欧州野球狂の詩

日本生まれイギリス育ちの野球マニアが、第2の故郷ヨーロッパの野球や自分の好きな音楽などについて、ざっくばらんな口調で熱く語ります♪


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 プロ野球は昨日のロッテ-オリックス戦(石垣)でついにオープン戦が始まり、いよいよ本格的に球春到来といった趣だ。今年球場を沸かせるのは一体誰なのか、新たに加わった新人たちはどれだけ活躍できるのか、そして自分の贔屓球団は果たして日本一の座に就くことができるのか。多くの野球ファンが、胸を躍らせながら過ごしていることだろうと思う。


 そんな時節柄に取り上げるには相当に時期尚早な話題かもしれないけど、先日ask.fmにて興味深い記事を紹介してもらったので、少し紹介してみたいと思う。件の記事というのは、アメリカのFOXスポーツのMLB担当ライターであるジョン・モロシ氏が執筆したもので、「我々はベースボールのスターにもU・S・Aと叫ぶべきだ」というタイトルが付けられている。記事の中でモロシ氏は、近年のMLBに外国出身のスターが多数生まれていることを踏まえて、まず「アメリカ人の大リーガーはもちろんMLB最多だが、果たして彼らはリーグでベストの選手なのか」という疑問を投げかけ、WBCがそれを解決しうる舞台であると綴っている。


 モロシ氏はその根拠として、WBCは過去3回の大会の中で、常に各国の最強プレーヤーが出場してきたわけではないものの、トップレベルと呼ぶには十分なクラスのスター選手たち(アメリカ代表でいえばデビッド・ライト、ジョー・マウアー、クレイグ・キンブレルなど)が登場してきた大会であると語る。しかし、アメリカ代表はその舞台で通算10勝10敗、ただの一度も大会の王座に就いたことがないと紹介し、「アメリカ代表が例外的な強さを持つ存在であるという風潮には疑問符がある。この評価を変える場が彼らには必要だ」として、2つの国際試合についてのアイデアを披露している。1つは11月に行う日本代表とアメリカ代表による対抗戦。もう1つはオールスター期間中のいわゆる「国際Aマッチ」だ。


ソース:http://msn.foxsports.com/mlb/story/jon-paul-morosi-american-exceptionalism-in-baseball-stars-olympics-sochi-spring-training-020714


 もちろん、この記事はアメリカ人がアメリカの立場で書いたものなので、俺たち日本人の視点とは少し違った部分があるかもしれない。しかし、特に2つ目のアイデアに関しては日本球界にとっても大いに参考になるし、検討する余地もあるんじゃないかという気がしてくる。モロシ氏がこのアイデアを提唱する理由は、「オールスター期間中はそれなりに長いリーグ戦の中断があるのに、メインイベントとして盛り上がれるのはたった1試合だけ」という物だけど、俺はNPBが実施している今のオールスター戦の在り方に疑問を抱いているからこそ、このアイデアをぜひ取り入れてもらいたいと思っているんだ。


 NPBのオールスター戦はご存知の通り、セ・リーグ選抜×パ・リーグ選抜という組み合わせで毎年、2試合ないしは3試合行われるのが通例となっている。MLBをはじめ諸外国のリーグが毎年1試合しか行わないのに対し、わざわざ複数回実施している原因はNPBの資金不足だ。NPBではMLBなどと異なり、ペナントレースにおけるテレビ放映権やグッズなどの収入をリーグが一元管理し、全体のうちいくらかをリーグの運営資金として徴収してから一括分配する、という仕組みが存在しない。基本的に機構の収入源がオールスターと日本シリーズしかなく、その不足を補うためには1つでも多く試合を開催せざるを得なくなっている。


