研究機関に勤めている研究者には二つの大きな研究テーマを持つ人が多いです。私もその一人でありまして、一つは答えの出る研究テーマ、もう一つは研究する主体が死ぬまでに答えは出ないテーマです。例えば、私の「地域の個性化」という研究テーマは答えの出る研究テーマです。このテーマに沿って私は具体的に仮説の検証をし、ポーターのクラスター戦略論などとそれこそ「差別化」しているわけです。もう一つの、私が死んで以降も答えがでないであろう研究テーマというのは、今まさに書いております「地域における違いの原因は何か?」についてです。

 

私の研究生活の第一番目の研究テーマは実に、この後者の研究を始めようとしたのがきっかけでありました。当然、そうとは知らずにです。思い出せば、近畿大学の大学院、博士前期課程の大森研究室に入室して一番最初の発表が何であったかといいましと、『京都企業の経営者の出身地と経営手法のあり方について』と題して発表を行ったのが私が研究者としての第一号の発表でありました。懐かしいですね。これは入室して初日の発表のときです。若いからこそできる発表の内容だと思います。結果としては、当然のごとくボツです。なぜかというと、学生、特に修士号の取得を目指すものは、次の博士号取得につなげるためにも、修士論文として結論を提示しなければならないからです。その結果を受けての博士論文ですから、研究室の主任指導者としては当然の解答であります。具体的にはどのような事を主任教授から指導されたかというと、「答えがでない研究テーマは、弟子を持てるようになってからにしなさい」と言われ、研究機関に所属して一日目の私の率直な感想は、「ヘェ〜!」でした。それ以上でも以下でもありません。言葉にならなっかたのを鮮明に覚えております。

 

では、何がいけなかったというと、これは既に申し上げておりますように、答えが出ないからというのもあるのですが、それ以上に、地域性が企業経営者の意思決定に作用するなど、その当時の経営学ではありえないとされていたからです。しかながら、当時の主任教授は意見としては面白いとして評価し、私が将来、教授の職に就けるようになったならば、その時にこのテーマで研究しなさいとの言葉であります。その後もコソコソと研究を続け、仮説を発見できるようになり、意見を聞いてもらえるようになるまでに20年かかりましたから、実に、当時の主任教授の見立てが正しかったかを物語る事例であります。

 

このように、今現在では地域による意思決定の違いについて市民権をえてきたような気がしますが、しかし、その度を超えて、特定の都道府県民についてのあまりにも断定的な発言をする人もいたりして、困っていることもあるのですが、しかし、地域と意思決定の問題は未だスタートラインに立ったばかりなので学術的にはわからないことばかりなのですが、現実的には目に見えて明らかなる違いがあることに私の研究者としての研究熱を煽る結果となっており、これに理解を示してくれる人が多くなってきたことに感謝をしております。

 

結局のところ、特定の地域において、その地域独特の意思決定の方法があるのか?という問いに関しては、私の音楽活動における各地域での意思決定の方法に照らし合わせると、現段階では、やはり、「地域独特の意思決定の方法がある」という命題に落ち着いております。そして、これを統一する方法はあるのか?という問いについては、「統一できなければ既に日本は崩壊している」と言わざるをえず、では、地域別の意思決定の方法と、その個別論を統合する理論は何かをしめせ!となるわけですが、この点についてを今後に、ゆっくりではありますがやっていこうかと思います。

 

前述二つの命題を理解して行く上で、先んず、地域の個性化について理解することが必要でありますから、この点について、ポーターのクラスター戦略論と比較しながらじっくりと行おうと思います。

 

ご高覧、ありがとうございました。