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藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ

私のテーマは6つあります。
(1)ビジネス書の紹介(2)医療問題 (3)自分ブランド力
(4)名言 (5)ランキング (6)ICT(情報通信技術)
このブログでは、主に(1)~(4)を扱っています。
(5)と(6)はそれぞれ別のタイトルで運営しています。

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の
概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>



日経ビジネスの特集記事(116)

次はiPS
富士フイルム
古森重隆、本業を培養する

2015.07.20



テーマ

今週号の特集のテーマは

富士フイルムホールディングスの総帥、
古森重隆が最後の大勝負に打って出た。
見据えるのは、医薬業界の秩序を根底から覆すiPS 細胞。
100兆円市場の覇権を握るためなら、ノーベル賞学者とも
別の道を行く。
次々と新たな事業を創出し、本業喪失の苦境から復活した
富士フイルムは、競合ひしめく医薬・医療業界で新たな本業を
「培養」できるか。
先駆者の新たな挑戦は、日本企業にとって指針となる

 (『日経ビジネス』 2015.07.20 号 P.024)

ということです。






次はiPS<br />富士フイルム<br />古森重隆、本業を培養する

次はiPS
富士フイルム
古森重隆、本業を培養する

(『日経ビジネス』 2015.07.20 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 PP.024-025)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20







第1回は、
「PROLOGUE 勝算は見えている
 古森重隆、最後の大勝負」
「PART.1 iPS創薬の覇権を握れ
 京大を抜き去り 狙う100兆円市場」 
を取り上げました。


第2回は、
「PART.2 異分野攻略の決め手
 革新生み出すフィルム進化論」 
を取り上げました。


最終回は、
「PART.3 中嶋社長が見せた意地
 古森が去っても大丈夫なのか」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 iPS細胞 
 再生医療 
 革新 
 異分野攻略 
 古森以後 


今週号の編集長インタビューは、特集のPART.4
「次に次まで読む 6割の勝算で十分」のタイトルで、
古森重隆富士フイルムホールディングス会長兼
CEO(最高経営責任者)でした。


インタビューの詳細は下記をご覧ください。

日経ビジネスのインタビュー(180)
次の次まで読む 6割の勝算で十分





では、本題に入りましょう!


 PART.3 中嶋社長が見せた意地 
 古森が去っても大丈夫なのか 

古森重隆会長兼CEOは15年間経営の中枢に
君臨してきました。


そのため、後継者が古森会長と同等、あるいは
それ以上に事業を拡大していくことができるか
どうか、が注目されています。


 「大丈夫ですって」

 富士フイルムの社長兼COO(最高執行責任者)、

 中嶋成博(66歳)は、同じ言葉を2度も繰り返した。

 そして、こう続けた。

 「1人の経営者だけで会社が動くわけじゃない」。

 「古森さんがいなくなったら富士フイルムはどう

 なってしまうのか」という記者の質問に、少しばかり

 いら立ったようにも見えた。そこには、2012年の

 社長就任以来、会長の古森重隆の陰に隠れがち

 になりながらも、会社の成長を支え続けてきたという

 中嶋の意地がにじむ。
 

  (P.038)



富士フイルムホールディングス<br />代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)<br />中嶋 成博 氏

富士フイルムホールディングス
代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)
中嶋 成博 氏

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 P.038)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20




中嶋氏は社長兼COO(最高執行責任者)としての自負
と危機感を抱いているそうです。


 実は、冒頭の「大丈夫ですって」という言葉

 とは裏腹に、中嶋は強い危機感を募らせている。

 今の時代は「どんな製品も10年から15年のスパン

 で衰退期を迎える。だから、常に次を考え続け

 ないといけない」という切迫した思いだ。
 

  (PP.038-039)


下のグラフをご覧ください。
写真フィルムの消滅とリーマンショックに見舞われながら、
2つの危機を乗り越えてきました。


このことからも富士フイルムは強靭で柔軟な企業である
ことが分かります。危機の時、企業の実力が試されます。



フィルム消滅とリーマンショック
2つの危機を乗り越えた
・富士フイルムの業績推移

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 PP.038-039)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20



将来を見据え、中嶋社長が考えていることは
どういうことでしょうか?


 これからも成長を続けるために、中嶋が考えて

 いるのが、業態転換の新たなモデルだ。

 それを象徴するのが、「小さく」「速く」「多く」と

 いう3つのキーワードである。
 

  (P.039)


これだけではなかなかイメージが湧きませんね。
そこで、もう少し詳しい説明を読んでみましょう。


 まずは、自社で育成してきたオンリーワン技術

 を生かせるような小さい事業を速く、しかも数多く

 生み出す。それらを育てながら、新しい経営の柱

 になるような事業が見えてきたら、一気に経営

 資源を集中させて、さらに大きく育て上げる。
 

  (P.039)


つまり、小さく産んで大きく育てるということです。
そうしますと、経営トップの目利きが重要になって
きます。


 中嶋は言う。「ホームランばかり狙っても空振り

 だらけになる。ヒットを打つからホームランも

 出てくる」。

 目指しているのは、単なる多角化ではない。

 今経営を支えている本業が、いずれは喪失する

 という危機感を持ち続けながら、「未来の本業」

 をコンスタントに生み出し続ける新しい仕組みだ。
 

  (P.039)


新しい仕組みの実現を目指す組織があります。
高機能材料開発本部(高開本)です。


 それを実現させるための組織が、2013年に立ち

 上がった。高機能材料開発本部、略して「高開本」だ。

 専任は4人で、ほとんどが兼務。

 例えるならば、正規軍が攻めきれない領域をカバー

 する「ゲリラ部隊」である。

 ここで手掛ける高機能材料は、医薬品などのヘルス

 ケアや、グループ会社の富士ゼロックスと並ぶコア

 事業の一つ。各事業部から精鋭を集めてチームを組み、

 とにかく短時間で、これまで足場がなかったような全く

 新しい市場へ果敢に参入する。

 もちろん、多少の失敗は覚悟の上だ。
 

  (PP.039-040)


