追記(2018年3月23日)大阪の高校入試、トップ10校と、統廃合された高校の差とは? | 作家・土居豊の批評 その他の文章

追記(2018年3月23日)大阪の高校入試、トップ10校と、統廃合された高校の差とは?

追記(2018年3月23日)

 

 

統合が決まっている長野北、柏原東も定員割れ。今年新たに、勝山、藤井寺工科も3年連続定員割れで統廃合の候補に。

 

大阪の高校入試、トップ10校と、統廃合された高校の差とは?

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12362399749.html

 

 

 

 

 

 

 

大阪の高校入試、トップ10校と、統廃合された高校の差とは?

 

 

前の記事では、近年の大阪府立高校の入試がいびつであることについて、トップ10の高校と、定員割れを起こしている高校との差を指摘した。

 

 

※前回記事

大阪の高校入試はトップ10校と定員割れの学校の扱いの違いがあまりにいびつ

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12362077232.html

 

 

 

だが、この現状に至るまでに、もっと深刻な問題が起きていることを、引き続き指摘しておきたい。

それというのも、

橋下府政下での教育改革によって、府立高校トップレベル校は確かに有名国立大への進学を増やすことができた。その反面、生徒数減少と府財政改善を理由に、それまであった府立高校がどんどん統廃合、廃校になっていったのだ。

団塊ジュニア等の生徒急増に対応するべく大量に増設された学校を、ある程度整理する必要はあっただろう。しかし、その手法はどうみても強引であり、同時に大阪府下の私立高校の授業料が無償化された流れをみると、府立高校の生徒を私立へ誘導する意図があったように思えるのだ。本来、生徒減の影響で潰れるかもしれなかった私立高校が、息を吹き返したという結果がその状況証拠となっている。

一方、府立高校の方は、毎年のように変わる入試制度に振り回されて、過度な高倍率の学校と定員割れの学校に二極分化していく。滑り止めの併願私立に生徒を奪われる形となった府立高校は、その年度は定員割れとなるが、そのことが多くの高校にとって致命傷となっていった。

つまり、以下の資料のように、3年連続定員割れの高校は整理の対象にされてしまう仕組みが作られていたからだ。

 

 

※参考資料

(1)

大阪府では、平成26年度から平成30年度までを計画期間とする「大阪府立高等学校・大阪市立高等学校再編整備計画」を策定し、高等学校の再編整備を推進しています。

大阪府立高等学校・大阪市立高等学校再編整備計画(平成25年11月策定)

 

http://www.pref.osaka.lg.jp/kotogakko/saihenkeikaku/index.html

 

「大阪府立学校条例」第2条第2項の「入学を志願する者の数が三年連続して定員に満たない高等学校で、その後も改善する見込みがないと認められるものは、再編整備の対象とする。」との規定が適用される場合における「改善する見込み」については、志願者数の推移や、当該地域における将来の中学卒業者数の推計に加え、今後の都市計画の状況、近隣地域における再編整備等の状況、当該高校における生徒募集活動等を総合的に勘案するものとする。

 

(2)

平成26年度の方針

平成26年度は、募集停止、エンパワメントスクールへの改編及び普通科総合選択制から普通科専門コース設置校への改編に着手する。

募集停止を行う学校

池田北高校 咲洲高校

 

平成26年9月16日 大阪教育合同労働組合高校支部から池田北高校を募集停止とする案の撤回を求める要望書の提出

平成26年11月11日「池田北高校・咲洲高校を守る会」から、計画案の撤回を求める署名の提出(34,580筆)

 

(3)

平成27年11月27日

西淀川高校

平成28年度より入学者選抜制度を抜本的に変更することから、平成28年度入学者選抜における志願動向を見極めた上で、平成29年度選抜からの募集停止を決定する。

再編整備の手法については、平成28年中に決定する。

 

平成27年7月16日 「西淀川高校を支える会」から、西淀川高校の存続を求める署名の提出

追加提出7月28日・8月28日・9月1日・10月1日11月16日(合計15,365筆)

 

平成27年11月16日 「大阪の高校を守る会」から、府立学校条例の撤廃と4校(西淀川高校・能勢高校・池田北高校・咲洲高校)の存続を求める署名の提出(11,403筆)

 

 

 

 

以上の資料に出てくる、定員割れのため整理対象となった府立高校のうち、西淀川高校と池田北高校は、実に象徴的だ。

西淀川高校は大阪府の西部にあり、様々な要因で定員割れを起こしやすい学校の一つだったが、この事態に署名活動が起こり、ローカルニュースでも取り上げられていた。しかし、ニュースの中で当時の松井府知事は、この高校を視察した際、教室で授業中に居眠りしている生徒に声をかけたりして、だらしない印象を抱かせようとしていたかに見えた。

