権力とマイノリティ -8ページ目

徒然なるままに、沢田研二日記『時の過ぎゆくままに』

悪魔のようなあいつ   送る会

 ジュリーの今日のコンサートは山形だ。8月4日に東京・渋谷からスタートした「沢田研二2007コンサート 生きてたらシアワセ」も後半に入ってきたようだ。最初の渋谷のコンサートでは、8月1日に亡くなった阿久悠に対して敬意を表し喪章を付け、冒頭に黙祷をしてから「時の過ぎゆくままに」を歌ったという。

「時の過ぎゆくままに」は、阿久悠が始めて、沢田研二に詞を提供した歌だ。作曲は大野克夫。1975(昭和50)年8月発売。5週連続でチャートの1位を占め、約百万枚を売り上げた。
 この歌はTBS系で放送された「悪魔のようなあいつ」の主題歌である。沢田研二主演のドラマ企画から始まったもので、ジュリーにどんな役柄を演じさせるかがテーマだったという。作詞だけでなく原作も阿久悠で、上村一夫との共作の劇画「悪魔のようなあいつ」(角川書店・2004)がある。当時、時効が騒がれていた3億円事件をモチーフに、みじめな生活をしている青年が、3億円という危険な希望を抱いているという退廃的な日常を描いたものだ。

「可門良 27歳 元バンドボーイ 今は・・・」というのが、沢田研二が演じる主人公だ。「時の過ぎゆくままに」は、クラブ歌手・可門良の持ち歌でもある。     
                                         
時の過ぎゆくままに この身をまかせ
男と女が ただよいながら
堕ちていくのも しあわせだよと
二人つめたい からだ合わせる

からだの傷なら なおせるけれど
心のいたでは いやせやしない  
 
                                                           
「虚無的な人間が一瞬虚無を忘れ愛に溺れ、熱が冷めるとやはり虚無の中にあるというのが好きだった」と阿久悠は著書の中で述べている。けだるい、せつなさが「堕ちる」という言葉に表れている。この言葉を変えて欲しい、とプロダクションに言われたが、阿久悠は頑張ったそうだ。

 1975年かぁ~。歌は覚えているけど、ドラマは見た記憶がない。この年は国際婦人年でメキシコシティに、全世界から女たちが集まり、途上国の女たちから「女性差別より、南北格差が問題だ」と先進国の女たちに批難が集中したことを、わたしはよく覚えている。

 ジュリーの歌は、以下のユーチューブでどうぞ。  


   

■クラブ日蝕で可門良(沢田研二)が「時の過ぎゆくままに」をギターで弾き語り

   

安倍首相の突然辞任の真相は脱税疑惑スキャンダル

福田

■次期総裁は福田氏? 
 国会を空転させて、自民党総裁の話題がニュースを騒がせている。1日で情勢が変わって、麻生氏じゃなくて、福田氏に決まる気配濃厚。どっちも、相変わらず世襲政治家だな。
 なぜ、安倍首相の突然の辞任記者会見が12日の午後2時だったのか。立花隆氏がその真相を「メディア ソシオ-ポリティクス」にレポートしている。それによれば、父の安倍晋太郎氏からの相続税の脱税疑惑を「週刊現代」が記事にする前に、安倍事務所に真偽とその理由釈明を求めていた。その期限が12日午後2時だったと言う。
 イヤハヤ、身から出た錆びとは、こういうことを言うのだ。

立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」
政界を大混乱に巻き込んだ安倍首相電撃辞任の真相

http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/070914_scandal/
■「遺産相続で3億円の脱税」報道
 はじめ永田町に流れた情報は、「週刊文春」が安倍首相の一大スキャンダルを出す予定になっているということだった。早速、「週刊文春」に問い合わせると、「それはウチではないです。『週刊現代』らしいです」ということだった。

 毎日新聞の夕刊が小さな記事で報道したことであるが、安倍首相自身が、これが噴出したら命取りという一大政治資金スキャンダルをかかえていたというのである。
 それは、父の安倍晋太郎氏から首相への資産相続の際に、晋太郎氏が資産を自らの政治団体に寄付する形にすることで、首相は相続税をまぬがれていたという「脱税」疑惑なのである。週刊現代の記事では脱税額は3億円にものぼるという。

 安倍内閣は第1次、第2次とも、成立当初から政治資金の問題に悩まされてきた。しかしそれはいずれも、佐田玄一郎行革担当相の政治資金問題、松岡利勝農水相の「ナントカ還元水」問題、赤城徳彦農相の事務所費問題など、有名な諸事件をとっても、金額的にはそれほど大きな問題ではない(億単位の金額ではない)。これが本当ならば、それに比較して、この遺産相続問題はケタちがいに金額が大きい。

■突然の辞任会見の引き金になったもの
 安倍晋太郎氏が亡くなったのは、91年のことであるから、いま現在脱税で訴追されるかどうかという話ではないが、このようなことは、世の常識の問題として、政治資金の問題にとりわけ厳しくあたってきた内閣の長として、ヤミからヤミに葬ってあとは知らんぷりできるという話ではない。

 これが事実ならば、過去の話ではあっても、これは政治的にはいま現在でもホット情報として扱われるべきアクチュアルな話である。安倍首相には道義的に説明責任がある話だ。安倍首相の在任中にこんな話がオモテに出たら、安倍内閣はそれだけでふっ飛ぶこと確実なスキャンダルだったといってよい。

 この話を、「週刊現代」が取材して、今週末土曜日発売予定の号に載せるはずになっていた。そのために、「週刊現代」は安倍事務所に真偽確認と、その理由釈明の問い合わせの書筒を送り、返答の期限を昨日の午後2時に設定していたと伝えられる。
 その午後2時になったら、安倍首相の突然の記者会見が開かれ、政界関係者全員が唖然として見守る中で、突然の辞意表明が行われたわけである。

