たからしげるブログ

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つれづれ思うことどもを不定期で発信しています。

大阪市生まれ。東京都中野区育ち。千葉県市原市在住。

 さっきまで母が座っていた食卓の椅子に、いまはOが座っていた。社会人になって数年後、Sが銀座の音楽教室に通っていたころに知り合った年上の人妻は、当時と少しも変わらない容貌をしていた。


 Sの気持ちは複雑だった。あれから半世紀近く、お互いにずっと音信不通だったOに、当時のままの姿で再会できたのは懐かしさと喜びあふれるものだった。


 一方で、この異世界にOが訪ねてきた背景を考えると、手放しで喜んではいられなかった。Oは既に物故したことになる。いつ、どこで、なぜ、という疑問が頭をかすめた。


 神戸の出張から帰って数日後、Sが音楽教室にいくと、受付にOはいなかった。「変わったばかりです」と答えた女性にOの所在を訊くと、彼女は受付デスクの下から小さな封筒を取り出した。「辞めたOさんから頼まれました」と言って、Sに差し出した。


 封筒に入っていた手紙には、こうあった。


〈S様。一夜限りでしたが、夢のような幸せをありがとうございました。貴方のことは一生忘れません。愛しています。でも、ごめんなさい。家に帰ってから初めて、私は夫が泣くのを見ました。あの人を独りに追い込むなんて、できないと知りました。約束した相手ですから連れ添います。貴方との関係は、先日限りにしなければなりません。どうぞ私を探さないでください。貴方の幸せを、いつまでも願っています。さようなら。O〉


 その後、Sは手紙を燃やしてOに別れを告げた。読んだ内容は、ずっと忘れなかった。


 あの日の幸せを思い出したOが最初に発した言葉は、しかしSの予想を裏切った。


「ああ、Sさんね。ここはどこなの。どうしてSさんがここにいらっしゃるの」


 Sは返事に詰まった。


 Oは226号室の居間の周囲を見回してから、首を傾げつつ言葉を続けた。


「ここは天国かと思ったわ……」(続く)

 

■時の彼方の中野住宅|たからしげるブログ

 神戸市内にある精神科医の病院がある最寄りの駅まで、SとOは新幹線と在来線を乗り継いで向かった。二人は新幹線内で指定席に並んで座り、だれが見ても未婚の恋人同士か新婚間もない夫婦のように、目的駅に着くまでお互いの笑顔を絶やさなかった。


 病院に精神科医を訪ねていく約束の時間より早めに駅に着いた二人は、Sの仕事が終わる予定の時刻に駅前で再会する約束をして、いったん別れた。Sは病院に向かい、Oは短い市内観光で時間をつぶした。


 二人は午後三時過ぎに再会すると、駅前の喫茶店に入った。おしゃべりを始めると、時間が矢のように過ぎていった。気がつくと、そろそろ夕暮れが近づいていた。


 今夜は家に帰らない、と言い出したのはOだった。その日は金曜日で、Sが次に出社しなければならない日は、週明けの月曜日だった。それを知っていたOは、Sの仕事中に駅近くのシティーホテルの予約を取っていた。Sがどうしても今日のうちに帰らなければいけないのなら、Oは一人でも泊まるから心配しないで、と言い出した。


 Sはもちろん、Oを一人で泊まらせるつもりはなかった。街に明かりが灯るころ、二人はシティーホテル近くのレストランで夕食を取った。酒も軽く飲んだ。どちらも胸を弾ませながらホテルの部屋に向かった。


 シロクマのイラストが描かれたマグカップは、ホテルの売店で男女ペアで売っていた。その夜の記念としてOが買っていた。


 翌日、ブルーの一つをSが、ピンクの一つをOが、それぞれ自宅に持ち帰った。


「そんなところかもしれないって、薄々は感じていましたよ」


 Sの母がそう言って笑った時、玄関のドアをだれかがノックした。


「どなたかしら。あらあら、見てくるわね」


 そのまま母はいなくなった。代わりに上がり込んできたのは、Oだった。(続く)

 

■時の彼方の中野住宅|たからしげるブログ


 

 Sの母は、食卓の端にある茶色の電気ケトルを手に取った。湯音が一定度数になったのを知らせる電子音が鳴った。黒い急須のフタを取って茶葉を入れた。ケトルを傾けて湯を注ぎ込んだ。湯気が立った。


