たからしげるブログ

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つれづれ思うことどもを不定期で発信しています。

大阪市生まれ。東京都中野区育ち。千葉県市原市在住。

 たったいままでそこにいたOの所在を求めて落ち着きをなくしたSを、Fはしばらく見つめた。心の会話が通じないと知って、次に出した声は母親のOとよく似ていた。


「母は私を産んだ時、出血多量で一度、死んだそうです。三十二歳の時でした。でも、しばらくたって奇跡的に生き返りました。その間に不思議な体験をしたって、教えてくれたことがありました」


「ああ。臨死体験だね」


「はい。死んで肉体から抜け出した母は、天国だとばかり思った世界にいったんです。でも、そこで出逢った人に、言われました。ここはまだ天国ではない。せっかく母親になれたのに、そのまま死んだらだめだ。きみには地上でまだしなければならないことが残っている。すぐに戻りなさい、って」


 先刻、SがOに伝えた言葉と同じだった。


 Fが続けた。


「その人がだれか、母はだれにも教えませんでした。でも、男の人だとは私、薄々感じていました。その人と母は、おそらく恋愛関係にあったのではないかと。そう言っても、母はいつも笑って、想像におまかせします、としか答えてくれませんでした」


 気持ちを抑えられなかったSの心を、Fはすぐに読んでしまった。


「あなただったんですね。そうでしたか。あの、ちょっと待ってください。頭が混乱してきました。私、生まれたのは……」


 知っているのはOだけだろう。彼女はきっといまも地上に生きている。しかし、娘のFはなぜ、命を落とすことになったのか。


「はい。母はまだ地上にいるはずです。私が死んだのは高校生の時でした。自転車に乗って通学中に、車にはねられたんです」


 何てことだ。Sは深く同情した。次にFが投げた質問に、Sは答えようがなかった。


「知っていたんでしょうか、疑っていたんでしょうか。父は、その秘密を……」(続く)

 

■時の彼方の中野住宅|たからしげるブログ


 

 新生児がだれの子かといった問題には触れないまま、Sは彼女を地上に戻すために尽力しなければならなくなった。いまの地上ではなく、四十五年も昔の地上の病院へ。


 その方法は、O自身に「とにかくわが子の元に戻らなければ」と強く思わせる、願わせるしかなかった。Sもまた、Oの背中を後押しできればと念じる力に鞭を打った。


 ドアに再びノックが響いたのは、その時だった。今度はだれだ。いまのSは、Oが産んでまもない赤子の元に戻るようにと、そればかりを念じていたのに、いったいだれがきたというのだろう。


 念じる力を一度解いて、Sは玄関に向かった。ドアを押し開けると、そこに一人の少女が立っていた。だれだろう。Sはその顔に見覚えがなかった。不審に思いながら訊いた。


「あの、どちら様でしょうか」


 いま、この異世界にいるSよりはるかに若い、十代半ばくらいに見える目鼻立ちの整った少女だ。白い歯を見せて頭を下げた。恐縮したみたいな表情で切り出した。


「Fっていいます。自分でもよくわからないんですが、どうしてもこの場所にこなければいけないという気持ちに押されたんです」


 初めて聞く名前でもあった。Sは改めて顔をよく見た。おぼろげな記憶がピントを合わせた。もしかして……。


「はい。そのもしかして、だと思います」


 Sの心を読み取ったFが、うれしそうに何度もうなずいて見せた。


「まあ、上がってください。いま」とまで言って、Sは状況を考えた。ここでFをOと引き合わせることなんて、できるだろうか。


 Fは玄関の敷居に靴をそろえて居間に上がってきた。少女らしい純真な表情をして、辺りを見回した。やがて視線をSに戻した。


 居間に戻ってきたSは、その場に立ち尽くした。さっきまでそこにいたOの姿が消えていた。唖然とするしかなかった。(続く)

 

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 Sは動揺した。シロクマのマグカップの想い出から浮上してきたOは、あの世からきたのではなさそうだった。地上の病院で新生児を産み落とした直後、弛緩出血という胎盤からの大量出血がもとで死に直面していた。


 肉体から離脱したOの魂は、あの世ではなく、Sが創ったとされるこの異世界、中野住宅にやってきた。しかも、それは地上の時間でいまから四十五年も前の出来事だった。


 当時、Sは三十歳、Oは三十二歳だった。二人で神戸のホテルに泊まった翌年だ。


 尋常ではない想像がSの頭を貫いた。この年に出産を迎えたOの娘は、だれの子か。


 Oの顔を見つめてSはそう思考したが、Oには伝わらなかった。Oはまだ、完全に死んだとは言えない状態と見てよかった。であれば、すべてを後回しにするしかなかった。


 四十五年前だろうと知るものか。いますぐ地上に戻れば、魂は再び肉体に宿ってOは息を吹き返す。Sは口を開いた。


「初めての子を産んだんだね。せっかく母親になれたのに、そのまま死んじゃったらだめだ。きみには地上世界で、まだしなければならないことが残っている。こんな異世界をさまよっている場合じゃないだろう」