組織横断的チーム(クロスファンクショナルチーム)と
同様なもの、と考えています。


高開本の特徴は次のように解説されています。


 高開本の特徴は、製品ごとに立ち上げる

 チームの構成にある。

 技術、営業担当者のほか、事業の経営を

 つかさどる「プロモーター」の最少3人で構成

 する。プロモーターが、未来の本業を育てる

 ための「小さな社長」と言えるだろう。
 

  (P.040)


プロモーターの責任と権限についてもう少し
詳細に見てみましょう。


 プロモーターは、自分のチームが手掛ける事業が、

 富士フイルムの強みを生かして大きく育てられるか

 どうかを、全社的な視点から常に考える。

 必要であれば、経営資源を一気に集中させるため、

 社内調整に走る。

 実際の「経営」で鍛えられたプロモーターたちが、

 「未来の本業」を支える人材の柱になっていく。

 一方、富士フイルムの強みを発揮できないと判断

 した場合は、見切りを付けるのもプロモーターの

 役目になる。足元で、ある程度の売り上げがあった

 としても、次の事業へ経営資源を素早くシフトする

 ことが今後の課題だ。
 

  (P.040)


富士フイルムに未解決の課題はないのだろうか、
という疑問が湧いてきますね。


長年の課題がありました!
富士ゼロックスとの相乗効果です。


 9954億円──。

 2001年に富士フイルムが連結子会社化して以降、

 富士ゼロックスが担当する「ドキュメント」部門が

 稼いだ営業利益の累計だ。

 一方、富士ゼロックス「以外」の累計営業利益は

 9482億円にとどまる(全社・消去などは除く)。

 富士ゼロックスが本業喪失を乗り切る上で重要な

 スポンサーだったことが、数字から浮き彫りになる。

 富士ゼロックスは富士フイルムが75%を出資し、

 複合機などを手掛ける子会社。

 2015年3月期の売上高は1兆1780億円と、連結の

 約半分を占める。


 セブンイレブン店舗に導入した複合機には、

 両社の最先端技術が詰まっているという。

 だが両社は14年経っても、微妙な距離感を埋めきれて

 いない。インターネットを使った遠隔保守サービスでは、

 複合機と医療機器で連携が取れていない。
 

  (P.041)


中嶋社長は次のように語っています。
古森会長と中嶋社長の違いを鮮明にしたものと
考えられます。


 「古森さんは並外れたリーダーシップを持っている。

 これから、同じような経営者が登場するかどうか、

 私には分かりません」。

 中嶋はこう述べた一方で、自らを鼓舞するかのように

 続けた。「言葉は悪いけど、立場が人を作ることもある」。

 確かに、古森は剛腕で瀕死の企業を再生させた

 「有事のカリスマ」だ。

 しかし、これからはカリスマに頼らなくても、本業創出を

 続けられるよう、富士フイルムを生まれ変わらせる。

 もう古森がいなくても──。

 「大丈夫ですって」、と繰り返した中嶋は、心の中で

 自分にこう言い聞かせていたに違いない。
 

  (P.041)






ポイント

古森会長以後

「有事のカリスマ」として富士フイルムを牽引してきた
古森会長兼CEO(最高経営責任者)が勇退した後、
誰が後継者となるのか、またどのような変革を目指す
のか、は衆目の一致するところです。





今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 iPS細胞 
 再生医療 
 革新 
 異分野攻略 
 古森以後 





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日経ビジネスの特集記事(116)

次はiPS
富士フイルム
古森重隆、本業を培養する

2015.07.20



テーマ

今週号の特集のテーマは

富士フイルムホールディングスの総帥、
古森重隆が最後の大勝負に打って出た。
見据えるのは、医薬業界の秩序を根底から覆すiPS 細胞。
100兆円市場の覇権を握るためなら、ノーベル賞学者とも
別の道を行く。
次々と新たな事業を創出し、本業喪失の苦境から復活した
富士フイルムは、競合ひしめく医薬・医療業界で新たな本業を
「培養」できるか。
先駆者の新たな挑戦は、日本企業にとって指針となる

 (『日経ビジネス』 2015.07.20 号 P.024)

ということです。






次はiPS<br />富士フイルム<br />古森重隆、本業を培養する

次はiPS
富士フイルム
古森重隆、本業を培養する

(『日経ビジネス』 2015.07.20 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20




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今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 PP.024-025)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20







第1回は、
「PROLOGUE 勝算は見えている
 古森重隆、最後の大勝負」
「PART.1 iPS創薬の覇権を握れ
 京大を抜き去り 狙う100兆円市場」 
を取り上げました。


第2回は、
「PART.2 異分野攻略の決め手
 革新生み出すフィルム進化論」 
を取り上げます。


最終回は、
「PART.3 中嶋社長が見せた意地
 古森が去っても大丈夫なのか」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 iPS細胞 
 再生医療 
 革新 
 異分野攻略 
 古森以後 


今週号の編集長インタビューは、特集のPART.4
「次に次まで読む 6割の勝算で十分」のタイトルで、
古森重隆富士フイルムホールディングス会長兼
CEO(最高経営責任者)でした。


インタビューの詳細は下記をご覧ください。

日経ビジネスのインタビュー(180)
次の次まで読む 6割の勝算で十分





では、本題に入りましょう!


