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藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ

私のテーマは6つあります。
(1)ビジネス書の紹介(2)医療問題 (3)自分ブランド力
(4)名言 (5)ランキング (6)ICT(情報通信技術)
このブログでは、主に(1)~(4)を扱っています。
(5)と(6)はそれぞれ別のタイトルで運営しています。

1兆円達成で挑む次の10年
2015.07.13

平野 信行(ひらの・のぶゆき) 氏

[三菱UFJフィナンシャル・グループ代表執行役社長]





 2005年に三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が

 発足して今年でちょうど10年を迎えるわけですが、

 私どもが積み重ねてきた努力が一定の成果を上げた

 と言うことはできます。しかし、今なおできていない

 ところ、あるいは挑戦しなくてはいけないところが

 むしろ明確になりました。次の10年をどう考えようか

 ということから見つめ直し、このほど中期経営計画を

 1年かけてまとめたところです。


 シニア世代を中心に個人金融資産は1700兆円規模あると

 言われていますが、これを次の世代に継承していくという

 動きが強まるのは間違いありません。「運用」と「継承」に

 大きな流れができるでしょう。


 大企業と中堅・中小企業の金融サービスを別々に捉える

 のではなく、両者をつなぐ役割が果たせるのもメガの強み

 ですね。


 注目している分野の一つが、金融とEコマース(電子商取引)

 の境界領域です。金融機関がEコマースをどう扱うのか、

 この分野に参入する自由度は欲しいなと思っています。

 具体的には決済のビジネスを「B to B プラスC」に広げて、

 企業間取引と消費者をつなげる新しいサービスが提供でき

 ないかと考えています。


 Eコマースの運営企業は決済や取引履歴を得ることができ

 ます。これを基に私どもがテナント企業に運転資金を提供

 するなどして、信用力を下支えできないだろうかと考えて

 います。これは必ずしも銀行が手掛けなくてもいい。

 例えば、グループ傘下の三菱UFJニコスはクレジットカード

 会社でありながら、ペイメント(代金決済)サービスの

 機能も持っていますから。


 私どもは国内にしっかりと軸足を置いて、そのうえでさら

 なる成長の機会を海外に求めていきます。これは次の10年も

 揺るがない。

 なぜかというと、これは2008年秋のリーマンショックの時に

 痛いほど経験したことですが、国内に比べて海外の事業基盤

 が過大になった金融機関が経済環境の悪化に対していかに

 脆弱なことか。端的にはスイスの金融機関がそうですし、

 オランダ、英国など枚挙にいとまがありません。

 でも私たちは違う。米中に次ぐ世界3位かもしれないけど、

 日本という極めて大きな経済圏を持っている。


 規模を追うよりも市場、お客様ごとにきめ細かく対応すること

 が海外戦略のコアです。


 まずシャープが様々な課題を抱えていることは間違いありま

 せん。私どもは2013年、金融支援だけでなく人材も送り込み、

 一緒に経営改革に取り組んできたという思いです。


 私どもも反省するところは多くあります。

 だからこそ、シャープが持続的な発展をできるように改めて

 支援していこうというわけです。


 今回は同じ過ちを繰り返してはいけないわけですから、

 私どもも思い切ったサポートを行うし、シャープにも思い切った

 改革をやってもらう。先だって発表された事業計画では詳細が

 明らかになっていないところや課題がいくつもある。

 だから不退転の覚悟で迅速に意思決定し、具体的な施策を

 実行に移してもらう。それを一緒になってフォローしていきたい

 と思います。


 どちらかと言えば三菱グループが従来、率先して株式をお互い

 に持ち合ってきたのは事実でしょう。でも三菱グループでも

 経営の課題は率直に申し上げる。先方は銀行のそのやり方は

 悪いんじゃないかと率直に言われます。その関係はどの企業

 とも同じです。
 

  (PP.082-085)




三菱UFJフィナンシャル・グループ代表執行役社長 平野 信行 氏

三菱UFJフィナンシャル・グループ代表執行役社長 平野 信行 氏
(『日経ビジネス』 2015.07.13 号 P.083)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.13






タイトルの中の「1兆円達成」とは、「前記決算で最終的
なもうけを示す連結純利益が邦銀で初めて1兆円を超え」
(P.082)たことを指しています。


金融機関のトップとして、平野さんは一歩踏み込んだ
意見を述べています。


「私どもは2013年、金融支援だけでなく人材も送り込み、

 一緒に経営改革に取り組んできたという思いです。


 私どもも反省するところは多くあります。だからこそ、

 シャープが持続的な発展をできるように改めて支援して

 いこうというわけです」



シャープは現在、相当厳しい状況にあります。
以前、『日経ビジネス』は「シャープの解体は免れない」
という主旨で記事を掲載したことがあります。



 「一体全体、誰が事業を見るんだ」

 方志(教和専務)と中山(藤一専務)を取締役から

 外す人事に、各工場から悲鳴が上がった。

 液晶パネルや電子部品の技術に明るい方志と、

 複写機事業に精通した中山は現場の人望も厚く

 「自力再建」を引っ張るけん引車だった。


 髙橋(興三社長)が何を言おうと、銀行には逆らえ

 ない立場に今のシャープは置かれている。

 方志、中山が姿を消した今、「解体」の流れを止め

 られる人間は、社内に残っていないだろう。

 もちろん、今すぐ「解体」というわけではない。

 事業売却には買い手が必要だし、撤退する場合も

 顧客に迷惑はかけられない。
 

  (『日経ビジネス』 2015.05.25 号 
  「それでもシャープは解体される」 P.020)


