その染み付いた記憶によっては無意識のうちに排除したいものもあり、その記憶と分かちがたく結びついたアルバムを聴くことは辛く、いつの間にかずいぶん距離ができてしまうこともあります。
このアルバムは、その優れた内容から2011年リリースのベストアルバムだろうと思っていますが、この記憶ゆえに、自分にとっての年間ベストアルバムに選ぶことができませんでした。
R.E.M. 最後のオリジナルアルバムとなった "Collapse Into Now" 。
Collapse Into Now/Warner Bros / Wea

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リリースされたのは2011年3月9日。
同時にヘビロテで聴き始めたこのアルバム。
そこにやってきた、あの未曾有の大災害。
アルバムに収録された優れた曲たちのインパクトと、大災害から僕らが受けた精神的、肉体的ダメージのインパクト。
分かちがたく結びついてしまいました。
このアルバムを聴く度に、未曾有の大災害が起きる前に彼の地を訪れた時の光景を思い出し、大災害のテレビ中継の映像を思い出し、悲しみにあふれます。
聴きたくとも聴けない日々。
自然とアルバムから遠のき、いつの間にか2年間の空白ができていました。
久しぶりに聴きたいという気持ちになった先日の日曜日。
どんな曲が入っていたのかも忘れていることに気付きながら、1曲1曲を噛みしめるように聴いていきました。
やはり悲しい記憶は相変わらず立ち上ってくるし、どうにも切なくやるせない気持ちも襲ってきます。
それでも昔に比べると気持ちの振幅は小さくなったなと感じながら。
ところが、いきなりガツンと食らいました。
ああ、この曲がこのアルバムには入っていたのだ。
あの日々の悲しみにもっとも結びつきが強かったこの曲。
イントロを聴いただけで、あの日の心象が強烈に蘇る。
これだけの悲しみを、僕らはあの日に受けた。
いつの間にか薄らいでいったあの時の衝撃と悲しみ。
やはり忘れてはならないと、改めて思いました。
徐々に風化させてはならないと。
あれが起きた日のことを。
未だに苦しみから逃れられない人たちがいることを。
あの日々に、これだけの悲しみを持った自分たちがいたことを。
というか、どんな種類の音楽でも、自分の音楽として引き寄せてしまう磁力。
Elvis Costello が、HIPHOP の The Roots とコラボしたアルバム、 "Wise Up Ghost" 。
Wise Up Ghost/Blue Note Records

