125ガンマウルフ(NF13A)や200ガンマウルフですが、タイミングライトが使える構造ではありません。

ジェネレーターカバーにコイルが付いているのでカバーを外すとエンジンが掛からないんですね。

またエンジンオイル(ギヤオイル)が回っているので、カバーを外すとオイルが出てきます。一説によるとセルの潤滑の為らしい。

この辺がTS-Rのエンジンとの違いの一つです。
 


そこでタイミングライトを使えるようにするために点検窓の加工をすることにしました。ついでにフライホイールの突起位置の計測もします。

 

  • フライホイール調査
    以前も書きましたが、このバイクはフライホイールに突起が2個あります。


    突起1つにつきマイナス・プラスの波形が発生するので、当然、ピックアップコイルの電圧波形も一回転につき4回来ることになります。


    まずは上死点でのピックアップコイルの位置を計測
    カバー側にコイルが付いているので、紙で計測します。


    フライホイールの直径と突起の距離を計測して、大体の角度を求めました。
    第1波 BTDC47.15°
    第2波 BTDC40.34°
    第3波 BTDC16.04°
    第4波 BTDC4.86°
    コイル位置の誤差とか上死点の誤差とか考慮すると±5°くらいの誤差は平気でありそうです。

    ちなみに200も突起は二つですが、位置は違うようです。実車で計測しないと分かりませんが恐らく第1波がBTDC40°程でしょう。
     
  • タイミングライト
    フライホイールに角度の目盛を10°刻みで書きます。

    過去の検証で、簡単には消えないことが分かっているネームペンとテックスペンを使いました。
    耐エンジンオイル性のあるマーカーについて


    穴をあけてM12のねじを切りました。間にはNBRのOリングを入れています。



    こんな感じで見えます。


    スタンドを掛けた状態でエンジンを掛けると勢いよくオイルが吹き出します。
    跨った状態でギリギリまで右に車体を傾けて、上からタイミングライトを当てることでなんとか計測できました。
    目盛が粗いのでざっくりな値しか分かりませんがSMの記載通りアイドリングでBTDC14°で点火していることを確認できました。
    残念ながら、回転数を上げると目盛が全く見えなくなります。どうやらオイルミストで視界が悪くなるようです。
    一応使えるようです。点検窓が狭いので回転数によっては全く目盛が見えなくなることがあり、それで勘違いしました。大まかな点火マップの作成みたいな用途にしか使えないかなと。

    また画像を見て分かるように、座面が曲面になっていて、雌ねじも数回転しか切れませんでした。
    Oリングがあってもこれだとオイルが染み出てきます。
    真似する方は予備のカバーがあった方がいいかと思います。
     
  • 回転ムラ
    今回のデータで思ったよりもエンジンに回転ムラが多いということが分かりました。

    下のオシロの画像は1chがピックアップコイルの電圧
    2chがチャージコイル電圧です。




    第1波~第4波間の角度は47.15-4.86 = 42.29 ですが、上の画像で第1波~第4波間の角度を計算すると約57.6°となり長いです。
    チャージコイルも一回転につき4回充電しているように見えますが、上死点付近だけ間隔が少し長いですね。
    つまり圧縮時にクランクの角速度が低下しているということ。(当然ですが)
    回転数を上げたり、走行したりするとどうなるか分かりませんが、少なくともアイドリング時にはこれぐらいの回転ムラが発生しています。
    過去にオシロスコープで点火時期を測定する記事を書きましたが、フライホイールの突起位置を把握していないと正確な点火時期は測れないということになります。
    オシロスコープで点火時期測定

     実際には突起がどの位置に来た時にピックアップコイル波形がどう変化するかが分からないので、結局タイミングライトが一番正確で確実な方法です。
     
  • CDI流用
     このバイクでリプレイスのデジタルCDIを導入した例はほぼありませんが、CDIを割り込ませて流用する例は知っています。いずれも良好とのこと。
     しかしアナログCDIだと遅角できない(波形進角のみ)ので、ピックアップマイナス波形を使うと約BTDC47°、プラス波形を使っても約BTDC40°で点火しているはずです。200だともう少し遅いタイミングだと思いますが、ちょっと怖いですね。TSのCDI等の他車の純正CDI流用も見かけます。デジタルCDIの場合、突起位置の違いにより点火時期がずれ、回転数も2個目の突起から1個目の突起の間の時間で計算されるはずなので、CDI側は実際より少し高回転と認識して進角方向に点火時期がずれます(多分) また1個目の突起からい2個目の突起は突起の間隔が狭いのでCDI側は急に高回転になったと誤認識するはずです。上のオシロ画像で分かるように、2個目の突起位置は放電直後でコンデンサへの充電も行われていないのでここでサイリスタのゲートに信号が送られても問題は起きないはずです。レブリミッターの仕様によっては点火カットされてエンジンが回らなくなるかもしれません。フェイルセーフとして点火直後の信号を無視するような機能があれば問題なく点火が行われるかも。どちらにしろたまたま点火時期が合ってれば一応運転はできるといったレベルにしかならない気がします。

