最初も最後も読みは「ウタう」で、辞書では一つの項目で書かれている言葉です。用字用例辞典で平仮名表記するのは、そのうち「謳」で表記できる場合です。名詞のときは以前書いた「歌or唄」の記事のとおり「唄」の表記を用いることもあるのですが、動詞の場合は用いません。
その使い分けは、用字用例辞典の例を一部引用しますと、
例)民謡を歌う。
条文にうたう。
謡を謡う。
ということです。
会議でよく出てくるのは、私の経験では平仮名表記の「うたう」です。最初はよく間違えていましたが、結構出てきますのですぐに覚えられたような気がします。
反対に、全く出てきたことがないのは例の最後の「謡う」です。これは用字用例辞典には上記の例しか記載がないのでよくわからないかと思いますけれども、辞書を調べると、補説で、「謡曲をうたう場合は多く「謡う」と書く」(デジタル大辞泉より)という記載があり、謡曲の項には「能の詞章・脚本。また、それに節をつけて謡うこと。謡 (うたい) 」(デジタル大辞泉より)と記載があります。つまり、能のときのみ「謡う」を用いるようです。上記の用字用例辞典から引用した例も、振り仮名が振っていないのでわかりづらいですが、「謡 (うたい) を謡う」で能の関係のことですね。非常に限定的なので、まず出てくることはないでしょう。
ということで、この表記で注意すべきは、「歌う」と「うたう」の間違いだけでよいかと思います。
ちなみに、「歌う」のときは、用字用例辞典には表記の例外が一つ記載されています。それは「歌うたい」です。恐らくですが、ルールどおりですと、以前記事にした「指さす」と同様に同じ漢字が並んでしまうからではないかと推測しています。まあ、これもそんなに出てくることはないですね。