大人たちの過ぎゆく日々 -9ページ目

大人たちの過ぎゆく日々

身近な家庭菜園/現代小説

 (30) 「教師用の名簿とかで、連絡出来るのかな?」

 

「25年前の話よ、今でも連絡出来るの?」

 

「だよね、今でも交流あるから呼べるのかな?」

 

「当時は新井先生は新任で来たばかりだったし、そういえば未だに独身って・・松田くんが言ってたよね」

 

「あやしい・・・」


大笑いしながら外を見る・・

 

向かいのコンビニ前でアイスを食べている男の子を発見「あら、さっきバイトしていた子だよね、隣は彼女かな、いいわね若いって・・」

 

「そうね、私たちには似合わないね」 


弘美は興味を示さない。

 

「ねぇ 立ち食いしてみる?」・・涼子は何でもやってみたい気持ちに目覚めたようだった。

 

「気分だけでも若返らないとね、おばさん同士ならいいでしょ」あの子達のアイスの食べてる気持ちを確かめてみたい。



しばらくして・・

「おいしい~」何かが違っていた。本当に美味しかった。環境が変わる、相手が変わる、自分が変わると、二人で美味しさを分け合う気持ちが伝わった。

 

・・・

その夕方「ただいま」と返事を求めないような言葉で夫が帰ってきた。その言い方、きっと私もそうなんだろうかと思えたら、申し訳ない気持ちにもなる。

 

その気持ちが「おかえりお疲れ様」と気持ちを伝えると、夫は分かったのだろうか。

 

「美味しそうな匂いがするね」


料理を褒めてきた。心を込めた言葉が夫に通じたことは素直に嬉しいが、もう癒される存在では無くなっているのは確かであった。

 

涼子は夫と寄りを戻すというより、私もこれからは癒しを求めていくと決めたのだ。つづく

 (29) 「離婚を励ます会なんて・・ただ飲みたいだけでしょ。そのうち再婚おめでとうの会が出来るといいわね」


その言葉は松田くんに囁いた。

 

「再婚?、それは時間もお金もかかるし、それに今は忙しくしてるからね」

 

「そんなことないよ、ここに来るお客さんに女性も来るでしょ。 仕事しながらラーメンご馳走して会話も出来るでしょ」


涼子は、弘美に代わって喋っていた。

 

「そんな気持ちでラーメン作ってないですよ。仕事しながらなんて・・実際そんな余裕無いし、色目使ってラーメン作れないですよ」

 

「色目じゃなくて、サービスしてくれるとかさ」と、トッピングのサービスを思い出して言ってみた。

 

「どういうこと?・・」


お客が入ってくると立ち上がる弘美「美味しかったので、また来ますね」


初めて自分で意志を伝えた。

 

「はい!ありがとうございました、またお待ちします」松田くんの元気な声を聞いていた。あれは弘美に向かって、個人的に言ってるように聞こえた。


弘美さん、ぜひ来て下さい、トッピングサービスしますと聞こえる・・そんな気持ちで外に出ると、先ほどと変わらない風景が渡辺くんの姿を思い出させてくる。



あの女性と一緒にランチに行ったとすると、また鉢合わせする可能性もあった。もしかしたら、この辺りで食事でもしているのだろうかと店を覗いたりしていると「素敵なカフェね 入ってみる ?」

 

そこはガラス張りの店内で、窓際が空いていたので「いいわね 入ろう」

 

窓際に座ると飲み会の紅一点は、冬子じゃなくて新井先生だったのを改めて知って驚いたとこを喋り始めていた。監督はなぜ ? 新井先生に・・今も連絡出来るのだろうか ? そんなことを考えながら珈琲を注文する。

 

「ねー監督って、齢は?」

 

「監督 ? 当時は35くらいだと60過ぎてるでしょ。監督ってさ、顔が真っ黒で眼だけギョロギョロしてたけど、クラスでは人気もあったよね」

 

でも、新井先生と今でも連絡が出来るのはどういうことさ・・? つづく

 (28) 「今だから言えるけど、滝口さんに一目ぼれしてました」

 

「私?」月日が経っていたので、驚かないフリをした。

 

「ここに滝口さんが居るのが信じられないですよ。あの時、応援に来ると知ってホームランも打てた。でも・・あんなに盛り上がっていたのに告白も出来なかったのが残念で・・」


当時の話を笑いながら話してくる。

 

弘美は・・今でも気持ちは変わらないのかと聞いてみたかった。心の中で、もし当時と気持ちが変わらなければ、夫と別れようと考える嫌な女。そうじゃない、松田くんに会う前から離婚は決めているし・・

 


弘美が考えていることが分かる気がして「独り身じゃ大変だから、松田くん再婚したら?」


涼子がズバリ聞いてやった。

 

「それは否定しないけど、ただ僕は子供を授かることが出来ない男なのでダメなんだ」

 

「え、まだ子供作る気?」

 

「え!そうじゃないよ」

 


「話は変わるけど・・・ねぇ、この上の階は渡辺くんが居るの? 」

 

「いるけど、昼休みだから今は居ないかな?午後は3時からと思ったけど」

 

「そうなんだ、町のお医者さんみたいだね」

 

「あ、今日は面接だって言ってたから居るかも?」

 

「さっき見掛けた女性は面接に来た人?じゃ、お客さんかな?ねぇ集まる会って何の集まり」


話題を変えた。

 

「野球部は何かあると集まって飲んでます。今月は離婚を励ます会と言ってるけど」

 

「毎月なんだ」

 

「そう!飲んべえ達だから毎月、集まって飲み会です。先生も来るよ」

 

「だれ?」

 

「監督と音楽の新井先生」

 

「新井先生も来るの ? 」

 

「監督が勝手に呼ぶんだよ」

 

「へぇ新井先生はピアノが上手だったよね」先生は派手なタイトスカート穿いていたのを覚えていた。

 

「ここの飲み会では紅一点、未だに独身らしくて・・」新井先生は私たちが入学とともに新任として来たのを覚えている。だから40代、私たちと同世代。つづく