三菱UFJフィナンシャル・グループは、シャープを支援し
続けることができるのか、という点が一番の注目点です。





キーセンテンス


キーセンテンスは、

 注目している分野の一つが、金融とEコマース 
 (電子商取引)の境界領域 
です。


このキーセンテンスに続いて、平野さんは次のように
述べています。


「Eコマースの運営企業は決済や取引履歴を得る

 ことができます。これを基に私どもがテナント企業

 に運転資金を提供するなどして、信用力を下支え

 できないだろうかと考えています」


つまり、三菱UFJフィナンシャル・グループは、
Eコマースの運営企業(アマゾンや楽天など)と、
テナント企業の間に入り、テナント企業に資金面の
サポートをしていきたいという意向の表明です。


それは、テナント企業にとって「金融機関の信頼性が
強みにな」(P.084)るからです。






私見



下の表をご覧ください。
世界のトップ1000銀行ランキングのベスト10の
顔ぶれです。


三菱UFJフィナンシャル・グループは10位に
ランクインしています。


ですが、徐々にランクが下がってきています。
一方、中国系銀行は4行がベスト10にランクイン
していて、しかも大きくランクアップしていること
がわかります。


The Top 1000 Banks in the World 2014

The Top 1000 Banks in the World 2014

The Top 1000 Banks in the World 2014
Financial Services Club Blog by Chris Skinner から



三菱UFJフィナンシャル・グループには、
何とかベスト10位内に踏み止まってほしい
と思います。


グローバルバンクとして、国内、海外で
プレゼンス(存在感)をさらに高めてもらい
たいものです。







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本当に役に立つビジネス書
何事にもなすべき時がある
仕事にロマンを感じ
深く考え、熱く行動


遠山 敦子(とおやま・あつこ)氏
[元文部科学相 公益財団法人トヨタ財団理事長]





今週の言葉


 旧文部省に女性キャリア官僚第1号として入省し、

 文化庁長官や駐トルコ大使などを経験して、

 小泉純一郎内閣で文部科学相を務めました。

 前例にとらわれない仕事を幾つも重ねながら、

 よく生き抜き、今に至ったと思う時があります。


 新米課長として情報図書館課長に就いた時に

 全国の大学を国際的なデータベースにつなげる

 学術情報のネットワークシステム作りに乗り出し

 ました。

 今から40年近く前のことで、上司にシステム構築

 の必要性を説いてもはじめは全く理解されません

 でした。役人の世界の常識では、上司に「ノー」を

 突き付けられたら「終わり」を意味したのですが、

 「それなら理解してもらえるために工夫しよう」と

 考えました。そこで、漫画を描くのが得意な方に頼み、

 システムのイメージをイラストに仕立ててもらったの

 です。上司や自民党の先生方などに賛同をいただき、

 このシステムは日の目を見ることができました。


 大臣時代で象徴的なのが、2002年1月に基礎教育の

 重要性などを訴えた「学びのすすめ」を出したこと。

 この年の4月から実施される予定の新学習指導要領に

 基づく学校教育は、いわゆる「ゆとり教育」と称されて

 いました。


 私は「このままゆとり教育路線を実施しては禍根を残す」

 と判断し、「確かな学力の向上に努めるべし」というメッ

 セージを教育界に発したのです。

 ゆとり教育推進派の方々からなどの反論や批判もあり

 ました。それでも、「何事にもなすべき時がある」との信念

 が揺らぐことはありませんでした。


 静岡高校、東京大学時代と周囲が男性ばかりの環境で

 過ごしたこともあり、1人で深く考え、その後に周辺を巻き

 込む習慣が身に付いていたことも身を助けました。

 難題に直面すると、私はいつもまず1人で熟慮しました。

 困難であるほどやりがいがあるからです。

 考え抜いている間にひらめく瞬間がある。直ちに専門家

 などと相談しながら解決までの戦略を描くのです。

 決めたら逃げずに断行、壁ができたら説得して突破して

 いく。過去にとらわれていては未来の展望は開けません。

 若い方に伝えるとしたら「仕事にロマンを感じ、深く考え、

 熱く行動せよ」でしょうか。


                    (2015.07.13 号から) 

 