オマヌケなタイミングでの安倍首相の辞任

安倍辞任 

 国会が始まり代表質問を前に、安倍首相が辞任を表明した。首相を辞任するタイミングとしては、参議院選での自民党大敗の責任を取って辞めるのが通常でしょう。国会でテロ特措法の延長を乗り切れないから、首相を辞めたのですか。
 記者会見のテレビ中継を見ていたが、何と申し上げたらよいのやら、格好悪い(!_+)

●gooニュース 9月12日(水)13:58
【安倍首相、辞任表明 党首会談を断られ】
http://news.goo.ne.jp/article/gooeditor/politics/gooeditor-20070912-04.htm
安倍首相は12日午後2時、辞任する意向を表明した。首相官邸で記者会見した。NHKが中継した会見によると、「今の状況で、国民の支持・信頼の上において、力強く政策を前に進めていくことは困難」と判断し、「テロとの戦いを進めていく必要がある」「政治的な空白を作るべきでない」と考えたと説明。直接の辞任決意のきっかけとしては、11月1日に期限が切れるテロ特措法延長について民主党の小沢党首に党首会談を申し入れたが、小沢氏から「民意を得ていない」と断られたことに言及。「党首会談も実現しない状況では、私が約束したことは実現しない。むしろ私が残ることが障害となると判断した」と明らかにした。首相は9日、テロ特措法の延長を「職を賭して」追及すると発言していた。(gooニュース編集部)

約20分におよぶ会見で首相は開口一番、「本日、総理の職を辞するべきと決意をいたしました」と表明。7月の参院選で「大変厳しい結果を得たが、戦後レジーム脱却、改革の歩みをとどめてはならないと決意を固めて、全力で取り組んでた」と述べた上で、「テロとの戦い、国際社会から期待されている活動を、中断することがあってはならない。継続していかなくてはならないと申し上げた」と話した。

首相はさらに「国際社会への貢献は、私が掲げる『主張する外交』の根幹であり、やりとげていく責任が私にはあるという思いがあった。これを中断しないために、全力を尽くす、職を賭していくつもり、職にしがみつくものでもないと申し上げた。そのためにはあらゆる努力をしなければならない。環境づくりにも全力をつくさなければならないと考えていた」と説明。

今日の辞任決意のきっかけについては、「小沢党首に党首会談を申し入れ、率直な思いと考えを伝えようとしたが、実質的に断られてしまった。小沢党首は『民意を受けていない』とのことだった。テロとの戦いを継続する上で、自分はどうするべきか。むしろこれは局面を転換しなければならない。新たな総理の下でテロとの戦いを継続していく、それを目指すべきではないだろうか。きたる国連総会にも新しい総理が行くことがいいのではないか。また改革を進めていくその決意で続投し、内閣改造を行ったわけだが、今の状況でなかなか国民の支持・信頼の上において、力強く政策を前に進めていくことは困難な状況である。ここは自らが、けじめをつけることによって、局面を打開をしなければいけない。そう判断するに至った。政治の空白を生まないように、なるべく早く次の総裁を決めてもらいたいと指示した」と話した。

複数報道によると、安倍首相は同日、麻生太郎幹事長ら自民党幹部に辞任の意向を伝えた。この日は午後1時から衆院本会議で代表質問が予定されていた。首相は10日、衆院本会議で所信表明演説をしたばかり。

NHKは同日午後1時前、連続ドラマの放送を打ち切り「安倍首相が辞任の意向」と速報した。

首相は昨年9月、小泉前首相の任期満了に伴う自民党総裁選で選ばれ、初の戦後生まれの首相として就任。「美しい国」を掲げて政権発足当初は、高い支持率を得ていた。しかしその後、年金記録問題や閣僚の相次ぐ不祥事・辞任などで支持率が大幅に低迷。7月の参院選で自民党は惨敗したが、続投した。

8日には訪問先のシドニーでブッシュ米大統領と首脳会談。翌日の記者会見では、テロ対策特別措置法に基づく海上自衛隊のインド洋での給油活動の継続について「国際的な公約となった以上、私には大きな責任がある。職を賭して取り組む」との決意を表明。この「職を賭して」という発言は、給油活動が継続できなければ退陣する意向を示したものなのか、内閣や自民党内でも当惑が広がっていた。


9月10日は世界自殺予防デー

WHO ←ジュネーブにあるWHO本部

■自殺者3万人時代の対策はこれから
 昨年、成立した「自殺対策基本法」によって、今年から我が国でも、9月10日から1週間は、自殺予防週間になった。
 法律制定に力を尽くしたNPO法人ライフリンクが、今年は、自死遺族の支援の輪を広げようと、全国キャラバンを現在行っているところだ。7月1日に、東京ビックサイトで行われた官民合同シンポジウム「自殺を『語ることできる死』へ」に、わたしは取材で参加した。
 同時にライフリンクは、自殺遺族の実態調査を行っている。その中間報告が出されたので、その記事を転載しておく。今日NHKニュースでも、その様子が詳しくレポートされた。
 また、WHOの「自殺は深刻な、しかし予防可能な公衆衛生上の問題である」を転載する。1989年以降、自殺者3万人時代を継続している日本では、やっと自殺対策が始まったばかりである。

●朝日新聞 09月11日00時18分
【自殺した経営者、事前相談は3分の1 NPOと東大調査】
http://www.asahi.com/national/update/0911/TKY200709100308.html
 事業経営者で自殺した人のうち、事前に何らかの窓口に相談していた人の割合は、経営者以外の人に比べて半分——。世界自殺予防デーの10日、東京都内で開かれたフォーラムで、NPO法人と東大が合同で調査した結果が報告された。「経営者はぎりぎりまで金策に走り回るなどして相談できないのではないか」と分析している。

