Pの前世を生きたFの思いは、死を超えてあの世へ運ばれていったことになる。この世から戦争をなくしたい、という高校生だからこその純真な気持ちが、生まれ変わっていく次の人生を、過去に求めたのだった。
「それで、実際に体験した戦時下の暮らしはどうでしたか」
Sの質問にPは大きく首を横に振った。
「子どものころは、生まれてきた世界をありのままに受け入れるだけです。いいも悪いもありません」
「それはそうですね。生まれたとたん、あの世のことも前世のことも忘れてしまうわけでしょ。別の人生や前世の暮らしと比べるなんてことは、できない相談でしたか」
あの世や生まれ変わりに関して、その程度のことはSも知っていた。
Pはうなずいて、
「はい。そうした知識や記憶は、あの世で元の魂とワンネスになった後、再び地上へ降りる直前までは残っているんです。たまに前世やあの世での暮らしの記憶を地上まで引きずってくる者はいるようですが、それだって憶えているのはせいぜい七、八歳のころまででしょう。再び思い出すのは、地上での人生を終えてあの世へ還ってからです」
「なるほど。地上での人生は、魂の修行の場だなんてよく言いますけどね」
「それより、ぼくがあの世に還ってから強く思ったのは、人類にとって戦争は必要悪なのかもしれない、という疑念でした」
「それはまた、どうして」
「誤解しないで聞いてください。戦争が起きると敵も味方も、争いにまったく関係のない人たちも含めて、多くの命が失われます。地球という惑星には、人を収容するにしても、食糧を供給するにしても、生存可能の環境を維持するにしても、限界があります」
Pが何を言い出そうとしているのか、Sは薄々予想できる気がした。(続く)