 PART.2 異分野攻略の決め手 
 革新生み出すフィルム進化論 

このパートでは、富士フイルムがなぜ、異業種に参入し、
確固たる地位を築くことができるのか、を中心にお伝え
していきます。


富士フイルムは、自社の基礎技術とコア技術に絶対の
自信があることが、窺えます。


iPS細胞が世界的に注目されていますが、安全性が高く、
大量に作製する技術はまだ確立されていません。


非常に競争の激しい分野です。


 iPS細胞の作製に必要な作業の大半は、

 まだ自動化されていない。

 技術者の経験や勘を頼りに手作業で

 進めるケースが多い。

 例えば、人から取り出した細胞への

 遺伝子注入、低品質細胞の除去、

 培養液やシャーレなどの取り換え、

 細胞の数を100万倍以上に増やす…。

 複雑な工程を経る中で、どうしても品質

 にばらつきが生まれてしまう。

 問題を解決するためのブレークスルーを、

 写真フィルム技術に求めたのだ。
 

  (P.035)



写真フィルム技術が多くの製品を生み出した<br />・事業展開とベースになった写真技術

写真フィルム技術が多くの製品を生み出した
・事業展開とベースになった写真技術

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 PP.034-035)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20



具体的に、富士フイルムは自社独自のどのような
技術を応用しようとしているのでしょうか?


 提案したのが、機械を使って、ナノレベルの

 サイズの粒子を均一に混ぜ合わせる技術、

 どんな環境でも温度を一定に保つ技術、

 微細物質の状態を分析する技術だ。

 いずれも、写真フィルムを作るのに欠かせない。

 これらの技術を組み合わせれば、工程のある

 部分をロボットでの作業に代替し、細胞の品質

 や生産性を上げられるはずだ。
 

  (P.035)


もう少し、写真フィルムの生産技術について解説を
読んでみましょう。


 写真フィルムの生産技術の根幹は、薄い層を

 正確に重ね合わせることにある。

 フィルムの厚みは髪の毛とほぼ同じ。

 表面部分は、20マイクロメートル(マイクロは

 100万分の1)の厚みの中に、細かな粒子を

 ちりばめた約20の層が積み重なっている。

 各層は、光に反応する、色あせを防ぐなど、

 役割に応じた機能がある。
 

  (P.035)


写真フィルムの生産技術にはナノ技術がぎっしり
詰まっているのですね。


20年くらい前、写真撮影に凝ったことがありました。
富士フイルムやコダックのフィルム(ネガとポジ)を
よく使ったものです。

「超微粒子」という言葉が流行ったのもその頃だった
気がします。


当時、世界の写真フィルム業界は、イーストマン・
コダック(コダック)、富士フイルム、独アグファ、
コニカ(小西六)の4社の寡占状態でした。


ところが、その後、写真フィルム業界で残ったのは
富士フイルム1社だけでした。


 歴史をひもとくと、写真フィルムは富士フイルムの

 ほか、米イーストマン・コダックと独アグファ、

 日本のコニカミノルタと、世界で4社しか作らない

 寡占市場だった。

 汎用的な機械が使えないため、富士フイルムは

 自前で製造設備を設計・開発したほどだ。

 だが、デジタルカメラへの移行が急速に進み、

 2000年をピークに写真フィルムの市場規模が激減。

 コニカミノルタは写真フィルムから撤退し、複合機

 など別の事業に力を入れた。

 2012年には、業界の盟主だったコダックが経営破綻

 した。

 その中で、富士フイルムだけが、写真フィルムの生産

 技術にこだわり続けた。

 蓄積した技術を徹底的に洗い出し、全く違う分野にでも

 使えるよう、磨き上げた上で、整理した。

 そこには、将来必ず役に立つ、ほかにはない技術に

 なるはずだという技術者らの確信と、経営者の理解が

 あった。
 

  (P.036)


次のケースは、女性には馴染み深い話でしょう。
「アスタリフト」シリーズという化粧品です。


最初は、富士フイルムが化粧品(?)と驚きの反応が
強かったように思います。


ですが、その技術を知ると、納得します。
ちゃんと写真フィルムの生産技術が応用されているの
です。


 化粧品も、写真フィルムから生まれた技術が

 ふんだんに盛り込まれている。

 写真フィルムの素材として使っていたコラーゲンと、

 微細な粒子を配合する写真フィルム由来の技術

 を組み合わせ、他の化粧品メーカーにはできない

 スキンケア製品を数々開発。売り上げを伸ばした。

 スキンケア製品の開発メンバーの中核にいる一人が、

 医薬品・ヘルスケア研究所の田代朋子。

 以前は写真印刷用のインクジェットペーパーという

 化粧品とは全くの異分野で、酸化防止剤に取り組ん

 でいた研究者だ。
 

  (P.036)


医療品・ヘルスケア研究所の田代 朋子 氏

医療品・ヘルスケア研究所の田代 朋子 氏

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 P.036)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20



どんな独自技術が応用されていると思いますか?
アスタキサンチンです。よく耳にしますね。


 酸化防止は、写真プリントの「色あせ」を防ぐ技術。

 これが、化粧品を開発するうえで、重要な技術へ

 と生まれ変わった。酸化によって老化する仕組みは、

 人の肌と写真でよく似ているからだ。


 エビやカニなどに含まれる色素成分の「アスタキ

 サンチン」には、老化の原因になる物質を除去する

 機能があることは知られていた。

 だが、スキンケア製品には使われてこなかった。

 水に溶けにくいため、肌に浸透しづらかったのだ。

 そこで、田代ら研究チームは写真フィルムで使われ

 ていた技術を活用。

 アスタキサンチン粒子を非常に細かく加工し、

 分散させ、水に溶けるようにした。

 この技術で作り出した化粧品を、「アスタリフト」

 シリーズとして売り出した。
 

  (P.036)


