「無効」と「取消し」 | 法律翻訳ネタと変人観察日記

法律翻訳ネタと変人観察日記

洋書に出てくる英語表現を使って、法律英語とアメリカの法体系について解説したり、変人観察日記に使える英語表現を紹介しています。
その他、食事日記やどうでもいいネタもあります。統一感のないブログですがよろしくお願いします。

以前にも「無効」と「取消し」について記事にしましたが、今回は日英翻訳の観点からこれらの用語の使い分けについて解説します。


「無効」

契約などの法律行為が、特定の理由によって当事者の意図した法律的効果を生じないことを指します。


英語では、void, null and void, invalid, nullified, void ab initioなどを使いますが、遡及して無効であることが明白にわかるように英文を書かなければなりません。


例文1

相手方と通じて為したる意思表示は無効とす。(民法第94条)


A fictitious declaration of intention made in collusion with another party shall be null and void.


例文2

本契約書は、各当事者の委任を受けた代表者により署名され各当事者の取締役会により追認される。追認されない場合、本契約は当初より無効と推定される。


The agreement is signed by the representative with the delegation of either party and then ratified by the board of directors of either party.



「取消し」

特定の意思表示あるいは法律行為を後から当事者が消滅させることを指します。この場合、取消されるまではその意思表示あるいは法律行為は有効であるとされ、取消した時から効力が無くなります。


英文ではbe voidable, be invalid pro futuro, void pro futuroなどを使います。


例文3

詐欺又ハ強迫ニ因ル意思表示ハ取消スコトヲ得


A declaration of intention that is induced by fraud or duress is voidable.


例文4

民法第9条は、無能力と認定された者のなしたる行為は、取消すことができる旨規定する。


Article 9 of the Civil Code stipulates that any act done by a person adjudged incompetent shall be voidable.