歌詞をアルバムにつけてくれないミュージシャンはごまんといますが、やっぱりそのミュージシャンのファンだったら、できれば歌詞を付けてリリースしてほしいものです。


昔、David Bowie に半端なく入れ込んでいた時、Station To Station がリリースされました。

何しろその時代は、好きなミュージシャンのアルバムがリリースされたら、それこそ擦り切れるまでレコードを聴き込んでいましたから、英語力が高かろうが低かろうが、歌詞は音声として耳で憶えてしまうわけです。



ノスタルジックなノイズたち ノスタルジックなノイズたち



歌詞だけじゃなくて、その発音の仕方や息継ぎまでね。

もう、とことん入れ込んでしまう。


でも、Bowie はレコードに歌詞なんて載せません。

あれほどメッセージ性の強い歌詞を創っているくせに。


いつからだろう、載せ始めたのは。

Heroes からのような気がする。


というわけで、Station To Station に話を戻すと、オリジナルのイギリス盤には歌詞載せてませんが、日本盤には歌詞がついているわけです。


なんで日本盤だけ歌詞が付いているかというと、これが聞き取りなんですね。

レコードからの、日本人による。

でも、明らかに聞き取り間違いや聞き取り不能が多い。

英語力の貧弱な学生が聞いても、あれ、これ違うんじゃない、という間違いが。


憶えているだけでも、タイトル曲の導入部分の、The Return Of The Thin White Duke ~ が、The Return Of The Clean White Tube ~ になってましたからね。

曲のテーマとなる主人公のキャラクターを聞き取り間違っているという・・・。


しかも、ところどころ、というか、けっこうな数で " ・・・・・ " と書いてある個所が出てきます。

つまり、そこは聞き取り不可能ってこと。


それに輪をかけるのが、これを対訳して意味を読み取ろうとした某音楽雑誌。

もうメチャクチャです。

もともと難解なところがある彼の歌詞が、想像を絶するような混沌状態になるわけです。


それでもそこからイメージを膨らませようとしていた僕ら。

まあ、そういうのも楽しかった。


そんな日々、ふと立ち寄った銀座のヤマハ本店。


なんとなく楽譜売り場を見ていたら、Bowie の楽譜が売ってます。

ここは輸入盤の楽譜でけっこうな掘り出し物が多かった。


表紙は Station To Station 、裏表紙は Low のジャケット。

その2枚のアルバム用の直輸入盤の楽譜です。


中身を見ると、なんと完ぺきな歌詞が載ってるじゃありませんか。

ヘンテコな聞きとった歌詞ではなく、間違いなくオリジナルのもの。

ワーナーブラザーズのコピーライトで、Words By David Bowie と書いてあります。

ボウイのステージ写真もたんまり。


この世にこの2枚のアルバムの正確な歌詞があったのか、という妙な興奮状態に捉われ、値段はそこそこ高かったものの、誰にも買われないうちにすぐ手に入れなくてはと、その場でレジに向かう自分。


今ではネット上で正しい歌詞をいくらでも検索できるし、再発やリマスターものにはなぜかちゃんとした歌詞がついているけれど、当時はそんなことはめったに起きません。


その時の忘れ難い興奮状態の記念に、その楽譜は今でもちゃんと取ってあります。

もうすっかり赤茶けているけれど、大切な思い出です。

今日はようやく一息つきましたが、ひどく暑くて湿度の高い日が続きましたね。
これはさすがにボディブローのように効いてきます。

冷房をしっかりかけた部屋でないとカラダが重く、とはいえそこに居続けるとカラダが冷えてくる。
寝てても寒かったり暑かったりで、睡眠時間もしっかり取れず、眠りの質も決してよくないです。
だから土日を超えてもなんだか疲れが取りきれずに、また仕事へ。

カラダが疲れていると、音楽もゆっくりくつろいで聴けてない気がします。
ブログを書く気力も落ちがち。

好きな音楽なしではとっても乗り切れません、こんな気候は。

ところで。

その音楽を好きになるまでに、もっと言えばその音楽の正体をつかむに至るまでに、慣らしの時間が必要な音楽がありませんか。

一度聴いただけでは空気をつかむようなものから、ポジとネガが入り混じってどちらに軸足を置いて評価すべきかわからないものまで、その理由はさまざまです。

特にこれだけ頭がうだる日々が続くと、理性で分析するのが困難。
このアルバムはそんな1枚。

Kanye West "Yeezus"