元文部科学相 公益財団法人トヨタ財団理事長 遠山 敦子 氏

元文部科学相 公益財団法人トヨタ財団理事長
遠山 敦子 氏

「日経ビジネス」 2015.07.13 号 P.001
「日経ビジネスDigital」 2015.07.13






キーワード

キーワードは、 考え抜く です。



私たちはすぐに解決できないと思うと、
考えることをやめてしまいがちです。


ですが、遠山さんは考え抜いて、
信念を持てるまでに到達したら、専門家に相談し、
戦略を立てるそうです。


そして、最終的に自分で決め、決めたら実行する
―― 「自調自考自動(自分で調べ、自分で考え、
自ら行動する)」です。これは私の造語です。


正確に言いますと、「自調自考」は渋谷教育学園幕張
の教育方針をスローガンにしたものです。


学生のうちは、「自調自考」でよいかもしれませんが、
社会人になれば、これだけでは不十分です。
行動し、成果を出さなくてはなりません。


それで、「自動」を加えて「自調自考自動」としました。


まず、考え抜くことが大切です。
自分で考えたことに不備はないか、あれば何か。
それを知るために調べたり、専門家(詳しい人)に
質問し、課題を解決していきます。


あとは、行動あるのみ。


「仕事にロマンを感じ、深く考え、熱く行動せよ」
遠山さんのこの言葉は、若い人たちだけに当てはまる
ことではありません。


何歳になっても必要な心意気です。




ポイント

ポイントは、
 何事にもなすべき時がある 
です。



タイミングは大事ですね。
一度そのタイミングを失うと、二度目は、永久にやって
来ないかもしれません。


チャンスは誰にでもやってきますが、そのチャンスを
掴めるか掴めないかは、普段からの準備にかかって
います。


今、目の前にあるチャンスは二度とやってきません。
どんなことがあっても逃してはならないのです。


泥縄式(リアクティブ)ではチャンスを失います。
プロアクティブであることが、身を助けることになります。


毎日の少しずつの積み重ねが、時の経過とともに、
大きな成果を生み出します。


「1万時間」が何かのヒントを与えてくれるでしょう。
1日3時間ずつ継続して365日経つと、約1000時間に
なります。10年ですと約1万時間です。


アルクの「ヒアリングマラソン」という講座があります。
生の英語を毎日3時間ずつ1年継続して聞き続けると、
1000時間になります。


「1000時間英語を聞くこと」をアルクは奨励しています。


1000時間に達すると、英語耳ができるということです。
相手が言っていることが理解できなければ、話すことが
できないのは自明です。



私たちの普段の会話の中で、「一つのことを10年続け
たら、身に付けることができるよね」という言葉が出て
くることがありますね。


これが「1万時間」と10年との関わりです。


「10年、1万時間」


あなたは10年以上継続していることはありますか?


今までお話したことと少し異なるかもしれませんが、
私は『日経ビジネス』を、30年間定期購読しています。


30歳になってから購読し始め、先月末還暦を迎え、
30年になりました。もちろんこれからも購読し続けます。


「継続は力なり」は真実です。






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本当に役に立つビジネス書
『マキアヴェッリ語録』 (12)





『マキアヴェッリ語録』 塩野七生 新潮文庫
平成4年11月25日 発行


目次
第1部 君主編
第2部 国家編
第3部 人間編






マキアヴェッリ(日本ではマキャベリと表現されることが多い)
は『君主論』の著者として知られ、「マキャベリズム」が
人口に膾炙しています。


その思想を端的に表現する言葉は、
「目的は手段を正当化する」
です。


目的のためならどんな手段を講じてもかまわない、と解する
ことが多いですね。


実は、私もこの書を読むまではそのように解釈していました。
言葉を文脈の中で解釈せず、言葉が独り歩きすることの怖さは、
風説の流布でも経験することです。


福島第一原発事故以後、周辺にお住まいの方々は風説の流布
に悩まされ続けています。拡散した誤情報はさらに誤情報を加え、
拡大していきます。容易に訂正されることはありません。



話しを戻しますと、マキアヴェッリの実像はどのようなもので
あったのか、そして「目的は手段を正当化する」と言っている
ことの真意は何だったのか、を知りたいと思いました。


先入観を取り払い、大前研一さんが言う、「オールクリア
(電卓のAC)」にしてマキアヴェッリの説くことに耳を傾ける
ことにしました。


マキアヴェッリは、1469年5月3日にイタリアのフィレンツェで
生まれ、1527年6月21日に没しています。15世紀から16世紀
にかけて活躍した思想家です。500年位前の人です。


ニッコロ・マキャヴェッリの肖像画

ニッコロ・マキャヴェッリの肖像画 Wikipedia から
 


塩野七生(しおの・ななみ)さんは、「まえがき」に代えて
「読者に」で次のように記しています。塩野さんが解説
ではなく、また要約でもなく、「抜粋」にした理由を説明
しています。


