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"Food for Thought"

日々考えていることを、自分の思考をまとめるためにも書きつづっています。

『女の国会』 新川 帆立 著

 

 面白かったです。よく調べているな~と思ったら、この著者、『元彼の遺言状』を書いた弁護士さんですね。ミステリー仕立てとなっていて、殺人を巡る動機には「?」が残りましたが、政治家、特に第四章の選挙については相当ヒアリングされたものと思います。

 

 男性議員に多いのが「アレオレ詐欺」とか。「アレオレ詐欺」とは、「アレは、オレがやった!」と手柄を吹聴するものだそうで、自分の周辺にも多く、(何人かの顔を思い浮かべて)思わず笑ってしまいました。

 

 「性同一性障害」が底流に流れていますが、政界における女性の立場や政治家・選挙の実態が垣間見られる一冊です。

 

『マネーモンスター』 黒木 亮 著

 

 これは面白いです! 真山仁氏の「ハゲタカ」シリーズは通読しましたが、黒木亮氏の「カラ売り」シリーズは初めてで引き込まれました。

 

 パンゲアというカラ売り屋の活動を、「ミスター液晶(液晶バックライト)」「水素トラック革命(水素自動車)」「地銀の狼(ス〇ガ銀行)」の三本立てで描いています。それぞれ独立しており、短編としても読めますが、前者2作は、かつて携わった業務内容であり、また最後は最近話題になった「ス〇ガ銀行」の話でもあり、いずれも一気読みコースでした。

 

 「VIVANT」でもカラ売りは取り扱われていましたが、何となく悪者イメージ。しかし、こちらのカラ売りは、不正を問い質す一手法として正義の味方的に描かれています。さらに、中国の出入国管理法、米国の(日本にはない)「内部告発者報奨金プログラム」、米国において上場企業が激減している背景など、あまり新聞などでは知らされていない内容も書かれています。

 

 経済小説ですが、企業が事業と財務の両輪で回っていることが実感できる一冊です。

 

『素数ゼミの謎』 吉村 仁 著

 

 昨日のネット記事に、「米国で今年、13年ゼミと17年ゼミが同時に大発生」という記事がありました。米国では周期的に地域を分散しながら、セミの大量発生があるようです。またまた「COTEN RADIO」からの引用で恐縮ですが、ダーウィンの進化論に関係して、以前、このセミのことが語られていました。

 

 ダーウィンの進化論は、「変化するものだけが生き残る」と解釈され、経営者がよくこの言葉を語ります。しかし、「COTEN RADIO」によれば、これは誤った解釈であり、「たまたまの偶然に」環境変化に対応できただけのものが生き残ると解釈するのが正解と論じています(実は、自分もそう解釈している)。その例として引き合いに出されたのが「素数ゼミ」。

 

 セミの寿命は最長20年。その生涯をほぼ土中で暮らして繁殖期に地上に出ます。地上に出る期間は短く、この間に配偶相手を見つけなければなりません。しかし、地上に出たところ、誰もいないという事態もありえます(相手が多くないと、子孫を残すことはできない)。色々な周期をもつ種と交配すると周期が乱れて配偶相手を見つけにくくなるため、素数(13、17)の周期をもつセミが「たまたま」多く生き残っているというのです。

 

 諸説はあるようですが、この説では、「たまたま」13年、17年周期のセミが生き残っただけで、別に環境の変化に適合したわけではないと言います。それにしても、13×17年の221年目となる今年は超大量発生で、ものすごい鳴き声になっていると思います。

 

◆米国で今年、「13年ゼミ」と「17年ゼミ」が同時に大発生 数十億匹にも(ロイター)

https://news.yahoo.co.jp/articles/9fb7d4212f6205dc7a4c7c8509a70890adb49bae

 

『「生」と「死」の取り扱い説明書』 苫米地 英人 著

 

 苫米地英人氏と言えば、オウム真理教に洗脳された信者たちを脳科学・認知科学で「脱洗脳」させたことで有名かと思います。カーネギーメロン大学博士であり、かつ天台宗で得度した仏教家。この方の著作もほぼ読んでいます。この本のタイトルは軽い感じですが、中身はなかなかのものです。

 

 前掲の『死の講義』の関連図書で出てきたものですが、さすがは苫米地ワールド。田坂広志氏は量子力学の観点から「死」を科学的に考察しましたが、苫米地英人氏は、「質量保存の法則」や「エネルギー保存の法則」から、「個体の死は、自我の消滅を意味」せず、「物理的な存在が情報的な存在に変わるだけで、自我が消え去ったりはしない」と断じます。

 

 仏教にも造詣が深く、あの世の権力とこの世の権力を分けるという観点から、やはり「釈迦はお坊さんが葬式に出ることを禁じた」とあり、僧侶の世襲も禁止(そのための妻帯禁止)。現状を「釈迦本人が知ったら、驚いてひっくり返ってしまう」とあります。

 

 連投で暗いタイトルが続いて恐縮ですが、自分自身が普段何気なく思っていることが根底からひっくり返された感のある一冊です。

 

『死の講義』 橋爪 大三郎 著

 

 Podcast、Spotifyなどに「COTEN RADIO」という番組があり、この中の「老いと死の歴史」の参考文献として紹介されたものです。

 