Yeezus/Def Jam

¥1,612
Amazon.co.jp

もともと自分にとって HIP HOP はあんまり聴かないというか、むしろ苦手というかほぼ嫌いなカテゴリーですが、彼の前作 "My Beautiful Dark Twisted Fantasy" は唯一の例外的なアルバムで、そのカテゴリーを超えた優れたサウンドスケープとHIP HOP色の比較的薄い歌が、非常に存在感の強いロックとして、自分の耳に溶け込んでくれました。
エネルギー感の強い音楽を聴きたいと思った時、けっこう選ぶ回数も多かった気がします。

ここでリリースされたニューアルバム。

前作をイメージして聴き始めると、けっこう違和感が大きいですね。
前作が、音楽としてある種聴き易さを指向してくれていたとすれば、このアルバムは非常に粗削りな素材をそのままぶつけてきたような印象です。

硬くゴリゴリした物体があったり、ヌルッとしたゼリー状の音に取り囲まれたり、ここに収録されている曲たちは、とても振れ幅が大きい。
それはそれで刺激的なのだけど、自分の中で1曲1曲をなかなか消化できません。
個別の曲を消化できないということは、アルバムを消化できていないということ。

どことなく殺伐としていて、なじみにくい、リスナーを突き放したような、とっつきにくさ。
前作と違って、作品として創り込もうという意思が希薄ですね。
おそらく、意識的に。
良し悪しは別にして。

それが今作でのカニエの意思なんでしょう。





ウイルキンソンのジンジャーエール。
$ノスタルジックなノイズたち

飲んだことのある人ならわかると思いますが、このジンジャーエールは、普通の清涼飲料と思って飲むと後悔します。
ビリビリビリ、ギンギンギンと痺れます。
ああこれが本来のジンジャーエールなんだな、と思わせる辛さ。

ペットボトルを全部飲もうと思っても、辛くて自分には飲めません。

そのジンジャーエールのような感触の、カニエの新作。

前作が耳当たりの良いカニエだったのか、今作がハードな創りなのか。

いまだに消化しきれません。
ロックとは猥雑であり、いかがわしさが大きな魅力だった。

そういう感覚を改めて思い起こさせてくれる快作。

Primal Scream の最新作 "More Light"

More Light: Special Edition/First National Imp

¥2,810
Amazon.co.jp


挑戦的で、背徳的なグルーブ。
ギラギラして執拗なリフレイン。
エキセントリックに鳴り響く管楽器。

それらが有機的にからみあって、えも言われぬテンションを産み出す。

最近ではこれだけ魅惑的で存在感の強烈なロックは珍しい。

Vampire Weekend や Local Natives も今年は素晴らしいアルバムをリリースしてくれたけれど、彼らは言わば優等生ロック。
クレバーで整理されていてメランコリックとダイナミズムの非の打ちどころがない完成度。

このアルバムはその真逆のベクトルにいますね。
ともに完成度が高いことを除いて。

これでもかと挑戦的に投げかけられる、音の洪水といかがわしいテンション。
なんだかからだの中がむずむずしてくる。

思索や理性を支柱に持つロックが Vampire Weekend たちだとすれば、もっといえば Radiohead もそうですね、これはに身体の奥底の本能付近にあるなにかに働きかけるロックであるような気がします。

いかがわしくて背徳的であればなんでもありの、バラエティ豊かな曲のラインナップ。

それでも、そこはかとなく理性でコントロールされているような気もするのも不思議。





4:00前後に訪れる急な曲調の変化が好きです。なんともいえない浮遊感が。




それでも唯一の疑問が、最後の曲、 It's All Right , It's OK 。
これだけアクが抜けて、ノーマルなロックンロールに聴こえます。
彼らでなくても創れそうな、普通に良い曲。
曲の最後に乗ってくるギターソロだけがそれっぽく聴こえますが、この曲が、なぜこのアルバムの最後にあるのかが、とても不思議。

最後に毒気を抜くという、彼らにとってのバランス感覚なのかな。
自分としては、Relativity から Walking With The Beast の流れで終わってもらうのがベストだったのだけれど。