「同ブランドの売り上げは年100億円を超えた」(P.037)
そうです。


医療分野への進出で欠かせないのは、デジタルX線
システムでしょう。


 富士フイルムは世界で初めてデジタルX線システム

 を発売し、医療機器事業を強化。

 年間4000億円規模の、ヘルスケア事業の軸として

 育っている。
 

  (P.037)


この分野で更に強くなるため、米医療IT企業を買収
しました。


 5月には米医療IT企業のテラメディカを買収。

 病院内の医療画像や診療情報を一元管理

 できるシステムの強化に乗り出した。

 「コア技術は地下水脈という形で生き残っており、

 事業に合わせてそれを引き出し、組み合わせ

 られる」。専務の戸田(雄三)は言う。

 

  (P.037)



独自技術を安易に捨ててはいけない、という事実は
富士フイルムが証明しています。


 市場がなくなったからといって簡単には写真フィルム

 を捨てず、将来必ず花が開く技術の集積であること

 を信じ、育て上げてきた。そうして多くの製品・事業へ

 と姿を変えていった。
 

  (P.037)







ポイント

基礎技術とコア技術を応用する

独自性の強い技術を持ち、優位性があると確信できる
ものであるならば、時間をかけ磨き上げていくと、
際立った差別化に結実することが分かります。


富士フイルムの独自技術である、基礎技術とコア技術
を組み合わせることによって、他社製品とは全く異なる
性質の製品を生産し、市場を創出することができること
を証明しています。





今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 iPS細胞 
 再生医療 
 革新 
 異分野攻略 
 古森以後 





最終回は、
「PART.3 中嶋社長が見せた意地
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ご期待下さい!





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次はiPS
富士フイルム
古森重隆、本業を培養する

2015.07.20



テーマ

今週号の特集のテーマは

富士フイルムホールディングスの総帥、
古森重隆が最後の大勝負に打って出た。
見据えるのは、医薬業界の秩序を根底から覆すiPS 細胞。
100兆円市場の覇権を握るためなら、ノーベル賞学者とも
別の道を行く。
次々と新たな事業を創出し、本業喪失の苦境から復活した
富士フイルムは、競合ひしめく医薬・医療業界で新たな本業を
「培養」できるか。
先駆者の新たな挑戦は、日本企業にとって指針となる

 (『日経ビジネス』 2015.07.20 号 P.024)

ということです。






次はiPS<br />富士フイルム<br />古森重隆、本業を培養する

次はiPS
富士フイルム
古森重隆、本業を培養する

(『日経ビジネス』 2015.07.20 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20




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(『日経ビジネス』 2015.07.20号 PP.024-025)
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第1回は、
「PROLOGUE 勝算は見えている
 古森重隆、最後の大勝負」
「PART.1 iPS創薬の覇権を握れ
 京大を抜き去り 狙う100兆円市場」 
を取り上げます。


第2回は、
「PART.2 異分野攻略の決め手
 革新生み出すフィルム進化論」 
を取り上げます。


最終回は、
「PART.3 中嶋社長が見せた意地
 古森が去っても大丈夫なのか」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

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 iPS細胞 
 再生医療 
 革新 
 異分野攻略 
 古森以後 


今週号の編集長インタビューは、特集のPART.4
「次に次まで読む 6割の勝算で十分」のタイトルで、
古森重隆富士フイルムホールディングス会長兼
CEO(最高経営責任者)でした。


インタビューの詳細は下記をご覧ください。

日経ビジネスのインタビュー(180)
次の次まで読む 6割の勝算で十分





では、本題に入りましょう!


 PROLOGUE 勝算は見えている 
 古森重隆、最後の大勝負 

富士フイルムホールディングスについて詳しい方は、
古森重隆会長兼CEOは研究者ではないのに、
なぜ白衣を着ているのだろうか、と疑問に思われた
かもしれません。


この経緯について、飯田展久編集長は「編集長の視点」
で次のように説明しています。


 今回、富士フイルムの特集を組むに当たり、

 古森さんに白衣を着てもらえないだろうかと、

 かなり思い切って提案しました。

 フィルム事業からの転換を成し遂げた古森さん

 が次に力を入れているのがヘルスケア事業で

 あることを、どうやって読者の皆さんにお伝え

 できるだろうか、悩みました。

 そして「断られてもいいから頼んでみよう」と

 相成ったのです。

 そして、今週号の表紙が出来上がりました。

 古森さんは研究者ではありませんから、白衣姿に

 違和感をお持ちの方もいるかもしれません。

 そこまでしなくてもいいじゃないか、というお考えも

 あるでしょう。

 しかし、本業を大胆に転換していく古森さんの腹の

 据わり方を私たちは表現したかったのです。

 過去の成功体験にとらわれていては先も読めないし、

 思い切った投資もできない。

 古森さんには『魂の経営』というタイトルの著書が

 ありますが、経営に魂を込めているからこそ、

 白衣を着ていただけたのだと信じています。
 

  (P.003)


なるほどと納得させられますね。
私は違和感をまったく感じませんでした。
似合いすぎているとさえ思いました。



古森重隆富士フイルムホールディングス会長兼CEO

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 P.027)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20




まず、富士フイルムのセグメント別業績を概観して
見ましょう。


医薬品などヘルスケアを1兆円事業に<br />・富士フイルムの2015年3月期セグメント別業績

医薬品などヘルスケアを1兆円事業に
・富士フイルムの2015年3月期セグメント別業績

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 P.025)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20