 一神教、インド、中国、仏教、日本などの宗教観を元に、それぞれの死生観がどうなのかが描かれています。死後は、「復活する」、「輪廻する」、「そのまま何もない」、「黄泉の国に行く」など様々ですが、著者は、結局これらを参考に、「自分で決めなさい」と結論づけています。これを読んでも、自分としては、田坂広志氏の「死は存在しない」の考えに同意なのですが、決めることで「新しい自分になる」という著者の見解には少なからず賛同しました。

 

 仏教では「世俗の葬儀などに関係してはいけない」となっているにも拘らず、日本の風習と混じって、「葬式は仏教しか」やらないようになったなど、色々な宗教の考え方や歴史が簡潔に書かれ、大まかに捉えたい方にお薦めです。

 

『ゆうびんの父』 門井 慶喜 著

 

 門井慶喜氏の本にハズレはないと新刊をゲット。と思ったところ、前半は前島密(上野房三郎)があっち行ったり、こっち行ったりの繰り返し。北は北海道から南は九州まで、上司・師・仕事を転々とし、「いつ本題は出てくるのやら…」と不安になってきます。後半から郵便事業の立ち上げとなり、ヤマト運輸の小倉昌男氏バリの活躍に移行します。しかも、前半の長々とした旅の経験が事業立ち上げに役立つということもわかりました。特に、旅を通じた維新の志士たちや勝海舟らとの交流が、やがて「人脈」となって活きてくることも描かれています。

 

 いまでも郵便局には地元の「名士」が就くことが多いようですが(私の知人もそう)、東海道から始めた郵便事業を全国展開するための算段であったということもわかり、歴史がまだ生きていることを実感した一冊です。

 

『世界最強の地政学』 奥山 真司 著

 

 「世界最強」かどうかは別にして、地政学の歴史や考え方、現在進行中のロシア、中東、中国、果ては宇宙の話まで、これ一冊で十分という感じです。地図が多用されていることから、眼で見てわかる工夫もされており、新書版としては「最強」かと思います。

 

 日本は海洋国家であるはずなのに陸軍というランドパワーが強い理由、隣国とはどこも敵国、戦争に勝つ定義は何か(この定義ではロシアは敗戦状態)など、改めて考えさせられるところがありました。新聞やニュースなどで断片的に入ってくる情報を俯瞰することができ、これで1,000円チョットとはお得な一冊です。

 

『猫の妙術』 佚斎 樗山 著、高橋 有 訳・解説

 

 これはなかなか深遠な書です。原著は江戸中期に書かれ、猫が武士に武道(人生)の真髄を指南するというもの。

 

 第一章は、猫が鼠を退治する場面で、絵本を読んでいるように面白く読みました。第二章から、鼠を捕まえた猫が武士・勝軒に武道(人生)の心得を指南します。老荘思想に沿った内容で、「人は『ここ』『そこ』と場所を決めるが、地面は同じ一つ」と知ることが重要ということのようです。

 

 剣聖・山岡鉄舟の愛読書で、彼は「自己あれば敵あり、自己なければ敵なし」と言っていますが、もしや原点はこの書にあるのではないかと思いました。

 

 ある書評から知ったのですが、これだけだと「?」と思います。書店では見つけづらいようなので、ご興味あれば「図書館日和」で予約しては如何でしょうか。

 

 読書するのに、重宝しているアプリがあるのでご紹介(図書の話でなくて恐縮です)。

 

 「図書館日和」というアプリがあります。よく使う図書館を登録しておくと、一挙に在庫検索をしてくれ、そのまま予約もできます(いま、3つの区の図書館と近くの大学図書館を登録しています)。ここで見つからない場合には、「カーリル」で他区を探すこともありますが、基本的にこれで十分。予約すると図書館側で本を準備してくれるので、「ちょっと読んでみようかな」程度でも予約しておきます。

 

 大型書店のアプリでは、在庫検索や書棚の場所まで教えてくれるのでとっても便利。

 

 因みに、読んだ本は以下のアプリの「本棚」に登録しています。実物の本棚はゴチャゴチャで、かつて読んだ本をまた買って読む事態(ボケ)も多々発生。購入前に、アプリで検索するようになりました。

https://booklog.jp/

 

ほかにも良いアプリがあるかと思いますが、もし「お薦め」があれば教えてください~。

 

 これほど観終わった後にも幸福感を感じ、人生観にも影響を与える映画はほかにないのではないでしょうか。東洋思想を取りいれ、村上春樹や『夢をかなえるゾウ』まで取り込んだとも思える設定で、メッセージ性、映像美、ストーリーとどれをとっても素晴らしいです。

 

 2020年制作で、第93回(2021年)米アカデミー賞受賞(長編アニメ賞、作曲賞)。Disney+では配信されているものの、コロナ禍で一般上映が延期され、4月12日に満を持して上映開始。

 

“こんな魚の話を聴いたことがある。彼は年長の魚に言った。「ぼくは、海を探しているんです」。年長の魚は言った、「海だって? 今いる場所がそうだよ」。魚は、「これ?  これは水です。ぼくが欲しいのは海なんだ」”

 

 この台詞に映画のエッセンスが凝縮されているのではないかと思います。いやぁ~、映画って本当にいいもんですね。