 俺自身は、例えるなら全12球団がいわば、「日本プロ野球株式会社」の一員であるべきだという立場だから、その見地で言えばすぐにでもリーグ側が、レギュラーシーズンの試合からも収益を手にできる体制を作るべきだと思っているけれど、その改革がすぐには無理なのであれば、球宴の複数回実施はやむを得ないのかなと考えている。ただ、問題はその中身だ。同じセ×パという組み合わせで何度も試合をしている現状では、第1戦から第2戦、第3戦と続いていくたびにどんどん新鮮さが失われていってしまっている。交流戦も導入され、リーグの壁をまたいだ対戦が当たり前のように行われる今のNPBにおいては、一種のお祭りであるオールスター戦の意義は問われるべきところだろう。


 だからこそ、どうせ複数回試合をするのならここに手を付けるべきだと俺は思うんだ。それには、日本代表の活用という意味合いもある。昨年からブランドが全年代で統一され、新たな舵を切った日本代表だけど、次にトップチームがWBCを戦うまでにはまだ4年もの時間がある。その合間には強化試合であったり、まだ詳細が明らかになっていないプレミア12が行われたりすることになると思われるけど、現状ではこの手の試合の相手はキューバ・オーストラリア・台湾に限られてしまっており、結局代表ごっこの域を出ていない状況があると思う。


 国際化という大きな目標に向けて球界全体が動いている昨今、もし本気でそれを実現したいと思うならば、野球にも代表戦の文化をきちんと定着させる必要がある。そのためには、現状のままでは明らかに代表の試合数が足りないんだ。考えてみれば、サッカーがあれほど世界との戦いで盛り上がれるのは、最大の目標であるW杯本大会までの間に国際大会を戦う機会がたくさんあるからだ。W杯アジア予選やアジアカップ、キリンチャレンジカップといった舞台で日常的に海外の代表チームと戦うからこそ、競技の国際性がより強烈に意識できる環境ができていると思う。もちろん、国内リーグの年間試合数があまりに違う野球では、サッカーのやり方を100%参考にはできない。でも、少しでもフル代表の経験値を高める可能性があるなら、そこは思い切って切り込んでいくべきじゃないだろうか。


 俺のアイデアはこうだ。毎年のオールスター期間を「オールスター&インターナショナルウィーク」と銘打って、オールスター戦1試合と代表戦2試合を行うこととする。従来のオールスター第2戦と第3戦が、そのまま代表戦に置き換わるイメージだ。オールスターはこれまで通りセ×パの組み合わせで戦い、真剣さと遊び心とを兼ね備えたエンターテイメントとして行う。そして代表戦には中堅国と強豪国の2か国を招待し、こちらは全員NPB所属の日本代表で当然真剣勝負として戦う。招待する国としては例えば、第1戦には欧州王者イタリア、第2戦にはWBC2013ファイナリストのプエルトリコなんてのはどうだろうか。


 これなら毎試合対戦カードが変わるので、ファンの側からすれば祭りとしての新鮮さをずっと感じていられるし、NPBの選手が日本代表ユニフォームに身を包むのを見られる機会も増える(代表ユニフォームのデザインが好みかどうかは別として)。現場ではもちろん、NPBの選手たちがWBCに向けて国際試合での経験値を積む機会を増やせる。またビジネス的にも、NPBの収益源を減らすことなく代表チームの稼働する機会を増やすことができる。それこそWBC2013出場問題の引き金にもなった、代表独自のスポンサーだってたくさん獲得できるだろう。ブランドは露出機会が増えてこそ価値を生む物であって、世に出る機会がなければただの宝の持ち腐れだ。


 もちろん課題もある。一番の問題は各国ごとの日程のすり合わせだ。現状では、各国のオールスターゲームは国ごとに完全にばらばらに行われているので、各国フル代表が世界中を駆け回ることができるよう、ここをうまく統一できないと悲惨なことになる。例えば前述の対戦カードにしても、NPBのオールスター期間がMLBのレギュラーシーズンと重なってしまったら、プエルトリコ代表は大リーガーたちを招集できず興業的な価値が下がってしまう。WBC準決勝で敗れた日本代表選手たちによる、ヤディアー・モリーナ(カージナルス)へのリベンジもお預けだ(イタリアの場合、ヨーロッパカップの開催が6月でユーロは9月なので、うまいこと地域レベルの大会が日本の球宴期間とずれている分、まだ融通は利きそうだけど)。