 

単気筒ガンマ/ウルフ/TS-R の情報について 本編

 

125ガンマ・ウルフのシリンダーと排気デバイス

純正は廃盤ですが、両方ともVガンの部品が流用できると言われており、実際に流用されている方がいらっしゃいます。またシリンダーに関してはボーリングはできませんが再メッキをして再生することは可能です。デバイスも社外品が販売されているため、廃盤になってもどうにかすることが可能な部品です。

そもそもガンマのエンジンがざっくり言うとTSの腰下にセルとVガン(VJ22A)の腰上を付けたものですし、PL上でも共通部品が多数あります。

 

調べるとVガンは年式によって違いが多いため、シリンダー・排気バルブにも違いがあるようです。この流用に関してはあまりネット上で議論されていないと感じたので、まとめてみました。
この記事を書くにあたり、下記のサイトが大変参考になりました。(ヤフージオシティーズなので魚拓)

https://web.archive.org/web/20190316181311/http://www.geocities.co.jp/SiliconValley/6492/rgv250-05.html



全部読むと長いので要点だけまとめると
シリンダーはL STD SP(90年) L SP(90年) M STD(91年) N STD(92年) でOK。他の年式やモデルも使えるけど、スタッドボルト、ナット、ワッシャーを交換しないといけないかも。また93年以降のモデルは馬力規制のため排気ポートが楕円状になっているため、多分そのままだと適さない。 
排気バルブはM型以降であれば使える。P型SPは不明。
RS250はM型・N型とほぼ同じ?
あくまで予想なので、使えないとかセッティング合わないとか言われても責任はとれません。
 

  • シリンダー
    詳しい流用の仕方はオーナーサイト フナさんのページに載っています。排気デバイスのプーリーホルダを自作し、冷却水の連結パイプを何かで埋める必要があります。
     因みに純正も鉄キャップで埋めてあります。ここを叩くと取れて大惨事になるとか。

    シリンダーの再メッキをしても溶けてしまうようで、テクノギルドさんでは砲金製キャップで埋めていました。

     



     

    VJ22のシリンダーには、品番として4種類あるそうです。
    L STD SP(90年) L SP(90年) M STD(91年) N STD(92年)  
    11200-22812 (1)とする。
    排気開き79~97°BBDC、掃気開き64°BBDC

    M SP(91年)  N SP(92年)
    11200-22830 (2)とする。
    排気開き79~97°BBDC、掃気開き64°BBDC

    P STD(93年)  R STD(93年)
    11200-22851 (3)とする。
    排気開き78~96°BBDC、掃気開き63°BBDC

    P SP(93年)
    11200-22840 (4)とする。
    排気開き78~98°BBDC、掃気開き63°BBDC

    125ガンマ・ウルフのシリンダー
     番号は11200-19830 その後11200-19841に統合されています。おそらく11200-19841がウルフ用ですね。(塗装有無以外は同じものらしい)
     どちらも廃盤です。発売年は91年。ポートタイミングはSMによると排気開き80~97°BBDC、掃気開き65°BBDC
     上記のサイトに、" ヘッド取付用のスタッドの長さが、(1)=2本が長く、3本が短い。に対し、(2)=5本とも長い。 "とあります。125も2本が長く、3本が短いです。ポートタイミングも近いですね。(排気開きに関しては使っている排気バルブによっても変わる)
     よって(1)が一番125純正と近いのではと予想します。
      (1)以外のシリンダーを流用する際はスタッドボルト、ナット、ワッシャーの交換が必要とのことなので、125に関しても同様かと思います。cmsnlでチェックしたところ、どうも125とVJ22Aはスタッドボルトの品番が違うようです。また(1)以外のシリンダーが見つかりません。両者の日本版PLを用意した上で、現物を使って試さないと分かりませんね。

     因みにVJ22Aの規制後モデル(93年以降)は、排気ポートを楕円状にすることで出力規制していたそうです。125は楕円ではありませんので、93年以降のシリンダーは合わないと思います。124は代わりにチャンバーに絞りを付けることで22PSに抑えてるのでしょう。

    VJ21Aのシリンダーについて
     検索するとVJ22にVJ21のシリンダーを流用した例が見つかりますし、フナさんもやっているので可能かと思いますが詳細は不明。
     

     
  • 排気バルブ
    排気バルブは以下の4種類です。

    L STD SP(90年)
    右 11250-19810 左 11250-19820-------(A)とする。

    M STD SP(91年)  N STD SP(92年)  P STD(93年)
    右 11250-19830 左 11250-19840-------(B)とする。

