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(本好きな)かめのあゆみ

かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

700ページ近い長編。

 

あまりの分厚さにためらいながらも

読み始めると

すぐに作品の世界に引き込まれた。

 

独特の文体ゆえ

調子がわるいとぜんぜん読めないこともあるのだが

いまは調子がよいのか

ぐいぐいとページが進んだ。

 

気持ちいい。

 

この一人称のぐだぐだな感じ。

 

ひとを食って

自分さえも食ったような感じ。

 

原発事故をほうふつとさせる

みたいな評もあったような気がするが

あまりそういうのに囚われずに

純粋にこの荒唐無稽な世界観と

冷徹で滑稽でぐずぐずで下劣で毒のある人間観に

ひたっていればいい。

 

なんでもなにかのメタファーと思うのはよくない。

 

ヨメコビドッグパーク

私の犬

舵木禱子

草子

日本平三平

光柱

日本くるぶし

正しいバーベキュー

ひょっとこ

栄光

日ノミココ

見ノ矢桃子

ヨーコ

抜け作

地下駐車場

大輪菊男

白目の男

地下邪都

黒い虫

国土軸の歪み

大敗の渚

萱子

黒い奥森に住む男

岩戸

 

無茶苦茶な設定で怪しげな登場人物たちなのに

妙にリアリティーがあるのが

この作家のおもしろさ。

 

ストーリーにももしかしたら何かの意味があるのかもしれないけど

そういうのを抜きにして

どのページもものすごくたのしい。

 

特に

ままならぬ犬たちに翻弄される飼い主たち

とか

ひょっとこのひどい扱われよう

とかが

いらいらしながらも目を覆いながらも

すごく印象に残った。

 

ところで

ぼくも栄光に入りたい。

 

 

 

 

 

--ホサナ--

町田康

  走り去る電車を見送った後、振り返ると駅の向こうに巨大なモニュメントがそびえたっているのが見えた。

 白くて長い塔。まるで大地から圧倒的な生命のエネルギーが噴き出しているようなその威容。

 モニュメントの周囲にはこの駅のほかに大きな建造物はない。広大な敷地の公園のなかにこの巨大なモニュメントとモノレールの駅があるだけだ。

 空は灰色の厚い雲に覆われていて、すでに光が差し込むほどの雲の切れ間もなくなり、いまにも雨が降り出しそうだった。

 濡れるのは嫌だな。

 しかしいまは、ひろびろとした空間に出て空気を思い切り吸い込みたい気分の方が強いので、迷いながらも駅を出た。

 さっきの男たちはこちらが何者か気付いていなかったのだろうか? 公園のなかを歩きながら考える。

 目的地がないと歩きにくいので、とりあえずモニュメントを目指す。

 ラベンダーの香りが充満する公園。この匂いはあまりにも月並み過ぎて好きではない。ほんとうは気持ちのいい香りのはずなのに、いろんなところで嗅ぎすぎて、すでに香りのインフレーションが起こり、価値が暴落している。

 けれどもいまは降り出しそうな雨の匂いと混ざり合って、少しは気分を落ち着かせてくれるような気もする。匂いのブレンドというのも悪くない。

中野信子さんの本を読みたくて読んでみた。

 

脳科学者の中野信子さん

批評家の中野剛志さん

評論家の適菜収さん

の対談。

 

脳科学

社会学

哲学

経済学

などの知見を基に

個人的な見解を好き放題にしゃべってた。

 

読み始めは

おっさんふたりうるさい

中野信子さんにもっとしゃべらせろ

と思っていたのだが

途中からは無茶苦茶ではあるものの

それなりにおもしろい部分もあり

居酒屋トーク的にたのしくもあった。

 

まあでもあくまでも中野信子さん以外は居酒屋トークなので

これで世界を動かすことはできないけどな。

 

実際に世界になんらかのアプローチをおこなって

よくもわるくもなにかを変えているひとからしてみたら

しょうもない話でしかないわけだけど。

 

保守とかリベラルとか右とか左とか

もうそんなことばには辟易としていて

レッテル貼りには意味がありませんよ

ってあらためて思った。

 

保守といわれているひとの

実態はぜんぜん保守じゃないし

リベラルといわれているひとの

実態も保守っぽかったりするし。

 

それぞれの支持者が

自分に都合のいい部分だけを切り取ってそうみてるだけ。

 

まあ

誰かあるいは何かの思想に全部共感する

なんてあるわけないしあったらあぶないけどね。

 

おわりに

のところで

社会科学がどうして進歩しないのか

っていう部分の意見はなるほどなと思った。

 

人間の営みを深く知ろうとするとそれなりの経験が必要で

それにはどうしてもひととおりの世代を自分が経験する必要がある。

 

自然科学みたいに若くても才能があればいいってもんじゃない。

 

頭だけでは無理っていう。

 

そういうふうに考えると

社会科学の分野ではまだまだチャンスがあるわけだ。

 

主題とは逸れるが

左翼は漢字をひらがなにひらくのが好きです

のくだりには

やばい

と思った。

 

ぼくってけっこうひらがなにひらきがちなので。

 

でも

ぼく

についてだけいえば

としないで

ぼく

とするのには理由があって

のなかに

しもべ

っていう語感が含まれてるのがいやなんだよね。

 

 

 

 

 

 

--脳・戦争・ナショナリズム 近代的人間観の超克--

中野剛志 中野信子 適菜収