 この点サッカー界が上手いのは、FIFAという絶対的な存在が頂点にいて、彼らが年間カレンダーのアウトラインをまず決めてしまうので、それに沿って各国の国内リーグの日程も決まっていくというところだ。国際Aマッチデーという、「各クラブが代表に選手を供出しなければならない日」も設定されており、これにクラブが抗うことは許されない掟になっている。だからこそ、国内リーグと国際大会をうまいこと両立できている。一時はMLBが国際組織であるIBAFをも事実上立場的に上回っていた野球界で、IBAFの後継組織であるWBSCがどれだけそこに近づけるか、残念ながら現時点では未知数だ。


 でも、現実的にオールスター戦の意義が問われている現状があり、なおかつ常設化した日本代表をもっと活用したいという思いが現実的にあるのなら、このテーマに関しては球界全体(もちろん日本だけにとどまらず、世界中の関係者を含めて)で話し合い検討する価値はあるんじゃないかと思う。何か課題を解決しようとして立ち上がっても、物事が結果的に常にいい方向に動くとはもちろん限らない。しかし誰かがいつか立ち上がらなければ、絶対に課題が解決することはないんだ。


 今の野球界に必要なのは、現状をもっとよくしたいという熱意とそれを具現化するための行動力だと思っている。今年はもう無理でも(その意味では、今の時期でも時期尚早ではないのかもしれない)、来年以降の改革に向けて色々なところで協議を進めてほしい。球界のリーダーだって新しくなったわけだしね。侍ジャパンを常設化したのは、13番目の球団である代表ブランドを使ってもっと稼ぐためだろう。であるなら、そのためにはもっと頭使うしかないよ。

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 最近俺はTwitterのフォロワー仲間に触発されて、「ask.fm」というサイトをよく使っている。これは簡単に言うと、ユーザーが他のユーザーに匿名若しくは名前を明かしたうえで様々な質問をし、問いを投げかけられた側がそれらに答えていくというものだ。仕事で忙しい時には、質問を投げかけられてもすぐに返事ができない時も多々あるんだけど、サイト自体は使っていて非常に面白い。欧州野球ブロガーという立場上、国際野球絡みの質問をされることがやはり非常に多いんだけど、情報源として自分が必要とされてるのかな、という感覚をもてたりもして嬉しくもなったりする。


 そのask.fmで最近聞かれることが多いのが、「この国の○○という海外領土では野球は盛んなのか」という質問だ。敢えてこの場を借りて晒してしまうと、例えば最近された質問の中には「WBC予選のイギリス代表には、イギリス領アンギラ出身のエスティーブンソン・エンカーナシオン投手がいたが、これはイギリス領アンギラでも野球が盛んだということなのか?」というようなものもあった。おそらく、オランダの海外領土であるキュラソーからあれだけ有力選手が出ているので、他の欧州諸国にもそういう「供給基地」的な場所があるんじゃないか、というのを知りたがっての質問なんだと思う。


 もちろん、俺自身もキュラソーのような事例が他の国にも存在するのであれば、それは非常に面白いしロマンを感じることだと思う。ただ身も蓋もないことを言ってしまうと、俺だってまだまだ知らないことはたくさんあるし、リサーチしきれていない分野も少なくない。とても興味深い質問を投げてくれたことには大変感謝しているけれど、まだ質問者が期待しているような答えを投げ返せるまでには至っていない。そこは申し訳ないが容赦してほしいといったところだ。


 エンカーナシオンが生まれたアンギラでどれだけ野球がプレーされているのか、そこについてはまだ自分はきちんと状況を確認できているわけじゃない。とはいえ、何はともあれそこから野球の国家代表選手が生まれたという事実は、とても興味深いものであるのは間違いないと思う。なぜ野球イギリス代表選手がアンギラの地から生まれたんだろう。たまたまエンカーナシオンが物凄く幸運で、自分のポテンシャルを本格的に開花させる機会に恵まれたのか?それとも俺たちが知らないだけで、実はアンギラには野球選手として大成できる土壌が存在しているのか?


