テーマ:この国のかたち
【国賠法3】国の財政法・会計法等に「国民監査請求」を作る
2022.11.29ー2023.1.9修正

【はじめに】
(1)国家賠償法は、第1条1項「国等の損害賠償」を定め、第1条2項「違法な職務行為を行った公務員への求償権」を定めている。
 国家賠償法の対象は国と都道府県・市区町村等だが、第1条2項の求償権を行使しない場合がある。
(2)都道府県・市区町村の地方自治体の場合は、「求償権の不行使」を正す方法が有る
 具体的には、地方自治法にある第242条「住民監査請求」を経て第242条の2「住民訴訟」を行う規定に基づく訴訟である。
(3)地方自治体では、「違法な職務行為を行った公務員への求償権」行使を命じた判決があり、最高裁も認めている。
〔①平成14(行コ)72、平成17年12月19日、東京高裁、各条例無効確認、損害賠償請求控訴事件、②平成26(ネ)5388、平成27年12月22日、東京高裁、損害賠償請求控訴事件、他関連する訴訟事案が複数件ある。(28年2016最高裁判所、上告棄却判決等)〕
(4)他方、法曹界では、「1955年、最高裁判所判例」が「公務員は損害賠償責任を負わないと判じた」とする俗説が通説になっている。国等と公務員に損害賠償請求訴訟をすると、弁護士はこれを引用して棄却を主張する。
〔昭和28(オ)625、昭和30年4月19日、最高裁第三小法廷、農地委員会解散命令無効確認並に慰藉料請求〕
 このため特に国は、ほぼ求償権を行使しない
 「1955年、最高裁判所判例」は、「公務員の違法な職務行為に護符・錦の御旗を与える恥ずべき判例」であり、見直さなければならない
 (注:訴訟を通した判例見直しの方法については、【国賠法2】で書いた。)
(5)国家賠償法は、敗戦後、日本国憲法の制定・施行に合わせて立法したいくつかの法律のひとつで、「先の大戦は、政治家・官僚の違法な職務行為の積み重ねが招いた」という教訓に基づいて、国等と公務員の違法な職務行為を抑止することが立法趣旨のひとつである。
(6)国の場合は、「求償権の不行使」を含む不当・違法な会計処理を正す方法が無い
 このため立法による解決策として、前記地方自治法に準じて、国の財政法・会計法等に「国民監査請求」を作ることを提案する

【1】地方自治体の公務員は違法な職務行為(故意・重大な過失)で損害を与えたときは賠償することがある。
(1)市が求償権行使しないことを違法とした最高裁判所判例がある
~国家賠償法は、地方自治体(都道府県・市区町村)にも適用される。
~事例として、「景観を害すると住民から反対があるマンション建設に対して、国立市長(注:特別職地方公務員)が他法を利用等して建設を妨げたのは違法で、賠償するように市に命じた判決」があった。「市が賠償金を支払ったが、違法行為を認定された市長(注:特別職地方公務員)に求償しないことを不当だと住民が訴訟した結果」、「高等裁判所が求償を命じる判決」を出した。更にこれを不服とする上告を最高裁判所が棄却して、確定した。
(参考注:地方自治法第243条の2「普通地方公共団体の長等の損害賠償責任の一部免責」善意でかつ重大な過失がないとき)
(参考注:)地方自治法第243条の2の2「職員の賠償責任」会計処理上の損害)
(2)この事例は、地方自治体で、地方自治法にある第242条「住民監査請求」を経て第242条の2「住民訴訟」を行う規定に基づく訴訟であった。
~即ち、地方自治体の場合は、「求償権の不行使」を正すために訴訟をする方法がある。
(3)国の「求償権の不行使」を正す方法はあるだろうか?
~区分としては行政訴訟になる。「求償権行使の不作為」を問うことになる。客観訴訟>民衆訴訟か?「原告適格・被告適格(原告に成れるか、被告にできるか)」が問題になる。行政事件訴訟法に則っていないと門前払い(却下)になる。誰か、やってみて!!
(参考:客観訴訟とは、法秩序の適正維持を目的とする行政訴訟。個人の権利利益の保護を目的とするのではなく、法律に定められた者のみが、提起できる。 )
(参考:【行政事件訴訟法】第42条「民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。」)・・残念!!
〔①平成14(行コ)72、平成17年12月19日、東京高裁、各条例無効確認、損害賠償請求控訴事件、②平成26(ネ)5388、平成27年12月22日、東京高裁、損害賠償請求控訴事件、他関連する訴訟事案が複数件ある。(28年2016最高裁判所、上告不受理判決等)〕

【2】国の財政法・会計法等に「国民監査請求」を作る
~具体的には、地方自治法第242条、第242条の2に準じて、会計法等に条文を作る。下記の「住民」は「国民」、「監査委員」は「会計検査院」等に置き換える
~第242条「住民監査請求」1項「・・の住民は、・・違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある・・と認めるとき、又は・・があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体の被つた損害を補塡するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。」
~第242条の2「住民訴訟」1項「・・の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、・・に不服があるとき、又は・・とき、若しくは・・ときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる
一 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
二 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
三 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
四 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二の二第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合には、当該賠償の命令をすることを求める請求」

(参考注:地方自治法第243条の2「普通地方公共団体の長等の損害賠償責任の一部免責」善意でかつ重大な過失がないとき)
(参考注:)地方自治法第243条の2の2「職員の賠償責任」会計処理上の損害)

(参照リンク)会計法(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%9A%E8%A8%88%E6%B3%95

【参考】
裁判例検索
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1
国会会議録検索システム
https://kokkai.ndl.go.jp/#/
日本法令索引(国家賠償法:被改正法令、審議経過)
https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?lawId=0000039326&searchDiv=1&current=1

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【国賠法1】森友裁判「認諾」の1億円は求償権を行使すべきだ
~「1955年、最高裁判所判例」は誤り
https://ameblo.jp/t1997/entry-12724188044.html
【国賠法2】「1955年、最高裁判所判例」は、「公務員の違法な職務行為に護符・錦の御旗を与える恥ずべき判例」であり、見直さなければならない。
https://ameblo.jp/t1997/entry-12782840058.html
【国賠法3】国の財政法・会計法等に「国民監査請求」を作る。
https:// (本稿)
【国賠法4】「1955年、最高裁判所判例」は「さまよえる亡霊」、否定する最高裁小法廷判決等が複数ある
https://ameblo.jp/t1997/entry-12783765141.html
【国賠法5】(注:本件の上告等事案の証拠「国会会議録」は、別途【国賠法5】で示す)
https:// (作成中)

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