シコ・ブアルキ /
Chico Buarque  ('78)
 
 
 
 
60年代から活躍し、カエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジル、
ガル・コスタなどブラジルを代表するSSWといっていいシコ・ブアルキは、
これまでアルバムを2作ほど記事にしました。 
 

 

 

 

 

上が71年の通算 12作め。

下が76年の20作め。

今回は78年の 24作めを。

 

71年盤の記事に書いたように、シコは68年に当時のブラジル軍事独裁政権から

反体制的な人物とみなされて逮捕、翌69年から70年にイタリアへ亡命し、

帰国後も自国の強圧的な政権を暗に批判するダブル・ミーニングな歌詞の自作曲を

発表し続けました。

 

こういったシコと当時の軍事政権との軋轢は、78年になっても続いていたと

確認できる本盤。(ちなみにこの独裁政権は85まで続きます)

 

この盤でもラストの 'Apesar de Você' (あなたにもかかわらず)が検閲の対象とされ、

レコードが店頭から消えてしまいました。

 

そういう不屈の批判精神もリスペクトものですが、それを措いてもシコは

いい曲を書いてくれるので好きなミュージシャン。

別のシンガーが歌っているのをいい曲だなと思って調べてみたら、

シコが書いた作品だったということもたびたびありました。

 

この盤以前から、またこの盤以降も、出すアルバムがどれも多くのバージョンを

重ねていて、多くのファンから支持されていることが分かります。

 

本盤のタイトルは自身の名を冠した "Chico Buarque" 。

 

カエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジル、ガル・コスタなどの、

7・80年代のMPBのスターたちに較べると、派手なファッションも

斬新なパフォーマンスもないので少し地味な印象があるのですが、

根強いファンに支えられた、しっかりとした芯をもったシンガーだと思います。

 

 
 
 
シコ・ブアルキ (Chico Buarque)
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1944年ブラジル リオ・デ・ジャネイロ生まれのSSW。
他にも詩人、小説家、劇作家、映画監督。
姉はジョアン・ジルベルトの奥さんでもあった歌手ミウシャ (Miúcha)。
妹はサンビスタのクリスチーナ・ブアルキ (Cristina Buarque)
8歳のとき、父のローマ大学赴任とともに、家族でイタリアに移る。
2年後の1954年にブラジル (サンパウロ) に戻る。
有名な歴史家、社会学者である父親がボサノヴァの創始者のひとり、
ヴィニシウス・ヂ・モライス (Vinicius de Moraes) と親友である影響から、
音楽や執筆に関心をもつ。
1964年にはシンガー/ソングライターとしてデビュー。
1966年 初ソロ・アルバム "Chico Buarque de Hollanda"  を発表。

 

 
 
 

Feijoada Completa
オープニングは陽気なサンバで。
「フェイジョアーダ」とは豚の臓物や干し肉などと
黒豆をじっくり煮込んだ、ホームパーティーなどに
よく登場する料理の名前だそうで、
タイトルはそれのサイドメニューも揃ったフルセット版。
 
 
 
 

Cálice
73年にジルベルト・ジルと共作した曲ですが、
歌詞が軍事政権を批判するものとして検閲された曲。
ジルベルトと共演の際、この歌はメロディをスキャットするだけで
やり過ごしていましたが、それでも歌い出したために、歌詞を書いた
シコだけマイクを切られてしまったヴィデオも残っています。
(1:27 あたりでマイク音を切られているが、編集でその後もシコの歌声がかぶされている)
歌詞および詳細はこちら →
5年後の78年に解禁され、ミルトン・ナシメントと再録音したのが本盤。
 
 
 
 

O Meu Amor
シコは歌わず、エルバ・ハマーリョ(ソロデヴュー前)
Marieta Severo のふたりの女性シンガーが歌っています。
「私の愛」というタイトルですが、歌詞は女性の体感に
訴える女性からの愛の表現。
MVではエルバとMarieta が争いながら歌っていますが、
「かれは私のものよ」というシチュエーションですかね。
 
 
 
 
Pedaço de Mim
シコとデュエットするのはジジ・ポッシ。
本盤と同年に初ソロ盤を発表した、当時 22歳の新人でした。
アルバムのスタジオ録音はこちら →  
 
 
 
 
Apesar de Você
これも当時の政権への批判を匂わせた歌詞  ですが、
不思議に軍の検閲をくぐり抜け、民主主義を熱望する多くの
ファンの人気を集めた曲。しかし10万枚が売れた後、
検閲の対象となりレコードが姿を消したそうです。
MPB-4とクアルテート・エン・シーがコーラスに加わったサンバ。
 
 
 
 
 
タイトルをクリックすれば曲を聴くことができます。
() 表示のない曲は シコ・ブアルキ の作詞/作曲。
 

 1. Feijoada Completa  2:51     
 2. Cálice  feat. Milton Nascimento   4:01       
      (Chico Buarque, Gilberto Gil)  
 3. Trocando Em Miúdos  (Chico Buarque, Francis Hime)  2:52       
 4. O Meu Amor  feat. Elba Ramalho , Marieta Severo   4:03       
 6. Até O Fim  2:24   
 7. Pedaço de Mim  feat. Zizi Possi   3:17  
 8. Pivete  (Francis Hime, Chico Buarque)  2:28     
 9. Pequeña Serenata Diurna  (Silvio Rodríguez )  2:22   
10. Tanto Mar  1:54   
11. Apesar de Você  3:55    

☆  YouTube  (全曲)  33分12秒

 
 
 

"Chico Buarque" の詳細は →