結果的に、署名活動もむなしく他の地域の高校(北淀高校)と統合されてしまうことになった。

 

一方の池田北高校の場合、さらに状況は複雑だった。この高校は、大阪府の北部の山間部にあり、長く音楽専門のコースをもつ高校として独自の特色を打ち出していた。にもかかわらず、地の利が悪いという点がマイナスしたのか、整理対象になってからも近隣の高校との統合話が噂されながら、結局廃校とされてしまった。この高校の場合も、存続を求める署名活動が行われながら、聞き入れられることはなかった。

 

この2校以外にも、多くの高校が定員割れによる整理対象になって統廃合されていったのだが、そもそも定員割れを起こすようになった原因は、その高校自体に原因があるのではない場合が多い。橋下府政での改革による学区改変や入試制度変更、中学高校間の進学指導がやりにくくなる制度改正などが重なり、結果的に私立高校の方に生徒が誘導されていったことが、根本的な原因だと思われるのだ。

まず、かつて「偏差値輪切り」と悪評がありながらも、それなりにうまく働いていた中学高校間の進路指導が、政策変更によってうまくいかなくなったことが大きい。その結果、中学3年の進学希望と高校の生徒定員のミスマッチが起きた。さらに、併願の私立高校を授業料無償化することによって、そちらに生徒が誘導される流れが起きた。必然的に、多くの府立高校が定員割れを起こし二次募集をする羽目になる。しかし、残念ながら府立の二次募集を受けるには、先に私立高校の入学金を納めなければならないタイミングなのだ。

このように、まるで私立高校に受かっていたらそちらに行けというような流れができていった。その結果、これまで中堅の位置付けだった府立高校が多く定員割れを起こすことになる。なぜかというと、滑り止めの併願私立が授業料無償なので、生徒は本来手の届かないランクの高校を無理に受けたり、逆にどうしても私立に行きたくない場合は安全策で府立のランクを落としたりして、その結果、中堅校が敬遠される結果になったのだ。

その流れを反映して、ここ数年、ハイレベルのトップ10校が意外に倍率が高くないのに対して、その少し下のランクの府立高校は倍率が異様に高くなる傾向がでてきた。その下の中堅校は定員割れを起こし、さらに下のランクになると逆に倍率が上がる、という逆転現象も見られるようになった。

このように、ここ数年、大阪府立高校の入試は大混乱に陥っているといって過言ではない。その原因は、橋下府政から市政へと続いた8年間の、教育改革の当然の結果だといえる。

果たして、これでいいのかどうか? 府民、市民はよく考える必要がある。

公立高校は、ハイレベルの大学進学のためにあるのかどうか? 大多数を占める中堅の学力生徒が、実力に見合った公立高校にスムーズに進学できず、無理したり逆に過度に安全策をとるために、進学希望と定員の不一致が起きて大量の不合格が出たり、大量の定員割れが出たりする。それが今の大阪府の高校入試だ。

これでは、生徒は安心して高校進学を考えられないのではないだろうか?

ハイレベルの学校を目指す生徒は、有名私立も選択肢に含めて、塾の指導を主として着々と受験対策をしている場合が多いだろう。一方、そこまでハイレベルを目指さない生徒には、過度に受験対策をしなくても学校の成績を普通にとっていれば、学力相当の高校に進学できるというような仕組みが、必要ではないだろうか。その仕組みを、かつての「偏差値輪切り」は、不十分ながらもこなしてきたと思うのだ。

長年の知恵と工夫で続けられてきたその仕組みを、橋下府政で破壊した結果の大混乱が、現在の大阪府の高校入試だと思える。

一体、公立高校の存在意義は、一部の生徒を有名国立大に入れることだけでいいのだろうか? 大多数の生徒を学力相当の高校で学ばせることができた、かつての「偏差値輪切り」の方が、まだましではないだろうか。

 

※以前の記事

 

大阪府公立高校入試、国語C問題(特に漢文)は難しすぎる

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12360739972.html

 

大阪府の公立高校の希望調査をみて〜8年間の橋下維新時代で大阪の公教育は学力格差拡大、経済格差も固定した

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12353079868.html

 

大阪府公立中学のチャレンジテストは中学校区の格差を露わにする

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12345832864.html

 

http://ameblo.jp/takashihara/entry-12255175654.html

 

大阪府の公立中学チャレンジテストへの疑問

http://ameblo.jp/takashihara/entry-12237697831.html

 

大阪の中学校のチャレンジテスト騒動、その後

http://ameblo.jp/takashihara/entry-12239515212.html

 

大阪府の公立高校の入試を元に戻してほしい

http://ameblo.jp/takashihara/entry-12133138304.html