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藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ

私のテーマは6つあります。
(1)ビジネス書の紹介(2)医療問題 (3)自分ブランド力
(4)名言 (5)ランキング (6)ICT(情報通信技術)
このブログでは、主に(1)~(4)を扱っています。
(5)と(6)はそれぞれ別のタイトルで運営しています。

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の
概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>



日経ビジネスの特集記事(114)

外弁慶企業
HITACHI
世界から壊す成長の壁

2015.07.06



テーマ

今週号の特集のテーマは

「安定感はあるが、革新性がない」
「技術はあるが、商売下手」──。
1910年に創業し、戦後の日本経済をけん引し
続けてきた日立製作所は、偉大な功績の割に
市場や消費者からの評価がいまひとつ、
という不思議な企業だ。
足元の状況を見ても、2009年度以降の構造改革
でV字回復に成功したものの、2015年度を最終と
する中期経営計画では、未達に終わる見通し
の目標も。
「成長の壁に直面している企業」というイメージが
鮮明になっている。
だが、海の向こうでは今、そんな日立の評判が
すこぶる高い。
開発から人事まで、国内では進めにくい様々な
改革をここ数年、海外で先行的に実施。
その多くがここへきて、成果を上げ始めているからだ。
海外拠点の変貌は、国内の日立の風土も変えつつある。
過去四半世紀、抜本的な体質転換を果たせなかった日立。
しかし、「外圧による改革」は、その歴史を塗り替える
可能性を秘めている。

 (『日経ビジネス』 2015.07.06 号 P.025)

ということです。






外弁慶企業<br />HITACHI<br />世界から壊す成長の壁

外弁慶企業
HITACHI
世界から壊す成長の壁

(『日経ビジネス』 2015.07.06 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 PP.024-025)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06







第1回は、
「PROLOGUE 『海の向こう』では別の顔
 海外では重くも暗くもダサくもない」
を取り上げました。


第2回は、
「PART1 海外で今、注目される理由」 
を取り上げます。


最終回は、
「PART2 “外圧”で国内も変える」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 外弁慶企業 
 総合力 
 権限委譲 
 社会イノベーション 
 外圧 



今週号の特集のスタートページに掲載されている
画像がとても面白いですね。


「公家集団」と「弁慶」です。


画像を拡大してみましょう。


日本でのイメージ<br />頭でっかちの「公家集団」

日本でのイメージ
頭でっかちの「公家集団」

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.024)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




世界でのイメージ<br />開拓魂に富む「野武士軍団」

世界でのイメージ
開拓魂に富む「野武士軍団」

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.025)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




日立製作所は、国内のイメージ「公家集団」と海外での
イメージ「野武士軍団」とまるで異なるイメージを共有する、
類まれな日本企業であることを、『日経ビジネス』取材班
は提示しました。


私たちは日常会話の中で、しばしば、「内弁慶(家の中で
威張っているが、一歩外に出ると小さくなっている)」、
と批判することがあります。


日立製作所は、海外では存在感が増していますが、
国内ではマイナスイメージがつきまとってきました。


国内と海外で対照的なイメージを抱かれた企業が、
日立製作所だ、というのが書き出しです。





では、本題に入りましょう!


 PART1 海外で今、注目される理由 

前回、日立製作所には国内(内)と海外(外)で
2つの異なる顔がある、というお話しをしました。


現在の日立は「外弁慶企業」であるというのが、
『日経ビジネス』の見方です。


今回は、「外弁慶企業」の面目躍如たる勇姿を
ご覧いただこうと思っています。


日立が海外ではこんなに存在感(プレゼンス)が
あるとは知らなかったな、と私を含め多くの読者の
方が感じると思います。


換言しますと、なかなか構造改革できなかった日立
が「外圧」によって変わってきたということです。




『日経ビジネス』によれば、日立には6つの魅力が
あるということです。


HITACHIの魅力①

博士号を取得した社員が1000人以上在籍して
いることは驚きですし、「宝の持ち腐れ」と揶揄
され続けた所以でもあります。


ところが、IoT(モノのインターネット)の時代、
あるいは第4次産業革命が起こりつつある今、
長年蓄積されてきた技術力や研究、ノウハウ
が結集された「総合力」が重要な鍵となります。


日立には、宝の持ち腐れと言われ続けてきた
「総合力」があります。


その象徴ともいうべき、高速鉄道車両と鉄道
システムが海外で脚光を浴びています。


イギリスGWML・クラス800

イギリスGWML・クラス800

高速鉄道車両 Wikipedia の画像から




英国における日立の存在感がどの程度のもの
なのか、記事を読んでみましょう。
納得できるかもしれません。


 ファー・イースト(極東)の車両メーカーが

 シェア首位に──。

 年間20兆円規模に達する世界の鉄道市場。

 その約5割を占める主戦場の欧州で今、

 異変が起きている。

 震源地は英国。鉄道発祥の地であるこの市場で、

 日立製作所が2019年までに車両の受注シェアで

 トップに立つ。

 見込みも含めると、2014~19年の間で新たに

 1273両を受注。

 競合の独シーメンスや加ボンバルディアを抜き、

 英国で最も多い受注車両を抱えるメーカーになる。

 全ての納入が完了すると、現在174両が走る日立

 製列車の数は約8倍の1447両に増加する。

 日本企業では初の快挙だ。


 「今、欧州鉄道メーカーで最も勢いに乗る企業」

 (鉄道運行会社、ヴァージン・トレインズ幹部)である。
 

  (P.030)


先に掲載した写真の鉄道車両「Class800」シリーズが、
英国に納入されましたが、注目すべき点は、
優れているのは、この車両製造だけではない、
ということです。


英国の鉄道事情に適応した総合的な技術力がものを
言ったのです。


 2017年から商用サービスが始まるIEP(都市間高速

 鉄道計画)で採用される「Class800」シリーズは、

 英国の鉄道特有の条件を克服する様々な機能を

 搭載した高性能車両だ。


 英国の鉄道事情は欧州でも特殊で、例えば、

 車両の空間容量を決める英国鉄道の車両幅は2.7m。

 欧州の3mや日本の3.3mに比べて短く、その分全てを

 コンパクトに設計しなければならない。

 しかも、鉄道区間の一部は、いまだに電化されて

 いないため、この狭い空間に、Class800はディーゼル

 エンジンを積む必要があった。

 古い陸橋などを走行する際に車両が一定の重量を

 超えていると、安全確保のために減速を求められる。

 その分、鉄道の輸送効率は落ち、収益計画に響いて

 しまうのだ。

 技術的な難題をいくつも抱えた車両開発だったが、

 日立は結果的にこれらを見事に解消した。
 

  (PP.031-032)