尚、10ページ以上にわたる説明からポイントとなる言葉を
「抜粋」しました。




 この『マキアヴェッリ語録』は、マキアヴェッリの思想の

 要約ではありません。抜粋です。

 なぜ、私が、完訳ではなく、かといって要約でもなく、

 ましてや解説でもない、抜粋という手段を選んだのかを

 御説明したいと思います。

 第一の理由は、次のことです。

 彼が、作品を遺したということです。


 マキアヴェッリにとって、書くということは、生の証[あか]し、

 であったのです。


 マキアヴェッリは、単なる素材ではない。作品を遺した

 思想家です。つまり、彼にとっての「生の証し」は、今日

 まで残り、しかもただ残っただけではなく、古典という、

 現代でも価値をもちつづけているとされる作品の作者でも

 あるのです。生涯を追うだけで済まされては、当の彼自身

 からして、釈然としないにちがいありません。


 抜粋という方法を選んだのには、「紆曲」どころではない

 マキアヴェッリの文体が与えてくれる快感も、味わって

 ほしいという私の願いもあるのです。そして、エッセンスの

 抜粋ならば、「証例冗漫」とだけは、絶対に言われない

 でしょう。


 しかし、彼の「生の声」をお聴かせすることに成功した

 としても、それだけでは、私の目的は完全に達成された

 とはいえないのです。マキアヴェッリ自身、実際に役に立つ

 ものを書くのが自分の目的だ、と言っています。 

 

  (前掲書 「読者に」から PP.3-5、14)




マキアヴェッリの名言をご覧ください。


第1部 君主編



 今までにも幾度も述べてきたように、人の運の善し悪[あ]し

 は、時代に合わせて行動できるか否[いな]かにかかって

 いるのである。

 誰でも知っているように、ある者は激情のほとばしるまま

 に行動し、他の者は慎重に慎重を重ねたうえで行動を起す。

 それなのに、両人とも限界をふみはずし、失敗に終わって

 しまうことがある。

 反対に、誤りが少なく、幸運に恵まれた人々は、時代の

 流れを感じとり、それに合わせて行動して成功する。

 激情派か慎重派のちがいには関係なくだ。
 

                    ―― 『政略論』 ――

                              (PP.125-126)

         (034-1-0-000-511)
 



 


 人心を把握するには、厳格主義と温情主義のどちらが

 有効か、だが、いかに並程度の器量の持ち主への提言

 であろうと、いやそれだからこそ当り前の話だが、

 答えはは一つに決まるものではない。

 なぜなら、厳格主義でも温情主義でも、それがその人の

 性格を反映したやり方ならば、同じ効果を生むものだから

 である。

 また、効果の多少は、相手方の状態にもよる。

 相手が、断固とした処置を必要とした場合は、厳格主義が

 効果を発揮する。

 それが反対に、従来の行き方をそのまま踏襲していっても

 よい状態ならば、温情主義で充分だ。

  
                    ―― 『政略論』 ――

                              (P.133)

          (035-1-0-000-512)
 






 君主が民衆の憎しみを買うのは、どういう理由によるので

 あろうか。

 その理由の最大のものは、民衆が最も大切にしているもの

 を、君主が奪いとってしまった場合である。

 なぜなら、人間は、自分が最も大切にしていたものを奪われ

 たときの恨みを、絶対に忘れない。しかも、そのものが、

 日々必要なものである場合はなおさらである。必要を感ずる

 のは毎日なのだから、毎日、奪われた恨みをむし返すことに

 なる。

 第二の理由は、君主の尊大で横柄[おうへい]な態度にある。

 このまずいやり方は、とくに、抑圧された民よりも自由な民に

 対してなされる場合、非常に有害な結果をもたらさずには

 おかない。

 それは、精神的な被害だけで、民衆の憎悪を買うにとどまら

 ない。君主の横暴は、民衆の物質的な害までもたらさないでは

 すまないものだから、民衆を二重に、そういう君主を憎悪する

 するようになるのである。 

 それゆえ、民衆の憎悪は航海中の船にとっての暗礁[あんしょう]

 と同じと考え、それに激突しないよう警戒を怠ってはならないのだ。

 まったく、無為に憎しみを買うことくらい、上に立つ者にとって、

 無謀で思慮に欠けることはないのだ。


                    ―― 『政略論』 ――

                              (PP.134-135)
                              
          (036-1-0-000-513)
 








ポイント

上に立つ者が心しておかないとならないことが、
具体的に書かれています。


厳格主義と温情主義でどちらが有効か、
民衆(国民、社員)の憎しみを買ってはならないこと、
はリーダーが熟慮すべき事柄です。


やり方を誤ると、やり直しのできない事態を招くこと
があります。


安倍首相も、マキアヴェッリの声に真摯に耳を傾ける
必要がある、と私は考えていますが、あなたはどう
思いますか?



キーセンテンス

無為に憎しみを買うことくらい、上に立つ者にとって、
無謀で思慮に欠けることはないのだ。



リーダーに欠かせない能力の一つに、
思慮深いことがあります。


軽率な発言や行動は、国民を愚弄することですし、
本人の政治生命を縮めることになる、
と心得ておくべきです。


権限と責任は不可分なものであることが自覚できる
どうかによって、リーダーの器量の大きさが推し量ら
れます。


真のリーダーか、偽りのリーダーか。
それが問題です。



 弱みのなかで重視すべきことは一つしかない。

 真摯さの欠如である。これだけは見逃しては

 ならない。真摯さは、それだけでは何も生まない。

 だが真摯さの欠如、とくにリーダーにおける真摯さ
 
 の欠如は、悪しき見本となり諸悪の根源となる。
 

 (『プロフェッショナルの原点』 
  P.F.ドラッカー + ジョゼフ・A・マチャレロ 著
  上田惇生 訳 ダイヤモンド社 2008年2月15日
  第1刷発行 P.ⅳ)






