(26) 歳だからとか世間体とか、自分の嫌らしさを意識して若さを無くしていた | 大人たちの過ぎゆく日々

大人たちの過ぎゆく日々

身近な家庭菜園/現代小説

 (26) 「松田くんの事は、冬子に聞いたら分かるかもね? 旦那が野球部なんだからさ」

 

「ん〜気になるなら 一度ラーメン食べに行く?付き合うよ」

 

「え!」

 

「二人だけでさ」

 

「松田くんとはさぁ、どうせ25年前の顔しか知らないんだから私たちの事、分からないわよ」青春を思い出すかのように出会いを投げかけた。


若い頃は許されたことが、今は何故いけないのかと考えてしまう。歳だからとか世間体とか、自分の嫌らしさを意識して、若さを無くしていたことを・・

 

「そうね、ラーメン食べに行くだけだからね」



その気持ちが翌日、三鷹駅で待ち合わせするとメイン通りは真っ直ぐに続いていた。場所は大体は分かっていたが、あまり立ち寄らない駅が珍しく店や人の流れを意識しながら歩くと、思わぬ人を見掛けてしまう。


反対側の歩道に渡辺くんが見知らぬ女性と歩いていたのだ「ねぇ、誰?隣の人」

 

「お客さんじゃないの?」

 

「食事に行くのかな?」時計をみると、12時を回っていた。お客とランチ?冬子は知ってるのかな?見てはいけないのを見たのかと二人は顔を見合わせた。

 

何も見なかったように、マツヒロラーメンの雑居ビルを探す二人。今見た渡辺くんを忘れたいように、ラーメンを無性に食べたくなっていた。

 

ラーメン屋が見つかると「いらっしゃい」と威勢がいい。店内では男二人が忙しく立ち働いていて、その一人は松田くんらしくて、私たちが誰とは気が付かないでいる。

 

自販でチケットを買いテーブルに着くと、若い店員が「いらっしゃいませ」


コップの水を少し溢しながら差し出す「あ、すいません」その青年を睨むでもなく見ると、若い頃の松田くんを思い出すほど似ていた。

 

カウンターに座ってる初老の客が「大将、近頃は奥さん見ないね」そんな言葉を交わしているのを聞いた。

 

「あ、やっぱり結婚してるんだ」つづく