ジミーペイジによる新たなリマスターシリーズもようやく最後のスタジオアルバムシリーズまでたどり着きました。


パラパラと買ってきましたが、結局一番欲しかったのはこれなんですよね。


Led Zeppelin "Presence"

Presense[Deluxe CD Edition]/Atlantic
¥2,711
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彼らのアルバムも、聴くほどにアルバムごとにサウンドスケープがけっこう違っていることがわかります。

おそらく、もっとも研ぎ澄まされムダのないソリッドな音とサウンドスケープを持つのが Presence でしょう。


最近のインタビューを読むと、ジミーペイジはこれを究極のギターロックにしたかったようです。

ロバートプラントが事故で骨折したからではなく、初めからそんな計画だったようで。


もともとがソリッドな音に惚れていたので、リマスタリングされた音でより一層その硬度感に磨きがかかることを期待していました。


自分がこのアルバムに特別な感慨を持つ理由が、その昔、オーディオユニオンの試聴室で、JBL4343という巨大高級スピーカーでこのアルバムを聴いた時のショックです。

もちろん再生するプレーヤーもアンプも超ド級のもの。

オーディオ環境だけで、これほどまでに聴こえてくる音が違うものなのか。


この低音のボリュームはなんなのか。

突き刺さるギターの音の迫力はなんなのか。

圧倒的なまでのパワーの余裕、空間表現力の素晴らしさ。


そして、家に帰って自分のシステム(それなりのものを使っていたのに)で聴いた時に感じた、圧倒的な差。


たかがCDのリマスターごときで、その圧倒的な音空間が蘇るわけもないのに、やはりあのインパクトを無意識に期待していまう自分がいます。


だからどうしてもこのアルバムのリマスターは、その理不尽な期待分だけ、絶対に過小評価になること必然。


Presence については、オリジナルLP、最初のリマスターCD、今度のリマスターの合計3種の音源を持っていることになります。


諸般の事情により(ただ面倒くさいだけという言い方もあるが)、今回の聴き比べは、リッピングでHDに落として、ZX2に転送したFLAC音源で行います。

イヤホンは、ゼンハイザーのie800。


というわけで、音源は


 ①最初のリマスターCD

 ②今回のリマスターCD


でやりました。


いやあ、CDプレーヤーでCD入れ替えながらやる聴き比べよりも、この方が遥かにやり易いなあ。

別の音源がすぐに聴き比べられます。


さっき聴いた音の記憶が消えないうちにCDを入れ替え、音量レベルを合わせて、曲を合わせて再生、あれさっきの音はどういうのだっけ、なんて面倒くさいことは一切必要ありません。

これからはこれでやろう。


でも、最大のネックは同じ環境でアナログLPとの比較が絶対にできないことですね。


いろんな曲を対象に聴き比べました。


結論。


思ったよりも2枚には音の差がありました。

そして、最近のリマスターには顕著ですが、リマスターコンセプトとでも言うべきものがはっきり違っています。


予想外だったのが、自分が期待していた音は①に近かったこと。

①の方が、ギターの音が硬質に響きます。

全体の音がソリッドにトリートメントされてます。

解像度高く、硬めに音を創る時代のリマスターだからでしょうか。


②はと言えば、①との最大の違いが、低音です。

ベースとドラムスの音の低音のボリューム感にはっきりと厚みがあります。

ジョンポールジョーンズのベースがブイブイ言ってます。

ギターはむしろ控えめにミックスダウンされてます。


リズムセクションをサウンドスケープの中心に置いて、再構築したかのようです。


最初はちょっと違和感を感じたりもしましたが、聴きこむにつれ、温かみというか、滑らかさというか、およそ彼らのサウンドにはにつかわしくない言葉が浮かんで来ます。


改めて①を聴くと、ソリッドな硬さという言葉が、荒々しさや刺々しさといった言葉に入れ替わって行く気がします。


この音を鳴らしたくてジミーペイジはリマスター作業を進めてきたのかもしれない。

これが実現したかった質感なのかもしれない。


そう思うと、今までの再リマスター盤に感じてきた不完全燃焼感にやや納得感が出てきます。


たぶん、この質感はアナログLPの質感に近いものでしょう。

このリマスターをJBL4343で聴くと、あの抜群のロックがまた目の前に現れてくるに違いない。

なんとなく、そう確信したのでした。



ブログを書くってことは、それなりにエネルギーのいることだとつくつぐ思います。

聴いていて何の感慨もない音楽ならともかく、それなりの感慨がある音楽について何を感じたのか自分なりに解釈し、頭の中でまとめ、言葉にし、整え、アップする。
これだけのことがスムーズに行くこともあるし、最初の一歩ですら踏み出すエネルギーが出てこないこともあります。