 これはあくまでも個人的な推測にすぎないけれど、俺はこの「鶏と卵」の議論にも似た命題については、前者の解がより正確なんじゃないかと思っている。エンカーナシオンがプロ入りするまでの経緯は詳しくは分からないものの、2011年からMLB傘下でプレーしていることは確認できる(http://www.baseball-reference.com/minors/player.cgi?id=encarn000est )。とはいえ、2013年時点で人口約1万5000人の島に過ぎないアンギラに、MLB傘下でプレーできるだけの選手を育てるエリート教育の拠点が備わっているとは考えづらい(少なくとも俺は聞いたことがないし、そんなものが仮に存在するならとっくにニュースになっているはずだ)。高校生の時に渡米して、アメリカの高校に入った等のパターンの方がよほど自然だろう。


 しかし、例えマイナーリーガーでもプロとアマチュアの力量差はまさに歴然だ。言葉は悪いけれど、アンギラにさえMLB傘下でプロ野球選手になり、さらに国家代表選手にもなるようなアスリートがいるのだとすれば、実はある特定のスポーツがある特定の国でメジャーであるのか否かと、そのスポーツで大成しうるだけの才能が生まれてくるか否かの間には、実は大して相関関係なんてないんじゃないかと思えてくる。いや、正直に言えば俺はその2つはむしろ、一致しないケースの方が多いと思っているんだ。


 以前も書いたかもしれないけれど、どんな国にもアスリートとしての優れた才能を持った人間はいるし、その才能がうまいこと野球に向いているものだったというケースも、確率の問題として必ずあると俺は考えている。例えばアフリカにも、足でボールを扱うのは下手だけど腕っぷしや肩は強いとか、重い物を持ち上げるのは得意だとか、水中を泳がせたらめちゃくちゃ速いとか、そういう特別な才能を持っている人材は必ずいるはずなんだ。


 一般社会でも人それぞれ得手不得手があるのと同様、アスリートにも生まれつき得意な競技とそうでない競技とがある。その理屈でいえば、例えばMLBで盗塁王を獲得するナイジェリア人やジャマイカ人のスピードスター、来日1年目で最多勝と沢村賞をかっさらうロシア人やアイルランド人の本格派右腕、CPBLで本塁打王に輝くエルサルバドル人やコスタリカ人のスラッガーが実在しても、何らおかしな話じゃないんじゃないか?


 でも、実際には残念ながら俺のこうした主張は鼻で笑われてしまうであろうほど、現実味の薄いおとぎ話に過ぎなくなっている。それは、ここに挙げた国々にはそれを開花させる環境が十分にないために、選手として大成する機会がどうしても少なくなってしまうからだ。せっかく野球選手としての優れたポテンシャルを持っていても、たまたまそれを花開かさせる術を知らない国に生まれてしまったがために、大物になり損ねたまま消えていく。これは野球界にとってもスポーツ界そのものにとっても大きな損失だ。


 だからこそ今の野球界には、どうしてもクリアしなければならない命題が2つある。まず(最終的に選手自身が野球を選ぶかどうかは全くの別問題として)、どの国においてもある程度野球がスポーツの選択肢として存在感を持てるようにすること。そして仮に幸運にも野球が選ばれた時には、例えどの国や地域で生まれようとも外部要因(用具が自分の国で気軽に買えるかどうかなど)に左右されることなく競技に打ち込むことができ、己の才能と努力次第で世界最高峰にも手が届くような環境を形作ることだ。


 それを達成するためには、様々なミッションを解決していく必要がある。野球競技そのものの認知度を各国の社会の中で高めていくこともそうだし、草の根の競技人口を増やしていくこともそう。有望な若手を育成するためには、育成拠点となる本格的なアカデミーを持つ国をもっと増やすことが必要だろう。当然、世界中全ての国にアカデミーを備えることは到底不可能だから、その時にはアカデミーがない国々の選手たちの橋渡し役となるエージェントの力がものを言ってくる。気軽に自分の国で野球用具を購入できるよう、流通体制の構築も必須だ。