 調査したのは、NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」と東京大学大学院経済学研究科の合同チーム。自殺した1000人を対象に、自殺するまでの過程を明らかにすることで防止対策につなげようと調べた。専門家が作った計2143の質問について全国の遺族らから直接聞き取り、この日は中間報告として101人分を公表した。

 自営業者や会社員など属性で分類したところ、経営者21人中、何らかの窓口に相談していたのは7人と3分の1だったのに対し、経営者以外では3分の2にのぼった。経営者が相談しないのは、取引先や従業員に業績が悪いことを知られたくない、連帯保証人に迷惑をかける、などの理由とみられるという。

 また、全体を通して自殺の背景には、病気や経済的問題など複数の要因が絡み合っていることも分かった。約7割の人が「要因が二つ以上ある」と回答。そのうちの約6割が相談していたが、多くの人はうつ病などの治療のために医療機関だけに相談していた。
 同科の澤田康幸准教授は「多重債務などを抱えていれば、医者だけでなく、それぞれの専門家の助言が必要。相談窓口同士の連携が不可欠だ」と指摘。ライフリンクの清水康之代表は「問題を解きほぐして専門家に橋渡しし、解決まで見守る地域ネットワークが必要だ」としている。

■WHO2004 世界自殺予防デー
「自殺は深刻な、しかし予防可能な公衆衛生上の問題である」


 自殺の経済コストは数十億ドルにも上り、また、変死の約半数が自殺であり、自殺によって毎年約100万人が死亡していることからもわかるように、自殺は深刻な、しかし、その多くは予防可能な公衆衛生上の問題であるとWHOは述べています。推計では2020年には自殺によって150万人が死亡するともいわれています。世界的なアクションを起こす関心を喚起するために、世界自殺予防デーが9月10日に実施されます(昨年、世界自殺予防デーは開始され、WHOと自殺予防国際組織;IASP(the International Association for Suicide prevention) の共同により成功裡に実施されました)。

「すべての自殺死によって、家族や友人のこころに傷が残ります。そして彼らの人生は、感情的、社会的、経済的に崩壊してしまいます。」と Catherine Le Gales-Camus先生(WHO 非伝染病疾患・精神保健部門、副部長)は述べています。「自殺は悲惨な公衆衛生上の問題です。殺人や戦争による総死亡数よりも多くの人々が、世界中で自殺によって亡くなっています。この状態を防ぐためにも、早急に全世界的な対策を強化し、調整していく必要があります」

 世界的に、自殺は世界疾病負担(the Global burden of diseases)の1.4%を占めますが、損失ははるかに多いといえます。太平洋岸西部では、病気による経済損失の2.5%と算出されています。多くのヨーロッパの国々では、自殺による死亡数は年間の交通事故死よりも多いとされています。2001年の自殺による総死亡数は、殺人(50万人)や戦争(23万人)による死亡数をはるかに凌いでいます。

 自殺について報告のある国々の間では、ヨーロッパ東部で自殺率が高く、ラテンアメリカ、イスラム、いくつかのアジアの国々では自殺率が低くなっています。アフリカの国々においては自殺に関する情報がほとんどありません。一人の自殺の背後には10-20倍の自殺未遂の存在があるとされ、怪我を負ったり、入院したり、感情的・精神的なトラウマを背負ったりしていますが、その実態は正確には把握されていません。自殺率は年齢と共に増加し、最近では、世界中で15-25歳の若い人々の間に自殺行動が急増しています。中国の農村部を除いては、自殺未遂は男性より女性が多いものの、既遂は女性より男性が多いとされています。

 WHOは今日、ジュネーブにおいて自殺予防に関する特別専門家会議を開催しました。(参加者は、Le Gales-Camus先生、Benedetto Saraceno先生:WHO 精神保健薬物乱用部、Lars Mehlum先生:IASP代表、オスロ大学教授、Sohini Banerjee先生:インド カルカッタから参加した研究者、Mark Milton先生:IFOTES代表、Reverend Cosette Odier先生:ワルド派大学病院の牧師)。

 自殺行動は内在する多くの複雑な原因によって引き起こされます。貧困や失業、愛する人の喪失、論争、人間関係のもつれ、法的または仕事に関連した問題などです。アルコールや薬物乱用、幼児虐待、社会的な孤立、うつ病や統合失調症などの精神疾患などと同様、自殺の家族歴も多くの自殺において考慮すべき点であるといえます。身体疾患や身体を不自由にするような痛みも自殺のリスクを増加させる可能性があります。

「自殺は予防できることを理解することが大切です。そして、自殺手段の入手はもっとも重大な危険因子であり、自殺を決定づけることを理解することが大切です」とMehlum教授は述べています。
 最も一般的な手段は殺虫剤、銃、鎮痛剤などの薬物(鎮痛剤も大量に摂取すると毒性を帯びます)などです。最近、多くの製薬会社によって打開策が用意されました。簡単に摂取できる瓶ではなく一錠一錠を個別に包装するようにしたことで、自殺の手段として鎮痛剤を利用しづらくなりました。
 最近では、殺虫剤を簡単に買い求められないようにしたり、安全な保管方法や適切な希釈などの殺虫剤の正しい利用法を指導したり、コミュニティ活動を促進することにも注意が向けられています。除草剤は中国の農村部では、自殺の最も一般的な手段です。いくつかの国々では、銃の入手方法を規制したことで、銃を自殺手段として使うことが減りました。

 自殺から守る要因としては、自信を持つこと、社会と「つながっている」という感覚(特に家族や友人たちと)、社会的サポートを受けていること、安定した人間関係を維持すること、宗教的あるいはスピリチュアルなものとの関わりなどが挙げられます。精神疾患を早期に発見し、適切な治療を受けることは大切な自殺予防戦略です。気分障害(うつ病など)の発見と治療というプライマリーヘルスケア(第一次保健医療)を実施した結果、自殺リスクの高い人々において自殺率が減少したというエビデンスもあります。フィンランドや英国などの国々では、それを公文書としています。サマリタンズタイプの援助(電話で悩みを受け付ける援助)や高齢者に対して電話で調査するようなプログラムなど、簡単にアクセスできる介入は良い効果をもたらすようです。加えて、心理社会的な介入や自殺予防センター、学校を基盤とした介入なども効果的な戦略であるといえるでしょう。