ここ2カ月はまさしくその後者で、音楽はそれなりに聴いているのに、書くべき対象がまとまりません。

書きたいという強烈な衝動を引き起こすほどの音楽がなかったこと。
ZX2で聴くと今まで聴きこんできたはずの音楽がなぜか新鮮に聴こえ、持っている音楽を聴きなおすことが増えたこと。

などといったという理由も非常に大きいのだけれど、やはり自分のエネルギー低下も強く感じます。

仕事でやたらと企画書やら報告書やら書かないといけないことも、パソコンに向かうエネルギー低下の原因でしょうか。

まあ、そんな日々を過ごす中で、とはいえやはり自分が音楽を聴いている足跡をある程度残さなきゃいかんなと、気持ちを切り替え、久しぶりのレビューです。

そこで、最近聴いてきた中のひとつ。

Blur 久しぶりのアルバム、 "The Magic Whip"

ザ・マジック・ウィップ/ワーナーミュージック・ジャパン

¥2,654
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自分はそんなに熱心なBlurリスナーではありませんでした。
だからデーモンのソロアルバムを聴かなければ、このアルバムも買わなかったかもしれない。

でもデーモンのソロアルバムは、昨年のベスト10にも入れたくらいのデキだったし、その直後に復活リリースをとげたグループとしてのアルバムということで、聴いて改めてBlurを評価したいな、と。

ジャケットやタイトルを見て、ずいぶん力の抜けたゆるい雰囲気があるな、との第一印象。

この第一印象が、このアルバムの最終的な評価と見事に重なるのでした。

イギリスのミュージシャンで、デビューから見ると立派なベテラン。
リーダー格のデーモンは、さまざまなコラボで実に幅広い音楽をやってる。
昔のアルバムも、一作ごとに作風がけっこう変わってる。

こういった要素が、この1枚に凝縮しているかのようなアルバムです。

1曲ごとに音楽性が大きく振れます。
シリアスなナンバーから、人を食ったようなのんきなシングアロングナンバーまで。
曲数も多いので、集中力を保つのが難しく、焦点がなかなかフォーカスしません。

特にデーモンのソロアルバムの印象が強いので、彼のボーカルがこういったロックで聴こえてくる違和感がしばらくありました。



この曲が一番好きかな。エッジが効いてストレート。


これもなかなか。


こういう曲が好きな人もいるんでしょうね、きっと。


デーモンがほくそ笑んでいるのが感じられます。
そう簡単にオレたちの正体を、このアルバムの捻じれ方をつかまれてたまるものか、ゆる~い感じで、のらくらした印象をもってくれれば勝ちだな、と。

思うツボです。
気に入ってるんだか、気に入ってないんだか、それすらも自分でよくわからない。
聴くたびに、おおこの曲いいな、という印象が変わっていく。

いまだにつかみどころがないアルバムです。
たぶん、この印象はずっと変わっていかないでしょう。



今年は、沁みる傑作が多くリリースされる年になりました。

前回ご紹介した、Sufjan Stevens に引き続き、またもや才能あふれる若手が素晴らしい作品をリリース。

デビュー作から贔屓にしてきた、Conor O'Brien 率いる Villagers

デビューアルバムは、シンガーソングライターの資質を存分に発揮した、バンド名義の作品で、自分はその年の年間ベスト10に選出し、絶賛しました。

セカンドアルバムは、昨年のリリース。
デビューアルバムよりも、バンド指向を強め、曲創りからアレンジまで、バンドであることを意識した作品に。

デビューアルバムでの歌と演奏のバランスに絶妙なものを感じていたため、セカンドのバンド指向は自分にとってやや期待外れの方向に行ってしまった印象。

オブライエンの曲創りとシンプルな音楽が、やや大味な方向に行ってやしないか、と。


と思っていたら、そこから短いインターバルで、早くも3作目が登場。

それがこの "Darling Arithmetic"

ダーリン・アリスメティック/ホステス

¥2,263
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作詞作曲や歌だけに留まらず、オブライエン自身がすべての楽器演奏だけでなく、レコーディングからミックスまでを担当し、実質的に一人で作り上げたこの作品。

どんな編成で音楽を創っても、それはすべて Villagers というユニットによる作品であると本人は言っているけれど、明らかに一人で創り上げた今作がベストユニットでしょう。

オブライエンは、バンドを指向しない方がいいです。明らかに。

歌も、曲も、生きます。

沁みます。
響きます。

音楽というしずくが、だんだんと大きくなって、ポタリと落ちる瞬間を見ているかのような感覚。
そして、そのしずくがじんわりと自分の中に広がっていく。

純粋さと、透明感。

素晴らしい。

このアコギとこの歌声が始まっただけで、もうアウト。







Belle & Sebastian のニューアルバム、 "Girls in Peacetime Want to Dance"

