(27) 入店した時はランチ時で忙しそうだったが、昼を過ぎると一気に居なくなる。ただ調理場は片付けたり仕込んだりと急がしそうにしている。すると奥から「じや、失礼します」
「はい、ご苦労様」
バイトだったのだろう、さっきの若い子は店を出ていってしまった。
・・「ねえ、話してみる?」
「え?ラーメン食べに来ただけよ」
「独身かな?」意地悪そうに涼子は弘美に迫った。
「さっき、奥さんは ? って聞いてるお客さん居たし・・それに私は人妻だよ」
「そうじゃなくて同窓生としてよ。懐かしく話してもいいんじゃないの?」
そう納得させると奥に向かって「ご馳走さまでした。美味しかったです」
涼子はラーメンの美味しさを声にした。振り向く彼は調理場から手を休めて「ありがとう御座います」
その一言で弾みがついて「私たち、誰だか分かりますか?」店主の休めた手が止まり
「え!まさか?・・・・滝口さんと鈴木さん?」
「そう、お久しぶりです。渡辺くんから聞いたんですよ」
「そうでしたか!渡辺とは、ここで野球部の集まりで今でも付き合ってますよ」
「それ聞いてさ、懐かしくて来ちゃったのよ。さっきの子は息子さん?」
「いえ、甥っ子です。受験だけど忙しい時間だけ手伝ってくれて助かりますよ」
弘美が知りたがっていた事を聞いた「奥さまは手伝わないんですか?」
「それ聞きますか?・・ 別れましたよ、彼女は30代で子供を欲しがってましたからね・・でも変わらないですね〜二人とも綺麗ですね ! 」
「もう、おばさんよ」
「いいえ〜今だから言えるけど・・」
松田くんは、こちらの話を聞くこともなく喋り始める「一番思い出に残っている事があります」
「あ、もしかしたら逆転ホームランでしょ 」
「そうじゃないんです。野球部の皆はそういうけど、あの時は最高の舞台だったのは確かだけど・・でも目の前に好きな人が観てたのに、何も伝えられない自分が悔しくて、奈落の底の思い出です」
「へぇ~、じゃ告白を出来なかった好きだった人って誰だったの ?」つづく