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本当に役に立つビジネス書
『「リーダーの条件」が変わった』
「危機の時代」を乗り越える新しい統率力
小学館101新書 2011年9月25日 初版第1刷発行







<目次>
はじめに 能力なきリーダーしかいない日本の不幸

第1章(現状認識)
 東日本大震災でわかった「危機に克つリーダー」の条件
  [スピード]
  1週間でできない「緊急対策」は、1年かけてもできない
  [危機管理力]
  組織のイメージを最小限にする工夫と判断が必要だ

  [行動力と交渉力]
  次世代の国家リーダーに求められる「3つの条件」

第2章(対策)
 組織を元気にするリーダーシップの育て方
  [ビジョナリー・リーダー]
  世界で勝つ企業は人材育成に毎年1000億円かけている
  [中間管理職“再生術”]
  組織を動かすには「“揺らぎ”のシステム」を使いこなせ
  [新・人材教育カリキュラム]
  リーダーシップは“天与”のものではない

第3章(比較研究)
 日本が学ぶべき世界のリーダーシップ
  [イギリス・キャメロン首相①]
  弱冠43歳にしてトップに立ったリーダーはどこが凄いのか?
  [イギリス・キャメロン首相②]
  「グレート・ソサエティ」構想で活かすべき「民の力」
  [ロシア・メドベージェフ大統領]
  「結果を出す指導者」の驚くべき決断力と行動力
  [日本vs中国リーダー比較]
  国民の差ではなくリーダーの差が国家の関係を規定する

第4章(提言)
 私が「リーダー」だったら日本の諸課題をこう乗り越える
  【震災復興】
  「緊急度の掌握」ができなければ非常時のリーダー失格だ
  【電力インフラの再構築】
  原発と送電網は国有化、電力会社は分割して市場開放せよ
  【食料価格の高騰】
世界の農地に日本の農業技術・ノウハウを売り込め
  【水資源争奪戦】
  水道事業を民営化して「水メジャー」並の競争力をつけよ
  【エコカー開発競争】
  劇的な低価格を実現し、世界市場で優位に立つ「新EV革命」
  【財政危機】
  所得税・法人税ゼロの「日本タックスヘイブン化」で経済は蘇る

おわりに 「強いリーダー」は強い反対意見の中から生まれる  
   

 
[危機管理力]
組織のイメージを最小限にする工夫と判断が必要だ





 優れたリーダーは、自分より能力が高い人を

 集めてまとめ上げ、その人たちの力を目一杯

 発揮させて成果を出す。

 一方、ダメなリーダーは、自分より能力が

 低い人や自分が御しやすい人ばかり集めて

 くるから、往々にして方向性を間違える。


                
(今日の名言 7  通算 526 )



 


 いついかなる時も、自分が預っている組織や

 集団のダメージを最小・最低にするための

 方向性を示し、判断を下す。

 それがリーダーの役割というものだ。

 ところが日本政府には、ダメージが拡大しない

 ようにするという発想がない。


                
(今日の名言 8  通算 527 )





 「先に結論を出して国民に強制するのではなく、

 選択肢を提示して落としどころを見出していく」

 -----これこそが今の政治家に求められている

 重要な役割なのである。


                
(今日の名言 9  通算 528 )






安定という言葉が適切であるかどうかは
議論の輿地がありますが、あるとした場合、
安定の時代と危機の時代では、
リーダーは異なるということを大前さんは
再三指摘しています。


安定の時代のリーダーは、現状維持に奔走し、
敢えてリスクを負うような戦略は取りません。


一方、危機の時代のリーダーは、
瞬間瞬間で素早い判断・決断・断行(私は、
「三断跳び」と呼んでいます)をし、
リスクを負っています。


リスクを負うということは、成功すれば
当然のごとく、果実を手に入れることが
できます。


逆に、失敗すれば責任を取らなくてはなり
ません。


大切なことは、成功も失敗も「行動」した
結果であることです。


その観点から言えば、役人にはリスクを負う
という意識が欠如している、と思います。
責任を負うということがありません。


つい最近の話ですが、国や役人が好きな
ハコモノに581億円もかけたにもかかわらず、
価値0になってしまったことがあります。


一方で、iPS細胞の研究でノーベル医学生理学賞
を受賞した、山中伸弥・京都大学教授が中心に
なって建設された、京都大学iPS細胞研究所
(以下、iPS細胞研究所)の建設費は46億円
だそうです。


つまり、iPS細胞研究所の10倍以上もかけて
造ったにもかかわらず、無駄にしただけでなく、
誰も責任を取っていないのです。


自己保身しか考えていない、と言われても反論
できないはずです。


民間企業ではめったにないことです。
それでも、民間企業でも、経営陣が責任を取らず、
部下に責任転嫁するケースはあります。


リスクを負えない人はリーダーではないし、
リーダーになってはいけないし、
リーダーにしてはいけないと思いますが、
あなたはどう思いますか?