 もちろん、これを全部達成しようと思ったら相当な時間と手間、お金がかかることは覚悟しなければいけない。西暦2064年、76歳になった俺が老人ホームかどこかのテレビでヨーロッパの野球中継を見ながら、何気なく目を落としたタブレット端末で「中東野球リーグで球宴5度選出のイラン人スラッガー、ついにMLB移籍へ」のニュースを眺める。そんな光景がもし日常になったりしたら、それを味わえる50年後の俺や他の野球ファンたちは相当幸せかもしれないよ。


 原石を1つ1つ拾い上げ、磨き上げて輝かせる作業はとても地味だし根気がいる。そもそも、今の野球界はその工房を整備するところから始めなければいけないのだから、なおのこと大変だ。とはいえ、俺たちが愛するこの競技の将来のためには、例え茨の道であっても取り組む価値も必要性もあると俺は思う。少なくとも、俺がそもそも2064年まで生きていられる100%の保証がないのと同じように、才能を花開かせる場が環太平洋地域に極端に偏っている今の在り方のままで、野球がずっと生き残っていける保証なんてどこにもないんだからね。


 アンギラからMLB傘下入りを果たせたエンカーナシオンは、もしかしたら様々なめぐりあわせに物凄く恵まれたのかもしれない。でも今までの野球マイナー諸国には、彼が手繰り寄せた幸運のほんの一部にも巡り会えないまま、アスリートとしての適齢期を過ぎてしまった無名戦士たちが山ほどいるはずなんだ。そのような才能の浪費が今まであったことは仕方ないとして、これからはてっぺんを志す選手たちには出身国に関係なく、純粋なアスリートとしての能力に応じてチャンスを与えられるようにすべきだと思う。野球は日本やアメリカだけで回ってるんじゃなく、この星の上に暮らす全ての野球好きたちの物なんだからね。

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 俺はこのブログを始めてから、今までには全く縁がなかったような数多くの人々と、繋がりを持つ機会に恵まれてきた。国内外の独立リーグや、ヨーロッパなどのマイナー諸国でプレーする日本人選手たち、各国の国旗を背負って戦う外国人選手たち、そして彼らと強いつながりを持ち、さまざまな立場でフィールド外から支える球界関係者たち。もちろん、このブログをいつも読んでくれている一般的な野球ファンの方々も、自分にとっては大切な宝物だ。こういった人々と出会えたのは、自分の人生にとって本当に大きなことだと実感している。


 最近もまた、Facebook上で新しい野球人とのつながりが生まれた。アフリカ・ブルキナファソ出身のムスタファ・ダオ捕手(18)。現在は本職の捕手の他、投手と二塁もこなすという彼は、北海道を拠点に活動する「ブルキナファソ野球を応援する会」の手引きで、2008年に来日。その際は横浜スタジアムを訪れ、当時横浜で主砲を務めていた村田修一(現巨人)にも会ったと語ってくれた。目標としているのは城島健司、将来は捕手として日本球界で勝負したいと、非常に意欲的に夢を語ってくれたのが印象に残っている。


 実は、日本球界に対して憧れを抱いているマイナー諸国出身の選手は、決して少なくはない。俺が1年以上にわたって移籍を支援してきた、イランのアミールさんは言うに及ばず。チェコジュニア代表の中心選手であるマテイ・メンシク(21)は、「今はオファーが来ないので諦めてしまったが、数年前は日本かアメリカでプレーしたいと思っていた」と、かつて俺に対して語ってくれた。ネパール代表のエースであるイッソー・タパも、プロ選手になる舞台として選んだのはアメリカではなく日本だった。あまり一般的に知られてこそいないかもしれないけど、こういう風に目標としてもらえるプロ野球リーグを持っていることを、日本の野球ファンは誇っていいと思うよ。