DAS(運転支援システム)と呼ばれる運転士用
ナビゲーションも開発したそうです。


 英鉄道会社の間では、運転士の能力の差によって、

 列車の燃費が大きく変わることが問題となっている。

 燃費に2倍ほどの開きがある場合もあるといい、

 燃費効率の悪い運転士「ジョイ・ライダー」(運転を

 楽しんでいる=enjoyから取った揶揄)をいかに減らす

 かが、鉄道会社の課題となっていた。

 DASはこの問題を解決するための仕組みだ。

 「時速150kmに加速」「ここからブレーキを踏み始めて」

 といった具合に、運転士に指示を与え、走行ルートの

 電力消費を最小に抑える。
 

  (P.032)


説明文を読めば簡単なシステムのような気がしますが、
実は、これはなかなか制御が難しいシステムだそうです。


 単純なシステムに見えるが、現実の運行状況は天気や

 故障などのイベントによって次々と変わる。

 的確なナビをするためには、列車の状況や運行情報と

 常に連携して速度の指示を出す必要がある。

 つまり、鉄道の位置情報、運行情報、信号制御といった

 システムが、互いに連動していなければならない。

 こんなシステムが作れるのは、車両、運行情報、信号

 制御といった鉄道インフラを構築するリソースに加えて、

 情報技術のノウハウを持っている日立だからこそ。

 他の鉄道車両メーカーにはおよそできない芸当と言える。
 

  (P.032)


「Class800」シリーズの製造と、鉄道システムに対する
絶対的な自信は、次の言葉に表れています。


 「安全、効率、コスト競争力を兼ね備えた鉄道システムを

 作るうえで、日立ほど幅広いリソースを持つ企業はない」と、

 日立レールヨーロッパの光冨眞哉CSO(最高戦略責任者)

 は話す。
 

  (P.032)




あれもこれもHITACHI<br />・鉄道関連ビジネスにおける日立のカバー領域

あれもこれもHITACHI
・鉄道関連ビジネスにおける日立のカバー領域

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 PP.032-033)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06


解説は下記をご覧ください。

あれもこれもHITACHI<br />・鉄道関連ビジネスにおける日立のカバー領域

あれもこれもHITACHI
・鉄道関連ビジネスにおける日立のカバー領域

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 PP.032-033)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




成長率はビッグ3をしのぐ<br />・日立と世界大手の鉄道ビジネス比較

成長率はビッグ3をしのぐ
・日立と世界大手の鉄道ビジネス比較

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.031)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




HITACHIの魅力②

HITACHIの魅力①で見たように、高速鉄道車両と
鉄道システムが英国に受け入れられた理由は、
英国の鉄道事情に精通した人物に「本気」で権限
委譲したからでもあります。


鉄道事業のグローバルCEO、ドーマー氏

鉄道事業のグローバルCEO、ドーマー氏

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.034)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




 「アジアや南米など、欧州以外にも大きいビジネス

 チャンスが広がっている。我々は挑戦者だが、

 他社にない強みで自信を持って攻めていく」。

 こう意欲を燃やすドーマーCEO。

 最近では、この「欧州で最も勢いのある鉄道メーカー」

 で働こうと、アルストムやシーメンスなど競合他社から

 転職を希望する人材も後を絶たないという。


 社歴や実績に関係なく、それぞれのエリア・事業で、

 「最も市場が分かる人間」に権限を持たせる──。

 グローバル経営では当たり前の鉄則だが、

 国内の日立は長年、当たり前のこの権限委譲が

 なかなかできず、苦労を重ねた。
 

  (P.034)





HITACHIの魅力③

バーチャルカンパニーという実験をしているそうです。
成果が上がってきているということで、強固な構造を
壊す働きをしています。


一言で言えば、部分最適から全体最適への移行の
ため、権限や経営資源を集中させたということに
なります。


 バーチャルカンパニーとは、日米欧で別々の会社を、

 あたかも1つの会社のように運営する仕組みのことだ。

 実際に2014年秋以降、製品開発についてはITプラット

 フォーム事業本部の開発トップを兼務するHDS(日立

 データシステムズ 註:藤巻隆)のジョン・マンスフィー

 ルド上級副社長を頂点に、チームの組成から実際の

 開発まで完全に一体運営されている。

 HDSはもともと、メーンフレームやストレージ(外部記憶

 装置)を米国内で売る販売子会社だったが、

 2000年代後半以降、M&Aでストレージ周辺のソフト

 ウエア開発力を強化。

 ストレージ製品の管理やメンテナンスなどサービス・

 ソリューションビジネスにシフトした。

 今では年間約2兆円を売り上げる情報・通信システム

 事業の中でも、特に重要な子会社の一つだ。
 

  (P.035)


バーチャルカンパニーを通じて実現したいこととは、
何でしょうか?


 「真に実現したいのは、セールスのオファーを

 ワンストップで開発陣に伝えることと、

 1つの目標に向かってスピード感のある開発体制

 を実現すること。組織の統合も検討したが、

 これは法的に別の会社でも実現できると考えた」

 と熊﨑(裕之)氏(現サービスイノベーション統括

 本部長兼社会イノベーション事業推進本部・

 共生自律分散推進本部本部長 註:藤巻隆)は

 振り返る。
 

  (P.036)





HITACHIの魅力④

日立が抱えていた問題とは何だったのでしょうか?
中西宏明会長兼CEO(最高経営責任者)は、
次のように語っています。


 「モラル(規律)とモラール(やる気)の問題を

 抱えていた」。

 中西CEOがこう振り返るように、HDSは実績

 こそ上げていたが、独立心が強く、

 日立グループの一員として協調していこうと

 考えるような会社ではなかった。

 そんなHDSの雰囲気が2009年、中西CEOなど

 の社会イノベーション宣言を機にがらりと変わる。

 ストレージ技術はセンサー技術と並んで、

 スマートシティーやスマートグリッド、ヘルスケア

 など日立が言う社会イノベーション事業を進める

 上で不可欠な要素。グループ全体がそこへ突き

 進むなら、日本本社と手を組んだ方がストレージ

 単体を売るより、自社の将来は確実に開ける。

 多くの社員がそう考えるようになったのだ。
 

  (P.037)