 WHOは世界中の専門家の援助を得て、健康関連従事者、教師、刑務所職員、マスメディア、遺族の方などのための自殺予防に重要な役割を果たすガイドラインを作成しました。現在、ガイドラインは10以上の言語に訳されており、入手できるようになっています。
「マスメディアの報道も模倣自殺を促進するというエビデンスがあります。悲惨でしばしば回避可能な死を報道する際、マスメディアは、細心の注意を払わなければなりません。マスメディアは自殺行動や精神障害に関するスティグマ(偏見)や差別の軽減にも重要な役割を果たすことができるのです」とSaraceno先生は述べています。

テロ特措法を廃止し、安部内閣を退陣に 衆院選で民意を問え

安倍とブッシュ ←8日、日米首脳会談を終え握手する安倍首相(左)とブッシュ米大統領=シドニー市内のホテル

■アフガン戦争の際に作られた時限立法
 私たちに「かけがえのない日米同盟」なんて入らない。アフガニスタン戦争に対する米軍支援のための時限立法として、小泉内閣時代に作られたのが、テロ特措法である。米国の対テロ戦争なんて、いったいどこにあったのか。何で日本は米軍の支援をしなければいけないのか。原点に返って、私たちは再度、考え直す時期に来ている。

 2001年米国の911同時多発テロの後に、起きたのがアフガン戦争。その後、2003年にイラク戦争が起きた。米国の侵略戦争でどちらも泥沼化している。
 次々、悪法ばかりが成立してきたので、すぐに忘却のかなたにいってしまうが、テロ特措法は、憲法九条との関わりについて、ずいぶん議論された法律だ。

■自衛隊はイラクに向かう米英の戦艦に給油
 それから、海上自衛隊がイラクへ向かう米英の戦艦に、補給活動しているという情報もある。テロ特措法によって、アフガニスタンでの活動に限定されているはずのインド洋での給油活動は、イラクへ向かう米英の戦艦に燃料の補給している。つまり、海上自衛隊がイラク空爆のための兵站を請け負っていたことになるのだ。こうしたことも、きちんと情報公開し、国会の中で野党は与党に対して論戦をして欲しい。

 小泉「構造改革」のつけが、格差拡大などさまざまに明らかになってきているが、テロ特措法を廃止し、安部内閣を退陣に追い込むのが、参議院選で勝利した野党の役割だ。そして、衆議院を解散し、総選挙を行い、民意を問うことが、今求められていることではないか。

●中国新聞 9/9
【給油継続は「国際公約」 首相「私の責任重い」】
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200709090137.html
[シドニー8日漆原毅]安倍晋三首相は八日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席に訪れたシドニーで記者団と懇談し、テロ対策特別措置法に基づいて海上自衛隊がインド洋で実施している給油活動の継続について「対外的な公約であり、それだけ私の責任は重い」と述べた。十日召集の臨時国会を前に、民主党などが反対している給油活動の継続を「国際公約」と強調。自ら退路を断って国会に臨む決意を示した。

 テロ特措法の期限は十一月一日。参院で多数を握る民主党の小沢一郎代表は給油継続に反対を明言している。同法が失効する事態に備え、首相は給油活動を継続するための新法提出を政府、与党で検討していることを認め、「この約束を果たすために、すべての力を出し切らなければならない」と強調した。

 安倍首相は同日、ブッシュ米大統領とシドニーで会談し、海上自衛隊の給油活動を「ぜひとも継続が必要」とする考えを伝えた。ブッシュ大統領はこれまでの日本の支援に対する謝意を示し「日本の支援は米国はじめ、テロとの戦いに参加している国際社会のメンバーにとって不可欠である」と、支援の継続に大きな期待を表明した。
 両首脳は会談で「かけがえのない日米同盟」を強化する方針で一致。在日米軍再編の着実な実施をあらためて確認した。

 北朝鮮問題は「六カ国協議を通じて核兵器の完全廃棄に向けた迅速な行動が重要」との認識を示した。安倍首相は「拉致問題を忘れない」と述べた最近のブッシュ大統領の発言に対し「心強く思っている」と述べた。大統領は「日本の拉致問題に関する敏感さは十分理解している」と話し、引き続き連携していく姿勢を示した。
 来年七月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)の主要テーマになる地球温暖化対策については、ブッシュ大統領は首相の呼び掛けに応じ「温室効果ガスの削減に向けた実効性のある国際的な枠組みづくり」に同意した。(共同)

■テロ特措法はアフガニスタンに対する米国の侵略に対する支援法
 テロ特措法は、2001年(平成13)9月11日に発生した米国の同時多発テロ事件を受け制定された。施行・公布は平成13年(2001年)11月2日で、当初は2年間の時限立法であった。アメリカ合衆国などがアフガニスタンなどに対して、対テロ戦争の一環として行う攻撃・侵攻を後方支援することについて定めた法律である。

 米国のアフガニスタン侵攻をいち早く支持した小泉純一郎政権下で可決・成立、引き続く安倍政権においても継続実施している。「報復戦争支援法」との批判もある。
公布直後に海上自衛隊がインド洋(公海)に派遣され、護衛艦(イージス艦)によるレーダー支援や、補給艦による米海軍艦艇などへの給油活動が行われている。この活動が、集団的自衛権の問題などの観点から、日本が果たすべき役割かどうか日本国憲法との関係も含めた議論がなされている。

 日本は日本国憲法第9条によって国際紛争を解決する手段として武力の行使ができないため、対応措置の実施は武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならないとし、活動地域は非戦闘地域と認められる公海(排他的経済水域を含む)とその上空、及び外国の領域(当該外国の同意がある場合に限る)としている。

