人の魂は、あの世でワンネスに入ってから再構築を行った後、次に生まれ変わる時が、地上の時間感覚だと未来ではなく過去になる場合もあるのだと、Sは知った。
九歳だったSが台風一過で増水している川で溺れそうになった時、命の危機を救った二十六歳の警察官Pは、そのまま生きていれば現在は七十五歳のSより十九歳年上になる。その前世は、Sが三十歳の時に出張で神戸に同伴した既婚女性Oの一人娘Fだった。
そのFは高校生の時に交通事故で死んでしまったが、そのまま生きていたら、現在は還暦を数年過ぎたくらいの年齢になる。
Sは瞬きを一つしてから、Fに訊いた。
「話がこんがらがってきたけど、それじゃ、ぼくを救ってくれた警察官Pは、その後どうなったんだろう。彼がいまも地上に生きているとしたら、うん、九十四歳だ」
Fは首をゆっくりと横に振った。
「残念ながら、Pは二〇〇〇年に六十八歳で死んで、地上から消えているわ」
「そうなんだ。で、次にいつだか知らないけど、また生まれ変わってきているのかな」
「いいえ。Pの魂はあの世では私たちの分身の一つになって、転生の準備をしているの」
「ちょっと待って。きみたちの分身っていうと、いまぼくの目の前にいるきみが少女Fであると同時に、次の人生を生きた警察官Pでもあるわけだから、二人は元の魂としてワンネスってことになるんだね」
「その通り。いまの私は少女Fの姿をしてあなたの前にいるけど、よろしければ九歳の少年だったころのあなたを救った警察官Pの姿になってみせてもいいことよ。ほらね」
言い終わらないうちに、Fの姿が消えた。代わりに現れたのは、Sを救った時の制服姿の二十六歳の警察官Pだった。
「久しぶりだね、Sくん」
そう言いながら、警察官Pは帽子のつばに手を当てて敬礼してみせた。(続く)