一方、HDSを率いるジョン・ドメCEOはこう語っています。


 HDSを率いるジョン・ドメCEOは、

 「我々は社会イノベーションという共通の目標に

 向けて再結集した」と振り返る。

 社内をまとめ上げたという点ではドメCEOの功績

 も大きい。

 社員とのコミュニケーションを絶やさず、

 部門や個人の数字ではなく、会社共通の目標達成

 を重視する社風を作り上げた。

 働きがいなどに関わる表彰を受けているのもその

 ためだ。
 

  (P.037)



ライバルとなる欧米勢の重電大手と比較すると・・・<br />・GEとシーメンス、日立の売上高と営業利益、営業利益率

ライバルとなる欧米勢の重電大手と比較すると・・・
・GEとシーメンス、日立の売上高と営業利益、営業利益率

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.037)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06






HITACHIの魅力⑤

中国では超高層ビルの建設ラッシュが起こっている
そうです。


超高層ビルに欠かせないものといえば、
高速エレベーターがあります。


その高速エレベーターで日立は抜きん出た存在
となっている、というのが趣旨です。


 超高層ビルが次々と建設されている中国は、

 世界最大のエレベーター市場。

 2014年時点で年間約50万台と世界需要の

 約6割を占めるとされる。

 そんな市場で14.8%(日立調べ)と最大受注

 シェアを抱えるとされるのが日立だ。


 成功している最大の理由は、チャンスと分かれ

 ば躊躇なくリスクを取り、大きな投資をしてきた

 こと。その結果、現地での存在感が高まり、

 多くの優秀な中国人社員が入社し、

 さらにビジネスが拡大するという好循環も生まれ

 ている。

 日立グループにおける中国地域の売上高は

 1兆2400億円に上り、全売上高の12%を占める

 見通しだが、エレベーターはその大きなけん引役

 となっている。
 

  (P.038)


問題は、広大な中国全土をカバーするため、
社員教育のための研修センターと、
保守拠点をどこにどれだけ設置するかという
ことです。


日立はその点でもぬかりはありません。


 2015年中に、天津と成都の工場にも研修センター

 を建設し、中国全土に約600カ所もある保守拠点

 の人員拡充と技能向上につなげる構想だ。
 

  (P.038)




成長市場で積極投資<br />・日立グループの中国におけるエレベーター工場<br />などの主要拠点と、中国での売上高推移

成長市場で積極投資
・日立グループの中国におけるエレベーター工場
などの主要拠点と、中国での売上高推移

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 PP.038-039)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06



国家レベルで、中国と日本の関係はギクシャク
していますが、日立(私企業)と中国政府は、
どうなっているでしょうか?


良好な関係を維持していると思いますが。


 今やエレベーター事業会社の日立電梯を含め、

 中国における日立グループは約5万人の従業員

 を抱えるまでになった。

 その結果、中国におけるビジネスで重要な中国

 政府とも、良好な関係が構築されているという。

 中国の政府関係者なども「すぐに撤退するような

 会社ではなく、本腰を入れて中国でビジネスしよう

 としていると信頼してくれる」。

 こう話すのは小久保憲一・日立グループ中国総

 代表だ。
 

  (P.039)





HITACHIの魅力⑥

HITACHIの魅力⑤に関連して、中国ビジネスで
重要な点は、現地中国人を採用するだけでなく、
経営も任せることです。


つまり、「現地化」が大きなポイントとなります。


 象徴が日立電梯。

 つい数カ月前まで、社長から部長級まで約60人超が、

 すべて中国人で占められていた。

 現在は、社長と部長の合計2人は日本人となっているが、

 幹部クラスでの現地人比率は圧倒的に高い。

 このような、現地人材を大胆に登用するという日本企業

 らしからぬ人事戦略が、中国におけるエレベーター事業

 の急成長につながったとも言える。

 「中国人社員は特に上昇志向が強い。部長級のみならず、

 いずれ社長にもなれる可能性があるのだから、

 自然に現地従業員のモチベーションは上がる」

 (日立電梯の中国人幹部)。

 加えて、中国人幹部が、欧米や日本など中国以外の海外

 拠点で活躍できるようになるグローバル共通の人事制度

 も日立グループで始まっており、現地人材の意欲はさらに

 高まっているという。
 

  (P.039)


日立は海外で着々と実績を積み上げてきた、
グローバルで戦うための施策を国内でも導入
しようとしています。


 日立が海外で進める改革の最終目標は、

 その成果を日本に持ち込み、“外圧”によって

 日本の日立を変えることだ。

 その試みは既に、実践に移され始めている。
 

  (P.039)







ポイント

日本は昔から“外圧”に弱いと言われてきた

日立はグローバルな世界での実績を引っさげて、
“外圧”によって、日立本体を変革しようとしています。


むしろ、海外よりも国内のほうが変革に対して抵抗
が強いと考えられます。


グローバルスタンダードに適応させるべく、
日立は自ら脱皮しようとしています。


硬い皮を剥ぐには大きな軋轢が伴いますが、
放っておけば死を招くことを、日立のトップは
十分に自覚しています。


「脱皮できない蛇は死ぬ」
という格言があります。


好むと好まざるとにかかわらず、国内も変えること
が現経営陣の使命です。






今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 外弁慶企業 
 総合力 
 権限委譲 
 社会イノベーション 
 外圧 





最終回は、
「PART2 “外圧”で国内も変える」
をお伝えします。


ご期待下さい!