それでもこのアルバムが傑作であることに影響するほどの問題ではありません。

素晴らしい。


The Beatles のアルバムで何が一番好きですか。

この問いへの答えは、千差万別、本当に人によって違います。

一番大きな理由は、彼らほど幅広いファン層を持っているミュージシャンはいないから。
それだけ彼らの音楽の聴き方や、どの部分を評価するのかに幅が出ると言うことです。

もうひとつの理由は、そのアルバムが創られた時期によって、音楽性がけっこう違っているから。
どれが良い悪いではなく、その時に創りたい音楽をやったら違ってきた。

だから自分の中でも、どれかひとつを選びだせ、と言われても即答は難しいです。
それでも一瞬のためらいの後、このアルバムという答えが出てきます。

The Beatles "The Beatles" 。
いわゆるホワイトアルバムですね。

The Beatles (The White Album)/Capitol

¥3,640
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神経むき出しのようなギターとスカスカなアレンジで構成されたジョンの曲たち。
グッドメロディを優しく歌うポールの曲たち。
ノスタルジックがただようジョージの曲たち。
一息つく緩衝材のようなリンゴの曲たち。

住み分けができているというわけではないけれど、曲ごとにメンバーの個性が際立ち、それぞれが明確な音楽像を持っています。
ヒリヒリとしたむき出しの彼らが、音楽をやっている姿がそのまま出ていて、余計な虚飾がない。

だから結果的に、他のオリジナルアルバムは「グッドメロディ・グッドポップロック」にベクトルがフォーカスされているとしたら、このアルバムにはそういった集合体としての明確なベクトルはありません。

逆説的ですが、そのためにアルバムが強烈な個性を放っています。

自分が好きなのは、やっぱりジョンによるアバンギャルドポップたち。
ギターの音がたまらない、ドラムの音が素晴らしい。
レボリューションNo.9など、当時の音楽シーンでは画期的な構成だったのだと思うけれど、今の時代に強く響くのは、音自体の存在感に溢れている曲たちです。

ジョン作。この2曲の流れが特に好きです。もはやオルタナティブ。



ポール。

ジョージ。


しかし、曲ごとにこれだけ楽器の音色が違うアルバムも珍しいですね。
それだけ、曲ごとにその曲のオーナーの色が強く出ているということでしょう。


最近、ちょっと新譜から足が遠のいています。
大所のリリースがひと段落したのと、アベノミクスが起こしている現象、将来への漠然とした不安、それらがアルバム購入にブレーキをかけている感じ。

皆さん、給料やボーナス上がってますか?
はっきりと実感できる人は、一握りの人たちなのでないでしょうか。
もしくは、ようやく会社の業績が最悪から持ち直し始め、今までが悪すぎただけの人か。

アベノミクス効果については、賃金に反映されてこないどころか、業種によっては更なる賃下げに見舞われていますよね。
自分の会社も事業構造的な問題が大きい上に、定年再雇用制が悪い方に働いて、年代が上の世代の賃金カットの波が押し寄せてます。

アベノミクスがもたらした現象。
円高で非常にリーズナブルだった輸入盤が、円安でジリジリと高くなってます。
体感的に2割くらい上がったでしょうか。
結果的に国内盤が高く見えにくくなってますけどね。

これも新譜が買いにくくなっている原因。

株高などがもたらす資産高効果は、音楽、とくにロック聴く人はあんまり関係なさそうですし。

とは言っても、聴きたい音楽は買うのが、自分の絶対的なポリシーです。

買えないで借りるくらいだったら、聴かない。
然るべき対価を制作者に支払って、音楽は聴くべきであると思っています。
それは音楽が提供される形態がディスクからデータに代わろうが、その音楽を聴く形態がどれほどに自由になろうが、同じこと。

アルバム1枚聴く対価が、JRの初乗りやペットボトル飲料1本分にしか過ぎない音楽って、本気で聴くわけないじゃん、と思ってます。

アルバムを買って最初はピンと来なくても、何度も聴くうちに好きになり始める、そのプロセスも音楽の醍醐味ですよね。
このプロセスには、やっぱり自分がお金を払ったという事実がエネルギーとして求められることがありますから。

なけなしの小遣いをはたいて、どれをいつ買うか考え抜いてアルバムを買った学生時代。
あれが音楽を聴く初心だとしたら、大人買いによってすっかり忘れてきた僕たち。

それを取り戻すチャンスなのかもしれません。
もう一度、大事に音楽を聴いてみよう。