以上の記事は、2013年3月29日のものです。
2年3カ月以上前のものですが、基本的に
私のスタンスは投稿当時と変わっていません。


安倍首相は、憲法改正に関する論議や、
憲法条文の勝手な解釈に終始し、
「先に結論ありき」という方針を貫いています。


大前さんが述べているように、

「『先に結論を出して国民に強制するのではなく、

 選択肢を提示して落としどころを見出していく』

 -----これこそが今の政治家に求められている

 重要な役割なのである」

という一文は、安倍首相の役割そのものをズバリ
指摘しています。


安倍首相が日本のリーダーに相応しいのかどうか、
再考の余地が大いにあります。


私は相応しくない、と思います。






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本当に役に立つビジネス書
<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の
概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>



日経ビジネスの特集記事(114)

外弁慶企業
HITACHI
世界から壊す成長の壁

2015.07.06



テーマ

今週号の特集のテーマは

「安定感はあるが、革新性がない」
「技術はあるが、商売下手」──。
1910年に創業し、戦後の日本経済をけん引し
続けてきた日立製作所は、偉大な功績の割に
市場や消費者からの評価がいまひとつ、
という不思議な企業だ。
足元の状況を見ても、2009年度以降の構造改革
でV字回復に成功したものの、2015年度を最終と
する中期経営計画では、未達に終わる見通し
の目標も。
「成長の壁に直面している企業」というイメージが
鮮明になっている。
だが、海の向こうでは今、そんな日立の評判が
すこぶる高い。
開発から人事まで、国内では進めにくい様々な
改革をここ数年、海外で先行的に実施。
その多くがここへきて、成果を上げ始めているからだ。
海外拠点の変貌は、国内の日立の風土も変えつつある。
過去四半世紀、抜本的な体質転換を果たせなかった日立。
しかし、「外圧による改革」は、その歴史を塗り替える
可能性を秘めている。

 (『日経ビジネス』 2015.07.06 号 P.025)

ということです。






外弁慶企業<br />HITACHI<br />世界から壊す成長の壁

外弁慶企業
HITACHI
世界から壊す成長の壁

(『日経ビジネス』 2015.07.06 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 PP.024-025)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06







第1回は、
「PROLOGUE 『海の向こう』では別の顔
 海外では重くも暗くもダサくもない」
を取り上げました。


第2回は、
「PART1 海外で今、注目される理由」 
を取り上げました。


最終回は、
「PART2 “外圧”で国内も変える」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 外弁慶企業 
 総合力 
 権限委譲 
 社会イノベーション 
 外圧 



今週号の特集のスタートページに掲載されている
画像がとても面白いですね。


「公家集団」と「弁慶」です。


画像を拡大してみましょう。


日本でのイメージ<br />頭でっかちの「公家集団」

日本でのイメージ
頭でっかちの「公家集団」

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.024)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




世界でのイメージ<br />開拓魂に富む「野武士軍団」

世界でのイメージ
開拓魂に富む「野武士軍団」

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.025)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




日立製作所は、国内のイメージ「公家集団」と海外での
イメージ「野武士軍団」とまるで異なるイメージを共有する、
類まれな日本企業であることを、『日経ビジネス』取材班
は提示しました。


私たちは日常会話の中で、しばしば、「内弁慶(家の中で
威張っているが、一歩外に出ると小さくなっている)」、
と批判することがあります。


日立製作所は、海外では存在感が増していますが、
国内ではマイナスイメージがつきまとってきました。


国内と海外で対照的なイメージを抱かれた企業が、
日立製作所だ、というのが書き出しです。





では、本題に入りましょう!


 PART2 “外圧”で国内も変える 

日立製作所は、1980年代から改革に取り組んで
きましたが、思うように進みませんでした。


現場の抵抗が予想外に強かったからです。


現在進行中の改革の方向性が打ち出されたのは、
2009年に川村 隆氏(現・相談役)が会長県社長に
就任した後のことでした。


下の年表は、日立の改革の動きを当時の経営陣の
施策と照らし合わせて、作成されたものです。


企業規模が拡大するにつれ、改革の断行が困難
になることが理解できます。


セクショナリズムが横行し、全体最適よりも部分最適
が優先されるようになります。


こうした現況を破壊し、ベクトルを合わせるためには、
方向性を的確に示す有能なナビゲーターが欠かせ
ません。


そして、そのナビゲーターは方向性を示すだけでなく、
構造改革を何としてでも断行する人物でなければなり
ません。


日立には、そうした有能なナビゲーターが複数存在
したということです。




川村氏の登場以降、構造改革が加速
・日立製作所の歴代会長・社長と
 主な構造改革や組織改革、事業買収や売却など

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.040)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06



(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.041)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06