今後、ヘルスケア事業に注力していくことが分かり
ます。



富士フイルムの戦略は大胆にして緻密という表現が
ピッタリします。少なくとも、私はそう思いました。


古森会長兼CEOは経営トップとして15年間富士フイルム
を牽引してきました。


 「あと1つか2つ戦略的な手を打ったら区切りがつく。

 今年76歳になるからそんなに長くやりたくない。

 2年以内にやるべきことをして次の人に任せたい」

 最後の大勝負──。

 15年間、富士フイルムのトップに君臨してきた会長兼

 CEO(最高経営責任者)の古森重隆が、経営者人生

 の“総決算”に乗り出した。
 

  (P.026)


手元資金が潤沢にあるからこそ、M&A(合併・買収)に
乗り出すことができるのです。


 手にしているのは約5000億円のM&A(合併・買収)資金。

 「やり方は言えないが、既に勝算はある」と不敵な表情を

 浮かべる。

 視線の先にあるのは再生医療。

 古森が「究極で最後の医療」と位置付け、先行投資を

 続ける分野である。
 

  (P.026)


再生医療とフィルムでは、つながりがないのでは、
と考えがちですが、富士フイルムの基礎技術とコア技術
を組み合わせれば、この2つはつながりを持ってきます。


 2004年、古森は写真フィルムの技術を活用した

 ある賭けに出た。

 1100億円を投じ、液晶ディスプレーに使う偏光板

 の保護フィルムの増産に乗り出した。

 それが的中した。

 競合に先駆けたことで、世界の約7割のシェアを握り、

 年間数百億円の利益を稼ぐ、巨大事業へ成長した。

 ここで得た利益などを元手に、構造改革を急いだ。

 人員削減など写真フィルム事業では厳しい手を打ち

 つつ、高機能材料や医薬品など、成長分野への足

 がかりを築いた。
 

  (P.026)


15年間の事業の推移をざっと眺めてみましょう。
大胆に事業ポートフォリオを組み替えてきたこと
が把握できることでしょう。


~2000年 フィルム全盛時代

~2000年 フィルム全盛時代

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 P.026)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20



2000~2014年 本業の喪失と創出

2000~2014年 本業の喪失と創出

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 P.026)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20



2015年~ 新たな本業を培養

2015年~ 新たな本業を培養

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 P.027)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20



なぜ、このような改革をしてきたのでしょうか?
『日経ビジネス』特集班によれば、次のように
なります。


 自社のコア技術を徹底的に見つめ直し、

 「どの分野なら適用できるかを読む」(古森)。

 イノベーションを起こせると見れば、異分野

 のように見えても素早く新しい市場を取りに

 いく。10、20年といった期間で、本業を入れ

 替えることも、いとわない。

 実行するには、自ら事業を選別し、時に

 今の本業を捨て去る覚悟も必要だ。

 社員に危機感を植え付けるのは簡単ではない。

 だが、それに成功したとき、富士フイルムは

 新たなステージに入る。

 IT(情報技術)企業が自動車を作り、米ゼネラル・

 エレクトリック(GE)といった製造業が、ビッグ

 データを使ったサービス業に乗り出す──。

 業態を隔てる垣根が瓦解し、今後は異分野の

 企業が市場を制することも増えていくだろう。
 

  (P.027)




富士フイルムが買収したCDIという米企業が重要な
カギを握ることが分かってきます。


だからこそ、富士フイルムは素早く行動し、iPS細胞
に関する事業で一気に京都大学に肩を並べること
が出来ました。





 PART.1 iPS創薬の覇権を握れ 
 京大を抜き去り 狙う100兆円市場 

CDIとはどんな企業なのか、知りたくないですか?
知りたいですよね?
知れば知るほど、富士フイルムの先見性と敏捷性
に気づくことになります。


 iPS細胞に関して京大とは違った技術を持つ

 米バイオベンチャー、セルラー・ダイナミクス・

 インターナショナル(CDI)を今年5月、約370

 億円で買収したのだ。

 同社が米サンフランシスコで進める、難病患者

 ら3000人分のiPS細胞を集める構想が実現

 すれば、京大を追い越し、飛躍の大きな一手に

 なると考えたからだ。
 

  (P.029)


CDI買収に関して、ある人物の存在がクロースアップ
されます。


 「ぜひとも我々と日本で一緒に仕事をやりましょう」

 昨夏、来日したCDI幹部に対し、身を乗り出さん

 ばかりに詰め寄ったのが、富士フイルムの再生

 医療事業推進室長、伴寿一(54歳)である。

 伴は以前、武田薬品工業で医薬品を手がけていた。

 技術力だけでなく、製薬企業の買収を成功に

 導いた巧みな交渉術などで、業界の中では知らぬ者

 はいないと言われる人物だ。

 「再生医療の世界で一緒にナンバーワンを目指さ

 ないか」。

 医薬品事業の強化に向け、人材を探していた取締役

 専務執行役員の戸田雄三からのこんな誘いに応え、

 2013年に転職した。そして、伴の入社が富士フイルム

 と京大の関係を大きく変えていくことになる。
 

  (P.029)


元々は、富士フイルムは京大と共同研究を行なうこと
で話を進めていたそうです。
ところが、CDIを買収したことで状況に変化が生じたの
です。


それは、「iPS細胞で、京大とCDIは双璧」(P.30)だから
です。


 iPS細胞で、京大とCDIは双璧だ。2007年11月、

 京大教授の山中は米科学雑誌のセルに、

 ヒトiPS細胞を初めて作り上げたという論文を

 発表した。

 同じタイミングで、別の科学雑誌である

 米サイエンス誌に同様の論文を掲載したのが、

 米ウィスコンシン大学教授のジェームズ・トムソン。

 CDIはトムソンが自らの特許をベースに立ち上げ

 た企業である。

 iPS細胞は4つの遺伝子を細胞に注入して作る。

 山中とトムソンの手法は、4つの遺伝子のうち2つが

 異なっており、2人は別々に特許を取得。

 トムソンはノーベル賞受賞を逃したが、CDIはがんに

 なりにくく、安全性が高いiPS細胞の作製技術でも

 特許を押さえた。
 

  (P.030)


