斎藤英喜の 「ぶらぶら日記」 -903ページ目

行楽日和

大学は今日から学園祭。授業はお休みです。午前中は「神話」関係の勉強・読書してました。

さわやかに晴れた秋の一日。せっかく「お休み」なのに家にいるのはもったいないので、お昼ご飯を食べてから、ふたりで出かけました。

特別拝観ということで、まずは「冷泉家」見学。

伝統ある歌学の家ですが、車が行き交う道路ぞいにあるお宅は、思っていた以上に狭く、ちょっと寂しい感じでした。庭のなかにいくつも井戸がありました。

そのあと、御所のなかの広い道を歩いて「清浄華院」へ。『泣不動縁起絵巻』が展示されています。安倍晴明が祈禱し、祭文を誦む有名な場面がありますが、残念ながらそのシーンは江戸時代の複製画のほうで、室町時代初期の「現物」は、身代わりになった不動明王に閻魔さまが平伏する場面が展示されていました。

それにしても晴明の絵巻があるお寺が「浄土宗」というのが、なんとも「因縁」ですね。

帰りは北大路ビブレで買い物し、夕食は僕が作りました。鳥肉のミンチにワカメを混ぜたつくね風照り焼きハンバーグ。ジャガイモとシーチキンの煮炒め。野菜とベーコン、ウインナーのごった煮スープなど。

夜は「神話」関係の勉強読書。

エリアーデ『神話と現実』(せりか書房)を再読し、つづけて稲葉振一郎『ナウシカ解読』(窓社)。この本、ナウシカを徹底的に分析した、すぐれた内容です。なぜナウシカの解読本を読むかというと、いま進めている「日本神話」の本に、『風の谷のナウシカ』を取り上げるからです。ナウシカの神話学的分析…。


エリアーデ『マイトレイ』

東京の「陰陽道」講座の日です。今日は「いざなぎ流」のビデオを見ながら、「取り分け」の儀礼や「すその祭文」についての話をしました。「呪詛」とかに関わる難しいところですが、どうでしょう、聴講されている方々には、うまく理解していただけたのでしようか。

東京に行ったついでに、もうひとつ別の「仕事」もしました。いま進行中の「日本神話」の本の担当編集者と会って、本の構成などの打ち合わせです。

本を作るのは。当然、書き手である著者が主体ですが、しかし実際に作るときには編集者の存在というのもすごく重要です。僕はこれまで四冊、単著を出しましたが、最初の『アマテラスの深みへ』から『いざなぎ流式王子』、『いざなぎ流 祭文と儀礼』、そして『安倍晴明』まで、どの本の場合も担当してくださった編集者の存在が大きかったです。それぞれの編集者さんたちと出会わなければ、いまあるような本にはなっていなかったのでは…。

よく言われることですが、本作りは、著者と編集者との共同作業です。僕はとくにそれを強く感じます。今回の本を担当する編集者さんは、これまで某雑誌でお世話になった方で、とても信頼している編集者です。彼と一緒に仕事ができるのが、何よりもうれしいところです。とくに今回の本は、いわゆる専門研究書ではなく、より広い読者を対象としたもの。いろいろと新しい試みが出来そうです。どんな本になるか、まずは著者の僕が一番楽しみなのでした。

東京への往復の新幹線では、エリアーデの恋愛小説『マイトレイ』(作品社)を読みました。そうです、エリアーデって、あの『シャーマニズム』の著者の宗教学者ですが、彼は同時に、小説家=物語作家でもあります。『マイトレイ』は、彼自身のインド留学、そこでの恋愛体験にもとづく小説。

ちなみに最近、エリアーデの「幻想小説全集」全三巻(作品社)がでています。第一巻にはいっている「セランポーレの夜」とかは最高です。インドの熱帯の夜の幻惑…。

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帰宅後、お風呂に入ってから、すぐには寝付けず、結局、読書していました。エリアーデの『マイトレイ』の続き。現代のヨーロッパ人がインドの「神話」のなかの少女と出会い、恋愛をしていく、そんな小説です。

深夜、外に出たら、地球と再接近している火星が赤く見えました。

深夜のデジデリオ

久しぶりに秋晴れのさわやかな空。思わず、どこかに遊びにいきたくなるような気分です。でも、今日は午後から授業なのでした。

大学院の授業は、修士一回生、博士一回生の学生たちの「中間発表」のプレ報告会。例によって延長し、七時まで。ぐったりして家に帰ったら、くたくたさんの今夜の夕食は、篠山の黒枝豆入りご飯。高野豆腐の卵合え。それとシュウマイ。黒枝豆は篠山の特産とのこと。黒枝豆ご飯はとてもおいしかったです。先日買った白ワインを、思わず三杯飲みました。

この二三日のあいだに、締め切り過ぎた原稿催促の電話やらメールやらが来て、頭が痛い~。仕事はちゃんとしているつもりですが、どうも追いつきません。さらに、締め切り過ぎの原稿抱えているくせに、あらたに原稿依頼が来ると、ついうれしくなって引き受けてしまいました。依頼されるうちが花だぁ、とホイホイ引き受けて、締め切りが来ると、なんでこれ引き受けちゃったんだろ…と。いつもわかっていることなんですがね。

で、今夜も二時過ぎまで、原稿書いていました。疲れて、すぐに眠れないので、黒枝豆ご飯をおにぎりにしてもらったのを肴に、軽くウイスキー…。飲みながらモンス・デジデリオの画集眺めていたら、三時過ぎてました。

モンス・デジデリオとは、十七世紀あたりの画家ですが、素性もよくわからない謎の人物です。絵の主題は、崩壊する建造物。柱が崩れていく様とか、燃える都市とかばかり描いています。澁澤龍彦とかもよく話題にした画家です。

ホッケの『迷宮としての世界』のなかで「マニエリスト」として紹介され、その本の口絵に載っていた絵が、昔から記憶に残っていたのですが、1995年にリブロポートが一冊の画集を出したのを(今は絶版)、僕は持っているのでした(当然初版)。

なんてこと自慢してないで、もう寝ましょう。