 とはいえ、SはいまのOを地上に戻す方法を知らなかった。さっきS2を連れてあの世へ帰ったE嬢に、またきてもらおうか。しかし、E嬢はSを地上に戻す方法を知っているだろうか。ここはSの異世界だ。まして四十五年もの過去からやってきたOのことだ。二人で頭を抱えることになるかもしれない。


 Sは言葉を続けた。


「生まれたばかりの赤ちゃんが一番頼りにしているのはお母さんだよ。こうなったらきみは、何がどうあってもその子の元に戻らなくちゃいけない。戻り方なんてわからなくてもいいんだ。願望を強く持ってくれ。さあ、地上に戻りなさい。きみの娘がいる病院に、いますぐ戻るんだ」(続く)

 

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 Oの言葉は、Sには不可解だった。Sが母の前でOとの想い出を思考したことで、Oの魂があの世から呼び出されたものとばかり思っていた。どうやら違うらしい。どこが違うのか、Sは率直に質した。


「ここは天国なんかじゃありません。Oさんは、あの世からきたんだと思いましたが」


「あの世って、私、その……」


「いままでどこで何をしていましたか」


 Oは首を傾げて、Sに向き直った。


「私、病院にいたんです。産科です。初めての子を出産したところでした」


「出産ですか。それはすばらしい。あ。でも待って。いまのあなたは……」


 半世紀近く前、一緒に神戸にいった時、OはSより二つ年上だった。いま、見た目は別にしても、Oの年齢は七十七歳になっているはずだ。いや待て、それはない。では、Oが死んだのはいくつの時だったのか。


 ところが、Oは黙ってSの顔を見つめるだけだった。Sの思考が伝わっている様子は窺えなかった。だからSは質問を続けた。


「死んだのはいくつの時だったの」


 Oは戸惑った表情を隠さずに答えた。


「死んだなら、いまは三十二です。女の子を産んだ後、弛緩出血が止まらなくなって」


 Sは息を呑んだ。


「気が遠くなったと思ったら、私は寝台の上に浮かんでいました。それから暗いトンネルを昇って、辺りは星屑の世界になって。その時、目の前に青いドアがあったんです。226という番号がついていました。天国のドアかと思ってノックしました」


 Sはぼうっとした頭で、宇宙に時間は存在しない、という言葉を思い返した。でも、いまはもっと重要な事実を確かめたかった。


「あの、いまは西暦何年ですか」


 再び戸惑いながらもOが答えたのは、いまから四十五年も昔、SがOを伴って神戸にいった翌年の年号だった。(続く)

 

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 さっきまで母が座っていた食卓の椅子に、いまはOが座っていた。社会人になって数年後、Sが銀座の音楽教室に通っていたころに知り合った年上の人妻は、当時と少しも変わらない容貌をしていた。


 Sの気持ちは複雑だった。あれから半世紀近く、お互いにずっと音信不通だったOに、当時のままの姿で再会できたのは懐かしさと喜びあふれるものだった。


 一方で、この異世界にOが訪ねてきた背景を考えると、手放しで喜んではいられなかった。Oは既に物故したことになる。いつ、どこで、なぜ、という疑問が頭をかすめた。


 神戸の出張から帰って数日後、Sが音楽教室にいくと、受付にOはいなかった。「変わったばかりです」と答えた女性にOの所在を訊くと、彼女は受付デスクの下から小さな封筒を取り出した。「辞めたOさんから頼まれました」と言って、Sに差し出した。


 封筒に入っていた手紙には、こうあった。


〈S様。一夜限りでしたが、夢のような幸せをありがとうございました。貴方のことは一生忘れません。愛しています。でも、ごめんなさい。家に帰ってから初めて、私は夫が泣くのを見ました。あの人を独りに追い込むなんて、できないと知りました。約束した相手ですから連れ添います。貴方との関係は、先日限りにしなければなりません。どうぞ私を探さないでください。貴方の幸せを、いつまでも願っています。さようなら。O〉


 その後、Sは手紙を燃やしてOに別れを告げた。読んだ内容は、ずっと忘れなかった。


 あの日の幸せを思い出したOが最初に発した言葉は、しかしSの予想を裏切った。


「ああ、Sさんね。ここはどこなの。どうしてSさんがここにいらっしゃるの」


 Sは返事に詰まった。


 Oは226号室の居間の周囲を見回してから、首を傾げつつ言葉を続けた。


「ここは天国かと思ったわ……」(続く)

