(本好きな)かめのあゆみ -47ページ目

(本好きな)かめのあゆみ

かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

  近づいてきて気付いたのだが、少女はたしかに少女らしい服装と髪型をしているものの、背の高さはおとなとかわりがない。

「ここの鳥たちはひるこが大好きなの。だからあたしがひるこをあげているのよ、ほら」

 少女と思えた女の子は得意げに両方の手のひらをあわせてこちらに差し出した。そこにはうごめく大量のひるが載せられていた。手からあふれてこぼれ落ちるのもいる。もちろん彼女の手のひらは気味の悪い粘液でねっとりとしている。

 目の前に突如差し出されたそれらにひるみながらも、精一杯の問いを投げかける。

「ひるこっていうのはひるのことかい?」

「ひるこはひるこよ。いざなきといざなみが最初にまぐわって生まれた子、国産みよりも先に生まれた子よ。生まれた時から骨がなくって、ひとやけもののからだに吸盤で張り付いて、血を吸って生きるのよ」

 この子はいったいなんの話をしているのだろう。神話かおとぎ話か。どちらにしても奇妙な話だ。

 黙って聞いているとなおも続けて言う。

「ひるこはかわいそう。だっていざなきといざなみに捨てられちゃう。骨がないからだって。ひるこが生まれたのはいざなきといざなみのまぐわい方がなってなかったからだって。どっちが先に声をかけたっていいじゃない、そう思わない?」

  それにしても問題は再び手元に戻ってきたこの茶封筒。なかにはあのパンフレットのような冊子がそのまま入っていた。

 結局、あの男たちの情報は何も集めることはできなかった。

 組織のイコンでありキーでもあるというコーネルのカシオペア#1を手に入れていたという情報だけでも主任に報告しておかなければならない。

 気は進まないが、やはり事務所に行かなければならないだろう。

 それでもまずは、空気を入れ替えて気分をあらためることが先決だ。歩くことは気分を変えるのにちょうどいい。

 うつむきながら歩いていると、突然、耳元でばさばさという激しい音が響き、その次の瞬間、たくさんの鳥が目の前を横切った。

 すこし遅れてなまあたたかい鳥の匂いが鼻をつく。

 誰かが鳥を呼ぶために餌を撒いたらしい。

 視線を上げると、鳥の群れが撒かれた餌をせわしなくついばんでいるそのなかに、小さな女の子が立っていた。

 つぶやくような声で歌っているようだ。

 餌をついばむ鳥の群れのなかで歌う少女。その異様な光景に目を奪われる。

 ひーるこ ひるこ うまれたひるこ ほねなしひるこは あしぶねにー いれてながして さようならー

 ひーるこ ひるこ うまれたひるこ ほねなしひるこは あしぶねにー いれてながされ こんにちはー

 視線を少女の足元の鳥の群れに戻す。

 鳥のくちばしには、なにやら魚釣りで使う白い練り餌のようなものが咥えられている。目を凝らすとその餌はわずかに動いているようにも見える。生き物なのか。

「それはひるこよ」

 少女が小さく声をかけて近づいてきた。

笑福亭鶴瓶さん自身のことばや

著名人から鶴瓶さんに対することばを

まとめて整理したって感じの新書。

 

どんなんかな

って思って読みだしたんだけど

最初の方はうなされそうになった。

 

別にこわいことを書いてあるわけでも

へたなわけでもない。

 

鶴瓶さんの生き方が凄すぎて

こころのなかに入り込まれるような錯覚

を覚えてしまったせいだと思う。

 

それくらい鶴瓶さんのひとへのアプローチは凄い。

 

無遠慮とか図々しいとかデリカシーがないとかと紙一重。

 

家族に乾杯

とか20年前に始まったころには

居たたまれなくて観ていられなかった。

 

ずかずかと他人のなかに入っていくあの感じ。

 

でもぼくも年をとったせいで

家族に乾杯

はめっちゃ好き。

 

ぼくは年をとったから好きになったけど

若くても

家族に乾杯

が好きなひとっているよね。

 

鶴瓶さんは

みんなに好かれたい

っていうけど

それってすごくむずかしいしたいへん。

 

じぶんをかなり抑えないとできないような気がするし

でも抑えて好かれてもそれはほんとうじゃないような気がするし。

 

鶴瓶さんも40年間

みんなから好かれるためのふるまいを

意識的にやってきたから現在のポジションに到達している。

 

はじめからみんなに好かれていたわけじゃない。

 

ぼくなんかは

みんなに好かれたい

っていう発想はあんまり好きじゃないんだけど

鶴瓶さんくらい律義にまめに徹底的に

好かれるためのふるまい

を実践してきたひとには敬意を表したい。

 

それはタモリさんが鶴瓶さんに接するように。

 

この本は鶴瓶さんの公認ではないと思うけど

壮絶な鶴瓶さんの生きざまが描かれていて

なかなか興味深かった。

 

鶴瓶さんが近づいてくると

みんなが自然と笑顔になる

っていうのがいいよね。

 

 

 

 

 

--笑福亭鶴瓶論--

戸部田誠(てれびのスキマ)