"Food for Thought"

"Food for Thought"

日々考えていることを、自分の思考をまとめるためにも書きつづっています。

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【愛媛(別子銅山編)】

 自身は足尾銅山系なのですが、住友系の知人も多く、愛媛で行ってみたかったところが別子銅山(住友理事だった伊庭貞剛は個人的にも尊敬)。

 車でマイントピア別子という道の駅まで行き、まずは周辺の端出場などを散策。続いてバスで東平(とうなる)エリアに向かいます。クネクネの細い山道カーブをバスはホイホイ行くのがすごいです。

 30分後に着いた東平には驚きました。かつて採鉱本部があった場所で、山奥で採掘した鉱石は、当初、ここまで人力で運搬。次に牛を使い、最後に蒸気機関車で運んだとのこと。この蒸気機関車は山頂付近を走り、大正時代にこんなことができたとはビックリです。人から牛、牛から蒸気機関車になって生産性も500倍に上がったというのですからこれまた驚き。鉱石の索道基地・貯鉱庫はマチュピチュ遺跡に似ていることから、東平は「東洋のマチュピチュ」とも称され、世界遺産登録の動きもあるそうです。以前は、この山奥に5千人もの社員が働き、病院・映画館・プール・迎賓館まであったそうですが、一体どうやってこんな山奥に作れたのか本当に不思議です。

 伊庭貞剛のおかげで植林も進み、今では付近に樹木が生い繁って、この点は足尾銅山とは大違い。やるな~、住友。ということで、愛媛を制して、「日本未踏の地」はあと6県!(岩手、秋田、山口、佐賀、宮崎、鹿児島、待ってろよ~)

【愛媛(松山市・道後温泉編)】

 今回の「日本未踏の地を行く旅」は愛媛県。雨模様ながら、まずは道後温泉本館に行き、中に入って天皇がご入浴・ご休憩されたという特別室も見学。この周囲には、鯛めしとじゃこ天の看板がひしめくなか、「夕食に必ず出る」と踏んでお昼はあえて鯛茶漬け。それにしても、鯛にとって松山は地獄の地です。

 松山城にのぼり、続いて「『坂の上の雲』ミュージアム」。途中、結構、松山市の中心地に秋山兄弟の生家がありました。ミュージアムそのものはよく構成されていて、今更ながら日露戦争がよくわかりました。松山は、「坊ちゃん」と「坂の上の雲」の街という印象ですが、「風情があってとても良い街ぞな」です。

 お宿は寛永年間(1627年)創業の老舗旅館。天皇が宿泊したという由緒正しき風格ながら、仲居さんがとにかく明るい方で、一緒にいるだけで元気になれました。予想通り、夕食には鯛めしとじゃこ天が出て松山名物全品を完食。腹ごなしに、夜の道後温泉本館も散策して初日は終了。(^^)

【あなたの知らないアメリカ】 日本経済新聞社 米州総局 編

 

 学生時代のかわいい後輩が執筆者の一人。「増刷になりました。お読みいただければ嬉しいです」と来れば読まなくてはなりません。日経・電子版の連載に加筆・再構成したものとのことですが、「わたしの知らないアメリカ」で驚きの連続でした。

 

 メディアとしては非日常的なことや「想定外」を取り上げるのでしょうが、それにしてもこれは驚きです。平均労働時間の伸長、白人出生率低下とその影響、ウォール街からテキサスへ、不法移民収容所ビジネス特需、スポーツ・ビジネスの光と影、超富裕層の実情、NYの家賃状況とホームレスの急増、ブロードウェイやハリウッドの惨状など、書き上げればキリがありません。最後に米国に行ったのは15年も前ですが、もう「わたしの知っているアメリカ」ではないのかと思わされました。

 

 本当のところはどうよ?と、これをベースに語りたくなる一冊です。

 

【黄金の稲とヘッジファンド】 波多野 聖 著

 

 第一次産業中央金庫(農林中央金庫)、略して産中(農林中金)を舞台とした経済小説。一般から預金を集める銀行とは異なり、農共(農協)、農林水産共同組合(農林水産業協同組合)から安定した資金を集めて運用する「系統金融」が、やがてヘッジファンド化する実態を描いています。

 

 主人公は自分とほぼ同世代。リーマンショックまでを描いていますが、実体験と重なる上、「なるほどね~、農協(JA)、農林中金とか、こうやっているのか」とか、地域の農業・漁業の話もあって、とても面白く読みました。恐らく著者の実体験によるものと思いますが、古典からの引用も多く、ページをめくる手が止まらない、人呼んで「かっぱえびせん状態」。

 

 脇役の「産中の最終兵器」として登場する菅拓郎という人物には助演男優賞です。エリート集団の産中にあって「菅は頭はありませんが、腹もありません」とケチョンケチョン。しかし、酒の付き合いだけは良いことから農共や共同組合から絶大な信頼を得て、産中との架け橋になるというのは、あるあるの世界です。

 

 色恋話は一切ない経済小説ですが、IR(投資家向け広報)をやっていたためか、投資家たちの動きや考え方もありありとわかり、読み終わって「あ~、面白かった~!」とため息をついた一冊です。

 

【初VR体験】

 VR(Virtual Reality)を近くで開催していたので初体験! いや~、これはすごいです! 「三体」などで知ってはいたのですが、体感してぶったまげました。

 上下左右360度、全方向に映像が広がり、現実にその場にいる感覚になります。大阪城を見下ろし天守閣に立つと、本当に高いところから見渡すようで足がすくみました。虎や象などは実際に目の前で触れる感じで、戦闘シーンでは横で武士が戦っているようです。

 映画館の4DXと比べても臨場感がハンパないです。将来的には映画もVRになるのでしょうか。(NHKとは全く関係ないのですが)VR未体験の方は是非!