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日経ビジネスの特集記事(114)

外弁慶企業
HITACHI
世界から壊す成長の壁

2015.07.06



テーマ

今週号の特集のテーマは

「安定感はあるが、革新性がない」
「技術はあるが、商売下手」──。
1910年に創業し、戦後の日本経済をけん引し
続けてきた日立製作所は、偉大な功績の割に
市場や消費者からの評価がいまひとつ、
という不思議な企業だ。
足元の状況を見ても、2009年度以降の構造改革
でV字回復に成功したものの、2015年度を最終と
する中期経営計画では、未達に終わる見通し
の目標も。
「成長の壁に直面している企業」というイメージが
鮮明になっている。
だが、海の向こうでは今、そんな日立の評判が
すこぶる高い。
開発から人事まで、国内では進めにくい様々な
改革をここ数年、海外で先行的に実施。
その多くがここへきて、成果を上げ始めているからだ。
海外拠点の変貌は、国内の日立の風土も変えつつある。
過去四半世紀、抜本的な体質転換を果たせなかった日立。
しかし、「外圧による改革」は、その歴史を塗り替える
可能性を秘めている。

 (『日経ビジネス』 2015.07.06 号 P.025)

ということです。






外弁慶企業<br />HITACHI<br />世界から壊す成長の壁

外弁慶企業
HITACHI
世界から壊す成長の壁

(『日経ビジネス』 2015.07.06 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 PP.024-025)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06







第1回は、
「PROLOGUE 『海の向こう』では別の顔
 海外では重くも暗くもダサくもない」
を取り上げます。


第2回は、
「PART1 海外で今、注目される理由」 
を取り上げます。


最終回は、
「PART2 “外圧”で国内も変える」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 外弁慶企業 
 総合力 
 権限委譲 
 社会イノベーション 
 外圧 



今週号の特集のスタートページに掲載されている
画像がとても面白いですね。


「公家集団」と「弁慶」です。


画像を拡大してみましょう。


日本でのイメージ<br />頭でっかちの「公家集団」

日本でのイメージ
頭でっかちの「公家集団」

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.024)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




世界でのイメージ<br />開拓魂に富む「野武士軍団」

世界でのイメージ
開拓魂に富む「野武士軍団」

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.025)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




日立製作所は、国内のイメージ「公家集団」と海外での
イメージ「野武士軍団」とまるで異なるイメージを共有する、
類まれな日本企業であることを、『日経ビジネス』取材班
は提示しました。


私たちは日常会話の中で、しばしば、「内弁慶(家の中で
威張っているが、一歩外に出ると小さくなっている)」、
と批判することがあります。


日立製作所は、海外では存在感が増していますが、
国内ではマイナスイメージがつきまとってきました。


国内と海外で対照的なイメージを抱かれた企業が、
日立製作所だ、というのが書き出しです。





では、本題に入りましょう!


 PROLOGUE 「海の向こう」では別の顔 
 海外では重くも暗くもダサくもない 

まず、次の写真をご覧ください。
どうやら日本人らしき人物がハンズフリーマイクを使い、
プレゼンテーションをしているようですね。



日立製作所会長兼CEO(最高経営責任者) 中西 宏明 氏

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.026)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06



そのプレゼンの様子を読んでみましょう。
『日経ビジネス』の記者が、その時の熱気を
伝えています。


日本人の経営者でここまで出来る人は、
そう多くはいません。


 2015年4月29日、イベントの殿堂で知られる

 米ラスベガスの五つ星ホテル、

 アンコール・アット・ウィン・ラスベガスのボール

 ルーム(舞踏室)は、いつにない熱気に包まれ

 ていた。


 壇上には企業のトップと見られる男が1人。

 米アップルの故・スティーブ・ジョブズ氏さながらに

 スポットライトを浴びながら、ジョークを織り交ぜ、

 500人を超える聴衆に流暢な英語で“革新”と

 “共創”を訴えている。


 男は、未来社会の構築に自社がいかに貢献できる

 か熱弁を振るっていた。

 エネルギー、自動車、ヘルスケア、水処理、ビッグ

 データ…。

 IoT(Internet of Things:あらゆるモノがネットに

 つながる状態のこと)を核とする第4次産業革命で、

 産業や社会は急速に変わる。

 そんな「社会イノベーション」に対応するあらゆる

 リソースを自社が保有していることを強調すると、

 高いインクルージョン(包括性)とサステナビリティー

 (持続性)を持って、全ての顧客に最善のソリュー

 ションを提供していくと高らかに宣言した。


 ご覧のように壇上にいたのは、日立製作所の

 中西宏明・会長兼CEO(最高経営責任者、69歳)

 である。

 「まるで日立らしくない」。日立に詳しい方ほどそう

 驚いたに違いない。
 

  (P.027)


「日立らしくない」という表現より、私は日本人経営者が
ラスベガスの一流ホテルで、大勢の聴衆の前で英語で
プレゼンしたことに、驚きと同時に、素晴らしいと感じ
ました。そう簡単にできることではないからです。


尚、中西宏明・会長兼CEO(最高経営責任者)の
インタビュー記事は、すでに「安心している暇はない」
というタイトルで掲載していますので、
そちらをご覧ください。


日経ビジネスのインタビュー
(178) 安心している暇はない




『日経ビジネス』はビジネスパースンを対象に、
日立製作所に対するアンケートを実施したそうです。


その概要をお伝えすることにしましょう。
3つに集約できるそうです。


①技術はあるが、商売は下手
②安定感はあるが、革新性はない
③内向き、上向きの閉鎖的社風

(P.027)


かなり厳しい評価が下されていますね。
当事者にとってはかなり堪える評価だ、と推測できます。


具体的に、どのような点からこのようなイメージを抱く
のか記事を読んでみましょう。


①技術はあるが、商売は下手


 博士号を取得した社員が1000人以上在籍し、

 数多くの特許を申請しながら、その圧倒的技術力が

 商売に強く結びついているように見えない。
 

  (P.027)


博士号を取得した社員が1000人以上もいるのは、
凄いことだと思いませんか?