 ただし一方で、そうした思いに対して日本側がどこまで応えられているかと言われたら、残念ながらまだまだ不満に思える点も少なくはないこともまた事実だ。そもそも、日本ではこうしたマイナー諸国における野球の現状が、まだあまり知られていない実態がある。だからこそ、外国人を獲るにしてもなかなか新しい地域に目が向かず、結局北米もしくは韓国・台湾でプレーしている選手ということになってしまう(オリックス・マエストリやヤクルト・バレンティンは、それぞれ四国ILとマイナーリーグでプレーしていた選手であって、イタリアやオランダから直接発掘されたわけじゃない)。


 そして、現在日本球界が国際的に展開している普及に関する活動というのも、どうしてもMLBと比べると見劣りしてしまう印象がある。もちろん、昨年はセルビアの高校球児を日本に招いたり、12月にはスリランカ初の野球場を完成させたりしているし、日本の野球関係者たちももちろん何もしていないわけじゃない。むしろ、彼らがこれまでやってきたことに対する評価は、きちんとなされなければいけないと思う。ただ、世界中に指導者を派遣してクリニックを開いたり、アカデミーや新しい野球場の建設に資金面で協力したり、はてはプロリーグまで自分たちまで立ち上げてしまうというMLBのそれと比べると、どうしても陰に隠れてしまっている感じがするんだ(もちろん相対的な話ではあるけどね)。


 でも、俺自身は日本球界は世界の野球に対して、もっといろいろとコミットメントできるし、やれることややるべきことはまだまだあると思っている。このブログでは何度も語っているように、日本はアメリカと並ぶ国際球界における中心軸であり、野球界全体を前進させていくためのリーダーシップを発揮していくことを求められている立場だと思うからだ。そしてそれと同時に、そうした活動に継続して取り組んでいくことが、巡り巡っては日本球界にとってもプラスになるような形を作っていくことも、これからは必要になると思う。例えば(これは以前話したかどうか、記憶が定かじゃないけど)、外国人枠についての考え方を根本から変えるというのも、1つの手かもしれない。


 周知の通り今のNPBでは、外国人選手の一軍公式戦への出場は投手と野手合わせて4人まで、かつ「4枠全て投手」や「4枠全て野手」という使い方はできないものとして規定されている。一方で、外国人選手の獲得人数自体には制限がなく、獲得できるだけの資金力があるのなら好きなだけ獲っていいというルールだ。しかし、外国人選手を一軍で4人までしか使えないとなると、せっかく海外で普及プロジェクトを実施し、そこで有望株を発掘できたとしても、他の外国人選手との兼ね合い等の関係で、結局出場機会を十分に与えられないということが起きてしまう。ブラジル代表で主軸の一角を打つユウイチ(ヤクルト)が、日本に帰化するまでは出場機会が限定されることが多かったのも、その一例と言えるだろう。


 そうした問題点を解決するために、例えば「マイナー国出身選手枠」の導入を提唱する人もいるけれど、俺は個人的にはそうしたプランには賛成できない。プロ野球とてあくまでもビジネスであり、外国人選手を獲るのはあくまでもチームにとって戦力になることが前提。その絶対条件を崩してまで、枠を新たに1つ作る余裕は今のNPB各球団にはないだろうし、数年後の開花を見込んで獲得するのであれば、現行の育成選手制度の下でいわゆる「育成外人」として育てればいいだけの話だろう。


 それに一口にマイナー国と言っても、WBC予選を勝ち抜いて本大会に出てくる国から、代表チームが日本の同好会相手に何とか接戦ができるレベルの国まで、それぞれの立ち位置は千差万別。どこからどこまでが野球先進国で、どこからがマイナー国なのかを定義することが難しい以上、「マイナー国出身選手枠」の導入は口で言うほど現実的なアイデアとは言えないと思う。