直近の改革の内容については、『日経ビジネス』の記者
による深堀りしたリポートをお読みください。


それまで「聖域」となっていた研究所にも改革のメスが
入ることになりました。


 「研究所に入った時は、営業担当者と顧客訪問を

 繰り返すことになるとは思ってもいなかった」。

 日立製作所の中堅研究員、佐藤暁子氏は率直に

 こう話す。

 佐藤氏は入社以来、中央研究所などに勤務。

 特許を10件以上出願した実績を持ち、

 近年は交通渋滞や人の流れを解析するための

 技術などを開発していた。


 そんな佐藤氏の生活が変わり始めたのは2013年

 頃から。長年、聖域とされてきた研究所の改革が

 始まってからだ。2015年4月に研究所の大幅な

 組織改編が実施されると、その働き方は一段と

 様変わりした。


 従来のように研究所で研究開発に没頭するの

 ではなく、顧客先に出向き、先方と議論しながら

 ソリューション創出を目指すことが仕事の9割を

 占めるようになった。
 

  (PP.040-041)


研究員は、研究のための研究ではなく、
顧客との接触を通じ、顧客のニーズを掘り起こし、
何を提供したら良いのかを考えることが求められ
るようになった、と私は考えています。


「カスタマー・ファースト(顧客第一)」をお題目で
終わらせず、実際に成果を上げることに集中する
ことが仕事になったのです。


表現を変えれば、日立のすべての社員が、
顧客のいろいろな問題を解決する営業マンになる
ことを求められるようになった、と言えます。


名称は異なるかもしれませんが、官僚的縦割り組織
から横断的組織(クロスファンクショナルチーム)への
移行は必然となり、目標に向かってベクトルを合わせ、
全体最適を目指すことになります。


ですが、経営陣の思惑通りに進まないのが国内の組織
改革です。


 IoT時代に合わせた部門間を越えての技術の統合、

 国境をまたいでの次世代型企業管理、「消極的」

 「リスク回避思考」という評判を覆す大胆投資──。

 PART1で見た、海外で進めてきたグローバル化の

 実験は、国内にも着実に影響を及ぼし始めている。

 「グローバル化が目的なのではなく、主戦場となる

 市場がグローバル化しているから、適合しないと

 生きていけないということ。この事実を直視し組織や

 事業などを組み替えて対応していかないと死ぬだけ」

 過激な言葉を使い、こう話す中西会長が、海外とは

 対照的に改革が進まぬ国内の状況に強い不満を

 抱いているのは明らかだ。
 

  (P.041)


日立で特徴的なことは、グローバルな視点から、
米州、中国、欧州など、アジアなどの4地域に分け、
地域ごとに総代表を据え、権限委譲し、日本本社
の責任と権限を減らしていることです。



日本本社の責任と権限も減る<br />・2015年4月から移行した、地域総代表制による<br />グローバル自律分散経営

日本本社の責任と権限も減る
・2015年4月から移行した、地域総代表制による
グローバル自律分散経営

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.042)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




日立全体をグローバルな視点で捉え直すと、必然的に
人事体系も変わらざるを得ません。


人事情報の巨大データベースが稼働しているそうです。


 2011年から「グローバル人財マネジメント戦略」と

 呼ばれる取り組みを進め、2012年度に国内外の

 日立グループ社員約25万人分の人事情報を

 データベース(DB)化。

 2013年度に、国内外の管理職約5万ポジション分の

 役割の大きさなどをグローバル共通の尺度で

 格付けする仕組みを整えた。

 「数十万人規模の人事DB化は一部のグローバル

 企業では実施されているが、日本企業ではまだ

 珍しい」と、人事を担当する中畑英信・執行役常務

 は説明する。

 人事体系が世界共通化されたことで、今後は、

 日本本社の管理職のライバルは世界に広がる。

 国籍や年齢を問わず優れた人材の抜擢もしやすく

 なり、国内もやがて英国の鉄道セクションのように

 (HITACHIの魅力 2 参照)、社歴や実績に関係なく

 「最も市場が分かる人間に任せる」方向に向かうの

 は間違いない。
 

  (P.042)


日立社内のライバルは国内にとどまらず、海外にも
存在することになったのです。


いやが上にも社員の競争心を煽る仕組み、と言える
でしょう。


上昇志向の強い人にとっては良い環境に変わりました
が、今まで安定志向で大きな船に乗っていれば安泰
と感じていた社員には、尻に火が付いた状況です。


構造改革には必ず、軋轢が生じ、組織から弾き飛ば
される人たちが出てくるのは間違いありません。


それでも改革を断行しなければならない、と経営陣が
考える理由は次のとおりです。


 グローバル日立の形に加えて、国内日立の形も

 着実に変えていく。例えば、従来にない事業横断型

 の組織の創設。

 縦割り組織のデメリットを解消し、従来は事業ごとに

 バラバラだった顧客への対応を一元化するのが狙いだ。

 その一例が、2015年4月、社長直轄の戦略組織として

 設立されたエネルギーソリューション社。

 社名通り、発電に関する顧客ソリューションを一手に

 請け負う。
 

  (P.042)