「宝の持ち腐れ」と思われているのです。



②安定感はあるが、革新性はない


 社会イノベーション事業をグローバル展開する

 成長戦略も寄与したものの、革新的な商品や

 サービスを打ち出しての復活ではない。
 

  (P.027)


安定感は、日本人が企業に求める「第一条件」だと
思いますが。



③内向き、上向きの閉鎖的社風


 白物家電から原子力発電プラントまで手掛ける

 世界屈指のコングロマリットだが、原則として

 自前主義で、他社と連携し事業を推し進めて

 いく印象があまりない。
 

  (P.027)


相当厳しい評価が下されています。
ですが、私は期待の裏返しだと睨んでいます。


ただし、株式市場の評価も、これらの評価を繁栄した
かのように、株価が「実力」に見合わないような結果を
示しています。


 革新性と成長性に欠ける安定企業。

 そんな日立評を如実に反映しているのが株価だ。

 6月29日の終値で807.7円。

 時価総額は約3兆9000億円と、四半世紀前

 (1990年6月、約4兆9000億円)より低く、

 業績不振が続いたソニー(約4兆4000億円)にも

 及ばない。
 

  (P.027)


ちなみに、本日(2015.07.08)の終値を見てみましょう。


日立製作所 株価

6501 ㈱日立製作所 株価 2015.07.08 Yahoo! ファイナンスより



6月29日終値よりも下げていますね。
本日の日経平均株価を見てみましょう。


日経平均株価を

日経平均株価 2015.07.08 Yahoo! ファイナンスより



昨日よりも638.95円の大幅下げで、
2万円台を割り込みました。


日立製作所の株式の下げ幅(-3.13%)は、
日経平均株価の下げ幅(-3.14%)とほぼ同じですね。





さて、本題に戻ります。


今まで日立製作所のマイナスイメージばかりをお伝えして
きましたが、これらはあくまでも国内のイメージです。


海外ではプラスイメージで日立製作所を捉えています。
イメージが正反対ですね。


外国人社員の意見が掲載されています。


 欧州、米国、アジア…。同社の海外拠点で働く多くの

 外国人社員からは「リスクを問うことをいとわない企業」

 「日本企業らしからぬ真のグローバル企業」とまるで

 シリコンバレーのIT(情報技術)企業かのような賛辞が

 挙がる。
 

  (P.028)


ここで重要な点は、企業風土への評価も高いことです。


 企業風土への評価も高い。米シリコンバレーを本社

 とする日立データシステムズ(HDS)は、米フォーチュン

 が毎年発表している「最も働きがいのある会社100」の

 常連だ。果敢、挑戦、未来志向…。

 国内でのイメージが「頭でっかちの公家集団」だとすれば、

 海外では「開拓魂に富む野武士軍団」といった位置付け

 である。

 「商売下手」「革新性がない」などという国内での評価も、

 海外ではむしろ逆。

 外国人社員に言わせれば「事業展開のスピード感が

 最高にクール」となる。

 その具体例として真っ先に挙がるのが、欧州で急速に

 存在感を高めている鉄道ビジネスだ。
 

  (P.028)


鉄道ビジネスについては、
次回、「PART1 海外で今、注目される理由」
で詳しくお伝えします。


日立製作所の今を伝える資料を『日経ビジネス』が
用意しています。こちらをご覧ください。


日立製作所の実像の一端を垣間見ることができる
かもしれません。



File.1 業績は急回復

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.028)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




File.2 「社会イノベーション」で事業を再編集

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.028)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




File.3 事業の再編はドラスチックに

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.029)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06




File.4 海外での存在感は上昇中

(『日経ビジネス』 2015.07.06号 P.029)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06







ポイント

日立製作所は国内と海外で2つの違う顔を持つ

国内外で真逆のイメージを持たれている日立製作所。
「総合力」は宝の持ち腐れと揶揄されてきましたが、
IoT(Internet of Things=モノのインターネット)に
よって、あらゆるものがインターネットに接続される
時代になってくると、日立の「総合力」がモノを言う
ことになります。


高速鉄道車両と鉄道システムはその典型で、
詳細は次回に譲りますが、海外で高い評価を
受けるのは、単なる技術力ではないことが
分かってきます。







今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 外弁慶企業 
 総合力 
 権限委譲 
 社会イノベーション 
 外圧 





次回は、
「PART1 海外で今、注目される理由」 
をお伝えします。


ご期待下さい!






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本当に役に立つビジネス書
安心している暇はない
2015.07.06

中西 宏明(なかにし・ひろあき) 氏

[日立製作所会長兼CEO(最高経営責任者)]