柏崎刈羽原発を永眠に ネット署名

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     おやすみなさい、柏崎刈羽原発
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 音楽家の坂本龍一さんたちがはじめたartist power(ap)のグループが、柏崎刈羽原発をこのまま永眠させようと呼びかける「おやすみなさい、柏崎刈羽原発—— UNPLUG KASHIWAZAKI-KARIWA」キャンペーンをスタートさせました。だれでも署名に参加できます。

UNPLUG KASHWAZAKI-KARIWA
https://www.sitesakamoto.com/unplug_kariwa/index.php

■柏崎刈羽原発の運転再開は危険です。

柏崎刈羽原発の周辺には、大きな地震を引き起こす活断層が存在しています。
しかし、その調査が十分に行われないままに、原発は建設されました。原発の耐震設計の基準値は、現実に起こった地震をはるかに下回っているようです。また、火事を起した配電施設を始め、多くの関連施設は岩盤の上ではなく、柔らかい地面の上に建設されています。

今回の地震で、老朽化が懸念されていた一号機を始めとして、七基すべての原発およびその関連施設が損傷を負いました。原発の敷地そのものが大きな隆起、沈下を起こし、デコボコになっている箇所もあります。目視では確認できないヒビやゆがみを含め、原子炉の主要な機器・配管にも損傷が及んでいる可能性があり、再び地震に襲われれば、より重篤な事故を起しかねません。

周辺の活断層が今後、さらに大きなマグニチュード8に達する地震を引き起こす可能性も示唆されています。施設がどれほど修復されたとしても、地下の活断層を取り除くことは出来ません。
取り除けない不安を無視して、柏崎刈羽原発が再び稼動すれば、それは不安の連鎖を引き起こし、社会に必要な信頼を失わせるのではないでしょうか。

柏崎刈羽原発がこのまま静かに役目を終わらせることを私達は望みます。

沢田研二&阿久悠 カルチャライズ・スタディーズ

ジュリー07  阿久悠


 ジュリーの歌を聴いていると、男と女の物語が情景が、そのまま私たちの脳裏に浮かび上がる。それはやはり、作詞家・阿久悠に追うところが大きい。「AERA」(8.13-20号)に、阿久悠の追悼記事があるので、沢田研二に関するところだけ、引用する。

阿久悠死去で「昭和」が終わる
歌謡曲があった時代


 作詞家としての出発点はGS(グループサウンズ)だった。GS出身ゆえか、デビュー以降も従来の歌謡曲を打ち倒したいという意欲を持って作詞活動を展開した。全共闘運動が挫折した後の虚無感横溢の時代を先取りし、一部のGSにあった明るいメルヘンのような世界を否定、暴力や性を含めて現実を冷徹に描写する。
「壁ぎわに寝返りうって/背中で聞いている」(沢田研二「勝手にしやがれ」)
 心情を歌うのではなく、映画的に光景を描写する。
「ひとつの曲が1時間半の映画を1本見たのと同じぐらいの気分を感じさせる。そういう方法はないものか、と考えていました」
 作詞は歌手との「対決」でもある。特にこれが顕著に表れたのが沢田研二。「サムライ」での親衛隊の衣装、「カサブランカ・ダンディ」でのウイスキーの酒しぶきなど、お茶の間がひっくり返った仰天パフォーマンスの数々は、阿久悠が仕掛けた詞の世界に対するジュリーからの攻撃的返答だった。(評論家・湯浅学 談)


 湯浅学は「虚無感横溢の時代の先取り」「映画的に光景を描写する」と阿久悠を評する。ジュリーは阿久悠の挑戦に対して、幾多のパフォーマンスとして、攻撃的な返答をしたのだ。ユーチューブでかつてのジュリーの映像を見ていると、ちっとも古くないし、かえって斬新さを感じる。その当時のテレビを見ているので、わたしは懐かしいのだが、ジュリーを知らない若い世代が見ても、仰天するパフォーマンスに出会うのではないか。実際、沢田研二について語る高校生のブログや、母親の代わりにジュリーのコンサートに行って来た、という掲示板も読んだ。

 わたしは、この時代に寺尾聰や沢田研二を「再発見」した。ずっと当時からファンだった人からすれば、いわば「新人」でしかない。わたしの音楽のベースは70年代フォークなので、これはもっとちゃんと調べたいという欲求が出てきた。60年代から70年代の日本の音楽シーンには、ザ・ビートルズやボブ・ディランなどロックやフォークに影響された歌手やグループが、百花繚乱に登場した。
 GSとロックを明確に区別することも難しいし、フォークだってフォークロックという言葉があるぐらい。例えば、かまやつひろしや加藤和彦をどう考えればいいのか、という問題をはらむことになる。
 ニューミュージックの時代になれば、井上陽水も松任谷由実も中島みゆきも、フォーク出身だけどポップスに分類される。今ならJ-POPか。

 どうもわたしは、70年代の音楽を、カルチュラル・スタディーズしたくなったようだ。カルチャラル・スタディーズとは、サブカルチャー・メディア・ジェンター・エスニシティなどの研究を通じて、日常生活の問題に関する理論と実践をつなぐ運動のことをいう。つまり体制と反体制、権威の中心と外部などという二項対立を超えて、文化と政治の関係を考える実践的な理論研究である。わたしには、ケンキュウなんて、出来ないが「文化と政治の関係」を考えることぐらい出来るではないかと思った。

気になったニュース 生活保護費の算定基準の引き下げ

■最後のセイフティネットは基本権
「構造改革」論議の中で「社会保障費削減の中で、手がついていないのは生活保護費だ」と言われ続けていたので、ついに来たかという報道だ。全国紙もチェックしてみたが載っていない。見落としかな? 
「健康で最低限の文化的生活を保障する」憲法二十五条の生存権に基づいて、生活保護法が制定されている。最後のセイフティネットとも呼ばれるように、私たち国民の基本権であるをことを再認識しておきたい。