 そもそも、MLB球団がヨーロッパやアフリカ、あるいは南米の「サッカーグループ」の国々出身の選手を獲得しているのは、何も慈善活動のためというわけじゃない。彼らが期待しているのは、あくまでもそういった選手たちの中から一軍の主力になるような選手が台頭してくることであり、その結果彼らの出身国におけるMLBへの注目度が向上し、北米以外での放映権をはじめとする収入が増えることだ。だからNPBがもっと広い地域から選手を集めやすくなる仕組みを作るなら、外国人枠の制度に対する考え方も、彼らに倣って根本から変える必要があるだろう。


 俺が推したいのは、外国人枠の縛りを「一軍の試合出場可能人数」ではなく、「1球団の総選手数に対する割合」に基づくものにするというアイデアだ。例えば、1球団当たりの支配下選手数が70名、外国人枠が20%とすると、1つの球団に同時に在籍できる外国人は14人までということになる。ただしその代わり、一軍公式戦に同時に出場できる人数は、その14人以内であれば何名でもいいこととする。極端な話、一軍登録選手(28人)の半分が外国人でもOKというわけだ。


 実は、MLB各球団があれだけ多国籍軍でいられるのは、外国人枠をこうした形で設定しているからだ。現在のMLBの場合、1つの球団が抱えられる外国人選手(ドラフト対象となるアメリカ・カナダ・プエルトリコ以外の国籍を持つ者)の割合は、傘下に保有している全選手の25%まで。各球団の傘下には日本流にいうと八軍まで存在し、またそれぞれのチームに25人ずつが登録されていると考えると、1球団が抱える選手の数は総計200人、外国人選手は50人に上ることになる。そして40人枠に登録されてさえいれば、一軍たるメジャーの試合には出られるわけだ。


 これだけ総枠が大きければ、そこにマイナー国出身の「ダイヤの原石」を、何人か加える余裕も出てくる。一軍の即戦力となることを期待される選手はもちろん、粗削りながらも光るものを持つ素材型の選手たちも、次の世代のレギュラーとして育てるために拾ってきやすくなるわけだ。その中から、将来的にレギュラーを掴む逸材が台頭してくればそれで良し。通用しないとなればすぐに放出してしまえばいい。そういう環境が作られていることは、MLB自身が採る世界戦略の在り方ともリンクしているんだ。


 もちろんこの仕組みにすると、日本人選手の出番が減ってしまう可能性は大いにある。しかし、現代はただでさえ少子高齢化が進んでいるうえに、野球以外にも数多くのスポーツ種目がメジャー・準メジャー化し、才能が分散している時代だ。そうした中で、NPBというリーグのレベルをある一定の水準に保っていくために、こうした形での門戸開放を考えてみる価値はあるんじゃないだろうか。そもそも、1年間に14人も外国人選手を抱えられるであろうレベルの資金力がある球団は、現実的には巨人やソフトバンクなどごく一部の球団に過ぎない。仮に外国人枠に関する規定を変えたとしても、急にNPBが「外人部隊」だらけになるということは考えにくいだろう。


 個人的には、NPBが日本代表は言うに及ばず、各国の代表選手が集まるようなワールドクラスのリーグになっていくことには、非常にロマンを感じる。今のNPBに来る外国人選手というのは、たまに今年のアンドリュー・ジョーンズ(楽天)のような超大物が来ることはあっても、基本的には大半がメジャーでは結果を残せなかった、いわばわけあり物件(今プレーしている面々に対しては、失礼な話になってしまうけど)。それが悪いとは言わないけれど、MLBに次ぐ世界第2位のプロ野球にやってくる外国人が、アメリカのおさがりばかりというのでは少々寂しい。そこに、各国の国旗とプライドを背負って戦う代表選手たちという新勢力が加われば、日本プロ野球にとってもいい刺激になるだろうし、国内リーグと国際大会の両面に置いて国境の壁がなくなる、本当の意味での国際化にも寄与することになるはずだ。


 ただし、せっかく外国人枠を緩和しても、肝心の選手を連れてくるための仕組みが整っていないのでは意味がない。後篇では、マイナー国出身のスター候補生たちを、どのように発掘し日本に連れてくればいいかについて、自分の私案も交えながら考えてみたいと思う。

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