1980年のアルバム(その36 Empty Glass / Pete Townshend)
1980年のアルバム・シリーズを続けていますが・・・
1978年9月、Keith Moon死去・・・
The Whoは、Kenney Jonesを新メンバーに加えて、続行を発表しますが・・・
1979年に、彼らの歴史というか、集大成と言うべき The Kids Are Alright公開
アンソロジーというべき、サウンド・トラック盤もリリース
またアルバムQuadrophenia(「四重人格」)を基にした映画 Quadrophenia(「さらば青春の光」)製作、公開
これは、'70年代と共にThe Whoの終焉を示しているようでした。・・・
そしてそれを示すかのように、'80年代幕明けと同時に登場したのが・・・
Pete Townshend
3枚目(ソロ名義では2枚目)のアルバム、タイトルは・・・
Empty Glass
Atcoレコードよりリリース
大手ワーナー・ブラザーズの傘下ということもあり、日本盤もすぐに発売
自分は、輸入盤で購入しました。
レコーディングは、1979年11月19日~1980年1月7日
ロンドン Wessex Studios、Eel Pie Studios、A.I.R.Studiosにて・・・
Pete Townshendヴォーカル、ギター、シンセサイザー
主要メンバーは・・・
前作Rough Mixからの付き合いで、その後ずっと Whoのサポート・メンバーでもあり、まさにPeteの片腕とも言える・・・
John "Rabbit" Bundrickキーボード🎹
後にBig Countryを結成する Tony Butlerベース
Jeff Beckとの来日公演で日本でもお馴染み Simon Phillipsドラムス
エンジニアリングは、Bill Price、Steve Nye
マスタリングは、ロンドン CBS Studiosにて、Ted Jensen
マネージメントは、Bill Curbishley、アシスタントは、Chris Chappel
プロデュースは、Chris Thomasです。
アルバム・ジャケット
スリーブ・デザインは、Bill Carlos Clarke、グラフィックは、Richard Evans
「このアルバムは、妻Karenに捧げる・・・」
「Rough Boysは、子供たちEmma、Minta、そしてSex Pistolsに捧げる・・・」
そのようにクレジットされていました。・・・
アルバム全曲、Pete Townshendの作品です。
A面1曲目、バグパイプのようなシンセサイザーによるイントロ、徐々に盛り上がり・・・
Rough Boysでスタート、最初からパワー全開といったPeteの歌
前述の通り、まさに Sex Pistolsに対抗するようなストレートナンバー
途中、静かになるところは、Peteならではの曲作りでしょう。
ここでのドラムスは、Kenney Jonesです。
アルバムから、第1弾シングルで、全米 No.89、全英 No.39となっています。
2曲目、ギターのカッティングでフェイドイン・・・Peteが歌う・・・
I Am An Animal、Peteがじっくり聴かせるミディアム・テンポのナンバー
途中、アコースティック・ギターでフォーク&カントリーの曲調に・・・
自分を色々なものに喩えたユニークな歌
尚、SimonのドラムスはKeith Moonを思わせるところもあります。・・・
3曲目、流れるようなピアノ🎹の速弾きから・・・
And I Moved、ピアノ🎹とともに正確なリズムを刻むドラムス
シンセサイザーも効果的に挿入され、Peteの歌に緊迫感が増してきます。
4曲目、キーボード音のイントロから、軽快なリズムとなって・・・
Let My Heart Open The Door 、Peteがノリよく歌うポップなナンバー
途中、メロディアスな曲調が入るところも、Peteならでは
アルバムから第2弾シングル、全米 No.9
なんと The Whoの関連でも、I Can See For Miles(1967年、全米No.9)以来の全米TOP10 入り、1980年の年間チャート No.59
カナダ No.5、オーストラリア No.82、全英 No.46、世界中で大ヒット
邦題は「ハートの扉」、この後の時代の音楽シーンにおいて、このナンバーのその音作りの影響は多大であると思っています。
5曲目、ドラムスが響いて、いきなり力強い歌
Jools And Jim、「ジュールスとジム」
ニュー・ウェイヴ、パンク風に勢いよく突っ走って・・・
叙情的な部分は、高音で歌うところが、Peteらしいところ
ドラムスは、James Asher
最後は力強くエンディング、シンバルの音が余韻を感じさせます。・・・
B面1曲目、ギターのカッティング、レゲエのリズムへ・・・
Keep On Working、ややリラックスしたムードで歌うPete
フラメンコ風なギターも入り、ドラムスは、James Asher
