで、新旧対照表を見ただけでは「なれる」が全て漢字表記になったのかと思ってしまう可能性がある――というか私は完全にそう思っていたんですが、用字用例辞典を見ると、ちゃんと「慣れる」の下に「なれる」という項目が記載されています。
「あわせて」なんかもそうなんですが、きちんと用字用例辞典を見ないとそういう間違いも生じ得ますので、大変注意が必要です。