日立が、シュンペーターが創造的破壊(creative destruction)
と表現した、イノベーションを起こそうとしていることは
明らかです。


東原敏昭・社長兼COO(最高執行責任者)は、
次のように語っています。


 グローバルで勝つために、グループ内で統合可能

なものは、できるだけ一緒にしていくべきだと考えている。

事業やカンパニーごとに設立してきた販社も、

近隣地域にあるのであれば間接コストを下げるために、

大胆に統合していく発想が当然必要になる。


地域単位で統合や再編を進めていくなら、

販社や工場という拠点だけではなく、それに付随する

輸送ルートや販売ルートなどのサプライチェーンも、

統合効果があるものは一緒にしていく考え方が重要だ。


「One HITACHI」というメッセージを社内外で言い始めた

のは、社員に横の連携を意識させ、グループの総合力

をグローバルで存分に発揮してもらうためだ。
 

  (P.043)



東原敏昭・社長兼COO(最高執行責任者)

東原敏昭・社長兼COO(最高執行責任者)

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.043)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




企業文化(社風)を解体し、作り直すのは容易では
ありません。


日立は100年以上続いている会社です。
改革が一気に進むほど柔軟な組織ではないことは、
想像に難くありません。


 もちろん、100年以上続いた文化の解体は容易でない。

 日立の取引先の多くは今も、社内の人間同士が顧客

 の目の前で躊躇なく名刺交換するなど、“古い日立”を

 目の当たりにする。

 それでも、中西改革によって、日立を包んでいた改革を

 阻む膜は一つひとつ剥がれつつある。
 

  (P.044)



川村隆・相談役はかなり大胆で、厳しい発言を
しています。日立の近未来像を述べています。


 日立の社内が、ちょっと緩んでいる気はする。

 もう少しびしっとやらないと。

 マスコミなどから過去最高益更新と騒がれて

 いい気になっていてはだめだ。

 「何も変えずに今まで通りに仕事をやっていれば、

 うまくいく」という考えでビジネスをしていたのが

 昔の日立。

 副社長をしていたころの私も含めてそうだった。


 日立の社外取締役をしてくれているジョージ・

 バックリー氏がCEOを務めていた米スリーエムでは、

 米国に本社があるとはいえ経営陣の中で米国人は

 少数派。国籍は様々だが、みな英語を使って議論

 する。

 日立もそのようになっていき、いずれ小さい本社が

 各地に散らばっているような組織体でグローバル経営

 を進めるのだろう。

 そう考えるとスリーエムのように、日立の本社が創業

 の地の日本にあったとしても、経営陣の人種は多様化し、

 仕事で使う言葉も英語が普通になっていくのではないか。


 いずれにせよ、今は英語を使わないとグローバルでは

 ビジネスにならない。グローバル企業として存続していくなら、

 そのくらいにならないと。

 本社が日本にあっても、経営陣は日本人とは限らず

 多国籍、使われる言語は英語。

 これが永続していくグローバル企業の姿ではないか。

 いずれ、日立の本社でも英語が当たり前のように

 使われるようになるだろう。
 

  (P.045)



川村隆・相談役

川村隆・相談役

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.045)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




『日経ビジネス』特集班は、「外圧」をキーワードに
次のようにまとめています。


 “外圧”によって古い国内を変え、既に「外弁慶企業」

 である日立を、国内外を問わず強さと影響力を発揮

 する「両弁慶企業=真のグローバル企業」にする──。

 これが、中西改革が目指す最終目標なのだろう。


 もっともGEを追い続ける日立の旅はそこがゴールでは

 ない。GEの売上高は約18兆円、日立は約9兆7000億円。

 営業利益率も約2倍の差がある。

 仮に中西改革が成功したとして、その後も、GEに大差を

 付けられたまま“普通のグローバル企業”の座に甘んじる

 のか。それとも、あくまでGEに肩を並べるスーパーメジャー

 を目指すのか──。


 昭和の焼け野原で米国の最新の経営を必死に学び、

 礎を築いた先人たちが、いずれの道を望んでいるかは

 言うまでもないだろう。

 日立は、GEに追い付き、追い越す。中西改革はスタート

 ラインにすぎない。
 

  (P.045)




ライバルとなる欧米勢の重電大手と比較すると・・・<br />・GEとシーメンス、日立の売上高と営業利益、営業利益率

ライバルとなる欧米勢の重電大手と比較すると・・・
・GEとシーメンス、日立の売上高と営業利益、営業利益率

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.037)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06







もう一度、中西宏明会長兼CEO(最高経営責任者)の
インタビューをご覧ください。


特集で扱った内容と、中西会長の言葉が呼応し、
改革をなんとしても成功させてみせる、という意気込み
が伝わってきます。


日経ビジネスのインタビュー(178)
安心している暇はない






ポイント

日立の改革はこれからも続く

日立が目指すゴールは、ずっと先にあります。
GEに追い付き、追い越すことです。


その日はいつになるのか?


当事者の日立でさえ断言できないでしょう。


ですが、ターゲットが明確になれば、
この先何年、いや何十年かけても実現できる、
と経営陣以下、末端の社員に至るまでもが、
本気になって継続的に事業に取り組めば、
実現できないことはない、と確信しています。


その時、日立は「日本の日立」ではなく、
名実ともに「世界のHITACHI」となるのです。


その日が来るのを自分の目で確かめたい、
と思います。





今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 外弁慶企業 
 総合力 
 権限委譲 
 社会イノベーション 
 外圧 






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