こうした解説を読むと、CDIはすごい企業であること
が理解できます。だからこそ、富士フイルムの先見性
と敏捷性がひときわ輝いて見えるのです。


CDI買収の経緯を見てみましょう。


 古森は新規投資の判断基準として、

 「6割の勝算」があるかどうかを考える。

 iPS細胞を使えば、薬の作り方が一変

 するはず。

 そこで覇権を握れば、一躍トップ企業に

 躍り出られる。自信あふれる伴の報告

 ぶりやその内容から、確率は6割以上は

 あると確信したのだ。

 その後、伴は買収条件を提示。

 資金調達で壁に突き当たっていたCDIは、

 申し出に飛びついた。

 両社は今年1月下旬に完全買収の秘密

 保持契約を締結。

 わずか1カ月でデューデリジェンス(資産

 査定)を終わらせた。

 米医療機器大手も買収に名乗りを上げたが、

 決断が遅れ、“果実”を富士フイルムにさら

 われた。
 

  (P.031)


買収に至った要因は何だったのでしょうか?


 経営トップと現場の事業部長。

 両者の距離の近さと、医薬品事業にかける

 意気込みが、買収を成功させたと言える

 だろう。
 

  (P.031)


CDIが米国西部で進める「iPS細胞バンク構想」

CDIが米国西部で進める“iPS細胞バンク構想”

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 PP.028-029)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20



ここに至るまでには伏線があります。

富山化学工業の買収です。


 富士フイルムが医薬業界への足掛かりを得たのは、

 2008年に実施した富山化学工業の買収だ。

 昨年、西アフリカで猛威を振るったエボラ出血熱で、

 富山化学が開発した「アビガン」が治療薬として注目

 を集め、世界に富士フイルムの名を知らしめた。

 その後、再生医療に進出した。

 富士フイルムは写真フィルム用に開発したゼラチン

 を使い、人間のコラーゲンと同じたんぱく質を人工的

 に作り出す技術を持っている。

 それをベースに、iPS細胞を別の細胞に育てる際に

 必要な「足場材」を開発、研究用材料として販売を

 始めた。

 富士フイルムの足場材は、動物の成分を含まない

 独自の製法で、アレルギーや感染症などの原因に

 なりにくい。だから、安全性の高い細胞を作ることが

 できる。
 

  (PP031-032)



3分で丸分かり iPS細胞キーワード

3分で丸分かり iPS細胞キーワード

3分で丸分かり iPS細胞キーワード

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 PP.030-031)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20




これは画期的なことです。
資金の少ないCDIと、資金が潤沢にあり、安全性の
高い足場材の独自製法の技術を持つ富士フイルム
の合体は望ましいものでしょう。


 これまでは足場材という「苗床」を持っては

 いたものの、中に植える肝心の「タネ」が

 手元になかった。

 CDIの買収により2つがそろうことになる。

 既に日本で唯一の再生医療製品を販売する

 企業、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング

 を買収により傘下に抱える。

 同社は独自の治療ノウハウや販売ルートを

 持つ。

 これらを合わせれば、高品質のiPS細胞を

 大量生産し、効率的に販売する一貫事業が

 できるようになる。世界の主要製薬大手でも、

 ここまでの体制は築けていない。

 これから築こうにも、相当な時間がかかる。

 だから、富士フイルムは再生医療時代の

 トップ企業へ近づいた、と言えるのだ。
 

  (P.032)



富士フイルムは米国を足掛かりにする<br />・iPS細胞を巡る二大勢力の関係と動き

富士フイルムは米国を足掛かりにする
・iPS細胞を巡る二大勢力の関係と動き

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 PP.032-033)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20



ここでさらに注目すべき動きは「細胞バンク構想」
です。


 覇権を手中に収めるために、薬の開発を

 劇的に変える可能性を秘めた「iPS細胞

 バンク構想」が動き出した。

 難病患者ら3000人分の血液や皮膚から

 取り出した細胞を使い、iPS細胞を作製。

 それらを冷凍保存し、いつでも取り出して、

 薬の効き目を試す目的で使えるように

 しようというのだ。
 

  (P.032)


凄いことが起こりそうな予感をさせることは、
次の解説を読むとおぼろげながら分かって
きます。


 iPS創薬の覇権を握ることで、遺伝子組み

 換え食品における米モンサント、パソコンの

 心臓部であるCPUにおける米インテルのように、

 高いシェアを背景にして、高収益を上げ続ける

 ことが可能になるだろう。

 野望はそれだけにとどまらない。他人の細胞

 から作り上げた健康な臓器を移植する再生

 医療でも、世界のトップランナーを目指す。

 再生医療に使うためのiPS細胞も自前でそろ

 えていく。既に、米国人の19%をカバーする

 iPS細胞を持ち、この種類を増やす。
 

  (PP.032-033)


ただし、再生医療は構想が先行し、技術は見通せ
ないのも事実です。
今後、さらなる研究が不可欠な分野です。


 もちろん、再生医療はまだ先が見通せない

 技術であるのも事実。iPS細胞以外の技術

 が覇者になる可能性もある。

 その代表例が、iPS細胞と似た機能を持つが、

 作り方が違うES細胞(胚性幹細胞)。

 日本では開発が遅れているが、欧米では

 事業化の目前まで来ている。

 病気を治す能力を高めた細胞を人体に

 注入する治療法も、日米ベンチャーなど

 が実用化を目指している。
 

  (P.033)




