Tさんの発言の秘密

 今朝も早くから学校へ行って、教室整理。いつになったら終わるのだ。教員室の机の整理やロッカーの整理もある。やれやれ。

 でも、うれしいことがあった。

「先生、『新採教師は…』の本、まだありますか」とY先生。2年目の若い先生だ。お金をもらうのが悪い気がしてしまう。読んで、勇気と希望と“したたかさ”を持ってください。ありがとう。

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 退職を知って、一年前担任したK君が手紙を持ってきた。A県へ転校するという。「先生に是非手紙を渡したかった」お母さんや弟も一緒。「この子にとって忘れられない先生なんです!」

 手紙には、こんな文章が…。

 ―先生、4年生のとき1年間教えていただきありがとうございました。僕は、先生のお陰でできるようになったことがあります。それは、自信を持って自分の考えを言えるようになったことです。…略(5年生になってからの発言や発表のことが書いてある)。

 先生にもらった『グリックの冒険』は全部読み終わりました。読んでおもしろかったので8月の読書感想文の本に選びました―

 そんな、うれしい文章がならんでいる。そして、超ミニの、わずか3cmくらいの手作りの本が鍵と一緒につけてあった。私の宝物だ。飾っておくからね。

 クラスが変わるたびに、私は、教室に並べてある児童書を一冊記念にあげることにしている。みんな、とてもうれしそうにもって行く。「背表紙の裏に『マンモス君』を書いて」などとねだられながら…。本は、もう200冊くらい子どもたちの手にわたっている。本が好きになってくれればいい。

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 お別れの日、Tさんから手紙をもらった。Tさんは、授業中ほとんどお話したことがない子だった。一学期、勇気を出して、初めて本読みに挑戦。それから、算数などですこしずつ挑戦するようになった。三学期も声は聞こえないくらい。そのTさんが、『モチモチの木』の学習で、自分から手をあげて、読みだけでなく意見を言った。凄いなあ、うれしいなあと思った。

 そこに秘密があった。Tさんとお母さんのお手紙を読んで知る。

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◎Tさんの手紙… 

わたしは、毎日、山崎先生にあって“しあわせ”でした。金曜日に『シェーハ』をして3回まけて、さいごに『魔法のおまじない』をしてもらって、土曜日にいいことがあったり、日曜日にたのしいことがあったりしました。先生のおまじないがきくのかなと思いました。4年生になってもわすれません。…。


◎そして、Tさんのお母さんの手紙

 なかなか保護者会に出席できず残念でしたが、T子が毎日楽しく学校に通えてとても感謝しています。

 3学期の終わりごろですが、T子が「今日、手をあげたんだよ!」ということが多くなりました。「どうして、手をあげるようになったの?」と聞くと、

「もう少しで、山崎先生とお別れだから、がんばって手をあげるんだ!」

 うれしい言葉を聞きました。子どもにとってだけでなく、私にとっても山崎先生に出会えてうれしく思います。…略。

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 教師が子どもを育て、支えているだけではない。教師は子どもに支えられ、育てられている。忘れられない手紙となった。