私の専門である深層心理学について、他の2つのブログにて理論を展開しているのですが、少し話が難しいということで、入門編となる話を行うようにしてみます。しかしながら、河合隼雄博士による名著、『ユング心理学入門』培風館 が既に入門編のスタンダートとなっておりますので、先んず、この名著を購読してから、本稿に戻ってきていただければ幸いです。かといって、入門書である河合隼雄博士の学説が難解だという現代的な意見もあるでしょうから、その点も考慮しつつ、ネット社会の文章を目指し、進めていこうかと思います。

 

そして、このブログに書いてあることが理解できたからそれで満足するのではなく、是非ともユングの著書にも目を通していただきたいです。全集でなくてもいいですから、優れた日本語の訳書がたくさん出版されておりますので、入門編が終われば、次に「マスターコース」に進んでいただき、余裕があれば独自の理論を展開していただきたいです。それが私からの願いです。

 

さて最近、深層心理学もよく知られた学問となりまして、うれしいことですが、深層心理学をまだ誤解されている部分も多く、その意味で、何か書いてみようと思ったのがきっかけです。私は経営学の専門家でもありますが、この分野での専門家でもあります。深層心理学の話は神話や物語、哲学に由来することが多く、これが本当に心理学?と思われることがほとんどかと思いますが、ここでの話を信じるか信じないかは読者次第となります。一応、読者が何かを思えるようなものにしていこうと思います。

 

そもそも深層心理学は3つに類型化できます。

 

1:精神分析(フロイト派)

2:個人心理学(アドラー派)

3:分析心理学(ユング派)

 

世間様の一般的な傾向として心理学=精神分析と理解されている傾向にありますが、深層心理学を専攻する専門家の間で精神分析と耳にすると、「フロイトの学説」を想起します。これはいわゆる布置の作用がそうさせるのですが、この布置に関してはまたのちに解説します。そして私はどこの学派に属するかですが、私はユング派に属しております。従いまして、フロイトとアドラーの外向型と内向型をうまく統合化させたような学説を支持しておりますので、これから展開される理論も当然のごとくそのようなものになります。

 

では、とりわけユング心理学とはいったいどのような心理学をいうのかについてなのですが、これは皆様方が想像しているような心理学とは違うと思われます。一般的に心理学というと、心理状態が健康な人を対象とするものと思われがちです。例えば、赤信号はみんなで渡ると怖くないという現象であるとか、男女の恋愛感情を探りあうなどは心理学の話としてよく目にしますが、このような心の状態が健康な人から生まれた理論ではないのが深層心理学の特徴であります。深層心理学ですから、上記3つの全ての学派に共通する事項です。では、どのような状況から深層心理学が生成されたのかというと、今でいう統合失調症の患者を治療することを目的として確立された学問であります。これが現在の心理学の基礎を作った学問の素材であり、皆様方の思う心理学と大きく異なるであろうとされる部分です。このようなことから、深層心理学の教科書を読んでもさっぱりと理解できないどころか、逆に心が苦しくなることもあり、心理学者や心理療法家を目指す人以外には敬遠されがちな学問ですが、深層心理学は現在の心理学の核心部分といえる学問であり、それ故に彼らの主張が理解できれば、新たなる心理学の確立を目指すこともでき、役に立つことは大いにあるかと思われます。

 

そして重要なのは深層心理学では「無意識」なるものが発見されたことです。深層心理学ではこの無意識を探求していくこと、そしてこの無意識とその上層部分に位置する意識の中心にある「自我」との統合を目指すことが目的であり、この自我と無意識とが統合化された状態を、「個性化」、ないし「自己実現」と呼ばれております。これが深層心理学、とりわけユング派においては窮極の目標となります。この個性化に向けて、これより長い旅が始まります。少し辛いかもしれませんが頑張って読んでいただければ幸いです。

 

ご高覧、ありがとうございました。