ポイント

再生医療の分野で覇権を握るのはどこか

富士フイルムは京大と双璧をなす米CDIを傘下に
収めたことで、一躍iPS細胞の分野でトップに躍り
出ました。


問題は、実用化で一歩先行するES細胞(胚性
幹細胞)は米国が主導権を握っています。


果たして、再生医療の覇者となるのは、iPS細胞
なのか、はたまたES細胞なのか、それとも全く
異なるものなのか、それは時間が判断すること
でしょう。





今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 iPS細胞 
 再生医療 
 革新 
 異分野攻略 
 古森以後 





次回は、
「PART.2 異分野攻略の決め手
 革新生み出すフィルム進化論」 
をお伝えします。


ご期待下さい!





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本当に役に立つビジネス書
次の次まで読む 6割の勝算で十分
2015.07.20

古森 重隆(こもり・しげたか) 氏

[富士フイルムホールディングス代表取締役会長兼CEO]





 写真フィルムという「コア中のコア」が急激に

 失われていく状況で、会社のトランスフォー

 メーション(転換)を考えました。

 目標は2兆円から3兆円の売り上げで、

 営業利益率は10%。

 技術的にはリーディングカンパニーとなり、

 高品質の製品を出し続けることでした。


 ようやく、5000億円のM&A(合併・買収)を

 やりつつ、3年間で株主に2000億円超を

 還元できる状況になってきた。

 新たに進出して、まだ成果が十分に出て

 いない分野も確かにあります。

 だけど種はまいたし、時間があれば芽を出す

 はずです。

 医薬などは2018年から2020年にかけて花開く

 でしょうね。そうすると、私が意図した会社の

 転換は一区切りがつくのかな。


 イチかバチかなんてことをやったら経営者は

 終わりですよ。それは「ばくち打ち」と同じ。

 少なくとも6割ぐらいは勝算がないと。

 6割あれば、あとはやり方次第で何とかなる。

 空振りにはならない。


 再生医療というのは、究極で最後の医療です。

 iPS細胞から心臓を作り出し、悪い心臓と取り

 換えられるわけですから。

 今のようにドナーを待ったり、生体拒絶反応を

 心配したりする必要はなくなります。

 我々はiPS細胞の培養に不可欠な「足場材」に

 強く、今回、(iPS細胞の製造を手掛ける)CDIを

 得ました。これは非常に大きいですよ。

 ビジネスにスピード感が出てきます。


 iPS細胞というのは工業製品なんです。

 性質や性能にばらつきがないことが大事になる。

 非常に良質なiPS細胞を作れれば、創薬支援に

 応用できます。この点でCDIは先進的な技術と

 特許を持っていました。


 日本の学者が発明しても、工業化で米国に先を

 越される。そんな例を繰り返してはならない。


 2018年ぐらいに医薬品が収益に寄与するように

 なれば、相当大きな柱になります。(エーザイの

 アルツハイマー型認知症治療薬)アリセプトが

 特許切れを迎える前、年間に数千億円の売り

 上げがありました。(富士フイルムが準備している)

 アルツハイマーの治療薬は適用範囲がもっと広い

 から、会社のフェーズが変わるぐらいの売り上げと

 収益性が見込めます。


 医薬品というのは大変なんです。

 たまにホームランが出るけど、その間がなかなか

 耐えきれない。特に中小メーカーにとって厳しい。

 だけど、富士フイルムの場合は、ホームランが

 出るまで他の事業で支えられる。

 これは、有利に働くと思いますよ。


 (社長に就任して)1年半ぐらいは、富士フイルムの

 ポテンシャルは何で、どんな分野なら適用できるか

 という「読み」の作業を徹底的にやりました。

 それで、医薬や化粧品に参入しました。


 候補者の年齢を考えて、次の次ぐらいまで組み

 合わせを読まないといけないでしょうね。

 経営者にとって、若さは必ずしもプラスには働かない

 から。


 経営者の力だけでは転換はできません。

 笛を吹いても、付いてくる社員が踊らなかったら意味

 がない。踊らない社員を動かすのも経営者の仕事で、

 相当なパワーが必要なのも事実だけれど。

 強い相手にチャレンジする企業文化も大きかった。

 富士フイルムは米イーストマン・コダックに正攻法で挑み、

 それをねじ伏せてきた。

 そういうDNAがあるから、転換できたんだろうね。
 

  (PP.042-045)




富士フイルムホールディングス<br />代表取締役会長兼CEO 古森 重隆 氏

富士フイルムホールディングス
代表取締役会長兼CEO 古森 重隆 氏
(『日経ビジネス』 2015.07.20 号 P.043)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20