 現状の課題を乗り越えて、さらに大きな成長を

 続けるには、やはり発想を変えないとだめです。

 危機のときは何とかリカバリーしようと、

 みんな火事場のばか力が出る。

 「攻め4割、守り6割」と川村さんが言っていたが、

 実態はみんな攻めも含めて相当、頑張ったわけ

 です。

 それが、過去最高益とか褒められるようになって

 くると安心して、いつの間にか半分守りになって

 しまう。

 今は「攻め7割、守り3割」で行け、と言っている

 のに、みんな褒められて安心して、3割ぐらいしか

 攻めてないんじゃないか。こういうマインドセットを

 どうやって乗り越えられるか。

 そんな課題が今期見通しの数値に出ています

 よね。


 ある国、ある地域、ある事業領域というふうに

 限れば、確かにHITACHIのプレゼンスは世界で

 かなり高くなりました。これを周辺へどれだけ広げ

 られるようになるかというのがこれからの勝負

 どころだと思います。


 事業のトップが誰かというのは非常に重要だと

 思いますね。鉄道事業は外国人をグローバル

 CEOにしたことで、過去にとらわれず、いろいろな

 ことにスピード感を持ってチャレンジしています。

 その効果は経営の数字にも反映され始めていて、

 受注は好調過ぎて、生産能力が足りないくらい。

 ここに2月に買収を発表したアンサルドSTSの信号

 システムが加わると、鉄道関連の事業範囲が急速

 に広がります。


 マーケティングから販売、開発や生産、アフターサー

 ビスまで、フルバリューチェーンが海外で丸ごと必要

 になるでしょう。

 そうなると日本人が海外にのこのこ出かけてオペレー

 ションを全部やろうとするのは無理。

 経営幹部はほとんど外国人の現地人材になり、

 立ち上げ時は日本人が経営トップにいたとしても、

 いずれは現地人材をリーダー格に引き上げる必要性

 が出てきます。


 ドメ(米州総代表に就任したジョン・ドメ氏)がCEOを

 務めている日立データシステムズ(HDS)は、

 彼のリーダーシップで社員のやる気と規律を高めて

 きた実績がある。

 「働きやすい会社」だという賞をもらうぐらい、

 外部からも評価される会社になった。単に処遇や報酬

 だけでなく、社員の目標設定の仕方、意思決定の透明

 性などの改善を彼が率先してやった結果です。


 HDSほどうまくいっているところばかりではないですが、

 事業範囲は幅広く、海外に権限を与え、人事評価制度

 もグローバルで統一して改革している事実は、

 外国人にも魅力だと思います。


 もっと露骨に言うと、今までの日立のやり方では、

 優秀な外国人は絶対に来ないから、これを変えたら

 効果が出てきた。

 「小さく産んで大きく育てる」なんて真っ赤なウソで、

 それでは夢も希望もない。腕に覚えがあり、

 野心のある人材も来ない。

 もっと大胆に、これまで事業部ごとに作ってきた

 小さな海外販売会社を、各地域で全部統合して

 大きくしちゃった方がいいのかなと思っています。


 守り7割のままだと、世界で勝てません。

 しかし、「それじゃだめだ」と言って、パっと直るもの

 でもないから難しい。ただ、それも現実なので、

 社内コミュニケーションには結構、パワーを使って

 います。これは永遠の課題でしょうね。


 事業ポートフォリオについては、毎日のように頭の

 中でいろいろ考えていて、これはもう終わりがない

 ですよね。市場やニーズは変化しますから。

 そのためにも、まずは利益率を上げなきゃいけ

 ない。

 グローバルの競合が利益率10%以上ですから。

 そこに到達しないと、様々な事業再編の選択肢を

 考えたとき、キャッシュの動員力がネックになって

 しまう。

 競合が今やれる決断を、今の我々の懐具合では

 できない現実がある。


 日本の会社ではありますから、日本人でないと分か

 らない部分はいっぱい出てくるでしょう。

 それは外国人には、ちょっとハンディになってしまう

 かもしれない。

 シーメンスはグローバル企業ですが、やはりドイツの

 会社という一面が残っています。GEでさえ、まだ米国

 の会社です。

 
 社会イノベーション事業を世界展開する今の路線には、

 自信があります。

 「社会イノベーション事業は、コングロマリットのデメ

 リットを覆い隠し、そのメリットを前面に出す仕掛けに

 すぎない」という皮肉な指摘も承知している。

 とはいえ、それが社会に受け入れられるのなら、

 自信を持って「それでいいじゃないか」と言いたい。
 

  (PP.046-049)




日立製作所会長兼CEO(最高経営責任者) 中西 宏明 氏

日立製作所会長兼CEO(最高経営責任者) 中西 宏明 氏
(『日経ビジネス』 2015.07.06 号 P.047)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06






日立製作所は一昔前まで、
「技術力はあるが、デザインがダサい」
と言われたことは事実です。


ですが、最近の高速鉄道車輌のデザインを
見ると、まったくダサいと感じません。


「クールジャパン」を象徴するようなクールな
デザインが目を引きます。



イギリスGWML・クラス800

イギリスGWML・クラス800

高速鉄道車両 Wikipedia の画像から




『日経ビジネス』最新号(2015.07.06 号)の特集は、
「外弁慶 HITACHI 世界から壊す成長の壁」
です。


この特集の最後に、中西宏明会長兼CEO(最高
経営責任者)のインタビューが組まれていました。


好業績に驕ることなく、謙虚に、率直に意見を述べ
ています。


このような精神が継承されていけば、日立製作所は
いつまでも「外弁慶企業」と揶揄され続けることなく、
日本国内でも強みを発揮していくことでしょう。


謙虚で、率直に述べる態度は、確固たる自信の
裏付けがあるからだ、と思います。





キーセンテンス


キーセンテンスは、

 「小さく産んで大きく育てる」なんて真っ赤なウソで、 
 それでは夢も希望もない 
です。


「小さく産んで大きく育てる」という言葉が流行した
時期がありました。


私もこうした考え方はリスクを最小限にしたうえで、
果実を手にすることができる、と長い間考えて
きました。


ですが、中西さんはグローバルな視点に経つと、
「夢も希望もない」ということになるそうです。


外国人、特に米国人は貪欲で、成果を上げ、
地位と多額の報酬を得て、自分の価値を高め、
更に上を目指して転職しようとします。


外国人の立場に立てば、大きな権限委譲がされる
企業に魅力があり、集まってくるのは当然のことと
なります。


日立製作所を外国人に魅力ある企業にするという
ことは、グローバルに事業を展開し、推進していく
ためには必要不可欠な条件になります。






ポイント1


攻め7割、守り3割


「攻撃は最大の防御なり」とは言い古されている
ようですが、やはり欠かせないことです。


守りに入ってしまうと、受け身になり、
自ら仕掛けることができなくなります。
現状打破ができなくなります。
それは後退を意味します。


積極果敢に行動することは、グローバルの世界で
戦うための条件の一つです。


「判断、決断、断行」のスピードが重要だからです。





ポイント2


利益率を上げてキャッシュリッチ


日本のメーカーの利益率は全般に低いことは、
以前にも『日経ビジネス』で取り上げられました。


グローバルな世界で戦い、認められるには、
利益率が二桁以上あることが求められます。


と同時に、キャッシュリッチでないと、
魅力的な企業が見つかり、M&A(合併・買収)
したいと考えた時、実行できないことになります。


潤沢なキャッシュがあれば、M&Aに素早く行動
に移せます。





ポイント3


社会イノベーション事業


日立製作所にとって「社会イノベーション事業」
とは何を示すのか、私も最初は、ハッキリと掴む
ことができませんでした。


そこで、具体的にどのようなものなのか、
調べてみました。


『日経ビジネス』(2015.07.06 号)の特集に、
次のような記述がありました。



 ストレージ技術はセンサー技術と並んで、

 スマートシティーやスマートグリッド、

 ヘルスケアなど日立が言う社会イノベーション

 事業を進める上で不可欠な要素。
 

  (P.037)


