また一人、敬愛する指揮者がいなくなってしまった。ロシアの巨匠、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキーの訃報をみて、これまで聴いた演奏会の思い出が走馬灯のように頭を駆け巡った。
これまた敬愛する指揮者、ウラディーミル・フェドセーエフの前任者として、モスクワ放送交響楽団の常任指揮者だったロジェストヴェンスキー。共にロシア音楽については他の追従を許さないが、変化球勝負のフェドセーエフに対して、直球勝負なのがロジェストヴェンスキー。と言っても決して単調な音楽ではなく、抜群のバトン・テクニックから深い味わいのある音楽を紡ぎ出した。
以前にも書いている が、ロシア物以外でも抜群のパフォーマンスを聴かせたマエストロ。ストックホルム・フィルとのシベリウスは忘れられない名演だった。
ロジェストヴェンスキーと言えば、かつてのソ連時代に、政府がこの人のために整備したオーケストラがある。モスクワ・シンフォニック・カペレの名称で日本公演も行っているし、最近、ポリャンスキーが率いて来日公演を行っているオケが、この流れを受け継いでいるそうだ。
晩年のロジェストヴェンスキーは、もっぱら読売日本交響楽団への客演で来日していた。ピアニストである奥様との共演も微笑ましく、楽しい思い出だ。最後に聴いたコンサート は、2016年の9月。読響とチャイコフスキーの3大バレエ曲を演奏した。翌2017年春にも来日しているが、残念ながら聴き逃がしてしまった。
享年87歳。心よりご冥福をお祈り申し上げます。