「まあ、お茶でもお飲みなさいよ」


 椅子に座っているSの目の前に、シロクマのイラストが描かれたマグカップがあった。急須から、淹れ立ての茶が注ぎ込まれた。


 茶色の電気ケトルも黒い急須もそうだったが、シロクマのマグカップはことのほか、Sにとって懐かしい品だった。


 新聞社に勤めて数年後、いまは亡きK嬢と別れて間もないころだった。家にそんな品を持って帰ったのを、Sは憶えていた。まだ独身だった。あの日の記憶が蘇った。


 当時、Sは新聞社の出版部門で書籍編集の仕事をしていた。その秋、編集長から指示された業務は、神戸への出張だった。新しく本を出そうとしている精神科医がいて、編集担当になったSは執筆などの打ち合わせのために、週末に日帰りするつもりだった。


 金曜日の朝、Sが東京駅で待ち合わせたのは、一年前に銀座の音楽教室で知り合った女性Oだった。Sは社会人になってからもドラムの腕を磨こうと、その教室で週に一回、ジャズドラムを習っていた。Sより二歳年長のOは既婚で、教室の受付に座っていた。


 OがSの出張に同伴した事情は、Sの仕事とは無関係だった。簡潔に言えば、当時のSはK嬢と別れて間もなく、心に穴の開いた日々を送っていた。Oは早くに結婚した夫との間にいつまでも子が授からず、夫婦関係は真冬の井戸の底のように冷え切っていた。


 ある日、教室が終わってから二人は偶然、同じ帰り道で顔を合わせた。世間話が長引くと、お互いに惹かれ合っている事実に気がついた。Sが出張の話を持ち出すと、Oは即座に一緒にいきたい、と言い出した。


 二人とも寂しかったのだ。(続く)

 

■時の彼方の中野住宅|たからしげるブログ

 それ以上の質問ができなくなってしまったSに向かって、E嬢が言った。


「夢から覚めたご主人様を、元からいるあの世にお返ししてもいいかしら」


 同じ魂ながら、自分の知らないことをたくさん知っているS2に、Sはもっと訊きたいことがあった。が、言葉が出てこなかった。


 E嬢とS2が226号室から出ていくと、SはS2のことが少し羨ましくなった。あの二人はこれからずっと、あの世で一緒に暮らしていけるのに、自分は一人であの世でも地上世界でもないこの異世界に閉じ込められてしまった。不思議な嫉妬感にとらわれた。


「羨ましさを感じるっていうのは、あなたがまだ地上で生きている証拠よ」


 居間に一人でいると思ったSの背後で、そんな声がした。振り向くと、そこに立っているのはSの母だった。


「いつのまに、きていたの」


「いつのまにって、お母さんがここにいるのは不思議じゃないわよ。あなたの無意識の思いの中には、あなた以上にこの家を懐かしく思っているわたしがいるんですから」


 九十五歳まで生きたSの母だったが、いまの見た目はずっと若かった。あの世のパーティー会場にいた時と同じように、溌剌として元気そうだ。類推すると、いまのSは二、三十歳の見た目なのかもしれない。


「あの世で見た目が変わるのは、その人の魂が見た目を創るからなのよ。この世界も同じみたいね。いまのわたしたちの実際は、年を取る体なんて持っていないんですから」


「そうか。それでわかったよ、母さん」


 Sは両手を打ち合わせた。


「いまのぼくは、体を地上に残したまま、この世界にきているんだ。幽体離脱か」


「そう。生きた体を地上のどこかに残したまま、魂だけになっているのね」


 それを思うとSは、少し慌てなければいけない気がしてきた。(続く)

 

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Photo by Guillermo Ferla

 S2の説明は確かに、Sがすんなりと理解するには難解だった。しかし、あり得そうな気がした。でも、まだよくわからない。


「待てよ待てよ。するとだな、宇宙では時間がぐるぐると回っていて、過去、現在、未来という直線軌道じゃないっていうんだね」


「地上の感覚では、そう考えたほうがいいかもしれないな。つまり、宇宙の流れは過去、現在、未来と流れていった先に待っているのは超未来じゃなくて超過去なんだと。だが、実際のところ地上にはもちろん、宇宙に時間なんてものは始めから存在しないんだ。あの世にくればだれでも気がつく問題さ」


 そういえばと、Sは思い出した。あの世には時間の概念がないと教えてくれたのは、Sの父の愛人で哲学博士のLだった。


「そんなに戸惑ったような顔をするなって。すぐに飲み込めないことを無理に飲み込もうとするのは体によくないぞ。もちろん、体があってのことだけどね」


 そう言って、S2は愉快そうに笑った。Sは食い下がった。


「でも、過去をたどっていくと未来に行き着く、なんていうのは、そもそも時間があってこその表現じゃないか」


「いまのおまえにおれの心が読めれば、こんな質疑応答を続けなくても一発で理解してもらえるんだがな。だが、宇宙に時間が流れないという事実を言葉にして説明しようとしても、適切な言葉が見つからないんだよ」


