2015年の3月になってまもなくのある日だったと思います。
ぼくはリードギターの菅沼雅明と誘い合って、杉並区梅里に住むサイドギターの上田益義の家に遊びにいきました。
3年前にバンドを再結成した頃の上田は、練馬区光が丘のスタジオでの練習後、打ち合わせの店に向かう途中で、ぼくに「ギター持って歩くのきついからタバコ買ってきてくれよ」と頼むほどのヘビースモーカーでした。
当時の上田は、激しい運動をすると呼吸が苦しくなるCOPD(肺気腫)が進んできていたのですが、それに関してはずっとポーカーフェイスを貫いていました。
まもなく、みんなにバレましたけれど。
3人で顔を寄せ合って話しているうちに、大阪で暮らしている旧メンバーの古川光二がいま、何をしているかが気になりました。
上田がスマホを取り出して連絡しました。
電話に出てきた古川は、懐かしい声で元気を装っていましたが、終始少し苦しそうに咳込みながら、自分はいま肺がんの末期にあることを、ぼくたちに告げました。
3人は交代で、旧友とのさりげない会話を交わし合いましたが、電話を切った後の余韻はずいぶん暗いものになりました。
1か月後の4月3日早朝、目が覚めたときに、古川はもうこの世にはいませんでした。
あっというまの旅立ちでした。
この年の11月28日、アローファイブは通算4回目のライブを荻窪のライブハウスで行うことになりました。
このライブから、やはり同級生の吉良友孝(サイドギター)がメンバーに加わり、編集者の森彩子とイラストレーターのカタノトモコが〈ブルードラゴン・ネアリーデッド〉というデュオを組んで出演してくれました。
カタノにベースを弾かせてマイクを手にした志村徳幸の歌を含めたビートルズ・ナンバーを2曲お届けします。(敬称略・続く)
Please Please Me (youtube.com)
写真 左から吉良友孝、宝田茂樹、上田益義、猪俣寛、志村徳幸、菅沼雅明、手前は左からカタノトモコ、森彩子(敬称略)
撮影 益永葉