つまり、ストレージ技術やセンサー技術を
コア技術と位置付け、磨き上げることに、
日立製作所は自信を深めているということ
です。


この点について、「日経ビジネスの特集記事」
で詳しく取り上げますので、ぜひご覧ください。





私見



日立製作所は総合電機メーカーとして、
博士号を持つ研究者が多いことで知られています。


残念ながら、私が調べた範囲では、博士号を持つ
研究者数が掲載されたサイトを見つけることが
できませんでした。


そこで、代わりに研究者数をご紹介します。


日本の3大総合電機メーカー、日立製作所、東芝、
三菱電機で、研究者数を公表(2014年3月現在)
しているのは、日立製作所だけです。



研究開発費と研究者数

研究開発費と研究者数





3社比較は次のとおりです。

日立製作所、東芝、三菱電機の比較

日立製作所、東芝、三菱電機の比較





日立製作所は売上高、純利益とも他社を
圧倒しています。
総合電機メーカーの中で、日立製作所の
強さは随一です。


今後は、世界の巨人たちとの熾烈な競争に
打ち勝っていかないといけません。


日本を代表する企業であり続けるために。






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本当に役に立つビジネス書
左遷で出向、急きょ社長に
仕組みで社風を改革
1度の失敗では学べない


松井 忠三(まつい・ただみつ)氏
[元良品計画会長]





今週の言葉


 今年5月、「無印良品」を展開する良品計画の

 会長を退任して、名誉顧問になりました。

 ようやく肩の荷が下りた気持ちです。

 私が大手食品スーパーの西友から、

 半ば「左遷」のような形で良品計画に出向したのは

 1991年でした。

 2001年、創業以来初の減益の責任を取って辞任

 した前社長に代わり、社長に就任しました。 


 社員はそれまで右肩上がりの10年を過ごし、

 「今のままでいい」と慢心する大企業病にかかって

 いました。

 しかしそもそもハイリスクなビジネスモデルです。

 全部オリジナル商品ですから返品が一切できません。

 売れなくなると一気に在庫の山を築くことになります。


 2000年から業績が急激に悪化し始めると、

 「衣料品が悪いのは衣料品部長が悪い」などと人の

 せいにし、3年間で5人も部長が代わる事態となりました。

 当時は、何かあるとすべて人に責任を押し付ける組織

 でした。

 当時は、不良品やクレームも増えていました。


 知恵を絞って作った会社の仕組みも、使う人次第で

 形骸化してしまいます。バトンタッチしても組織が永続

 できるよう、後継者は慎重に、複数で選ぶべきです。


 経営者は、自分の能力の7がけ程度の実力で自分と同じ

 タイプの人を後継者に選びがちです。

 違うタイプを選ぶと、自分が会長、相談役になった時に

 思い通りに動いてくれないと恐怖を感じるのでしょう。

 しかしそれが続けば、やがて社外から人を呼ぶしか

 なくなり、バトンタッチは失敗です。


 人は1度失敗しただけでは学べず、2度失敗して初めて

 学ぶものです。


                    (2015.07.06 号から) 

 




元良品計画会長 松井 忠三 氏

元良品計画会長 松井 忠三 氏

「日経ビジネス」 2015.07.06 号 P.001
「日経ビジネスDigital」 2015.07.06






キーワード

キーワードは、 後継者選び です。



経営者の最後の大きな仕事は、後継者選び、
と言われています。

後継者の選び方次第で、現経営者の器が決まる、
とさえ言えます。


松井さんが指摘しているように、
「経営者は、自分の能力の7がけ程度の実力で
 自分と同じタイプの人を後継者に選びがちです」
というケースが多い、と私は思っています。


社長や会長を退任しても、顧問や相談役として会社
に残り、個室と専用車(さらに秘書も)を与えられ、
仕事の内容以上の過大な報酬を得ます。


会社にとって、いつまでもいられるのは「迷惑」な存在
です。


後継者にしてもいくら選任されたと言っても、目の上の
たんこぶのような存在です。経営に口出しされそうで
嫌なものでしょう。




ポイント

ポイントは、
 人は1度失敗しただけでは学べず、 
 2度失敗して初めて学ぶもの 
です。



「失敗学」という分野があります。
日本では、工学院大学教授、東京大学名誉教授の
畑村洋太郎さんが有名です。


まさに「失敗から学ぶ」ということです。
私は、失敗からしか学べないと考えています。


ただ、問題なのは日本には「敗者復活を認めない」
風土があることです。社会だけでなく、企業においても
然りです。


「敗者復活を認めない」企業であれば、新しいことに
挑戦すれば失敗する可能性が高く、怖くて誰も挑戦
しません。リスクを負わない体質になります。
いえ、すでになっていると思います。


かつて、ビル・ゲイツ氏はこう言いました。
「リスクを負わないのがリスク」


チャレンジ精神を奨励する企業風土(社風)が定着して
いる企業は活気があります。


もちろん、闇雲に、無計画に事を進めることが良いはず
がありません。


部下の失敗は上司(あるいは経営者)が責任を負うという
ことができなければ、部下はついてきません。


部下の手柄は横取りし、問題が起これば部下に責任転嫁
では立派な肩書きが泣きます。






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本当に役に立つビジネス書
『マキアヴェッリ語録』 (11)





『マキアヴェッリ語録』 塩野七生 新潮文庫
平成4年11月25日 発行


目次
第1部 君主編
第2部 国家編
第3部 人間編






マキアヴェッリ(日本ではマキャベリと表現されることが多い)
は『君主論』の著者として知られ、「マキャベリズム」が
人口に膾炙しています。


その思想を端的に表現する言葉は、
「目的は手段を正当化する」
です。


目的のためならどんな手段を講じてもかまわない、と解する
ことが多いですね。


実は、私もこの書を読むまではそのように解釈していました。
言葉を文脈の中で解釈せず、言葉が独り歩きすることの怖さは、
風説の流布でも経験することです。


福島第一原発事故以後、周辺にお住まいの方々は風説の流布
に悩まされ続けています。拡散した誤情報はさらに誤情報を加え、
拡大していきます。容易に訂正されることはありません。



話しを戻しますと、マキアヴェッリの実像はどのようなもので
あったのか、そして「目的は手段を正当化する」と言っている
ことの真意は何だったのか、を知りたいと思いました。


先入観を取り払い、大前研一さんが言う、「オールクリア
(電卓のAC)」にしてマキアヴェッリの説くことに耳を傾ける
ことにしました。


マキアヴェッリは、1469年5月3日にイタリアのフィレンツェで
生まれ、1527年6月21日に没しています。15世紀から16世紀
にかけて活躍した思想家です。500年位前の人です。


ニッコロ・マキャヴェッリの肖像画

ニッコロ・マキャヴェッリの肖像画 Wikipedia から
 


塩野七生(しおの・ななみ)さんは、「まえがき」に代えて
「読者に」で次のように記しています。塩野さんが解説
ではなく、また要約でもなく、「抜粋」にした理由を説明
しています。