多重録音によるコーラスも盛り上げます。
アルバムから第4弾シングルとしてリリース、あまりヒットはしなかったようで、全米でのチャート・インは、ありませんでした。・・・
2曲目、速弾きのギターのカッティング、ドラムスも響いて・・・
Cat's In The Cupboard、「カップボードの猫」
アップ・テンポで力強く歌うPete
終始、歌をバックアップするハーモニカは、Peter Hope-Evans
スピード感溢れるパワフルなナンバーです。
3曲目、ホーンを思わせるシンセサイザーのイントロから、キーボード、そして・・・
A Little Is Enough、そしてアップ・テンポに、彼の結婚について歌った歌
インドの指導者Meher Babaにもインスパイアされた内容・・・力強く歌うPete
シンセサイザーの導入等、Whoの時同様、Peteらしいサウンド
ここでのドラムスは後にBig Countryを結成する Mark Bizezicki
アルバムから第3弾シングル、Let My Love Open The Door に続いて・・・
期待されましたが・・・全米No.72でした。
4曲目、ギターのハードなピッキングに合わせて力強く歌うPete
Empty Glass、アルバム・タイトル曲
実は、The WhoのWho Are Youのために書かれたナンバー
ハードなロック・ナンバーですが、途中、メロディアスなパートが交互に入り・・・
最後はギターのピッキングで静かにフェイドアウトしていきます。・・・
5曲目、ハードなギターのカッティング、キーボードも加わって・・・
I'm Gonna Get Ya、「ゴナ・ゲト・ヤ」
Pete自身による多重唱の歌のかけ合い、パワフルなロック・ナンバー
途中、ピアノ🎹がフィーチャーされ、インストゥルメンタル・パートに・・・
静まったところで、Peteの歌が再び入り、盛り上げて・・・力強くフィナーレです。
CDの時代になり、2006年リリースの米国 Hip-O盤と日本のインペリアル盤には、ボーナス・トラックとして・・・
I Am An Animal (Demo Alternate Vocal Version)
Keep On Working (Demo Alternate Vocal Version)
And I Moved (Demo Alternate Vocal Version)
I'm Gonna Get Ya (Work In Progress Long Version)
以上4曲が、追加収録されています。
またシングル Let My Love Open The Doorリリース時、B面には・・・
Pete Townshendが、ロック・オペラ Lifehouseのために書いた・・・
Greyhound Girlが収録されていました。・・・
ここに登場した通り、全米アルバム・チャート最高位 No.5
全米で、プラチナ・ディスク獲得
1980年の全米年間アルバム・チャート No.60
全英 No.11、オーストラリア No.28、ニュージーランド No.21、ノルウェー No.40・・・世界的にほぼThe Whoのアルバムと同等のビッグ・セールス
さすが、Whoのブレイン、それを立証したようでした。
Keith Moonの死で落ち込んで、ドラッグにも・・・
そんな精神的にも不安定な時期だったようですが、皮肉にもそういう追い詰められた時期にいい作品は生まれるもの・・・
激しい曲にも必ず叙情的な部分が出てくる・・・
そんなPeteならではの傑出したナンバーが揃っている
それがこの Empty Glass
Let My Love Open The Doorのヒットも大きかったですが・・・
'80年代にリリースされた The Whoの関連作品の中で最高傑作
そのように思っています。
また、Peteは、マルチ・プレイヤーでもありますが・・・
ここでは、ヴォーカル、ギター、シンセサイザーに専念
あとは、Rabbit、Simon Phillips等に任せ、プロデュースも Chris Thomas
これも却ってよかったのかもしれません。
尚、ここに参加している Tony ButlerとMark Bizezickiが、この少し後に、Stuart AdamsonとBig Countryを結成することも特筆すべきことかもしれません。・・・
尚、同じ年に、Roger Daltreyは、髪を短くして、映画McVicarに出演
彼の4枚目のソロ・アルバムといえるサントラ盤 McVicarは、何と全米では彼最大のヒット・アルバム(全米No.22)に・・・
またこのサントラからの Without Your Loveも全米No.20とソロ名義で最大のヒット曲となりました。(2012年のRoger Daltrey来日公演でも歌われました。・・・)
活動続行を表明したThe Who
'80年代は、Pete Townshend、Roger Daltrey
ソロでのスタートとなったのでした。