それにしても問題は再び手元に戻ってきたこの茶封筒。なかにはあのパンフレットのような冊子がそのまま入っていた。
結局、あの男たちの情報は何も集めることはできなかった。
組織のイコンでありキーでもあるというコーネルのカシオペア#1を手に入れていたという情報だけでも主任に報告しておかなければならない。
気は進まないが、やはり事務所に行かなければならないだろう。
それでもまずは、空気を入れ替えて気分をあらためることが先決だ。歩くことは気分を変えるのにちょうどいい。
うつむきながら歩いていると、突然、耳元でばさばさという激しい音が響き、その次の瞬間、たくさんの鳥が目の前を横切った。
すこし遅れてなまあたたかい鳥の匂いが鼻をつく。
誰かが鳥を呼ぶために餌を撒いたらしい。
視線を上げると、鳥の群れが撒かれた餌をせわしなくついばんでいるそのなかに、小さな女の子が立っていた。
つぶやくような声で歌っているようだ。
餌をついばむ鳥の群れのなかで歌う少女。その異様な光景に目を奪われる。
ひーるこ ひるこ うまれたひるこ ほねなしひるこは あしぶねにー いれてながして さようならー
ひーるこ ひるこ うまれたひるこ ほねなしひるこは あしぶねにー いれてながされ こんにちはー
視線を少女の足元の鳥の群れに戻す。
鳥のくちばしには、なにやら魚釣りで使う白い練り餌のようなものが咥えられている。目を凝らすとその餌はわずかに動いているようにも見える。生き物なのか。
「それはひるこよ」
少女が小さく声をかけて近づいてきた。