浦江塾「水辺の妖怪譚」に言寄せて | 晴耕雨読 -田野 登-

晴耕雨読 -田野 登-

大阪のマチを歩いてて、空を見上げる。モクモク沸き立つ雲。
そんなとき、空の片隅にみつけた高い空。透けた雲、そっと走る風。
ふとよぎる何かの予感。内なる小宇宙から外なる広い世界に向けて。

2017年10月15日(日)の
日本民俗学会年会での発表が
気になるところですが、
まずは浦江塾での
10月7日(土)の発表
「水辺の妖怪譚―堂島蔵屋敷の狸騒動など―」が
先です。
  ↓ここをクリック
https://ameblo.jp/tanonoboru/entry-12314209712.html

 

朝からPowerPoint版を
手直ししていて、
ようやく、エンディングテーマを
思いつきました。
下地の写真は、
堂島中津藩蔵屋敷跡です。
前方に架かるのが玉江橋、
先の中之島には大阪国際会議場が見えます。

写真図  エンディングテーマ

事の発端は
堂島川の精霊流しでした。
流されるのは、どなたなのでしょう?
水辺には
都で射落とされた
鵺が漂着しました。
水辺からは
風の神が送られました。
天神祭の橋の下には
大江山からのひもじがる鬼が出張してました。
水辺の蔵屋敷は
狸の住み処でもありました。
今回は福島近辺の水辺に
異界を探訪しました。   (おしまい)

 

今回は、妖怪オムニバスです。
画像だけのもあれば、
数コマに亘るのもあります。
青森のネブタの作り物もあれば、
「餓鬼草紙」の画像もあります。
無いのは現代の創作された妖怪です。

 

もっとも、水辺の蔵屋敷の
狸騒動も
原作の小説・島本久恵「長流」を仔細に読みますと、
次の記述にたどり着きます。
創作の手が加わっているようです。
◇そこで与平にやっとして、
 「わてがいまはなしたのも、
  つまりそのにわかで見たんや、
  そやのうて何しに分りまひょ、
  こっちが治三公で向うが狸やがな、
  わはははは、わははは」

 

「にわか」とは俄狂言です。
即興の笑い話です。
今回はネタ晴らしをしてしまいました。
噂話や笑い話といったジャンルは、
真鍋昌賢『浪花節』(2017年、せりか書房)が、
そうであったように、
切り口を、演者、書き手、話者に焦点を絞れば、
じゅうぶん民俗学の研究対象になります。
「昔」のお話でほったらかすのはもったいない。

 

文芸性を帯びた書き物をも
研究対象とするならば、
妖怪譚など
まだまだ発掘されそうです。
いずれ中之島図書館所蔵*『浪華奇談』を
テキストに取り上げてみたいものです。
 *『浪華奇談』:拙稿「翻刻『浪華奇談』怪異の部」
        『大阪府立図書館紀要』第 36 号
         2007年3月

 

究会代表
『大阪春秋』編集委員 田野 登