正信偈とは、浄土真宗の開祖である親鸞聖人の主著『教行信証』の中に書かれている、7文字×120行、計840文字で構成された詩のことです。偈とは、詩という意味です。
その原文1行ごとに通し番号を付け、その下に現代語訳を記載しました。
◼️表記方法
0正信偈原文
└現代語訳
1帰命無量寿如来
└限りない命の如来に帰命し
2南無不可思議光
└思い計ることのできない光の如来に南無したてまつる
3法蔵菩薩因位時
└法蔵菩薩の因位の時に
4在世自在王仏所
└世自在王仏のみもとで
5覩見諸仏浄土因
└仏方の浄土の成り立ちや
6国土人天之善悪
└その国土や人や神々の善し悪しをご覧になって
7建立無上殊勝願
└この上なく優れた願をお建てになり
8超発希有大弘誓
└世にもまれな大いなる誓いを起こされた
9五劫思惟之摂受
└五劫もの長い間思惟して、この誓願を選び取り
10重誓名声聞十方
└名号を全ての世界に聞えさせようと、重ねて誓われたのである
11普放無量無辺光
12無碍無対光炎王
13清浄歓喜智慧光
14不断難思無称光
15超日月光照塵刹
└本願を成就された法蔵菩薩は阿弥陀仏と成って、無量光・無辺光・無碍光・無対光・光炎王・清浄光・歓喜光・智慧光・不断光・難思光・無称光・超日月光と称えられる光明を放っており
16一切群生蒙光照
└全ての国々の、全ての衆生は、その光明に照らされている
17本願名号正定業
└南無阿弥陀仏の念仏は、衆生が間違いなく往生するためのものであり
18至心信楽願為因
└至心信楽の願[第十八願]に誓われている信心を往生の正因とする
19成等覚証大涅槃
└正定聚の位につき、極楽浄土に往生して、さとりをひらくことができるのは
20必至滅度願成就
└必至滅度の願[第十一願]が成就されたことによる
21如来所以興出世
└お釈迦様をはじめ、如来が世に出られるのは
22唯説弥陀本願海
└ただ、阿弥陀仏の本願海を説くためである
23五濁悪時群生海
└五濁悪時の世を生きる人々は
24応信如来如実言
└お釈迦様の真実の教えを信じるがよい
25能発一念喜愛心
└信を起こして、阿弥陀仏の救いを喜ぶ人は
26不断煩悩得涅槃
└自らの煩悩を断ち切らないまま、極楽浄土でさとりをひらくことができる
27凡聖逆謗斉回入
└凡夫も聖者も、五逆の者も謗法の者も、みな本願海に入れば
28如衆水入海一味
└どの川の水も海に入ると一つの味(塩味)になるように、等しく救われる
29摂取心光常照護
└阿弥陀仏の光明はいつも衆生を摂め取ってお護り下さる
30已能雖破無明闇
└既に無明の闇は晴れても
31貪愛瞋憎之雲霧
└貪りや怒りの雲や霧は
32常覆真実信心天
└いつも真実の信心の空を覆っている
33譬如日光覆雲霧
└しかし、たとえば日光が雲や霧に遮られていても
34雲霧之下明無闇
└その下は明るく闇が無いと同じである
35獲信見敬大慶喜
└信を得て大いに喜び敬う人は
36即横超截五悪趣
└ただちに本願力によって、迷いの世界の絆が断ち切られる
37一切善悪凡夫人
└善人や悪人の区別なく、全ての人は
38聞信如来弘誓願
└阿弥陀仏の本願を信じれば
39仏言広大勝解者
└仏はこの人を優れた智慧を得た者であると称え
40是人名分陀利華
└汚れのない白い蓮の花のような人とお誉めになる
41弥陀仏本願念仏
└阿弥陀仏の本願に基づく念仏は
42邪見憍慢悪衆生
└よこしまな考えを持ち、おごりたかぶる自力の者が
43信楽受持甚以難
└信じることは実に難しい
44難中之難無過斯
└これは難の中の難であり、これ以上に難しいことはない
45印度西天之論家
└インドの菩薩方や
46中夏日域之高僧
└中国や日本の高僧方は
47顕大聖興世正意
└お釈迦様が世に出られた真意を明らかにし
48明如来本誓応機
└阿弥陀仏が本願を建てられたのは、ひとえに、私達衆生を救うためだったと教えられた
49釈迦如来楞伽山
└お釈迦様は楞伽山で
50為衆告命南天竺
└大衆に向かって、南インドに
51龍樹大士出於世
└龍樹菩薩が現れて
52悉能摧破有無見
└有無の邪見を全て打ち破り
53宣説大乗無上法
└尊い大乗の法を説き
54証歓喜地生安楽
└歓喜地の位に至って、阿弥陀仏の極楽浄土に往生するだろうと仰せになった
55顕示難行陸路苦
└龍樹菩薩は、難行道は苦しい陸路のようであると示し
56信楽易行水道楽
└易行道は楽しい船旅のようであるとお勧めになった
57憶念弥陀仏本願
└阿弥陀仏の本願を信じれば
58自然即時入必定
└自ら、ただちに正定聚に入る
59唯能常称如来号
└ただ、常に南無阿弥陀仏の念仏を称え
60応報大悲弘誓恩
└本願の大いなる慈悲の恩に報いるがよい
61天親菩薩造論説
└天親菩薩は、浄土論を著して
62帰命無碍光如来
└無碍光如来に帰命したてまつると述べられた