 生活保護費以下で暮らしているワーキング・プアがたくさんいる。国民年金より保護費の方が高い。保護費をもらってブラブラ遊んでいる人がいる。等々、生活保護受給者に対してよく言われることだが、ワーキング・プアという貧困問題ともに、国民年金の支給額の低さや高齢者福祉の切り捨てなとで、高齢者のひとり暮らしを中心に生活保護受給者が増えている。これは日本の社会保障制度の脆弱さのせいであり、急に怠け者が増えたわけではない。

■軍事費を社会保障費に回せばいい
 不正受給者は福祉事務所がしっかりチェックすればいいわけで、本当に福祉の助けが必要な人を、餓死や自殺に追い込むのが、今の福祉行政のありようだから、そっちの方が問題だ。

 諸外国に比べ著しい低い補足率(生活保護を実際に受けられる人の割合)は、研究者によれば、20~40%だと言われる。ということは、現在の生活保護受給者の2倍から4倍いてもおかしくないということだ。
 ホームレスの人がテレビ取材を受け「60歳以上じゃないと、生活保護は受けられないと言われた」というコメントが流れるが、まったくのでたらめ。実際に役所に相談に行っていても、体良く追い返されただけだ。報道する方もその程度の基礎知識ぐらい勉強して欲しい。
 日本の福祉は申請主義を取っているため、自ら福祉事務所に出向いて生活保護の申請をしなければならないが、最近の「水際作戦」や「お上に面倒みてもらうのは恥ずかしい」という権利意識の低さなど、実際に受給にたどり着くのは意外とハードルが高い。それに失業を補足していないという問題もある。

「財源がない」というのが、お役所や政治家の言い分だが、軍事費や米軍への思いやり予算とか、いろんなところで無駄遣いしていませんかねぇ。戦闘機一機、空母一隻で、いったい何人分の生活費になるでしょうか。人殺しをする男のオモチャに、お金を使うより、一国の主婦たるもの助けを必要としている人たちにこそ、手を差し伸べるのが、政治というべきものではないか。短命の防衛大臣マダム・スシは、女でしたが…。
 
■ジュリーより政治家の皆さんにメーセッジ
金持ち喧嘩せず 笑っている貴方 一握りの人に
命を無駄に捨てない方法 貴方教えて欲しい 

(希望「生きてたらシアワセ」より)

●北海道新聞 09/01 07:02
【厚労省 生活保護費の削減検討 基準額を年数万円】
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/46770_all.html
 厚生労働省が、生活保護費の給付の基本となる基準額の算定方法を抜本的に見直し、二〇〇八年度から引き下げる方向で検討を始めたことが三十一日、分かった。構造改革路線の流れの中で決まった社会保障費の伸びの抑制方針を受け、老齢加算、母子加算の廃止や削減に加え、基本である基準額も絞り込みが避けられないと判断した。北海道は約九万の受給世帯のうち高齢者世帯が四割を占め、老齢加算廃止に続いて基準額が引き下げられれば深刻な影響が出そうだ。

 厚労省は近く有識者らによる検討チームを設置し、年内を目標に基準額の算定方法を見直す。標準的な国民の消費支出の伸びを基本にした現行の算定方式から、低所得世帯の消費実態をもとにした方式になる見通し。
 本年度の生活保護費の基準額は〇四年度から据え置かれ、標準とされる夫婦と子供一人の三人世帯は都市部で月額十六万二千百七十円。見直しでは年間で数万円程度の削減になる可能性が高い。

 制度の根幹の見直しだけに受給者らの反発も予想され、論議は難航が必至。激変緩和として段階的な運用や、施行先送りなども想定される。
 生活保護受給世帯は低所得者層や高齢者世帯が増えたことで、年々増加を続け〇五年度には全国で百万世帯を突破。道内も〇六年度には九万一千世帯(速報値)と過去最多となり、全国平均に比べ高齢者世帯が多い。

 生活保護費の支出も膨らみ、本年度は国の予算で一兆九千五百億円。一九九七年度当初予算に比べ十年間で九千億円以上増えた。「骨太の方針2006」では、一一年までの五年間で社会保障費の伸びを一兆一千億円抑制するとしているため、厚労省は手つかずだった生活保護費の基準額見直しなどで達成を図る考えだ。
 生活保護費は老齢加算廃止に加え、十五歳以下の子供を持つ世帯の母子加算も本年度から三年間で段階的に廃止されるなど、削減が続いている。生活保護受給者を支援している「北海道生活と健康を守る会連合会」は「相次ぐ保護費削減で一日三食を二食に切りつめるなど、受給者は身を切るような生活を続けている。基準額の引き下げは死活問題」と話している。

徒然なるままに、寺尾聰&沢田研二

あきら けんじ

 猛暑の夏もそろそろ終わり、秋がやってきた。わたし的にいえば、突然の足の痺れと痛みのために、歩くことさえ困難になり、いったい何なんだY(゜_゜) まっ、人生は予定通りにいくわけもなく、うつに襲われたときも、まるで突然のようにやってきたことだし…。人のことはよくわからないけど、年齢を重ねるということも、そんなに悪いことではないと、思えるようになってきた。人間の想像力というのは、意外に貧困だと思う。うつや身体障害について、それなりにわかっていたつもりでいたけど、実際に経験してみると、やはり何かといろいろ大変なことが、次々起こってくることに気がつかされる。

 わたしが、たまたま見た今年春のテレビ番組で、寺尾聰に目覚め、続いて沢田研二も気になり、コンサートに行ってしまった。ふたりはタイプは違うけど、グループ・サウンズの出身なんだよねぇ~。日本にビートルズが60年代に来日して、それに影響を受けた人たちが、GSを次々と結成していった。その代表格が、ザ・タイガースだし、ザ・サベージもそのラインにいる。音楽的には70年代フォーク世代だし、GSはテレビの世界だけ。ただ、ジュリーは、すごい気になっていた存在だった。レコードを一枚も買ったことはなったけど…。