「言葉じゃ説明できないってことか」


「まあ、そういうことだ。なぜなら、例えば地上での十年はあの世での一年だ、なんて言われても意味がわからないだろう」


「数学的に矛盾している」


「ところが、そうなんだ。宇宙では地上の一年も四十六億年も一瞬で過ぎるのさ」


「一瞬。それも時間だけど……」


「ああ。時間という言葉を使えばね」


 Sの質問が止まってしまった。(続く)

 

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 S2をその場に立たせたまま、Sは質問の矢を放ち始めた。


「なあ、もっと教えてくれ。人以外の宇宙人や動物も加えるなら、おれたちの前世はいったいいつくらいまで遡れるのかな」


「魂の起源を知りたいんだな」


「ああ、そういうことになるのかな」


「だったら、いまの宇宙の起源から始めなければいけない、と思うだろうが、実はもっと昔の宇宙の起源にも触れないといけない」


「もっと昔って、どういうことさ」


「いまの宇宙ができる前にも、前世の宇宙があったんだよ。でも、それだけで驚くなよ」


「もっとあるのかよ。でも、わかった。驚かないから教えてくれ」


「前世の宇宙の前にも、複数の前世の宇宙がいくつもあってね」


「いくつもって、どれくらい」


「数えたことがない。数えられない。無数にとでもいったら驚くか」


「驚くよ。で、いちばん最初の宇宙っていうのは、どんなふうにしてできたんだろう」


「残念ながら、あの世にずっと住み続けているおれにもわからない。だれにもね。でも、一つだけ確かなことがある。知りたいか」


「ぜひ」


「宇宙の生と死の軌道は、直線ではなく円を描いているんだ。自転と公転を続けている地球と同じさ。円で繋がっているから、どの位置で始まったかなんてわからない。人の魂の起源も宇宙と同じだ。始まりもなければ終わりもない。無限の連なりさ」


「えーと……」


 Sは掻き回された脳みそを元の状態に戻す必要があった。深呼吸を三回してから、声には出さずにS2を見た。


「混乱したかな。つまり地上の時間感覚でいえば、宇宙も魂も起源をたどっていくと、ぐるっと巡って現在に返ってくる。過去をたどれば行き着く先は未来なのさ」(続く)

 

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 E嬢は口を開かなかった。黙って二人に思考を送った。テレパシーというやつだ。あの世の者しか使えない意思疎通の方法だ。


 ここはあの世じゃないけれど、いまのわたしの心を読めた人は手を挙げてね、と。


 すぐ応じたのはS2のほうだった。Sには伝わらなかったE嬢の思考を、S2はしっかり受け止めていた。Sは何が起きたかもよくわからなかったので、目を点にしていた。


「はい。簡単に決まったわね」


 今度は思考を言葉に直してから、E嬢はS2のそばに歩み寄った。


「さあ、いきましょうか、ご主人様」


 S2は肩を竦めた。食卓の椅子からのろのろと立ち上がった。確かにおれは、元からあの世にいたのかもしれないな……。


 それから、声に出してSに言った。


「どうやら夢を見ていたみたいだ」


「夢だって」


「ああ。夢は、地上にいる者だけが見るものじゃない。あの世にいても夢は見られる」


「それって、どんな夢だったのかな」


「分身の地上での体験が、あの世では夢になって出てくるんだ。さっき見たのは、分身が生きたままあの世にきている夢だった」


「分身って、おれのことか」


「いま、地上でSと名乗っているおまえだけじゃない。生きているおまえには記憶がないだろうけど。おれ、いやおまえのあらゆる前世を送ってきた者たちが、それぞれの生涯で体験した無数のことがらの記憶だよ」


「あらゆる前世って、いくつもあるのか」


「地球上に人や動物として生まれてくる前の前世も合わせたら、数えきれないさ」


「人の前っていうのは、う、宇宙人か」


「ばか言え、人も宇宙の存在だぞ」


「じゃあその、人以外の宇宙人かよ」


「中には人より数段高等な宇宙人もいるし、人以下の低能動物もずいぶんいるみたいだ」


 Sは俄然、興味を引かれた。(続く)

 

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 E嬢が二人を見て、快く請け合った。


「いいわよ。じゃあ、どっちかしらね。これから姫が連れて帰ることになる、元からずっとあの世にいたご主人様のほうは」


 SとS2は食卓越しに見つめ合った。E嬢が口にした、元からずっとあの世にいたSはどっちなのか。Sには、それが自分ではないという自信があった。だからS2の顔をまっすぐ見て「そっちだよね」と言った。とたんに再び自分がそこにいるような錯覚に襲われて、身体がぞくっとした。


