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『第零次グローバリズム(後篇)①』三橋貴明 AJER2017.8.22
https://youtu.be/-5uKaphgykI
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佐賀にいます(もちろん講演のお仕事)。昨夜は、美味しい食事とお酒(鍋島!)をごちそうになり、大変、楽しく過ごさせて頂きました。
さて、佐賀と言えば、長崎新幹線(本ブログ的には)。
『長崎新幹線 車両開発の見通しが甘過ぎた
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20170822-OYT1T50142.html
高度な技術を要する車両の開発が、思うように進まない。見通しの甘さが招いた迷走である。
建設中の九州新幹線長崎(西九州)ルートで、整備計画の見直しが不可避となった。国土交通省が「2025年度の全面開業までに、開発が間に合わない」と表明したためだ。
線路幅に応じて車輪がスライドするフリーゲージトレイン(FGT)を導入する目算だった。実用化の時期が判然としない車両の使用を前提にして、見切り発車で計画を進めた国の責任は重い。(後略)』
読売新聞の社説は、例により整備新幹線自体を批判する論調になっています。
FGTが失敗に終わった以上、長崎新幹線は問題の新鳥栖-武雄温泉間を「フル規格」の新幹線で整備することが、最も合理的になっています。
とはいえ、そのためには国費のみならず、佐賀県の費用負担も必要になります。これが、問題なのです。フル規格の新幹線整備を開始した場合、佐賀県は建設費の三分の一を負担しなければなりません。
逆に、コスト面の負担がなければ、佐賀県にしてもフル規格の新幹線整備に反対はしないでしょう。すでに新幹線の駅ができることが確定している武雄温泉、嬉野温泉は、佐賀県なのです。
フル規格の新幹線が通れば、武雄温泉や嬉野温泉に関西方面からの客を引き込め、佐賀県全体としてはベネフィットを得ます。
とはいえ、佐賀県ではなく「佐賀市」から見ると、現在は博多まで35分のところが、20分に短縮されることになり、時短効果はそれほど得られません。(もちろん、新幹線の料金は現在の特急料金よりも高くなるでしょう)
佐賀市のみに絞れば、フル規格の新幹線整備のメリットはそれほどない。とはいえ、北九州全体としては、もちろんあります。
まともな国家であれば、「国民経済全体」のために、全額国費を投じてでも、長崎新幹線は全線フル規格で整備するべきです。フル規格ならば、長崎-博多間が55分! 世界が変わります。
もう一つ、新幹線の話題を。
昨日、イノベーション(技術革新という意味です)は国家プロジェクトから生まれる。特に、グローバリズムが幅を利かせた現代の世界では、株主資本主義により、企業はリスクがある技術投資に乗り出せず、民間主導のイノベーションは起きにくい、といった話をしているのですが、例えばこちら。
『地下1000メートルの難工事=南アルプストンネル着工へ-JR東海のリニア
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017082300120&g=soc
JR東海は23日、リニア中央新幹線の最大の難工事区間とされる南アルプストンネル山梨工区(山梨県早川町)を公開した。最も深い場所で地表からトンネルまで1000メートルを超え、大量の地下水が流れ込む厳しい条件が予想されている。2027年の東京(品川)-名古屋間の開業に向け、17年度中に本格着工する見通しだ。(後略)』
こちらは公共投資ではなく、JR東海のプロジェクトですが、リニア新幹線お場合は「国家プロジェクト」と呼んでも構わないと思います(財政投融資も投じられたことですし)。
南アルプスを貫く、人類史上最大のトンネル工事が始まろうとしています。後略部で、柘植康英社長が語っていますが、
「工事では予想外のことが起きるだろうが、(関係者の力を合わせて)前に進む」
のでございます。
この手の困難なプロジェクトをクリアするべく、現場の方々が懸命に知恵を絞り、努力を重ねることで、本来の意味の「経済力」が培われるのでございます。そして、南アルプストンネル掘削は、間違いなく我が国の技術レベルを向上させます。
まさに、技術革新です。
新幹線は、我が国にとって最も適した交通インフラです。理由は、我が国が自然災害大国であるためです。
自然災害大国である以上、我々日本国民はバラバラに暮らさなければなりません。離れて暮らし、大震災など「いざ」とうときには、助け合うのです。
そうしなければ、我々はこの災害列島で生き延びることはできません。
とはいえ、経済成長のためには、人口が集中していた方がいい。理由は、人口が集まれば、サービス業中心の成長が容易になるためです。
防災安全保障上、国民は離れて暮らさなければならない。とはいえ、成長のためには人口が集中していた方が良い。
日本に必要なのは選択と集中ではなく、分散と集中なのです。
分散と集中。この二つの相反する課題を「同時」に達成する方法こそが、まさに新幹線をはじめとする交通インフラの整備なのでございます。
北陸新幹線延伸が、金沢にあれほどまでに大きな好影響を与えたのは、新幹線整備により、
「金沢のサービス業の市場が、東京圏に届いた」
ためです。
無論、逆も真なりで、新幹線整備により我々は市場を統合しつつ、同時に離れて暮らすことにより防災安全保障を強化することが可能なのです。
問題は、この手の「国家」「安全保障」「マクロ視点」で新幹線整備を語る政治家がいないことです。新幹線整備と聞くと、反射的に「採算性が!」と、否定から入ろうとする論調ばかりでございます。
これでは、ダメです。
もっとも、政治家のレベルは国民のレベルでもあります。まずは、わたくしたち日本国民が「新幹線の意味」を改めて理解する必要があると考え、わたくしは今日も、明日も、明後日も、全国を講演で回りつつ、交通インフラの重要性について訴え、声を枯らしている次第でございます。
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