尚、10ページ以上にわたる説明からポイントとなる言葉を
「抜粋」しました。




 この『マキアヴェッリ語録』は、マキアヴェッリの思想の

 要約ではありません。抜粋です。

 なぜ、私が、完訳ではなく、かといって要約でもなく、

 ましてや解説でもない、抜粋という手段を選んだのかを

 御説明したいと思います。

 第一の理由は、次のことです。

 彼が、作品を遺したということです。


 マキアヴェッリにとって、書くということは、生の証[あか]し、

 であったのです。


 マキアヴェッリは、単なる素材ではない。作品を遺した

 思想家です。つまり、彼にとっての「生の証し」は、今日

 まで残り、しかもただ残っただけではなく、古典という、

 現代でも価値をもちつづけているとされる作品の作者でも

 あるのです。生涯を追うだけで済まされては、当の彼自身

 からして、釈然としないにちがいありません。


 抜粋という方法を選んだのには、「紆曲」どころではない

 マキアヴェッリの文体が与えてくれる快感も、味わって

 ほしいという私の願いもあるのです。そして、エッセンスの

 抜粋ならば、「証例冗漫」とだけは、絶対に言われない

 でしょう。


 しかし、彼の「生の声」をお聴かせすることに成功した

 としても、それだけでは、私の目的は完全に達成された

 とはいえないのです。マキアヴェッリ自身、実際に役に立つ

 ものを書くのが自分の目的だ、と言っています。 

 

  (前掲書 「読者に」から PP.3-5、14)




マキアヴェッリの名言をご覧ください。


第1部 君主編



 一軍の指揮官は、一人であるべきである。

 指揮官が複数の人間に分散しているほど、有害なこと

 はない。

 それなのに、現代(16世紀)では、国家はこれとは反対

 のことを行なっている。行政面にいたるまで、複数の人間

 にまかせるという有様だ。

 結果は、実害をともなわずにはすまない混乱である。

 ゆえに、わたしは断言する。

 同じ権限を与えて派遣するにしても、二人の優れた人物を

 派遣するよりも、一人の凡人を派遣したほうが、はるかに

 有益である、と。


                    ―― 『政略論』 ――

                              (PP.123-124)

         (031-1-0-000-508)
 



 


 一度でも徹底的に侮辱したり、手ひどい仕打ちを与えた

 ことのある者を、重要な任務につかせてはならない。

 なぜならこの者は、この機に一挙に悪評を挽回[ばんかい]

 しようとしてか、あるいは、どうせ結果は悪く出ても自分の

 評価はこれ以上悪くなりようがないと思うかして、いちか

 ばちかの勝負に出やすいからである。

 これでは、任務を与えた者にとって、悪い結果を生むおそれ

 が多すぎるのだ。

  
                    ―― 『政略論』 ――

                              (P.124)

          (032-1-0-000-509)
 






 なにかを為[な]しとげたいと望む者は、それが大事業で

 あればあるほど、自分の生きている時代と、自分がその中

 で働かねばならない情況を熟知し、それに合わせるように

 しなければいけない。

 時代と情況に合致することを怠ったり、また、生来の性格

 からしてどうしてもそういうことが不得手な人間は、生涯

 [しょうがい]を不幸のうちにおくらなくてはならないし、

 為そうと望んだことを達成できないで終わるものである。

 これとは反対に、情況を知りつくし、時代の流れに乗ること

 のできた人は、望むことも達成できるのだ。
 

                    ―― 『政略論』 ――

                              (P.125)
                              
          (033-1-0-000-510)
 








ポイント

企業においても、指揮命令系統が複数あるために、
どの指示に従うのが適切であるのか、分からないこと
があります。


これはまさに、マキアヴェッリが指摘している、
「一軍の指揮官は、一人であるべきである」
という内容そのものです。


政界や官界、財界においても、それは同様です。
指揮官は一人でないとならないのです。


「共同代表」や「双頭経営」と言うと、聞こえや見栄えが
良さそうですが、実態は混乱が渦巻き、いずれ空中分解
する可能性が高い、と言えます。


日本維新の会も例外ではありませんでした。
橋下徹前大阪市長と石原慎太郎氏が、日本維新の会の
共同代表に就任した際にも、無理だと実感しました。


一方は護憲派で、他方は改憲派で、言わば「水と油」の
ような存在でした。混ざり合うはずがなかったのです。


橋下、石原両氏が共同代表に就任後、日本維新の会の
勢いは急速に衰えました。日本維新の会が割れてしまう
のは時間の問題でした。




キーセンテンス

情況を知りつくし、時代の流れに乗ることのでき
た人は、望むことも達成できるのだ


「時代の寵児」という言葉が、新聞や雑誌に踊った時代が
ありました。数十年前のことです。


時流に乗った人物ということができましょうが、本人が本当に
そうであったかどうかは、後世の人間によって評価されます。


塩野七生さんの『ローマ人の物語』を再び読み始めましたが、
ローマ1000年の歴史から学ぶことが多くありそうです。
英雄たちはどのような政治を行ったのか、英雄たちの生き方
を塩野さんが活写しています。


塩野七生さんと五木寛之さんの対談集
『おとな二人の午後』
(世界文化社 2000年6月10日 初版第一刷発行)
の中で、五木さんと塩野さんは次のように語って
います。歴史についての考察です。


 五木

 歴史はフィクションなんだと考えたほうがいい

 というふうに考えているんです。後年の人たちが

 再構築して、ありのまま構築できるってことは

 ありえない。その個人のキャラクターを通して、

 その人がつくり上げるものだから、歴史がその

 ままイコール事実であるっていうふうにとらえる

 より、歴史は物語なんだと思ったほうが正しい。



 塩野

 私、学習院を卒業するとき、こう言われたんです、

 君が考えているのは歴史ではないって。

 いまだに覚えている。



 五木

 ぼくは思うけど、塩野さんが書かれているように、

 歴史は人間ドラマなんですよ。想像力の世界。



 塩野

 ヨーロッパには私みたいな、小説でもなければ、

 歴史学でもないという分野は確実にあって、

 ちゃんと認められていますね。
 

 (前掲書 PP.224-225)






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