広場は欲望の渦に巻き込まれ、狂気と混乱で満ちていた。
ピクピクは地面に膝をつき、肩で息をしている。
ネオンヌの指が強くピクピクの肩を掴み、鋭い声が響いた。
「何をためらうの?あなたはずっと、こういう刺激を求めていたでしょう?」
ピクピクは震える声でつぶやいた。
「でも、僕…どんなに刺激を求めても満たされなかった…。僕が欲しかったのは、本当にこんなものなの…?」
その迷いを感じ取ったマモノが低く、不気味な声で囁いた。
『もっとだ…。もっと欲望を満たせ…。刺激が足りないから満たされないんだ…。』
人々が再び狂ったように暴れ出す。
ピクピクもその声に飲み込まれそうになり、苦しげに頭を抱え込んだ。
「違う…こんなの、僕が探していたワクワクじゃない…!」
ノワノワはそんなピクピクを苛立たしげに見つめたが、拳を握り締めながら一歩踏み出した。
「お前…ずっと『ワクワク』って簡単に口にしてただろ。でも本当は怖かったんじゃないのか?」
ピクピクがハッとしてノワノワを見上げた。
「怖い…?」
ノワノワは苦々しく続けた。
「本当のワクワクがわからないから、簡単に手に入る刺激に逃げてただけだ。お前はずっと、本当の自分と向き合うのが怖かったんだろ?」
ピクピクの目に涙が浮かぶ。図星だった。
「僕は…ワクワクしてるふりをしていただけ…?」
ノワノワは少し視線を落とした。
「俺だって…同じだ。ワクワクなんて信じちゃいない。でも、少なくとも、欲望だけを追い続けた先に何もないってことぐらいはわかる」
シクシクが静かに声をかけた。
「ピクピク…もうやめよう。この街の人たちだって、刺激に溺れて苦しんでる…。君はその苦しみを本当はよく知ってるんだろ?」
ピクピクは胸を押さえ、仲間たちの言葉を噛み締めた。
その瞬間、胸の奥底にある温かい記憶がよみがえる。
みんなで旅をしているときの何気ない会話。
くだらないことで笑い合った夜の焚き火の前。
あのとき感じた静かな喜びは、どんな刺激よりもずっと心地よかった。
「僕…本当はずっと寂しかった…。でも、みんなと一緒にいる時間は、胸があったかくなって、本当に嬉しかった…」
胸に温かな光が灯った。
『やめろ…!欲望を捨てるな…!!』
マモノが激しく抵抗し、広場に黒い嵐が巻き起こった。
ピクピクは立ち上がり、その嵐に真正面から立ち向かった。
「違う!僕が本当に求めていたのは、欲望なんかじゃない!みんなと心から繋がる、この喜びだったんだ!」
ピクピクの胸から溢れ出た温かな光は、激しく渦巻く欲望の嵐を押し返していった。
マモノは激しくうめき声を上げながら、最後の抵抗を見せる。
『違う…!欲望こそが人間の本質だ!お前たちにそれを否定する資格などない!!』
黒い影が巨大化し、街全体を覆い尽くすほど膨れ上がる。
強烈な風と圧迫感に、シクシクたちも思わず顔を伏せた。
「ピクピク…!!」
シクシクが叫ぶ。
だがピクピクは恐れず、まっすぐマモノを見上げていた。
「違うよ…。欲望は僕たちの一部かもしれないけど、それだけが本質じゃない!僕らには、もっと深くて美しいものがあるんだ!」
ピクピクの光がさらに強く輝くと、その輝きに導かれるように、シクシクやノワノワ、シュシュたちの胸からも次々と小さな光が湧きあがった。
それらの光は空中で一つになり、眩しいほどの輝きを放った。
『ぐっ…やめろ…!欲望は永遠に消えはしない…!』
マモノは黒い触手のような影をピクピクに伸ばすが、その光の前に触れることすらできず、弾かれてしまう。
ピクピクははっきりと、静かに告げた。
「欲望は消えないかもしれない。でも、僕たちは欲望に飲まれるほど弱くない。みんなと分かち合える喜びこそが、僕らの本当の強さなんだ!」
その瞬間、ピクピクの言葉に共鳴するように、街の人々の胸からも光が次々と生まれ始めた。
無数の光が一斉に集まり、巨大な光の渦となってマモノを包み込んだ。
『うわあああああ…!!』
マモノは激しくもがき、苦しげな絶叫をあげながら、光の中に飲み込まれていく。
その姿は徐々に薄れ、やがて完全に消え去った。
欲望の霧が晴れた街には、静かな安らぎが訪れた。
ピクピクはゆっくりと仲間たちを振り返り、満面の笑顔を浮かべた。
「やっと、本当のワクワクに気づけたよ!」
シクシクたちは笑顔でピクピクを囲み、その喜びを分かち合った。
🌟 つづく!
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