ガールズ・イン・ピースタイム・ウォント・トゥ・ダンス/ベル・アンド・セバスチャン

¥2,561
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彼らのアルバムを聴き始めたのは、実は前作から。

一見、特段アピール力が強いわけでもないポップス系ロックとでも言える音楽。
ボーカルもそれほどウマいわけでもないのに、強烈なグルーブがあるわけでもないのに、なぜか不思議な存在感がある。

曲も強く印象に残るものばかりというわけではなく、聴くと、ああこれなかなかいい曲だよね、というものが続きます。

前作は、そこにノラ・ジョーンズが加わっていたので、自分的には歌的魅力倍増でしたが。

そんなある種、甘美な水のような存在の彼らの音楽。

今作では、大きくシンセがフィーチャーされています。
ちょっとエレポップっぽい曲もあります。

好みから言えば、もうちょっとギターが立ってシンセは控えめな方が良かったけれど、決して彼らのベルセバ的サウンドスケープを台無しにしていないところは、さすが。

初夏の風が吹き抜け、日差しが強くなりつつあるゴールデンウィークの時期の東京で、のんびりと音楽を聴くのにフィットします。

ベルセバ節。


甘美。


新機軸。


甘美その2.


ファンにはうれしいことなんだろうけど、収録曲が多くてトータル79分にも及ぶ、CDサイズ目いっぱいの楽曲たち。
ちなみに、全16曲中、最後の4曲は日本盤のボーナストラックですが。

端から端まで聴いて行くのに、かなりの時間がかかります。
曲もなかなか覚えられないしね。

ちなみに、CDフォーマットが決められた時の最大収録時間は、74分42秒でした。
これは、規格づくりに参加していた当時のソニーの副社長だった大賀典雄氏(のちに社長)が、クラシックのオペラとベートーベンの第九が収録できるべきと主張し、カラヤンもそれに同調したためと言われています。

ベルセバのこのCDは遥かにこの時間を超えてますね。
初期の規格では74分42秒でも、その後の技術の進歩などで79分258まで拡大されたそうで、このアルバムはその容量を最大近くまで利用してることになります。

75分を超えると、古い、初期のころのCDプレーヤーだと最後まで再生できない可能性もあるらしいです。

通常は、曲がたくさん入っていればいいってものでもなく、もうちょっとコンパクトでもと思うんですが、彼らの音楽に関してはトゥーマッチな感じはしません。

なにしろ、甘美な水ですからね。



イヤホンやヘッドホンを変えたり、
引っ越して部屋の床がしっかりしたり、
スピーカーの下に1点支持の三角錐を入れたり(わかる人にはわかってもらえる)、
もろもろの要素でリスニング環境が改善され、それまでよりも良い音で音楽を聴ける環境になった時、必ず陥る悪癖があります。

音楽を、その中身よりも、音質優先で聴くようになってしまうこと。
音源の質が良いものを優先に、聴く音楽を選んでしまう。


好きな音楽よりも、良い音を楽しめる音楽を聴くようになってしまう、ということですね。


すると、ロックを聴く回数が減ります。


もともとロック(特にハード系やパンク、ニューウェイブ系)は、音にこだわらないミュージシャンが多いし、大音響でがなりたてる系の音楽は良い音で収録するのが難しいし、そもそもノイズのカタマリのような音楽で、なにを今さら解像度とか音質のこと言ってる?という感じでもあるし。


それでもやはり、ロックミュージシャンには音質に手を抜いている人たちが多いのも確か。


60年代や70年代のロックのハイレゾ化が進んでいるけど、そこにほとんどその価値があるのが、疑問です。

音源で音質にこだわっていないものをいくら再生面でよくしても、限界がはっきり見えるだけ。


JAZZとかクラシックとか、当時から録音技術の限界で最高の音質を残そうとしたアナログマスターだけが、今の時代のハイレゾ技術を使う意味があると思ってます。


しかし、音が良いからといって、魅力のない音楽が魅力的に聴こえるわけではないことも事実。

最初の1分だけは高音質の快感に酔う事はできても、やはり音楽がよくてなんぼ。


そういう意味では、昔から録音が良いロックの代名詞のように言われているスティーリーダンなどを引っ張り出しても、やはり音質は70年代だし、中看はただのムードフュージョンということで、音も音楽も実に中途半端。


これだったら、JAZZやクラシックの名演を聴いた方がはるかに感動を得られる、ってことで、そっちのリスニング回数が増えてます。