 ところがS2は、首を横に振った。


「まさか。あの世に帰るのはそっちでしょ」


 Sは驚いて叫んだ。


「うそだろ」


「うそなもんか」


「どうしてそんなことを言うんだ」


「それはこっちのセリフだよ。あの世に帰らなくちゃいけないのは、そっちでしょ」


「冗談は寝てから言ってよ、きみ」


「あ、おもしろいねその冗談、きみ」


「ありがとう。でも、いまは冗談を言い合っている場合じゃないと思うけど」


「ちょっと、二人ともきいてちょうだい」


 E嬢が割って入った。


「どっちが元からあの世にいた魂なのかわからないのは、どっちも同じ魂だからよ」


「えっ、どういうこと」×2。


「あの世には、これまで地上で生きて暮らして死んでいった人たちすべての魂が永久保存されているの。いま地上に生きている人と、既にあの世に還ってきている人両方にまたがる魂よ。でも見分ける方法があるわ」


 Sたち二人は、ぽかんとするしかない。


「あの世でワンネスになったせいで、いまのご主人様たちはまったく同じ魂になってしまったけど、一つだけ違いがあるでしょ」


「どんな違いかな……」×2。


 E嬢は言葉を続けなかった。ふと黙ってから、嬉しそうに声を立てて笑った。(続く)

 

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 食卓を挟んで向き合って座った二人は、さて、どうしたものかとお互いに考えた。


 最初に口を開いたのはSだった。


「どこからここにきたのかな」


 S2が答えた。


「今まであの世にいってたんだ。即興で組んだバンドでライブパーティーを開いてね」


「おれもだ。BとかIとかRとかHもいて、ご機嫌なバンドだったよ」


「Hの演歌は最高で、みんなしびれてたな」


「しびれまくってたよ」


「Iが名づけたヘブン・ザ・ファイブ」


「そう。姫がここから連れていってくれたんだ。黒のセダンに乗せてもらって」


「ああ、その通り。ってことは、どっちも同じ体験をしてたってことか」


「どっちも同じってことは、どういうことだよ。待て待て、落ち着いて考えよう」


「そうだ、落ち着かなくちゃ。よし、ここにもう一度、姫を呼んでみよう」


「姫なら、説明してくれるかもしれないな」


 ドアにノックが響いた。だれがきたかは二人ともすぐにわかった。同時に椅子をずらせて席を立った。ドアの開く音がした。


「またお呼びになったのね、ご主人様」


 E嬢が居間に入ってきた。


「あらら、どっちがどっちかしら」


 目を丸くして笑っている。


「笑いごとじゃないんだよ。おれが二人いるんだから。わけがわからん」×2。


 E嬢は肩を竦ませて、説明に入った。


「あの世でワンネスに入ったのが原因でしょう。まだ地上に生きているこの世のあなたの魂が、あの世に残されているご自分の魂をここまで連れてきちゃったのよ」


「魂が魂を。どうやって……」


「あの世には、地上で生きている人たちの魂の元が永久に保存されているんです」


 わかるようなわからないような話だった。問題はこれからどうする、だった。(続く)

 

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「だれだ、おまえ」


 Sが驚きの声で訊ねると、Sそっくりの男(ここではS2としよう)も、同じようにSに向かって訊ね返した。


「だれだ、おまえこそ」


「ちょっと待て。何だかおかしなことになっているぞ。ちょっと心を落ち着かせよう」


「そうだな。おれもそう思う。ここでパニくっていてもしょうがない」


 鏡の中から飛び出してきたみたいに、どこからどこまで自分そっくりの相手を目の前にしたSは、とんでもなくぞっとする気持ちだった。S2も同様の気持ちのようだ。お互いに驚愕不快な顔を突き合わせている。


「とにかく、中に入らないか」


 Sがドアを大きく開きながら言うと、S2は当然のようにうなずいて返した。


「入るさ。ここを目指してきたんだから」


「目指してきたのか」


「ああ。ここはおれの家だったから」


「ああ。ここはおれの家だったさ」


 おかしな対話になった。Sがどこか拍子抜けした気分になって力なく笑うと、S2も拍子抜けしたのか、力なく笑い返した。


 家の中は無人だった。しかし、がんらんどうではなかった。いつのころかは不明だが、懐かしい家具が整然と並んでいた。


「まあ、すわろうか」×2。


 二人は居間の食卓の前で同時に言って、お互いにどこに座るか顔を見合わせた。何度か譲り合ってから、Sはテレビを背に、S2はベランダを背にして、向き合って座った。


「ところで」×2、と再び同時発声した二人は、しばらく押し黙った。


「双子だと思えばいいか……」


 S2が呟いて、Sが答えた。


「そうだね。双子ってことにしようか」


 もちろんお互いに、相手が双子ではないことはとっくに承知していた。問題は、この世とあの世の両方にあった。(続く)

 

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