主婦31歳、靄面弥生(モヤモ ヤヨイ)はモヤモヤしていた。
保育園への送り迎えで、こちらは接点もなければ何もした覚えがないのに挨拶をしないママさん……
今日は迎えに行く時におばあちゃんも一緒だったので挨拶をしてみたが、まさかのふたりとも無言。
ええっ⁉️ 衝撃を受ける弥生。
モヤモヤ発生……
何だか気分が悪くなるし、何だかずーとひきづってしまう程だ。
娘を自転車の後ろに乗せながら……
そんな帰りに。
「お母さん、見て~」
「え?」
「あんなところにお店がある~~」
自転車を止めて後ろを見ると、娘が指差した先には。
「あれ? こんなところにお店なんてあったっけ?」
周りは何もないところだったはずなのに、コンビニみたいな雰囲気でそれは建っており……
「ねえ、入ってみようよ」
「ええっ⁉️ 何のお店か判らないじゃないの」
「モヤモヤ……何とかって書いてある」
弥生が見ると、
「モヤモヤ……解消……商会⁉️」
モヤモヤ解消商会……って。
「帰るよ、有琉乃(アルノ)」
弥生は娘に声をかけるが、
「ちょっと見てくる」
そう言うと、なんと! そのお店に駆けて行ってしまった!
「ヤダ、やめて!」
叫ぶものの、自動ドアは無情に開き娘の有琉乃は先に中へ入ってしまう。
追いかけるしかない弥生。
すると、
「ようこそ、モヤモヤ解消商会へ」
5人ぐらい中にいた人達が一斉にお辞儀をする。
「あ、すみません、娘が勝手に中へ……」
その中のひとりが……
女性が優しい声をかけてきた。
「大丈夫ですよ、ここへはモヤモヤを何とかしたいという方しか訪れることは出来ませんので」
「ええっ⁉️」
まさにその通り過ぎて、弥生は何も言えない。
「初回だけ無償で解消します」
「結構です、すぐ娘を連れて出ていきますので……有琉乃?」
なぜか有琉乃の姿は見えない。
「大丈夫です、話が済むまで大切にお預りしてますよ」
なんと! 娘を人質にとられてしまい……
「やめて下さい! 警察呼びますよ!」
弥生はスマホを取り出すと……
まさかの圏外に!
「そんな……」
「お話を聞いて頂きますね?」
女性は口元だけ笑んでみせた。
弥生は仕方なく妥協する。
「そちらへお座り下さい」
カウンターのこちら側にイスがいつの間にか用意されていた。
弥生は座る。
そしてその前にその女性は立つと、
「靄面弥生さん、あなたの抱えているモヤモヤは保育園で挨拶をしないお母さんですね」
「ええっ⁉️」
弥生は驚く。
「間違いございませんね?」
「はい、間違い……ございません」
ついつられてしまった。
「ではどういう解消がよろしいでしょうか?」
「え? どういう解消って……?」
「はい、いろいろあります。
やはりな復讐も出来ますし、軽いのから重いのまでも選べます。
それからそういうことになった経緯を知ることも可能ですし、相手に自分と同じ思いをさせるということも出来ます。
他にも……」
「ちょっと待ってください、復讐とか同じ思いとか……困ります」
「初回だけ無償なんです、せっかくなのでどれかお選び下さい」
「無償でって言われても……」
「今のところは復讐したい気持ちまではないと言うことでよろしいですか?」
「まあ……そうですね~~そこまではさすがに……」
「判りました、では経緯を知るという選択でよろしいですね?」
経緯……確かにそれは気になる! となる弥生。
「はい、そうですね、それでお願いします」
「ではモヤモヤの経緯を知るということで、次にもし復讐などをご依頼する場合は有償になりますのでお願いします」
え? 次? 復讐って……⁉️
弥生は何がなんやらで……
そして次の瞬間、
「ご来店ありがとうございました」
と言われた途端ハッと我に返ると、
「お母さん、どうかした? 早く行こう?」
気づいた時には娘は自転車の後ろにいて、弥生は自転車を止めたままだった。
そしてまた見ると、
「あれ?」
あのモヤモヤ解消商会のお店は跡形もなく消えており、夢? と半信半疑になる。
そして、気を取り直して弥生は自転車をスタートさせた。
そしてその夜、挨拶をしないママさんの夢を見ることになる弥生。
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