 

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 神戸市内にある精神科医の病院がある最寄りの駅まで、SとOは新幹線と在来線を乗り継いで向かった。二人は新幹線内で指定席に並んで座り、だれが見ても未婚の恋人同士か新婚間もない夫婦のように、目的駅に着くまでお互いの笑顔を絶やさなかった。


 病院に精神科医を訪ねていく約束の時間より早めに駅に着いた二人は、Sの仕事が終わる予定の時刻に駅前で再会する約束をして、いったん別れた。Sは病院に向かい、Oは短い市内観光で時間をつぶした。


 二人は午後三時過ぎに再会すると、駅前の喫茶店に入った。おしゃべりを始めると、時間が矢のように過ぎていった。気がつくと、そろそろ夕暮れが近づいていた。


 今夜は家に帰らない、と言い出したのはOだった。その日は金曜日で、Sが次に出社しなければならない日は、週明けの月曜日だった。それを知っていたOは、Sの仕事中に駅近くのシティーホテルの予約を取っていた。Sがどうしても今日のうちに帰らなければいけないのなら、Oは一人でも泊まるから心配しないで、と言い出した。


 Sはもちろん、Oを一人で泊まらせるつもりはなかった。街に明かりが灯るころ、二人はシティーホテル近くのレストランで夕食を取った。酒も軽く飲んだ。どちらも胸を弾ませながらホテルの部屋に向かった。


 シロクマのイラストが描かれたマグカップは、ホテルの売店で男女ペアで売っていた。その夜の記念としてOが買っていた。


 翌日、ブルーの一つをSが、ピンクの一つをOが、それぞれ自宅に持ち帰った。


「そんなところかもしれないって、薄々は感じていましたよ」


 Sの母がそう言って笑った時、玄関のドアをだれかがノックした。


「どなたかしら。あらあら、見てくるわね」


 そのまま母はいなくなった。代わりに上がり込んできたのは、Oだった。(続く)

 

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 Sの母は、食卓の端にある茶色の電気ケトルを手に取った。湯音が一定度数になったのを知らせる電子音が鳴った。黒い急須のフタを取って茶葉を入れた。ケトルを傾けて湯を注ぎ込んだ。湯気が立った。


「まあ、お茶でもお飲みなさいよ」


 椅子に座っているSの目の前に、シロクマのイラストが描かれたマグカップがあった。急須から、淹れ立ての茶が注ぎ込まれた。


 茶色の電気ケトルも黒い急須もそうだったが、シロクマのマグカップはことのほか、Sにとって懐かしい品だった。


 新聞社に勤めて数年後、いまは亡きK嬢と別れて間もないころだった。家にそんな品を持って帰ったのを、Sは憶えていた。まだ独身だった。あの日の記憶が蘇った。


 当時、Sは新聞社の出版部門で書籍編集の仕事をしていた。その秋、編集長から指示された業務は、神戸への出張だった。新しく本を出そうとしている精神科医がいて、編集担当になったSは執筆などの打ち合わせのために、週末に日帰りするつもりだった。


 金曜日の朝、Sが東京駅で待ち合わせたのは、一年前に銀座の音楽教室で知り合った女性Oだった。Sは社会人になってからもドラムの腕を磨こうと、その教室で週に一回、ジャズドラムを習っていた。Sより二歳年長のOは既婚で、教室の受付に座っていた。


 OがSの出張に同伴した事情は、Sの仕事とは無関係だった。簡潔に言えば、当時のSはK嬢と別れて間もなく、心に穴の開いた日々を送っていた。Oは早くに結婚した夫との間にいつまでも子が授からず、夫婦関係は真冬の井戸の底のように冷え切っていた。


 ある日、教室が終わってから二人は偶然、同じ帰り道で顔を合わせた。世間話が長引くと、お互いに惹かれ合っている事実に気がついた。Sが出張の話を持ち出すと、Oは即座に一緒にいきたい、と言い出した。


 二人とも寂しかったのだ。(続く)

 

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 それ以上の質問ができなくなってしまったSに向かって、E嬢が言った。


「夢から覚めたご主人様を、元からいるあの世にお返ししてもいいかしら」


 同じ魂ながら、自分の知らないことをたくさん知っているS2に、Sはもっと訊きたいことがあった。が、言葉が出てこなかった。


 E嬢とS2が226号室から出ていくと、SはS2のことが少し羨ましくなった。あの二人はこれからずっと、あの世で一緒に暮らしていけるのに、自分は一人であの世でも地上世界でもないこの異世界に閉じ込められてしまった。不思議な嫉妬感にとらわれた。