墓場に持っていくのは、キース・ジャレットの「ケルン・コンサート」。初めて聴いたときは、泣けて泣けて仕方なく、以来、どのくらい聴いたかわかりません。現在までに世界で400万枚が売れ、これまで最も売れたピアノ・ソロ・アルバムと称されるのも納得です。

 

1975年1月24日当日の演奏は夜11:00の開演で、キースは体調が悪く睡眠不足。指定したピアノではなく1オクターブ足りないうえに未調律。最悪の状態からあの名曲が生まれたということは後で知ったのですが、実現の裏で女子高生が必死の活動をしていたことは、この映画で初めて知りました。

 

実話とのことで、本人も登場するややドキュメンタリー・タッチの映画。それでも、演奏直前のシーンでは緊迫した雰囲気で、帰ってまた聴きなおしてしまいました。(^^)

 

【ヤマタノオロチ】

 

 昨日、「ヤマタノオロチ」というオペラを観ました。作曲者・加藤昌則氏ご本人が指揮。「日本語のオペラなんてチャンチャラおかしいぜ」と、学芸会に毛が生えたようなものかと思ったのですがさにあらず。これは世界に誇れる和製オペラです。

 

 スサノオノミコトの成長を表したとのことですが、①「美女と野獣」に似た成長過程を表現、②音楽もアニメやディズニーっぽくて聴きやすい、③何よりアマテラスオオミカミまで登場して日本の神話や皇室・三種の神器の発祥についても理解できる、と「一粒で3つ美味しい」作品に仕上がっています。ヤマタノオロチもダンサー7人を加えて8頭とし、表現にも工夫が凝らされていました。

 

 2006年初演で10年後に再上演。今回は再々上演ながら一日のみの公演で勿体ないと思いました。これ単発で終えることなく、ゴジラ並みに世界に普及して欲しい一作です。

 

【金融緊急措置】 幸田 真音 著

 

 戦後、預金封鎖で銀行口座が国に押さえられたと聞いたことがあります。いまの民主主義体制でそのようなことはないと言われますが、国はいざとなれば何をするかわからない…。そんなことを某記者と話していた帰りがけ、書店で「預金封鎖」の帯の文字が飛び込んできました。しかも渋沢栄一の孫の敬三が主人公とのことで早速購入。

 

 渋沢栄一は息子・篤二を廃嫡し、孫の敬三を後継者に指名。渋沢敬三は、「横浜正金銀行⇒第一銀行副頭取⇒日本銀行副総裁⇒日本銀行総裁⇒大蔵大臣」と重職を歴任し、戦後の大蔵大臣時代に預金封鎖(正式には一世帯月額500円を上限とする払出制限)を実施。中央に権力が集中し、債務がGDPの2倍、インフレが止まらず、やむを得ない処置とのことですが、何だか現代と通じるものがあります。

 

 取り付け騒ぎの記述も緊迫感にあふれ、渋沢敬三の生涯を軸に、(半藤一利氏並みに)戦前戦後の金融の歴史がうまく書かれています。文体も極めて整い、久しぶりに「文学」に接した気分の一冊です。

 

【ぼっちのアリは死ぬ】 古藤 日子 著

 

 某Podcastで著者の話を聴いたもの。生き物単体の分析ではなく、社会性を研究する観点からアリに着目したそうですが、なかなか面白かったです。

 

 怪我をしたアリにはほかのアリが外科手術を施すか、治療用エキスを分泌して治療。重度の感染症に罹ったアリは巣に戻らず、軽度感染のアリは戻ってワクチンとして機能させるなど、まるで人間社会のようです。女王アリだけが飛んで「結婚飛行」で受精し、それを10年間保持して、受精した卵からはメス、未授精卵からはオス、が生まれるというのは何とも奇妙でした。

 

 ポイントは、孤立させたアリの寿命は1/10となって早死にするという点。以前から知られていた事象のようですが、著者はその原因を「酸化ストレス」によるとつきとめます。「ぼっち」のアリには活性酸素が増え、これが「死因」に繋がると言います。アリと人間での繋がりにはまだ否定的ですが、社会性が細胞レベルにまでどう影響を与えることを実証したいとのことで、まだまだ研究は続きそうです。

 

【宮内庁長官】 井上 亮 著

 

 「これ、面白いよ」と渡されました。普通なら読まないタイトルですが、「お薦め」なので読んでみました。結果、これは確かに面白かったです。

 

 著者・井上亮氏のプロフィールには、「全国紙記者」とありますが、日経新聞の宮内庁担当。宮廷用語で、「ウラ(侍従長)」と「オモテ(宮内庁長官)」があるそうですが、これは「オモテ」を書いたもの。「象徴天皇の盾として」の副題どおり、天皇を政治利用とする政権・政治家、騒ぎ立てるマスコミや世論から、盾となって立ちはだかる歴代宮内庁長官の姿が描かれています。また、「昭和~平成~令和」天皇の言行録や、(やはり天皇も人間なので)感情を露わにする場面などが書かれ、「あのことは、こういうことだったのか」と理解できました。最後に、皇室継承についての著者コメントがありますが、個人的にはこれが納得のいく内容でした。

 

 奇しくも、NHK「映像の世紀」は「昭和天皇(前編・後編)」で、ちょうど読み終えたタイミング。それにしても、自分には絶対この役職は務まらない(それ以前に声もかからないでしょうが)と思わされた一冊です。