 ザ・サベージのベーイシストだった寺尾聰は、途中グループから脱退し、俳優業に専念していた。が、音楽活動は続けていて、1981年の「ルビーの指環」がミリオンセラーになり、レコード大賞を受賞した。スパースター・沢田研二の栄光については、今さらわたしごときが、云々する必要もないが、コンサートで歌われた「TOKIO」は、当時、歌番組で、ビルの屋上からの中継で赤と白のパラシュートに、ピカビカの電飾衣装は、ものすごいインパクトだったから、わたしのワーキング・メモリーにもある。

 寺尾聰のCDを聴きながら、わたしが何で寺尾さんに惹かれたのか、気がついたことがある。都会的センス、世界を旅する、自由な男のイメージ・・・。作詞家・有川正沙子が、寺尾さんに多くの詞を提供している。男の立場で詞を書いてるんだけど、そこに描かれる女性像は、ひたすら男に頼るような女ではなく、自分の意志をきちんと表すおんなで、ちゃーんと自立したおんな像を、有川さんは表現しているんだよ。それを歌う寺尾聰は「情けない男」なんだけど、男が弱みをみせることは、かっこ悪いことだとされているけど、男だっていつも強くいられるわけもなく、「情けない男」を歌や演技で表現できる寺尾聰がかっこいいんだ(^o^)

 わたしが、沢田研二がかっここいいのと思うのは、8月1日に亡くなった作詞家・阿久悠のせいだ。たまたま阿久悠の悲報を伝えるニュースを各局で見ていたのだけれど、コメントしているのは、演歌歌手ばっかり。テレビでは沢田研二のコメントは、わたしの知る限りなかった。悲報を伝えるあるメディアで「阿久悠は新しい女性像を追及していた」とあったが、沢田研二の歌を聴いていて、演歌に代表される古いタイプの女性をジュリーは歌っていないことに気がつかされる。今回のコンサートツアーの最初である渋谷では、喪章をつけ、「時の過ぎゆくままに」を歌ったと、スポーツ紙の報道にあるが、ジュリーはちゃんと、阿久悠に敬意を表している。

 寺尾聰は今年、還暦を迎えたが、来年は沢田研二も還暦なのだ。団塊の世代や全共闘世代に、ある意味、翻弄された世代としては、現役バリバリ、ふたりのこれからの活躍が楽しみ、なのだ(/--)/

先端神経科学による兵士の記憶の選択的消去

「ル・モンド・ディプロマティーク」は、フランスのクォリティ・ペーパー「ル・モンド」の関連会社が編集する国際月刊紙。ユーラシアからアフリカまで、環境問題から地域紛争まで、幅広い地域と分野を取り上げ、フランスその他の各界識者による論説を、現代の市民社会に提供するメディアだ。この日本語・電子版に「先端科学の恐るべき応用」という記事が掲載されていたので、転載する。

出典:「ル・モンド・ディプロマティーク」日本語・電子版 http://www.diplo.jp/

■薬物による兵士の記憶の選択的消去
 生命科学分野の革命によって、戦争薬理学という分野が出現する、という恐ろしい現実だ。神経科学の発達は精神疾患の治療に希望をもたらすと同時に、保安・治安分野に応用するという。ベトナム戦争後に米国兵のPTSD(心的外傷ストレス障害)が、再発見された。この問題については、トラウマ問題のバイブルといわれるジュデス・ハーマンの『心的外傷と回復』(みすず書房・日本語訳・1999)に詳しい。
 薬理学の発達により兵士が薬物で、記憶の選択的消去が出来るようになり、PTSDから守られるという、SF小説のような話しが現実の戦場で起きるという。


先端生化学の恐るべき応用
スティーヴ・ライト(Steve Wright)
英リーズ・メトロポリタン大学 応用グローバル倫理学科教授
訳・三浦礼恒


 戦争薬理学という分野の出現はもはや必至だ。少なくとも、英国医師会(BMA)が最近発行した「兵器としての薬物利用に関する報告書」はそうした認識を示している。
 薬物の兵器転用の可能性に関する研究は、既に40年の歴史を持つ。名だたるLSDからBZガスに至るまで、様々な薬物兵器が人体実験されてきた。ヴェトナム戦争時にはCSガスが大規模に使用され、ソ連の秘密計画「ボンファイアー」では人体の主要機能のいくつかを司るヒトホルモンの兵器転用が試みられた。化学物質を尋問に使用したり、神経伝達の阻止や、苦痛あるいは興奮の惹起を目的として向精神剤や麻痺剤を投与するといったことは、もはや枚挙にいとまがない。
 こうした研究は極めて技術性が高いことから、議論の場はこれまで国際赤十字委員会(ICRC)、化学・細菌兵器に関するハーヴァード・サセックス・プログラム、パグウォッシュ会議など、非通常兵器に特化した専門機関だけに限られてきた。だが今や、生命科学分野の知識革命により、生化学兵器に関連する期待水準と開発能力は、すっかり様変わりした。

 現代の神経科学は、驚異的な展望を開いている。現在では、神経機能や心拍の調節メカニズムに影響を及ぼすような分子を再設計することも可能だ。かつては何度もテストを重ねないとできなかった作業がますますコンピューターで処理されるようになり、極めて有望な生物活性化合物の特定とテストが驚異的な速さで実施できるようになった。こうした快進撃は、医薬品産業の華々しい「スタートアップ企業」を生み、従来は不治だった疾患の治療に希望をもたらしているのみならず、軍関係者の関心もそそっている。