「羨ましさを感じるっていうのは、あなたがまだ地上で生きている証拠よ」


 居間に一人でいると思ったSの背後で、そんな声がした。振り向くと、そこに立っているのはSの母だった。


「いつのまに、きていたの」


「いつのまにって、お母さんがここにいるのは不思議じゃないわよ。あなたの無意識の思いの中には、あなた以上にこの家を懐かしく思っているわたしがいるんですから」


 九十五歳まで生きたSの母だったが、いまの見た目はずっと若かった。あの世のパーティー会場にいた時と同じように、溌剌として元気そうだ。類推すると、いまのSは二、三十歳の見た目なのかもしれない。


「あの世で見た目が変わるのは、その人の魂が見た目を創るからなのよ。この世界も同じみたいね。いまのわたしたちの実際は、年を取る体なんて持っていないんですから」


「そうか。それでわかったよ、母さん」


 Sは両手を打ち合わせた。


「いまのぼくは、体を地上に残したまま、この世界にきているんだ。幽体離脱か」


「そう。生きた体を地上のどこかに残したまま、魂だけになっているのね」


 それを思うとSは、少し慌てなければいけない気がしてきた。(続く)

 

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Photo by Guillermo Ferla

 S2の説明は確かに、Sがすんなりと理解するには難解だった。しかし、あり得そうな気がした。でも、まだよくわからない。


「待てよ待てよ。するとだな、宇宙では時間がぐるぐると回っていて、過去、現在、未来という直線軌道じゃないっていうんだね」


「地上の感覚では、そう考えたほうがいいかもしれないな。つまり、宇宙の流れは過去、現在、未来と流れていった先に待っているのは超未来じゃなくて超過去なんだと。だが、実際のところ地上にはもちろん、宇宙に時間なんてものは始めから存在しないんだ。あの世にくればだれでも気がつく問題さ」


 そういえばと、Sは思い出した。あの世には時間の概念がないと教えてくれたのは、Sの父の愛人で哲学博士のLだった。


「そんなに戸惑ったような顔をするなって。すぐに飲み込めないことを無理に飲み込もうとするのは体によくないぞ。もちろん、体があってのことだけどね」


 そう言って、S2は愉快そうに笑った。Sは食い下がった。


「でも、過去をたどっていくと未来に行き着く、なんていうのは、そもそも時間があってこその表現じゃないか」


「いまのおまえにおれの心が読めれば、こんな質疑応答を続けなくても一発で理解してもらえるんだがな。だが、宇宙に時間が流れないという事実を言葉にして説明しようとしても、適切な言葉が見つからないんだよ」


「言葉じゃ説明できないってことか」


「まあ、そういうことだ。なぜなら、例えば地上での十年はあの世での一年だ、なんて言われても意味がわからないだろう」


「数学的に矛盾している」


「ところが、そうなんだ。宇宙では地上の一年も四十六億年も一瞬で過ぎるのさ」


「一瞬。それも時間だけど……」


「ああ。時間という言葉を使えばね」


 Sの質問が止まってしまった。(続く)

 

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 S2をその場に立たせたまま、Sは質問の矢を放ち始めた。


「なあ、もっと教えてくれ。人以外の宇宙人や動物も加えるなら、おれたちの前世はいったいいつくらいまで遡れるのかな」


「魂の起源を知りたいんだな」


「ああ、そういうことになるのかな」


「だったら、いまの宇宙の起源から始めなければいけない、と思うだろうが、実はもっと昔の宇宙の起源にも触れないといけない」


「もっと昔って、どういうことさ」


「いまの宇宙ができる前にも、前世の宇宙があったんだよ。でも、それだけで驚くなよ」


「もっとあるのかよ。でも、わかった。驚かないから教えてくれ」


「前世の宇宙の前にも、複数の前世の宇宙がいくつもあってね」


「いくつもって、どれくらい」


「数えたことがない。数えられない。無数にとでもいったら驚くか」


「驚くよ。で、いちばん最初の宇宙っていうのは、どんなふうにしてできたんだろう」


「残念ながら、あの世にずっと住み続けているおれにもわからない。だれにもね。でも、一つだけ確かなことがある。知りたいか」


「ぜひ」


「宇宙の生と死の軌道は、直線ではなく円を描いているんだ。自転と公転を続けている地球と同じさ。円で繋がっているから、どの位置で始まったかなんてわからない。人の魂の起源も宇宙と同じだ。始まりもなければ終わりもない。無限の連なりさ」


「えーと……」


 Sは掻き回された脳みそを元の状態に戻す必要があった。深呼吸を三回してから、声には出さずにS2を見た。


「混乱したかな。つまり地上の時間感覚でいえば、宇宙も魂も起源をたどっていくと、ぐるっと巡って現在に返ってくる。過去をたどれば行き着く先は未来なのさ」(続く)

 

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