ロジェストヴェンスキー指揮 読売日本交響楽団 | たっちゃんの活動写真&西洋古典音楽切り抜き帳

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「映画館で」「自分のカネを払って」観る映画と「コンサートホールで聴いた」クラシック音楽会の、独断と偏見によるコメントを公開。

 個人的に最も敬愛する指揮者の一人、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキーが、4年ぶりに日本のステージに立った。9月24日、25日の東京芸術劇場で、オーケストラは読売日本交響楽団、そしてプログラムは、チャイコフスキーのバレエ音楽だった。

 ロシア特有の長い名前なので、音楽好きは親しみを込めて“ロジェヴェン”と呼んでいるが、手塚アニメのキャラ“お茶の水博士”を思わせる風貌もさることながら、指揮姿も実にユニークな人だ。長い指揮棒を用い、ピンと腕を伸ばしてオケを操るさまは、交差点に立つ警官を連想させるために“交通整理”と揶揄される。指揮台を置かないのも特徴だし、時折見せるお茶目な仕草で笑いを誘う。

 しかし、オーケストラのコントロールと、紡ぎ出される音楽は超一流。特に得意のロシア音楽では、他の追従を許さない。自分なりの確固たる信念があるようで、ブレのないのも特徴だ。

 前回、この人を聴いたのは2012年。東京芸術劇場のリニューアル記念公演の一環で、読響とチャイコフスキーの後期交響曲を演奏した。ゆったりとしたテンポで奏でられる堂々たるシンフォニーは、チャイコフスキーというより、ベートーヴェンかブラームスのような響きだった。これがバレエ音楽になってもアプローチは変わらない。白鳥の湖、眠りの森の美女、くるみ割り人形と、よく知られた名曲を、“踊るための音楽”ではなく“純然たる聴くための管弦楽”として存分に鳴らす。一貫してゆっくり目のテンポは変わらず、これほど遅い「スペインの踊り」を聴いたのは初めてかも。

 しかし、決して一本調子ではなく、雄弁な音楽が展開して聴く者を惹き付ける。二日間、いずれもマチネ公演で、子供連れのファミリー層も目立ったが、静かに聴いていた。

 マエストロは、今年85歳。ステージに出てきた時は、さすがに年取ったなぁ…という印象で、ゆっくりとした足どりだったが、立ったままで指揮。昔と比べて腕の振り幅もずっと小さくなったが、音楽は絶品だった。読響も大健闘!

ロジェヴェン健在なり! 再度の来演を願うばかり。本日、26日はサントリーホールでショスタコーヴィッチ・プログラムがあるのだが、予定が見えず、チケット購入を躊躇していたら完売になってしまった。