今回は加法定理とそれを使って2倍角の公式や三角比の合成についてまとめました。
加法定理の導出として有名なのは、単位円(原点中心、半径1の円)上の2点ABの距離を座標における距離(x座標の差の2乗とy座標の差の2乗の和の平方根、√{(x₁-x₂)²+(y₁-y₂)²})から求める方法と2点と原点で作る三角形において余弦定理を原点の角について求める方法(√{OA²+OB²-2×OA×OB×cosθ})の2通りで求めて比較することで導出します。(需要があれば別の機会にまとめます)
この導出法ではcos(α-β)=cosαcosβ+sinαsinβの式が始めに導出されます。この式だけではあまり実用的ではないので他の式(cos(α+β)やsin(α±β))をcos(α-β)から変形して導きます。
cos(α+β)はcos(α-β)のβの符号を変えると導けます。cosβのβを-βにしたcos(-β)は対称性よりcosβです(前回参照)ので、cosβはそのままです。また、sinβのβを-βにしたsin(-β)は対称性より-sinβです(前回参照)ので、sinβの項の符号が変わります。
sin(α±β)はcos(α±β)のαをα-90°に変えると導けます(前回参照)。cosはsinにsinは-cosに変わります(右図参照)。
tanの加法定理の求め方はsinの加法定理の式をcosの加法定理の式で割ったものを分母・分子共にcosαcosβで割ると導出できます。tanの加法定理は2本の1次関数のグラフがなす角を求める時に応用できます。
使い方兼例として15°と75°の三角比を加法定理から求めてみました。30°・45°の三角比は既知というか正三角形と正方形(直角二等辺三角形)からすぐに導けるので公式にそれを代入するだけです(tan15°・tan75°は分母の有理化など微妙に面倒ですが…)。このとき45°の正弦・余弦は√2/2を使うと計算しやすいです。sin・cosについてはこれが速いですが、tanについては他のやり方のほうが速いと思います。
2倍角の公式は加法定理に同じ角を代入したときのものです。cosの方はsin²x+cos²x=1の式を使ってsin²またはcos²にまとめることができます。これをsin²、cos²について解いたものはsin²xやcos²xの積分に使われます。
半角についての式で初見では思いつかないものやtan(x/2)で表す方法を挙げました。特に√(1-cosx)=√2|sin(x/2)|は二等辺三角形の底辺を余弦定理で求めたのが左のような形で、直角三角形に二等分して三角比から求めたのが右のような形です。円周上での距離でも使えたりします。
tan(x/2)でsinx,cosx,tanxの式を表すと複雑な方法を使わずに積分できます。sinx,cosx,tanxをtan(x/2)を使った形に書き換える手順を理解することは良い練習だと思います。
三角比の合成は加法定理の逆の手順だと考えると理屈がわかりやすいです。
目的の形を加法定理で分解したのを変形したい形と比べるとsinθの係数についての式とcosθの係数についての式の2本の式が立つのでそれを解くと合成できます。よく使うのはsinへの合成ですが、係数と角のsin,cosが逆転するのが混乱の元だと思うので、cosへの合成のほうがいいと思います。右側に例を2つ挙げました。多くの場合は角度が有理数で表せないので、とりあえず文字でおいてその正弦・余弦の値を表示するか、逆三角関数を使って表現します。
記載できていない加法定理関連の式として、前述の導出に使う余弦定理や三平方の定理、15°と75°の三角比を加法定理以外の求め方、3倍角の定理、積和・和積の定理などがあります。