前回分
日栗刷雄(ヒクリ スルオ)達の家族分の願い事を言い終わると、うまい具合にあの鍾乳石は他の人の手に渡ってしまうことに……
確かに50万の大金はなかなかだけど、おしいことをしたと思う刷雄だった。
そして日に日に、あの鍾乳石を取り戻したいと思い始めた頃、日栗家に電話がかかってきて……
『すみませ~~ん、先日、あの鍾乳石を50万円で買った片本(カタモト)です~~』
電話に出たのは刷雄の妻の詩奈だった。
いつの間に、刷雄が電話番号の交換でもしたのだろうか?
そして詩奈は思い込み、
「あの……今更、鍾乳石を返すとか? やっぱり50万円を返せとかいう相談ですか?」
すると電話の向こうから、
『いえいえ、そうじゃないです、鍾乳石はもうボクのところにはありません』
意外な答えが返ってきた!
「え、鍾乳石はどうしたんですか?」
詩奈が詰めようとすると、
『それが……その……』
片本はしどろもどろになり……
「はい?」と詩奈。
『その……鍾乳石は100万円で売ってしまいました』
「ええっ!」
詩奈は驚く。
「……100万なら倍じゃないですか! 凄いじゃないですか!」
あ~~私もそれくらいの値段にしたら良かったと、詩奈は心の中で舌打ちをした。
『実は……50万円は番組の費用だったんです。
あの時どういうわけか魔が差して、ついその50万円を差し出してしまいまして……』
「ええっ‼️」
片本の事情を聞き、詩奈は更に驚いていた。
私が50万円を売れたらと願ったからだ……
詩奈は顔面蒼白になる。
『責任をとって仕事を辞めないといけなくなり、それでつい鍾乳石の前で100万円で鍾乳石が売れたらな~~と言ってしまったら…』
「売れたんですか!」
『そうなんです、おじが珍しくやってきて鍾乳石を見ると、すぐ100万円を渡してくれて持ち帰ってしまいました』
「良かったじゃないですか……」
『それが良くないんですよ』
「どうしてですか? 50万円、返したんじゃないですか?」
詩奈は不思議に感じます。
『はい、無事返せましたが、信用出来ないと言われまして仕事はクビになりました』
「え、そ、そうなんですか……」
詩奈は片本の言葉に動揺した。
『なので……おじの家に行き、鍾乳石に願おうしましたが……』
「まさか、もう鍾乳石は無かったとか?」
『はい、そうなんです』
「……まさかおじさんも鍾乳石を売る願いをしたのですか?」
『はい、そういうことです』
「あの……いくらで?」
『200万円だそうです』
「ええ~~~~‼️」
更に詩奈は驚くと、
『その後、おじの会社は突然倒産してしまいました』
片本はその後の話をして……
それで察する詩奈。
「つまり、鍾乳石でお金が無くなり困って倍のお金を願うとその通りに願いが叶うけれど、必ず悪いことが起こるとかそういうことですか?」
『はい、そういうことです』
詩奈はやっぱり……となり、
「それでどういうこと……なんでしょうか?」
『はい、おじとボクの願いを叶えたいので、あの鍾乳石をどちらで手に入れたのかぜひ教えて欲しいのです』
「……それは~~」
詩奈は戸惑う。
まさか、迷い込んできたコウモリを逃がしたら、翌日そのコウモリの母親なる人がやってきてお礼を受け取ったら、なんて……
「おじさんが渡した相手に聞くことは出来ないんですか?」
『……それがおじさんと同じ末路になり……その時にはもう鍾乳石は消えてしまったらしいです』
消えた!?
そういえば、あの鍾乳石、私達の願いを叶えたら一気に小さくなっていったっけ?
『お願いします、教えて下さい』
片本があまり懇願するので、詩奈は信じてくれるか判らないけれど、コウモリの母親が恩返しに来てくれた話を正直に言った。
『ありがとうございました~~恩に着ます』
そして電話を切る。
「まさか無理矢理コウモリを捕まえて逃がすとか? まさかね……」
詩奈は勝手に妄想した。
続き
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