    P SP(93年)
    右 11250-19850 左11250-19860-------(C)とする。

    R STD(93年)
    右11206-19D01 左11207-19D01-------(D)とする。

    上記のサイトやネット上の情報によると
    250のデバイスに関して
     (A)のガイドピン径はφ4。(B)はφ5になった上、2重ピン構造。 (いわゆるL型の悲劇)
     また 取付寸法には互換性があるが、(A)の方がストロークが長いので、排気バルブモーターやプーリーが異なるらしい。
     (C)はSP用で排気タイミングが変わる。
     (D)は125ガンマのFR(94年)以降のものと共通。(機種番号19Dなので元々125用として開発されたもの?)
     M型以降は2重ピンらしいですが、上述した通りストロークが異なります。

    125のデバイスに関して
     125の前期(FN 91年)と前中期(FP 92年)は250と違って刃一枚一枚に番号が付いています。(つまり左右で6個)
     恐らくVJ22とは違います。
     初期のモデルはL型と同じようにピンが細い(1重ピン)らしいですがPL上ではFNもFPも同じ番号です。サイレント修正説。
     少なくとも私のFPは2重ピンですがいつから2重になったのかもよく分かっていません。
     125にL型を使うと燃調が合わず、M、N型用のデバイスにしたら元に戻ったという話をTwitterのフォロワーさんがおっしゃっていました。


     以上の事からおそらく排気バルブもシリンダーと同じでM、N型(B)が合うんじゃないかと思います。
     謎なのは91年販売なのに初期のみ1重ピンだった(しかもL型の排気デバイスとは違う)という点ですね。

    中期型(FR 94年)と後期型(FT 95年)は(D)と同じです。125はシリンダー、排気デバイスアクチュエーターが全年式で共通で、アクチュエータを制御しているCDIもFTまでは共通です。デバイスに互換性がないという報告もないため、(D)も125の全年式で使用できると思います。(C)は分かりませんね。
     (D)の違いについて、上のサイトだと 40PSで面白くするためではとの考察がありますが、125は最高出力に変更はありません。SMにも形状を変更した理由は特に書いていませんでした。エンジン性能曲線図の変更も書かれていません。(省略したのかもしれませんが)


     
  • RS250
    上記サイトによるとアプリリアのRS250のシリンダー・排気バルブはM型、N型SPとほぼ同じ物らしい。
     
  • ピン
    デバイスのピンですがこれはスプリングピンと呼ばれるものです。1重ピンの内部に3×14のピンを圧入して2重巻きピンのようにして強化している方がいました。

     


     

  • 社外品

    RGV250 RS250用として何社か販売しています。あまり日本では販売されてないのでレビュー等は少ないですが、純正より頑丈との謳い文句が書かれているのを見て思わず保存したことがあります。
    こういうやつ


    多分これはTYGAの商品ですね。(2枚目の画像の90度回転)
    https://www.tygaeurope.com/index.php/set-powervalves-4-pieces-complete-cnc-billet-aluminium-rgv250-rs250.html

    The Tuning Worksという会社からも販売されています。
    https://www.thetuningworks.co.uk/store/product_info.php?products_id=396

     2社とも適合する年式が書かれていませんが、RS250に適合ということはM型、N型でしょうね。対策後のバルブで一番汎用性がありそうですし。
     両方とも一台分(シリンダー2個分)の販売みたいです。
     写真を見た感じ、ピンが折れることはまずなさそうです。純正はなんでスプリングピンなんて使ったのだろう。(コストカット?)

     説明文の内容が正しければ、2社とも純正より頑丈で出力特性も優れているみたい。

    The Tuning Worksは昔はRG125用も販売していましたが、現在は廃盤のようでページが消えていました。


     

  • 単気筒同士での互換性
     これまで書いてきた通り125のガンマとウルフ(NF13A)は互換性がありますが、200ガンマ・ウルフやTSは鉄スリーブシリンダーで、排気デバイスにも互換性はありません。
     200ガンマ・ウルフとTS200R同士は互換性があるという話は聞いたことがあります。

ガンマの排気デバイス AETC

 

 

よく舐めるので六角穴付きボルトに交換されますが、寸法等の情報がネットに転がっていないので書きます。

 

 

純正部品は 02142-15127 (大抵のAETC車両はこのねじを使っていたと思いますが、一応PLでチェックしておいてください。)

 

スズキ 品番構成・車軸型式一覧表によると

 

トラス小ネジ 強度番号2  十字穴付小ネジ+平座金(みがき丸) M5 長さ12mm クロムメッキ

というねじになります。

 

またねじの頭部径(座面の直径)も重要です。径が大きすぎると入りませんし、あまりにも小さいとデバイスを固定できません。

トラス小ねじの規格を調べると、M5の場合の頭部径は11.8mmとのこと。実際に測っても大体12mmでした。

つまりM5 長さ12mmで頭部径約12mmのボルト、もしくは直径12mmのワッシャーを間に入れればいいでしょう。

 

というわけで私はM5 長さ12mmの六角穴付きボルトに直径12mmのワッシャーを挟んで固定しました。

 

 

 

こうならないように........