最近、よくものを忘れます。
いいえ、最近というより、だいぶ前からといったほうがいいかもしれません。
子どもの頃は、忘れることより覚えなければならないことがたくさんあったから、忘れるといった意識が低かったのでしょうか。
忘れるという感覚を意識し始めたのは、中高年になってからのようです。
とはいえ、一時的に忘れていても、何かのヒントがあればすぐに思い出せました。
還暦を過ぎてからは、忘れるという意識が俄然、強くなってきたように感じます。
まず、固有名詞がなかなか出てきません。
勤めていた頃に、毎日顔を合わせていた職場の同僚の、顔は何となく思い出せるのですが、苗字が出てこないことがあります。
特に思い出せないのは、歌手や俳優や作家など、よく知られた有名人の名前ですね。
映画や小説も、しかりです。
ネットで観る映画ですが、おもしろそうだなと思って観ているうちに、あ、これ前に一度観たぞと思い出せても、結末を忘れている場合があって、何だか得した気持ちになって最後まで観てしまいます。
先日は、中学のときに読んだはずの夏目漱石の『坊っちゃん』を再読したら、こんなにおもしろい小説だったのかと感嘆しました。
作家のみなさんにお尋ねしますが、自分で書いた、あるいは書いている作品の登場人物の名前がすらすら出てきますか?
ぼくは書いている途中でも、こいつの名前は何だったっけ? どんな字を書くんだったっけ? と筆が止まることがあります。
前世なるものがあったとしても、その記憶は5歳くらいになるまでに、言葉を覚えてくるにつれて忘れていくといわれています。
いやな目にあったことも、不安や恐怖や悲惨な体験も、いつかは忘れていきます。
忘却とはある意味、生きていく上で理にかなった脳の働きなのかもしれません。
















