斎藤英喜の 「ぶらぶら日記」 -906ページ目

休日紅葉

朝起きたら、NHKの日曜美術館で『古今和歌集』『新古今和歌集』の展示を紹介していました。コタツに入って、やっぱり和歌はいいなぁ~、そうか後鳥羽院は定家の「見渡せば…」の歌を削除したのか、でも新古今はそんなに政治的な歌集なのかとか、起きたてのボ~~とした頭で見ていました。

お昼前からくたくたさんがお弁当を作ってくれて、ふたりで京都府立植物園へ。

紅葉がとってもきれいです。その美しさは、言葉でいえません。くたくたさんの写真でご覧ください。

暖かい日差しのなかの広場にシートを広げてお弁当。玉ねぎ入りの卵焼き。ウインナーとちくわ、キノコの炒め物。蓮根のキンピラ・いんげんの胡麻和え・小松菜と油揚げのおひたし(ただしこの三点はレンジ物)。それに梅干と蕪の漬物入りのおにぎり。ほんと外で食べるおにぎりはおいしい。

お腹いっぱいになって、ゴロンと横になってしばらく休憩。

この植物園、あまり観光客も訪れず、ほとんど地元の人たちの憩いの場のようです。池の水に映えるも紅葉を、ゆっくりと眺めることができました。思わぬ穴場です。

園内の温室の植物を見てまわり、北山駅の近くにある「陶板名画の庭」を眺めているうちに、日が暮れてきました。北大路に戻って、ビブレのイタリアンでピザとパスタを食べて帰宅。休日の紅葉狩りでした。

夜はNHK大河の『義経』見ました。「しずやしず」の場面、思っていた以上によかったです。でもこのドラマ、昔の大河にくらべると、ほんと薄口ですね。

入浴後、ジョン・ディーの本の続きを少しだけ読んで、さすがに疲れて寝てしまいました。


魔術師ジョン・ディーのこと

終日、家で過ごすのは、久しぶりです。

朝、新聞見ていたら、ジョン・ディーが登場するテレビ番組の記事が。思わず本棚からピーター・J・フレンチ『ジョン・ディー エリザベス朝の魔術師』(高橋誠訳・平凡社)を取り出して、読み始めてしまいました。(以前途中で挫折した本。再挑戦です)。

ジョン・ディーとは、十六世紀、エリザベス朝に生きた「魔術師」。魔術師というと、それこそ魔法使い、ファンタジーの世界を想像しますが、ルネッサンスの時代において「魔術師(マグス)」とは、実用的数学・地理学・航海術・機械工学・音楽・建築学・絵画・演劇などを探究する知者=技能者のことを意味します。ジョン・ディーは、そういう意味での、当時最高の魔術師でした。

このことは、「ルネッサンス」についての認識も、大きく変えてくれます。

僕らが教科書で習ったのは、ルネッサンス=人間復興=暗黒の中世からの解放といったものでしたが、最近の研究によれば、ルネッサンスとは、まさに「魔術(マギア)」の時代であったのです。それは「キリスト教」に対抗する新しい世界観が提起された時代であり、その根底をなすのが形相たる数を論ずる数秘学、比例と均斉を扱う神聖計量学などの「数学」であったのです。

ジョン・ディーの時代、「数学」とは「黒魔術」の一種として、教会から弾圧される危険な学問でした。ジョン・ディー自身も、何度も「異端」の嫌疑をかけられ、あわや火刑といった時もあったようです。

そして彼ら「魔術師」たちが重んじた書物こそ、モーセと同時代を生きた古代エジプトの智者ヘルメス・トリスメギトスが著した、いわゆる「ヘルメス文書」です。

もちろん「ヘルメス文書」は紀元一世紀から三世紀に、様々な作者によって作り出された「偽書」なのですが、そこに示された知とは、「グノーシス神話」=人間が神に近づく可能性を語る神話であり、占星術的宇宙観なのです。それこそが、ジョン・ディーの「魔術」の根幹。

それにしても、ルネッサンス期の「魔術師」の世界は、岡野版『陰陽師』が描く安倍晴明に重なってきませんか。岡野版『陰陽師』がアレクサンドリアの女性数学者ヒュパティアを登場させ、さらに古代エジプトと照応させたことは、ルネッサンスの魔術師たちを彷彿させるのでした。

さて、ジョン・ディーが登場した夜のテレビ番組は? まぁ、それについては触れないでおきましよう。


名付けて陰陽椀

二泊目のホテルは、真下に皇居の森が見えます。きれいに晴れてすがすがしい朝でした。

午前中にチェックアウトして、東京駅に。このまま帰るのはもったいないので、皇居外苑の公園を散歩しました。銀杏並木はしっかり紅葉しています。おのぼりさんのくたくたさんと一緒に、あたりを散策。

お昼ご飯は、東京駅のステーションホテルの、有名なレトロ調のレストランに行きました。なぜかふたりとも、カレーが食べたくなったのでした。ステーションホテルのカレーは、とてもなつかしい味でした。

夕方、自宅にもどって、ぐったり。でも楽しい人たちと過ごした時間の余韻がいつまでも残っていました。

そうそう、「たちはな亭」の皆さんからいただいたお祝いの品は、陰陽の印が蓋に入っている漆塗りのお椀。名付けて「陰陽椀」です。お正月に、これでお雑煮を食べる予定です。

それにしても、さすが「たちはな亭」らしいお祝いでした。あらためて、お礼を。