4年ぶりに人間ドックに行ったのである。
最近はなにげに健康だったのでサボッていたのであるが、ふと気づくと4年も行っていなかったので、このたび、行くことにしたのである。
この病院は、うちのおばあちゃんが入院したり、父親が入院したりとなにかにお世話になり、勝手知ったる病院なのである。
総合病院なので、いろいろと調べてもらえて都合がよい。そして、先生も私のことをよく知っているので、検査もはかどるというものである。
いつものように、問診から始まるのである。
「平さん、健康のためになにか運動はしていますか? 先に言っておきますけど、寝返りとか、そういうやつはダメですよ」と先手を打ってくるのである。
で、答えたのである。「最近は登山をしたり、断食道場に行ったり、なにかと健康に気を配っています」
「‥‥」
先生は無言である。(このデブが、山歩きや断食道場になんぞ行くわけがない。きっと、この話にはオチがあるんだろう)と思って、私の次の言葉を待っているのである。
たしかに、以前、「健康のために運動は毎日しております。寝返りとか」と答えたのは私である。「毎日、断食をしております。夜寝る前から、朝起きるまで」と言ったのも私である。
だからして、本気にはとってもらえないのである。
しかしながら、最近、健康的に過ごしているのは事実であるので、検査も順調に進んでいったのである。
ところが、お腹にあのヌルヌルとしたゼリーを塗られ、機械を押し当てられるエコー検査のとき、問題が発覚したのである。
先生が言うのである。
「うーん、おかしいなぁ」
検査の最中、このようなセリフを言われると、われわれ患者はたまったものではない。
「せ、先生‥‥、なにか異常が‥‥?!」
「うーん‥‥、胆のうがね、映らないんですよ。エコーに」
なんと、私の胆のうは消えてしまったのか? いや、そもそも、生まれたときから胆のうがなかったということなのか?
しかし、以前、尿管結石を経験しているわけで、あの時点ではたしかに胆のうはあったはずである。
「わ、私の胆のうは、いったいどこに消えてしまったんでしょう‥‥?!」
「いえいえ、胆のうが消えたわけじゃなくて‥‥。胆のうの中に石があると、エコーに映りにくくなるんだよね。胆石ね。たぶんあるね、石」
尿管結石のときはとてもちっちゃな石が詰まっていて、その後、流れ出たのであるが、それでもたいへん痛い思いをした。あんなちっちゃな石ですら、である。
そして、「胆石は男の陣痛」だとよくいわれる‥‥。
先生に聞いたのである。
「で、では‥‥、このあとはどのような治療を‥‥?」
胆石は超音波で石を砕いて排出するという話を聞いたことがある。が、先生は言うのである。
「いや、手術して、胆のうを取ってしまえばいいだけの話ですよ」
「でも、取っちゃったら、困るんではないですか?」
「胆汁は肝臓で作られます。胆のうはその貯蔵庫のようなものですから、なくたってべつに問題ないんです」
しかしながら、手術とか受けるのはいやだし、イメージ的に「ちょん切られる」というのもいやである。
「先生、今は痛くないんですけど、痛くなかったら、このまま持っていてもいいんでしょうか?」
「ええ、痛くなければ問題はないですから、そのままでいいんじゃないですか」
「よかった。ちなみに、私の胆のうは、真珠を抱いて育てているアコヤ貝のようなものというわけですね?」
「ま、まあ‥‥、そんなもんでしょうかね」
ということで、これからはアコヤ貝を見習い、アコヤ準司として生きていくのである。
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