前回分
「お父さん、お母さん!」
希音子は2匹の巨大な猫又を見つめた。
すると猫又はギロリとにらむと、
「希音子、いつまでそんな人間のところでぐずぐずしている気だ!
約束は約束だ! 守って貰うぞ!」
父親の猫又はしびれを切らすと、希音子の父親は凄い素早さで実太緒に接近すると、その鋭い爪でなんと実太緒の首を掻き切ってしまった!
もの凄い量の血しぶきが飛び散る。
実太緒の中ではスローモーションで倒れていったようになり……
その間、希音子は何かを叫んでいたが聞こえなくなり、やがて目の前は真っ暗になった。
どの位経ったのだろう。
実太緒は辺りは全く見えないし、体も動かない。
ただ声だけが聞こえてきて……
……大変なことになったのう。
そなたが血相変えて人間を加えてくるとは思とらんかったが……
「あの……この人の命を助けて下さい、何でもします、私の命でもなんでもさしあげます!
どうか実太緒さんを助けて下さい」
どこかの老人と、そして希音子の声が聞こえる。
……そこまでして、この人間を助けて欲しいのか。
とはいうものの、この者の命は虫の息じゃ。
「何でもします、お願いします!」
……そうは言われてもな。
……まあまあ常世神(トコヨガミ)殿、そなたならば出来るであろう。
……エビス殿、そう言われてましてな。
……条件をつけたらどうだろうか?
……条件?
何やらふたりの神が何やらごにょごにょと話し合い……
そして常世神は、
……あい、判った、この人間の命を助けてやろう。
「常世神様、ありがとうございます」
希音子は喜びと感謝すると、
……まだ、喜ぶのは早い、この人間を生き返らせるには、そなたに3年間、本物の招き猫になって貰うがそれでも良いか?
「え、あの……私は死ななくても良いのですか?」
……良い、その代わり3年間だけ、お主は招き猫になって貰う。
3年間招き猫を通せばお主はただの人間になり、晴れてこの男と一緒にいることが出来る。
ただし、この男がお前を裏切らなければな……
もし、この男が3年の月日の間に他の女が出来てしまったのならその時は……
「きっと、実太緒さんなら大丈夫です! 正体が猫又と言っても私を愛してくれたのですから!
3年ぐらい私は耐えられます!」
そして……
希音子は今度こそ本当の招き猫になり、実太緒は無事元通り生き返って、実太緒は何事もなかったかのようにラーメン屋に戻っていった。
いつ買ったのかどうしたのか判らない招き猫の置物が置かれた実太緒のラーメン屋は以前にもまして繁盛する。
ちなみにスマホの招き猫はじめましたの契約は既に期限切れになり、その契約事態の記憶を失くしてしまった実太緒だった。
続き
はじめから