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カントリーやクラシックなど色々な音楽ジャンルとコラボ組んできたコステロといえども、ヒップホップとは。
ちょっと相性悪くないか?
自分の苦手なジャンルでもあるだけに、初めてその動きを聞いたときは、イメージがわかずにちょっと微妙と思ったものです。
ジャケットもそっけないし。
でも一聴は百聞にしかずですからね。
前向きな興味でもって、聴き始めました。
The Roots の出す低く締まった音。
ヒップホップ系の隙間だらけの音。
その隙間をコステロのボーカルが充たしていく。
コステロのボーカルが聴こえてなくても、その余韻が音楽を充たす。
何がベースにあろうと、コステロのボーカルがあの人のメロディで聴こえた途端に、そこはコステロミュージック。
The Roots が主導権を握ったであろう曲では、コステロのボーカルにはメロディが乗ってきてませんが、それでもコステロのいつものボーカルに聴こえるから不思議。
しかし、Tripwire のバックメロディ、あの名作 Spike の名曲 Satellite まんまじゃないの。自らのパクリ?それともパロディ?
もしかしたら、アルバムもコラボも、シャレでやってるのかもしれないと思ったり。
この曲はふたつのベクトルがうまく融合してると思います。
ヒップホップに引っ張られてるコステロ。
イントロ、まんま Satelliteだと思います。
ところが。
最初は新鮮だったのだけれど、その後何度聴いても違和感が消えません。
本来なら大きな馬力を出せるエンジンが、リミッターをかけられて思うような馬力を出せていないような、可動域の大きな関節がギブスによって動きが制限されているような、そんな窮屈さを感じます。
彼の歌が自由に跳ね回れていないというか、聴いていて爽快感が得られません。
まあヒップホップという、もともと地面を這うようなテンションの音楽をベースにしているから仕方がないのだけれど、この音楽とコステロとの相性が、今一歩自分の好みに合わないのかも。
あと、やっぱり自分とヒップホップとの相性だなあ。
自分にとってコステロの魅力が生かされているとは言い切れず、真剣に聴き込もうという意欲に欠けるアルバムになっているのが残念。
そういえば、昨年末の紅白歌合戦のことを書いてませんでした。
最近はJ-POPとジャニーズによる学芸会になってしまいましたが、今年は更にAKB系が大進出し、EXILE系とともに一大勢力となって、まったく真面目に時間を取って見る価値もない番組に成り下がってはいるんですが、ときどきとんでもないパフォーマンスを見せてくれる歌手がいるもので、一応流し見をすることにしてます。
自分が楽しみにしているというか、期待している歌手は、基本的に演歌歌手。
別に演歌というカテゴリーが好きなわけでもなんでもなく、むしろ昔から嫌いなカテゴリーではあったのですが、やはり上手い歌手が多いのと、彼ら彼女らは紅白歌合戦を特別な場所として臨んでいることで、ジャリタレどもとは意気込みが違います。
やっぱり、坂本冬美ですね。まずは。
日本でも屈指の歌手でしょう。これほど歌の上手い人はなかなかいない。
何よりも、発声と音程のコントロールが完璧です。
そして歌声もいい。
プロの歌手としてここまでとは言いませんが、一応歌の祭典なので、出場者には最低限の歌唱力を持っていてほしいものです。
その完璧な土台の上で、名人芸が披露されるんですからたまりません。
上手い、を通り越して、すごい、と呆れるばかりです。
しかし、今年は声の調子が今一歩だった。
そしてバックで太鼓叩いて踊ってるジャニーズ達が、雰囲気ぶち壊し。
選曲も今一歩だったかな。
そんなベストではなかった坂本冬美を飛び越えて、今回の紅白のベストパフォーマンスは、石川さゆりです。
曲は、津軽海峡冬景色。
凄みすら感じる歌唱です。
彼女も声のコントロールがバツグンですが、感情のニュアンス表現がメチャクチャうまかった。
曲の盛り上げ方や、同じフレーズでも前半と後半ではまったく違ったニュアンスで歌う表現力。
「さよなら、あなた」とか、「ああああ~あ」などですね。
この人は年齢とともに声が太く(悪い意味じゃなく)、表現できることの幅が深く広がった気がします。
昔ほどの高域や声の透明感は望むべくもないけれど、不思議な枯れた魅力が加わりました。
もう何千回、何万回ともなく歌ってきたからこそ辿り着いた境地なのかもしれないけれど、その集大成を紅白の1曲で出し切れるプロ意識がすごい。
男性歌手でいいのはなかったのか?
紅白に出てくる歌謡曲の男性歌手なんて、興味ありませんよ。
もちろんノリだけのJ-POPもね。
あまちゃんコーナーはやっぱり優れたエンタテイメントとして、みごと期待に応えてくれました。
クドカン、やるなあ。
やっぱり超絶。
27年前のフジテレビ「夜のヒットスタジオ」での中森明菜。
奇跡的なアルバム「不思議」からの奇跡的なテレビオンエア。
すでに歌謡曲ではないし、その圧倒的な存在感は、一昨年の紅白での美輪明宏にも匹敵すると思いますね。
これは音がモコモコして今一歩なので、興味を持たれた方は以下のリンクからニコニコ動画のバージョンをご覧になってください。
マリオネット(ニコニコ動画)
ヒット曲ではないどころか、異物的なアルバムに収録された1曲に過ぎない曲を、なんとか歌謡曲ショーでオンエアしようとした特別なスタッフがいたのでしょうね。
日本のロック史上燦然と輝く「不思議」をセルフプロデュースで生み出した力といい、この時期の中森明菜は、別の何物かだったのかもしれない。
不思議(紙ジャケット仕様)/ワーナーミュージック・ジャパン

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