今回のインタビューは、今週号(2015.07.20)の特集、
「次はiPS 富士フイルム 古森重隆、本業を培養する」
のPART.4に組まれています。


富士フイルムは危機をバネにして変革してきました。
銀塩フィルムで世界一になったと思ったら、
デジカメが登場し、あっという間に取って代わりました。


富士フイルムは、長年培ってきた独自技術を活かし
異業種に参入してきました。


化粧品や医療の分野です。
一見すると関連性がなさそうに見えますが、
富士フイルムの基礎技術とコア技術を応用すれば、
可能になったのです。


下図をご覧ください。
これだけの基礎技術とコア技術を保有しています。
iPS細胞への取り組みも「奇異」ではありません。
富士フイルムなら納得できると思わせます。

富士フイルムの技術力

富士フイルムの技術力







キーセンテンス


キーセンテンスは、

 少なくとも6割ぐらいは勝算がないと 
です。


10割の勝算を待っていたら遅すぎ、かと言って
「イチかバチかなんてことをやったら経営者は
 終わりですよ」ということになります。


経営者に不可欠な能力は、「読む力」「決断する
勇気」そして「リーダーシップ」が後継者に必要な
能力だ、と古森さんは述べています(P.045)。


これらは古森さん自身の能力と言い換えて差し
支えないでしょう。






私見



富士フイルムはただでは起きない、したたかで
柔軟な組織体だと思います。


「経営者の力だけでは転換はできません。
 
 笛を吹いても、付いてくる社員が踊らなかっ
 
 たら意味がない。踊らない社員を動かすのも

 経営者の仕事で、相当なパワーが必要なの

 も事実だけれど」

と古森さんは語っていますが、経営者に先の3つ
の能力がなければ、変革はできません。


変革できているのは、経営者にその資質がある
からに他なりません。







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本当に役に立つビジネス書
完璧な準備などできない
思い通りにもならない
大事なのは風を捉えること


出口 治明(でぐち・はるあき)氏
[ライフネット生命保険会長兼CEO(最高経営責任者)]





今週の言葉


 長らく生命保険業界で働き、還暦を迎えた折に

 様々な縁がつながって、有望な若者たちと一緒に

 インターネット生命保険会社を開業しました。

 その展開に一番驚いているのが自分自身ですが、

 人生とはそのようなもの。

 「起業するなら死ぬほど考え抜いて、完璧な準備を

 持って臨むべし」といったことは、出来の悪いビジ

 ネス書に書いてある幻想です。


 そもそも、完璧な準備など人間にはできません。

 努力さえすれば何でもできるなどと考えるのも傲慢

 そのもので、誰もがオリンピックで金メダルを取れる

 わけではない。


 何事も自分の思い通りには運ばないのが世の常で、

 新しいことを始めれば、99%は失敗するということは

 歴史が示している通り。ベンチャー企業のほとんどが

 3年以内に消えていくのが現実です。


 それでも、そうした厳しさを分かったうえで、自らが信じ

 る何かを実現したいと強く思い、たとえ失敗しても諦め

 ずに、1%の可能性を信じて挑み続けた人たちが、

 世界をより良く変えてきました。


 私は専門の保険で何ができるかを考えました。

 そして、インターネットの利点を生かして保険料を安く

 することで、若い世代の人たちが安心して子供を産み

 育てられる社会にしたいと思い、懸命に事業に取り

 組んでいます。


 何より大事なのは、それぞれの個人の人生であって、

 仕事はその一部でしかありません。重視すべきは、

 ワーク・ライフ・バランスではなく、ライフ・ワーク・バランス。

 マネジメントにおいては、スタッフそれぞれの強みを知り、

 適材適所で力を引き出す。


 分からないことがあれば、人に聞き、本に問い、道を探せ

 ばいい。そうしてひとたび腹が決まったら、迷わず振り返ら

 ずに進めばいい。

 その時、風は吹かないかもしれません。そこで大事なのは、

 いつも都合よく風が吹くわけではないと知っておくこと。

 そして、吹く瞬間を逃さずに捉えることです。
 

                    (2015.07.20 号から) 
 

 




 ライフネット生命保険会長兼CEO(最高経営責任者) 出口 治明 氏

ライフネット生命保険会長兼CEO(最高経営責任者)
出口 治明 氏

「日経ビジネス」 2015.07.20 号 P.001
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20






キーワード

キーワードは、 完璧な準備などできない です。



出口さんはたいへんな読書家として知られて
います。実際、読んでおくべきビジネス書の
著書も物しています。


「完璧な準備など人間にはできません」
と出口さんは語っています。
ですが、何も準備しなくていいとは、決して言って
いません。


「分からないことがあれば、人に聞き、本に問い、
 道を探せばいい」
と語っています。


その上で、
「ひとたび腹が決まったら、迷わず振り返らずに
 進めばいい」
とアドバイスしています。


私が、出口さんは素晴らしい人物だと思うことは、
現在の私と同じ還暦になって起業したことです。


年齢は関係ない、と言っていることです。
出口さんが還暦で起業したことと比べると、
レベルは相当低いですが、他のことに挑戦して
います。私にとってのライフワークです。


それは、ブログを更新し続けることや、筋トレを
続けるという誰にでもできそうなことですが、
歳とともに気力や体力が衰えてきます。


それでも続けることが私にとって、とても重要な
ことだ、と考えています。


頭や身体が動かなくなるまでずっと続けます。




ポイント

ポイントは、
 吹く瞬間を逃さずに捉えること 
です。



「風は吹かないかもしれません」あるいは、
「いつも都合よく風が吹くわけではないと知って
おくこと」と語り、これらの言葉だけで判断すると、
突き放しているように感じますが、決してそうでは
ありません。


「吹く瞬間を逃さずに捉えることです」
と説いています。チャンスも可能性もある、
と語っています。チャレンジするかしないかの差
だけです。ですが、その差はとてつもなく大きな
ものです。


完璧な準備はできないけれど、普段から準備は
しておきなさい、と語っているのです。


そして、機敏に行動しなさい、と。
チャンスは必ずやってくるので、その瞬間をしっかり
捉えなさい、ということです。


特別のことをやろうとしなくても、自分でできる
精一杯のことで良い、と私は考えています。


他人と比較する必要は全くありません。
自分には何ができるのかを考え、やることが決まった
ら「迷わず振り返らず進めばいい」のです。


「完璧な準備などできない
 思い通りにもならない
 大事なのは風を捉えること」 ――出口さんの実体験
に基づく私たちへのエールです。