 安保・治安分野への神経科学の応用は、敵や反政府勢力だけを対象にしているわけではない。アメリカとその同盟諸国はイラクにおいて、兵士たちの集中力を高める薬物を使用している。近い将来、軍の部隊は恐怖心や苦痛、疲労を抑え、攻撃性を高めるような薬物を携えて出陣することになるだろう。薬理学において実現間近な目標の一つに、記憶の消去がある。兵士が薬物によって罪悪感を取り除かれ、記憶の選択的消去によって心的外傷後ストレス障害(PTSD)から守られるというのが、もはやSF小説ではなく、現実の戦場で起きる話となる。
 薬物使用には経済的な魅力もある。戦争による精神的な後遺症に苦しむ兵士の数は、肉体的な苦痛にあえぐ兵士の5倍にも達し、軍にとって莫大な支出の原因となっているからだ。

 英国医師会の警告の背景には、このような状況がある。生物・化学兵器を禁止する条約があるにもかかわらず、各国政府は「兵器としての薬物の利用可能性に多大な関心を示している」。関心の一部は、非致死性兵器の開発に向かっている。
「化学、電気、音振動などに関わる人間の脳機能についての知識を兵器開発に応用することは、人体の操作に道を開くことになりかねない。そのような研究開発は、軍事部門・民間部門を問わず、国際協定によって世界的に禁止すべきだ」との主張が、1999年に欧州議会の外交安保防衛委員会から出されている。しかし、安保・治安に関連した技術を民主的に管理しようという気運は、2001年9月11日のテロ攻撃によって失われた。以後、そうした技術は安保・治安機関と産業界との複合体が一手に取り仕切り、天井知らずの予算がつぎ込まれるようになる。

 英国医師会の報告書によれば、「標的住民に多大な死者を出すことなく」非致死性の薬物兵器を使用するのは「端的に不可能である。(・・・)戦術状況下において死に至らしめることなく無力化だけを可能とするような薬物は存在せず、近い将来に出現する見込みもほとんどない」
 この報告書が表明した懸念は非常に多岐にわたる。薬物を使用した攻撃の計画・実行への医療関係者の関与、薬物兵器の効果についてのデータ収集、医学と医学知識が兵器開発に果たす役割、「害をなすべからず」の義務を負う一方で、国家の安全保障を担わなければならないという医師の二重の役割、国際法の遵守に関する医療関係者の役割、といった諸点である。

■化学兵器禁止条約の抜け穴
 これらの懸念の強烈な実証となったのが、2002年10月23日に発生したモスクワ劇場占拠事件における、ロシア特殊部隊の突入である。この時、人質912名のうち、130名以上が死亡した(死亡率は、戦場での数値である16分の1を上回る)。政府当局は、犠牲者の死亡診断書に改竄を加えたと非難されており、突入の際に使用した化学物質の名をいまだに明らかにしていない。ある団体の調べによると、犠牲者の総数は少なくとも174名にのぼり、生存者の中には後遺症が一向に治まらない人もいる。さらに、突入時にチェチェン人テロリスト容疑者全員が殺害されていることから、ガスの使用が恣意的な処刑を可能にし、司法手続きの道を回避させる手段になったという見方が強まっている。

 英国医師会の報告書では、兵器メーカーが医薬品産業に依存することにより、薬剤の品質と安全性に関する要求レベルが低下するおそれがあるとの懸念も示されている。製薬会社の研究所の棚には、望ましくない副作用があるために実用化を見送られた何千もの化合物が死蔵されている。それらが再利用され、研究が再開され、規制の緩い国で臨床試験が実施される、ということもあり得る話だ。そうなれば、これらの薬物が対テロ作戦用として公認され、市場が大きく発展するようになるだろう。

 薬物の散布法についても新手の工夫が考案されている。大量の化学物質をばらまく迫撃砲、改良型ペイント弾を発射するピストル、踏まれると化学物質を放出する散弾や、無人車両などだ。しかし、行動決定アルゴリズムに導かれた「自律型」ロボットが、通りすがりの人に無力化ガスを浴びせて殺してしまったとしたら、いったい誰がその責任を負うのだろうか。

 薬物兵器の影響としては、直接的な負傷、20年も後になってからのガンの発症、あるいは特定遺伝子の狙い撃ち、標的住民の感情や生殖機能、免疫システムのコントロール、といったことが考えられる。生物兵器情報の専門グループを主体とする「サンシャイン・プロジェクト」が、最近明らかにしたアメリカ空軍の文書がある。それによると、空軍は既に1994年の時点で、「不快感を与えるが全く致死性のない強力な催淫剤、特に同性愛行動を引き起こすタイプの薬物」という発想に立った研究を進めていたという。もし、この種の薬物をどこかの軍事国家が使用したら、世界はどのような反応を示すのだろうか。

 薬物兵器はいったん開発されてしまえば「責任ある」国家の手中にとどまる保証がないだけに、そうした研究を中止することこそが重要ではないか。1997年に発効した化学兵器禁止条約には、既にそうした禁止条項があるように見受けられる。問題はまさにそこにある。同条約の第2条9項(d)は、一定条件下での化学兵器の使用を認めている。薬物注射による死刑執行、催涙ガスを使用した治安措置などの場合だ。この条項が抜け穴として、テロ対策という名目で活用されているのである。

 化学兵器禁止条約は2008年に見直されることになっており、その協議に臨む各国代表団には重い責任がある。薬物兵器の研究は、政府に対する抗議運動を管理統制するための新たな抑圧手段に道を開くことになるからだ。その種の研究を厳格に規制する枠組みを設けなければ、多くの製薬会社が薬物兵器の製造に乗り出すようになるだろう
 国際規範の侵害が目立つこの現代において、近い将来に一般市民と戦闘員は、ともに新たな薬物兵器のターゲットとなる危険にさらされている。薬物によってショック状態に陥った群衆の中に、続けて特殊部隊が現れて、司法手続きなき処刑を進めていく、という手順である。