63依修多羅顕真実
└経典に基づいて、真実の仏教を明らかにし
64光闡横超大誓願
└横超の優れた誓願を広くお示しになった
65広由本願力廻向
└本願力の回向によって
66為度群生彰一心
└全ての人を救うのは、一心すなわち他力の信心である
67帰入功徳大宝海
└南無阿弥陀仏の念仏に帰依し、大いなる功徳の海に入れば
68必獲入大会衆数
└極楽浄土へ往生する身と定まる
69得至蓮華蔵世界
└阿弥陀仏の極楽浄土に往生すれば
70即証真如法性身
└ただちに真如をさとった身となり
71遊煩悩林現神通
└さらに迷いの世界に還り、神通力でもって
72入生死園示応化
└自在に衆生を救うことができる
73本師曇鸞梁天子
└曇鸞大師は梁の武帝が
74常向鸞処菩薩礼
└常に菩薩と仰がれた方である
75三蔵流支授浄教
└菩提流支三蔵から浄土の経典を授けられ
76焚焼仙経帰楽邦
└仙経を焼き捨てて、浄土の教えに帰依された
77天親菩薩論註解
└天親菩薩の浄土論を注釈して
78報土因果顕誓願
└極楽浄土に往生する因も果も、阿弥陀仏の本願によることを明らかにした
79往還回向由他力
└往相も還相も、他力の回向によるものである
80正定之因唯信心
└極楽浄土へ往生するための因は、ただ信心一つである
81惑染凡夫信心発
└煩悩具足の凡夫でも、この信心を得たのなら
82証知生死即涅槃
└極楽浄土でさとりをひらく身になれる
83必至無量光明土
└計り知れない光明の浄土に至ると
84諸有衆生皆普化
└あらゆる迷いの衆生を導くことができる
85道綽決聖道難証
└道綽禅師は、聖道門の教えによってさとるのは難しく
86唯明浄土可通入
└浄土門の教えによってのみ、さとりをひらくことができると明らかにされた
87万善自力貶勤修
└自力の行はいくら修めても劣っているとして
88円満徳号勧専称
└一筋に、あらゆる功徳を備えた念仏を称えることをお勧めになった
89三不三信誨慇勤
└三信と三不信を懇切に教え
90像末法滅同悲引
└像法・末法・滅法、いつの時代においても、南無阿弥陀仏の念仏だけは、変わらずに人々を救い続けることができると示された
91一生造悪値弘誓
└たとえ生涯悪をつくり続けても、阿弥陀仏の本願に出会えれば
92至安養界証妙果
└極楽浄土へ往生し、この上ないさとりをひらくことができる
93善導独明仏正意
└善導大師は、ただ一人、これまでの誤った説を正して、真実の仏教を明らかにされた
94矜哀定散与逆悪
└善悪の全ての人を憐れんで
95光明名号顕因縁
└光明と名号が因となり縁となって、全ての人を等しく救ってくれるのだと示された
96開入本願大智海
└本願の大いなる智慧の海に入れば
97行者正受金剛心
└行者は他力の信を回向され
98慶喜一念相応後
└如来の本願に叶うことができたその時に
99与韋提等獲三忍
└韋提希と同じく喜忍・悟忍・信忍の三忍を得て
100即証法性之常楽
└極楽浄土へ往生し、さとりをひらくことができると述べられた
101源信広開一代教
└源信僧都は、釈尊一代の教えを広く世に広め
102偏帰安養勧一切
└ひとえに極楽浄土への往生を願い、また世の全ての人々にもお勧めになった
103専雑執心判浅深
└様々な行を交えて修める自力の信心は浅く、化土にしか往生できないが
104報化二土正弁立
└念仏一つをもっぱらに修める他力の信心は深く、報土に往生できると示された
105極重悪人唯称仏
└極めて罪の重い悪人は、ただにち念仏すべきである
106我亦在彼摂取中
└私(源信僧都)もまた、阿弥陀仏の光明の中に摂め取られているけれども
107煩悩障眼雖不見
└煩悩が私の目を遮って、見たてまつることができない。しかしながら
108大悲無倦常照我
└阿弥陀仏の広大な慈悲の光明は、そのような私を見捨てることなく、常に照らしていて下さると述べられた
109本師源空明仏教
└私(親鸞聖人)の師匠である源空(法然上人)は、深く仏教を究められ
110憐愍善悪凡夫人
└善人も悪人も全ての凡夫を憐れんで
111真宗教証興片州
└東の片隅にあるこの国に、浄土の教えを開いて
112選択本願弘悪世
└選択本願の法を、五濁の世にお広めになった
113 還来生死輪転家
└迷いの世界に輪廻するのは
114決以疑情為所止
└本願を疑い計らうからである
115速入寂静無為楽
└速やかに、さとりの世界に入るには
116必以信心為能入
└ただ、信心を得ることより他にないと述べられた
117弘経大士宗師等
└浄土の教えを広めて下さった祖師方は
118拯済無辺極濁悪
└数限りない五濁の世の衆生を、みなお導きになる
119道俗時衆共同心
└出家の者も在家の者も、全ての人は、共に同心し
120唯可信斯高僧説
└ただ、この高僧方の教えを仰いで信じるがよい